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文献概要
連載 眼の組織・病理アトラス・169
油症のマイボーム腺嚢胞
著者: 向野利彦1 猪俣孟1
所属機関: 1九州大学医学部眼科学教室
ページ範囲:P.1764 - P.1765
文献購入ページに移動 1968年6月頃から西日本一帯で米ぬか油を摂取した人達に多彩な全身および皮膚粘膜症状を示す食中毒事件が発生した。これは米ぬか油の製造工程で混入した有機化合物による中毒症であることがわかり,油症Yushoと呼ばれた。当時,油症患者は早期から眼脂が異常に増加し,眼瞼の腫脹,視力減退,眼痛などを訴えた。全身の皮膚には,座瘡様皮疹,面疱,色素沈着が出現した(図1)。また,全身の倦怠感,食欲減退,頭痛,嘔吐などの症状を生じた。他覚的には,眼瞼浮腫,眼瞼縁の凹凸不整,瞼結膜の充血と混濁(瞼板腺性結膜炎),結膜の褐色色素沈着などがみられた。マイボーム腺は嚢胞状に腫大し,黄白色梗塞を伴っていた(図2)。その部を軽度に圧迫すると,チーズ様の分泌物が排出した。
組織病理学的には,油症患者の眼瞼はマイボーム腺導管が著明に拡張し,管腔内容物(角化物)が充満している。腺房は萎縮して腺房細胞はほとんど消失し,扁平上皮化生が起こっている。管腔内容物の貯留によって,管腔も腺房も拡張し,組織切片上ではあたかも腺房が導管の憩室腔のようにみえる。腺房細胞は萎縮して,憩室腔の外壁側にわずかに痕跡的に存在している(図3,4)。
組織病理学的には,油症患者の眼瞼はマイボーム腺導管が著明に拡張し,管腔内容物(角化物)が充満している。腺房は萎縮して腺房細胞はほとんど消失し,扁平上皮化生が起こっている。管腔内容物の貯留によって,管腔も腺房も拡張し,組織切片上ではあたかも腺房が導管の憩室腔のようにみえる。腺房細胞は萎縮して,憩室腔の外壁側にわずかに痕跡的に存在している(図3,4)。
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