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連載 眼の組織・病理アトラス・155
網膜色素上皮細胞の増殖
著者: 猪俣孟1
所属機関: 1九州大学医学部眼科学教室
ページ範囲:P.1628 - P.1629
文献購入ページに移動 網膜色素上皮細胞は神経外胚葉由来の細胞で網膜の最外層に存在し,視細胞などの網膜外層の栄養,視細胞外節の視物質の還元,陳旧化した視細胞外節の貪食,網膜下液排出のポンプ機能,脈絡膜から網膜への異常物質の流入を阻止する外側血液網膜関門など,網膜の機能維持に重要な生理的機能を有している。また,病的状態においても,網膜色素上皮細胞は病変に対して反応し,各種病変が感覚網膜に波及してその機能を障害することを防止するように働く。例えば,網膜を光凝固すると,凝固斑の周囲では網膜色素上皮細胞が増殖して,光凝固によって破綻した外側血液網膜関門が修復される。さらに,加齢黄斑変性で脈絡膜血管新生が網膜下に広がった場合には,網膜色素上皮細胞が増殖し,新生血管を網膜色素上皮層で覆って,ここでも新たに外側血液網膜関門を構築する。
網膜色素上皮細胞の増殖性反応を実際に細胞分裂像として組織学的にとらえることは極めてまれである。しかし,動物の網膜を光凝固して,硝子体中に3H-tymidineを注入して,その取り込みを観察することによって,網膜色素上皮細胞の増殖を実証することができる(図1)。
網膜色素上皮細胞の増殖性反応を実際に細胞分裂像として組織学的にとらえることは極めてまれである。しかし,動物の網膜を光凝固して,硝子体中に3H-tymidineを注入して,その取り込みを観察することによって,網膜色素上皮細胞の増殖を実証することができる(図1)。
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