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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科54巻8号

2000年08月発行

雑誌目次

今月の表紙

後部強膜炎による片眼性汎ぶどう膜炎

著者: 大野重昭

ページ範囲:P.1410 - P.1410

 症例は23歳の女性で,左眼の充血,眼痛,視力低下を主訴に受診した。初診時,右眼は異常なく,左眼に結膜充血がみられた。矯正視力は右1.5,左0.1であった。左眼には軽度の前房炎症と硝子体混濁がみられ,眼底には後極部を中心に一面の漿液性網膜剥離,網膜下の炎症,混濁病変がみられた。左眼の臨床像は原田病に類似し,蛍光眼底造影検査所見も原田病に酷似していたが,右眼には異常所見はみられなかった。CT検査では左眼後部強膜の肥厚がみられ,脳脊髄液検査や聴力検査は陰性であった。
 本邦では原田病の頻度は確かに高いが,確実な片眼性の原田病の存在は明らかではない。原田病類似の片眼性症例では,まず後部強膜炎を疑うことが大切である。

連載 今月の話題

角結膜感染症の診断—塗抹鏡検の重要性

著者: 大橋秀行

ページ範囲:P.1413 - P.1417

 角結膜感染症の診断において塗抹検査は欠かすことができない検査であるが,日常診療では手間がかかるため行われていないことが多い。そこで,塗抹検査の重要性について再確認する。

眼の組織・病理アトラス・166

網膜剥離と視細胞のアポトーシス

著者: 猪俣孟 ,   向野利彦 ,   田原昭彦 ,   高比良健市

ページ範囲:P.1418 - P.1419

 感覚網膜が網膜色素上皮細胞層から長時間剥離していると,視細胞は変性または消失して(図1),重篤な視機能障害を残す。視細胞の内節が残っていれば,網膜が復位した場合に,外節の再生は多少とも可能である。しかし,すでに内節が変性したものでは,視細胞そのものが死滅消失する(図2)。視細胞消失の原因は,感覚網膜が網膜色素上皮層と離れることによる網膜外層の虚血もあるが,その他にアポトーシスapoptosisが重要な一因である。剥離網膜における視細胞のアポトーシスは,TUNEL(terminal deoxynucleotidyl transferase-mediated biotinylated deoxyuridine triphosphate nickend labeling)法を用いて,ヒトおよび実験動物で証明されている。ヒトの外傷性網膜剥離では,外傷後8時間ですでに視細胞のアポトーシスがみられるという。
 近年,アポトーシス誘発因子apoptosis-inducingfactor(AIF)がミトコンドリア内膜と外膜の膜間腔intermembrane spaceに存在することが明らかにされている。AIFの分子量は57kDで,AIFの塩基配列と緑膿菌の酸化還元酵素oxidoreductaseの塩基配列が高い相同性を有している。もともと細胞内のミトコンドリアは,約20億年前にバクテリアが真核細胞に侵入したものであり,私たちの身体は真核細胞とバクテリアが共生した細胞で構成されている。

