臨床報告
虹彩隅角新生血管を伴わない増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術後の長期視力予後
著者:
杉本琢二1
光藤春佳1
辻川明孝1
安川力1
高木均1
桐生純一1
松村美代1
喜田有紀2
橋本和2
岩城正佳2
羽田成彦3
高島保之3
山川良治3
風間成泰4
山上和良5
小林博6
所属機関:
1京都大学大学院医学研究科視覚病態学教室
2愛知医科大学眼科学教室
3天理よろづ相談所病院眼科
4松江赤十字病院眼科
5彦根市民病院眼科
6県立尼崎病院眼科
ページ範囲:P.1725 - P.1729
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増殖糖尿病網膜症に対して硝子体手術が行われた142例170眼の長期視力経過を検索した。今回の症例群は,1991年に筆者らが報告した343眼の一部であり,手術時に虹彩隅角に新生血管がないこと,術後6か月時の視力が光覚弁以上であること,1年以上経過が追えたことを条件とした。術後の追跡期間は1年から12.3年,平均6.2±3年,年齢は24歳から79歳,平均57歳である。術後6か月での視力と最終視力には有意の相関があった(r=0.572)。手術時に黄斑剥離があるとき,49歳以下の症例では最終視力には差がなく,50歳以上では最終視力が不良であった。最終視力が0.01未満の症例が18眼にあった。その原因は8眼が術後の血管新生緑内障であり,他は眼球癆と網膜剥離であった。以上の結果から,増殖糖尿病網膜症への硝子体手術は黄斑剥離の起こらないうちに行い,術後の血管新生緑内障の発生に注意して経過観察を行うことが重要と考える。