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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科54巻10号

2000年10月発行

文献概要

連載 第53回日本臨床眼科学会特別講演

加齢黄斑変性:病態研究と治療法の新しい展開

著者: 玉井信1

所属機関: 1東北大学大学院医学系研究科感覚器病態学講座眼科学

ページ範囲:P.1664 - P.1673

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はじめに
 加齢黄斑変性疾患が日本で注目されはじめてからまだ日が浅い。本症は60歳以上のいわゆる老人に発症することから,老人性(円盤状)黄斑変性症(senile disciform macular degeneration:SMD,SDMD)と呼ばれ,欧米諸国における高齢者の社会的失明の首位を占める。その後60歳以前でも,脈絡膜より新生血管を伴う増殖膜が網膜下,または網膜色素上皮下に形成されることがわかり,「老人性」を,「加齢性」と変えて呼ばれるに至った(age-related macular degeneration:AMD, ARMD)。日本人におけるこの疾患の発症頻度は少ないと考えられ,時にそれが日本人の“顕著な特徴”として述べられてきた1)。それは二度にわたる世界大戦と,日本が今でいう「発展途上国」の状態であったため寿命が比較的短かったこと,また検査法,眼科病理学の未熟さのためもあったかもしれない。たしかに厚生省特定疾患調査研究班の受療者調査で,その数は欧米に比べ多くないが,近年罹患数の上昇が報告され,注目されている2,3)
 臨床病理学の進歩に伴う臨床像,病理組織と免疫組織学的検索の結果,病態の本質が明らかにされ,格段に理解が深まった4〜6)。しかし現在までその発症を止めることはできないし,進行を止めることも困難である。また臨床検査技術の進歩で早期から診断可能になったが,治療法に関しては,精力的なMacular Photocoagulation Study Group(MPS)の治療研究はあるものの,光凝固法も根本的な治療法とはいえず現在に至っている7)
 厚生省はこの疾患に注目し,前記の特定疾患調査研究班を組織して治療法の研究にあたるとともに,重点研究として1998年より,わが国における公費による初めての無作為コントロール研究を立ち上げることを決定し,現在2年目が進行中である8)。今回この疾患の病態に関する研究成果,現在までの診断法の進歩を概観するとともに,現在試みられている治療法とその将来性について展望する。特に,最近われわれが試みている外科的な網膜下新生血管膜除去と培養自己虹彩色素上皮移植について,その必要性と現在までの治療成績を述べる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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