眼の遺伝病・12

ペリフェリン/RDS遺伝子異常による網膜色素変性(7)—なぜ臨床型に異質性がみられるか

著者: 玉井信 ,   和田裕子

ページ範囲:P.1420 - P.1424

ペリフェリン/RDS遺伝子異常と臨床型の異質性
 今回までの5回で,筆者らが検索し得た網膜変性の原因遺伝子ペリフェリン/RDSの遺伝子異常と各症例の臨床像を,可能な限り詳細に記載してきた。今まで多くの遺伝性疾患は「one gene→onedisease」と考えられてきたが,すでに読者がお気付きのように,この視細胞特異糖蛋白であるペリフェリン/RDSには,それが当てはまらない。すなわちペリフェリン/RDSという糖蛋白のアミノ酸をコードしている遺伝子には多くの変異(geno-type)によって引き起こされる網膜変性の臨床型(phenotype)は多様で,「one gene→many diseases」であることは明らかである。
 現時点で報告されている変異は,インターネットで公開されているデータベースから検索すると表1のように,コドンは36か所,そのヌクレオチドの変異は43種のミスセンス/ナンセンス突然変異があり,それぞれ異なったアミノ酸に置き換わるか,またはストップコドンとして働いている。それによって引き起こされる臨床型は表1に示されるように黄斑ジストロフィ,網膜色素変性(いわゆる桿体—錐体ジストロフィ),パターンジストロフィ,錐体—桿体ジストロフィ,中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィ,蝶型ジストロフィ,中心窩ジストロフィ,錐体ジストロフィ,白点状網膜炎などさまざまである。先に述べたように,この糖蛋白は346個のアミノ酸からなる錐体,桿体双方の視細胞外節円盤の縁(rim)に存在する構造蛋白で,円盤膜を4回貫通し,アミノ基とカルボキシル基がともに円板膜の外,すなわち視細胞の細胞質内に,また2つのループは円板内(細胞質外)に存在する1)。この糖蛋白は外節円盤の縁に存在することからその形態を維持することに重要な役割を果たしていると考えられている。最近ペリフェリン/RDS遺伝子の全長(12.5kb)に関する研究が発表された2)。それによるとこの遺伝子は,ウシ,人,マウス,ラット,ネコ,アフリカツメカエルなどで高度に相同性が維持されているという。例えばマウスとウシでは92.5%,マウスと人では91.3%,マウスとラットでは97.1%がアミノ酸配列が同じである。それはおそらく2種類の視細胞,すなわち錐体と桿体がこれらの種で共通に進化し,外節円盤の形態を維持してきたこと,さらにそれと変位による臨床型の多様性とは無関係ではない。この糖蛋白質の分子遺伝学的に確かめられた変異部位とその臨床型を色分けして書き込んでみると図1のようになる。そこでこのペリフェリン/RDSに関係したシリーズの最後にもう一度その多様性を確認し,なぜそのようなことが生じるのかを考えてみたい。

眼科手術のテクニック・128

内境界膜剥離のコツ

著者: 小椋祐一郎

ページ範囲:P.1426 - P.1427

 黄斑円孔の手術の際に円孔周囲の網膜内境界膜を剥離・除去すると,円孔閉鎖率が改善することが報告されて,専用器具の開発とともにその手技が普及しつつある。しかし,慣れないうちは,1〜2ミクロンの薄さしかない内境界膜をきれいに剥離することは,なかなか難しい。以下に,内境界膜剥離のコツを解説する。

他科との連携

虎の穴の3日間

著者: 笹本洋一

ページ範囲:P.1482 - P.1483

 医局長が私のところに来た。編集室から「他科との連携」という原稿の依頼が来たが,忙しいので代わりに書いてくれということである。簡単に引き受けて,依頼書を見てみると,締め切りはとっくに過ぎていた。他科との連携といっても,眼科は体のごく一部しか診察していないわけだから,眼以外のことは,ほとんど他科にお任せ状態である。他科との連携どころか,他科にご挨拶まわりしなくてはいけないほどである。あれこれ考えても,何を書くべきか名案が浮かばない。そこで,ちょっと視点を変えて,私が参加した『地獄の特訓,虎の穴3日間コース』について述べることにする。
 正式名称は,「北海道大学医学部学生教育ワークショップ」というもので,名称からは,われわれ臨床医にとってはさっぱり見当がっかないしろものである。私の医局では,過去に2人の教官が参加していて,私が第3番目であった。教授から,私のところへ参加案内が回ってきた。過去の参加者によると「不幸の手紙が来ましたね」と言う。とにかく,外来診療も手術も離れて,3日間は缶詰めになるというので,病棟医長の仕事を放り出して参加することにした。会場が札幌の奥座敷,定山溪温泉というので,温泉に入ってのんびりできるかなと,少しは期待感も持っていた。

臨床報告

角膜内皮細胞異常を伴った瞳孔膜遺残の1例

著者: 久保勝文 ,   中沢満

ページ範囲:P.1441 - P.1445

 71歳女性が視力低下で受診した。両眼に老人性白内障と瞳孔膜遺残があった。角膜内皮細胞数は,1mm2あたり右1,251,左895であった。超音波乳化吸引術と眼内レンズ挿入術を行い,経過は良好であった。手術時に採取した瞳孔膜にはメラニン細胞が多数あり,壁が肥厚した血管を含んでいた。瞳孔膜遺残と角膜内皮は,発生的に神経堤由来であるので,瞳孔膜遺残があるときには,内眼手術を行う際に角膜内皮にも注意する必要がある。

