今月の表紙
未熟児網膜症の眼底所見
著者:
鶴岡祥彦1
根木昭2
所属機関:
1鶴岡眼科医院
2熊本大学眼科
ページ範囲:P.291 - P.292
文献購入ページに移動
未熟児網膜症による失明を防止する方法として光凝固治療が著効することを永田らが1968年に報告して以来,筆者らは天理よろづ相談所病院で数多くの未熟児網膜症を経過観察し,治療を必要とする重症例を選別して光凝固治療を行ってきた。当時の1例1例は,光凝固を実施する適切な時期を知り,どこをどの程度光凝固することが必要かについて経験を積むために大変貴重であった。Insidious typeとrush typeと混合型を経験し,光凝固実施時期と実施方法は症例ごとに工夫をしていた。また,臨床的情報を伝達する手段に写真撮影は重要と考え,未熟児網膜症の眼底所見を撮影するために筆者らは手持ち眼底カメラによる倒像眼底写真撮影法を開発した1)。未熟児網膜症の活動期病変の眼底写真は昭和47年(1972年)に臨床眼科に出した筆者らの論文2)が世界で最初のものであった。もちろん,倒像眼底写真撮影法で撮影されたものであった。そして筆者らが撮影した未熟児網膜症の写真はその後,未熟児網膜症活動期病変の厚生省研究班分類の基礎を作るのに貢献した。今月の表紙写真は倒像眼底写真撮影法で撮影したものである。当時この眼底所見は,なるべくその日のうちに光凝固が必要と判断され,良い視力を得るためにはこれより進行してからの光凝固は遅いと判断される時期の眼底写真であった。当時の光凝固治療の実際については「眼科マイクロサージェリー第4版」(1999年7月24日発行)に記載されている。30年を経過して,光凝固装置の光源はキセノンからレーザーに替わったが,筆者らの判断は適切であったと考えている。