上斜筋麻痺の回旋偏位に対する感覚適応

著者: 堀川晶代 ,   平井美恵 ,   河野玲華 ,   長谷部聡 ,   大月洋

ページ範囲:P.1447 - P.1450

 先天性上斜筋麻痺35例と後天性上斜筋麻痺33例を対象に,自覚的と他覚的回旋偏位の関係を検討した。自覚的偏位はHarmsの正切に回旋計測器を組み合わせた方法で,他覚的偏位は走査型レーザー検眼鏡で得られた画像から,乳頭図心と中心窩を結ぶ線と水平線のなす角度を計測して決定した。回旋に対する感覚適応は,他覚的偏位から自覚的偏位を減じたものとした。先天性,後天性とも他覚的と自覚的偏位の間に相関が認められた。他覚的偏位と感覚適応の間にも相関がみられ,後天性よりも先天性のほうが強く認められた。回旋に対する感覚適応は先天性により強く,しかも感覚適応の進行する傾向は他覚的偏位の大小や年齢に影響されないと考えられる。

Stargardt病患者の黄斑部機能評価

著者: 篠田啓 ,   大出尚郎 ,   石田晋 ,   川島晋一 ,   角田和繁 ,   桂弘

ページ範囲:P.1453 - P.1458

 65歳の女性が飛蚊症で受診した。矯正視力は両眼とも1.0で,昼盲・夜盲はなく,特記すべき家族歴はなかった。両眼とも,特徴的な眼底所見と蛍光眼底造影所見を呈し,Stargardt病・黄色斑眼底IV群と診断した。以後8年間,黄色斑の数と範囲はやや増加し,視力は不変である。ゴールドマン視野検査では異常がなく,走査レーザー検眼鏡(SLO)での微小視野計測で,固視点周囲に比較暗点が検出された。EOGでは,Arden比がやや低下していた。Full fieldの網膜電図はほぼ正常であった。多局所網膜電図(mERG)では,中心から10度付近に輪状の応答密度の低下があった。これらの検査法が本症での視機能評価に有用であることを示す症例である。

Axenfeld-Rieger症候群の1症例

著者: 渡邊一郎 ,   赤塚俊文 ,   宮崎茂雄 ,   田淵昭雄

ページ範囲:P.1459 - P.1463

 15歳男子で,両眼に角膜拡大,後部胎生環,iris strandが認められ,緑内障を合併したAxenfeld-Rieger症候群(Axenfeld-Rieger syndrome:ARS)の1症例を経験した。一般的にARSによる緑内障は難治性であり,複数回の手術を要するとされている。本症例では術前から緑内障性視野障害が進行していたため,両眼の線維柱帯切開術を施行し,術後は点眼薬2種にて眼圧コントロール可能となった。ARSが疑わしい症例では,眼科的に後部胎生環やiris strandなどを検索し,定期的に眼圧を測定することが必要であり,高眼圧がみられた場合は,線維柱帯切開術を含めた早期治療を行うべきであると考えられた。

白内障,緑内障合併手術時における内視鏡直視下の内方線維柱帯切開術

著者: 長野斗志克 ,   高橋春男 ,   小出良平

ページ範囲:P.1465 - P.1469

 超音波水晶体乳化吸引術で残留皮質を吸引したのち,内視鏡を前房に挿入して観察すると,シュレム管に血液が充満する発赤現象が検索した20眼すべてで起こっていた。この現象を利用して,白内障と緑内障の同時手術時に,内視鏡による直視下で内方線維柱帯切開術trabeculotomy ab internoを2名3眼に行った。術後,一過性に眼圧が上昇したのち,全例で眼圧のコントロールが得られた。この方法は,簡便で有効な手技である。

異なる経過を示した成人樹氷状網膜血管炎の3例

著者: 内藤章 ,   阿部俊明 ,   吉田まどか ,   野呂充 ,   玉井信

ページ範囲:P.1471 - P.1476

 47歳女性,35歳女性。30歳男性に樹氷状網膜血管炎が発症した。症例1は両眼性で,髄膜刺激症状を伴う虹彩毛様体炎と硝子体混濁があり,網膜全体に樹氷状網膜血管炎があった。視力は左右とも0.04に低下した。ステロイドパルス療法で経過が好転したが,眼圧が上昇し,手術加療が必要となつた。症例2は片眼性で,軽度の霧視があり,視力は良好であった。眼底後極部に樹氷状網膜血管炎があつた。無治療で所見が改善した。症例3は両眼に樹氷状網膜血管炎と黄斑浮腫ないし滲出斑があり,ステロイド薬内服で軽快したが,漸減中に再発があった。本症例群は,樹氷状網膜血管炎が成人にも発症し得ることと,臨床症状と原因が多様であることを示している。

内頸動脈閉塞症の脈絡膜循環

著者: 宇都木憲子 ,   高橋京一 ,   山口由美子 ,   岸章治

ページ範囲:P.1485 - P.1490

 内頸動脈閉塞症の8例8眼を,インドシアニングリーン(ICG)蛍光眼底造影で検索した。腕-脈絡膜循環時間は15〜29秒,脈絡膜内循環時間は12〜50秒以上で,両時間とも全例で遅延していた。周辺部造影を行った3眼では,短後毛様動脈の周辺部分水嶺への到達が遅れ,1眼では無造影領域が造影後期まで持続し,周辺部脈絡膜の血流途絶と解釈された。脈絡毛細管板の虫食い状の造影欠損が7眼に,造影開始から10分以上の後期に脈絡膜静脈の色素染が2眼にあった。内頸動脈閉塞症では,脈絡膜に循環遅延と血管閉塞などが好発することを示す所見である。

糖尿病網膜症に対する硝子体手術後の視力低下要因

著者: 坂本泰二 ,   藤澤公彦 ,   川野庸一 ,   岡田豊和 ,   西岡木綿子 ,   石橋達朗 ,   猪俣孟 ,   絹川直子

ページ範囲:P.1491 - P.1498

 過去41か月間に硝子体手術を行った増殖糖尿病網膜症150眼を検索した。術後の観察期間は平均20か月であった。術後視力は,51眼(34%)で改善維持され,70眼(47%)でいったん向上した後に低下し,17眼(11%)で術前と変わらず,13眼(8%)で低下した。術後視力が良好な症例は平均年齢が低く,発症年齢が低かった。視力が改善維持された症例は術後のHbA1c値が低かった。視力が不変または低下した症例では.虹彩ルベオーシスと黄斑剥離の頻度が高かった。視力がいったん向上した後に低下した症例は,視力不変群よりも血中ヘマトクリットとヘモグロビン値が高く,トリグリセリド値が低かった。視力が不変または低下した症例では,その他の群よりも虹彩ルベオーシス,硝子体出血,綱膜剥離などの合併症が多かった。視力改善群といったん向上した後に低下した群とでは,術前の乳頭または後極部の線維増殖(p=0.001)と術後の黄斑変性(p=0.02)に有意差があった。

超音波乳化吸引,眼内レンズ挿入術のベーチェット病の眼発作に影響する因子

著者: 高橋真紀子 ,   松尾俊彦 ,   山岡昭宏 ,   桑田秀範 ,   大月洋 ,   井上康 ,   江木邦晃

ページ範囲:P.1499 - P.1502

 ベーチェット病の併発白内障に対して,超音波乳化吸引と眼内レンズ挿入術を施行した12例16眼について検討した。最終発作から手術までの期間が6か月未満の症例や,罹病期間が長い症例で,術後1年間に眼発作を生じる割合が有意に高くなった。全身症状や内服薬などは,術後の眼発作との関連はなかった。手術を契機とした眼発作頻度の増加はみられなかった。術後は全例で視力改善が得られ,重篤な術中・術後合併症は認められなかった。ベーチェット病患者に対しても比較的安全な白内障手術が可能であり,手術時期は最終発作から6か月以上の期間をおくのが望ましいと考えられた。

視神経網膜炎を伴った猫ひっかき病の1例

著者: 石田貴美子 ,   猪俣孟 ,   藤原恵理子 ,   山名敏子

ページ範囲:P.1503 - P.1507

 猫4匹を飼育している17歳女性に発熱と頭痛が突発した。第8病日に左側頸部リンパ節が有痛性に腫脹した。第26病日に左眼に霧視が生じ,第39病日に当科を受診した。矯正視力は右1.2,左0.3であった。左眼に盲点の拡大と視野狭窄があった。左眼底に視神経乳頭の発赤腫脹,漿液性網膜剥離,白色滲出斑の散在があった。Bartonella henselaeの血清抗体値の上昇があり,猫ひっかき病と診断した。プレドニゾロンの全身投与を行い,眼底所見は軽快し,第63病日には左眼視力は1.0に改善した。網脈絡膜瘢痕と視野狭窄が残った。猫ひっかき病による網脈絡膜炎の予後は良好とされているが,視野狭窄が持続する事例があることを本症例は示している。

カラー臨床報告

萎縮性黄斑疾患の網膜断層像

著者: 加藤千晶 ,   森敏郎 ,   戸來透 ,   劉玉蓮 ,   谷藤典子

ページ範囲:P.1429 - P.1433

 Alport症候群に合併した黄斑変性1眼と錐体(—杆体)ジストロフィ3眼の黄斑部の断層像をOCTを用いて観察した。Alport症候群では感覚網膜の厚さの減少と網膜色素上皮,脈絡毛細管板の高反射層の菲薄化が観察された。錐体(—杵体)ジストロフィでは,全例で視細胞層を示す低反射層が消失していた。疾患眼の中心窩網膜厚の平均は56.0±21.4μmであり,正常対照眼(136.3±12.3μm)に比べ有意に減少していた(p<0.01)。また,疾患眼の黄斑部陥凹の平均直径は1,452.8±149.3μmであり,正常眼(1,258.5±47.1μm)に比べ有意に増大していた(p<0.05)。OCTは萎縮性の黄斑病変の観察に有用な検査と思われた。

ラタノプロスト点眼による眼瞼の色調変化と多毛

著者: 山田酉之

ページ範囲:P.1437 - P.1440

 ラタノプロスト点眼薬を1日1回使用した緑内障患者317例のうち,使用開始49日から238日の間に,257例(81.1%)の眼瞼に異常が生じた。異常の内容は,眼瞼の色調変化128例(40.4%)と,眼瞼の多毛244例(77.O%)である。男女間に差はなく,それまでのウノプロストン点眼液の使用の有無には無関係であった。最終判定までの平均使用量は,1眼あたり2.5mlの点眼瓶2.9本であったが,多数例で1眼1本を点眼しただけで眼瞼異常が起こった。点眼を中止するとゆっくり軽快した。以上の症例は,点眼後の拭き取りを特に指示しなかった発売当初の群であり,現在は拭き取りを徹底させて観察している。

やさしい目で きびしい目で・8

『若い時には1冊でよいから本を隅からすみまで読もう』

著者: 湯沢美都子

ページ範囲:P.1477 - P.1477

 私が黄斑疾患を学びたいと思ったのは,20歳代後半に1冊の本を隅からすみまで読んで,面白いと感じたからである。本の名前は『Stereoscopic Atlas of the Macular Diseases』,Gass JDMによって書かれた,世界の名著である。当時私はオランダのナイメーヘン大学のドイトマン教授の所へ行くことが決まっていて,そこで黄斑疾患について学ぶことになっていたが,黄斑ジストロフィ以外の黄斑疾患について何も知らなかった。これでは恥をかくと思い,しぶしぶ2か月かけてその本を隅からすみまで読んだ。読み終わると,多彩に見える黄斑疾患の類似点と相違点が漠然とではあるが理解でき,フルオレセイン蛍光造影の読みと当時の黄斑疾患の治療方針の法則が,しっかり頭にこびりついていた。
 一般の眼科医としての知識は,朝倉書店から出ていた三島済一先生と植村恭夫先生が編集された『最新眼科学』を読んだ。これは隅からすみまでというわけにはいかなかったが,名著であり,私の一般眼科の基礎知識はこの本から得られたと思っている。

第53回日本臨床眼科学会専門別研究会1999.10.10東京

第17回眼細胞研究会(眼科分子生物学)

著者: 高橋政代

ページ範囲:P.1508 - P.1509

 眼細胞研究会はこれまでも毎年,日本眼科学会の際に行われてきた。昨年まではプログラムには組み込まれないものであったが,今回は専門別研究会として開催された。演者は,九州大学の村田敏規先生,名古屋大学の鈴木聡先生,それに日眼の招待講演を行ったUC DavisのDr.Hjelmelandであった。
 眼細胞研究会は毎回,眼科に関連した最先端の研究の話を一人の講師につき1時間近く,じっくりと詳しく聞くことができることが魅力である。最終日であり,直接診療に役立つものではない話題ではあったが,多くの人が集まった。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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