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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科55巻11号

2001年10月発行

雑誌目次

連載 今月の話題

原田病の動物モデル

著者: 山木邦比古

ページ範囲:P.1705 - P.1709

 原田病は日本人に多い疾患である。しかし,その病因の詳細な解析は十分に進展しているとはいいがたい。原田病の特徴である,免疫遺伝学背景の均一性が高いこと,抗原がメラノサイトに存在することが明らかなことなどから,原田病の動物モデルの作成は病因解析の大きな一歩となると期待されいる。モデル作成がどう進んでいるか概説する。

眼の遺伝病・26

XLRS1遺伝子異常と網膜分離症(5)

著者: 和田裕子 ,   玉井信

ページ範囲:P.1710 - P.1712

 今回は,XLRS1遺伝子,Arg102Trp変異とGlu72Lys変異を伴った2症例を報告する。2症例とも後極部の変化が主体であり,周辺部に網膜分離は伴っていなかった.今回報告のArg102Trp変異およびGlu72Lys変異は,日本のみならず諸外国でも比較的若年性網膜分離症患者に多く認められる変異である。

眼科手術のテクニック・137

Can opener techniqueの正しい術式と応用

著者: 市岡博

ページ範囲:P.1714 - P.1716

はじめに
 近年の超音波白内障手術はCCC (continuouscurvilinear capsulorrhexis)に依存する割合が高く,合併症の多くはCCCを正しく施行できなかったことに起因する。眼内レンズ固定の確実性や嚢のintegrityを論議する以前に安全確実に手術を遂行することが重要である。したがって白内障手術を施行するならば,次善の策として他の切嚢法も習得しておく必要がある。
 例えば過熟白内障の症例にインドシアニングリーンを用いてCCCを施行する術式はよい方法であるが,確実なcan opener technique (以下,CO)を習得しておれば不要な薬剤を眼内に注入する必要はない。また,CCC施行中のトラブルに対するリカバリーとしてもCOは有効な手段である。

あのころ あのとき・10

あの論文を書いたころ

著者: 樋渡正五

ページ範囲:P.1718 - P.1720

 私は敗戦を海軍兵学校舞鶴分校(旧海軍機関学校)で迎えた。真っ先に兵学校の生徒を家に帰すことがわれわれの第一の任務だった。次いで兵,下士官,士官にも帰宅命令がきたし,私にも9月に入ってから帰宅命令がきたが,9月22日に復員輸送艦占守(しむしゅ)乗組を命ぜられ,23日に占守に着任した。私が永久軍医であったからである。舞鶴から艦で佐世保に赴き,ここで米国の油槽船から重油の供給を受け,グアム島に向けて出航した。最初はグアム島からヤップ島に赴く予定だったが,グアム島でトラック島行きに変更になった。1日半の航海の後トラック島に着いた。ここは日本の艦隊や航空隊の基地としてがんばったところである。ここで陸海軍軍人軍属400人を乗せ,11月下旬に浦賀港に帰り着き,艦は横浜に回航してドックに入り,私は復員した。
 12月下旬,皆より遅れて復員し,無給副手として医局に帰ったが,私の家は強制疎開の最中に空襲で焼け,妻の曙町の家も4月11日の空襲で焼けたので,妻の先祖代々の岐阜の田舎の家に仮寓させてもらっていた。東大の医局に帰るためには東京に家を捜さねばならなかったので,私は立錐の余地もなく満員で窓ガラスの全くない列車に無理矢理乗り込んで東京まで何遍も往復して家捜しをした。東京の中心部は大部分灰燼に帰していたため,東京大森の辺鄙な場所に焼け残った母方の親戚に無理に頼み込んで泊めてもらい,郊外のあちこちを家捜しをした。旧円は封鎖されたため,やむなく仲介してくれた人に3割の手数料を払って,駅から30分近くもかかる荻窪の畑の中にある小さな一軒家をやっと買い求めた。

他科との連携

他科との連携における問題点,その長所短所

著者: 郡司久人

ページ範囲:P.1761 - P.1763

 眼科は独立した診療科であると同時に,未熟児から高齢者に至るまで老若男女すべての世代の患者を対象としています。また同時に,眼には全身の多極多様な疾病が一部顔を出すことも少なくありません。したがって私たち眼科医が他科と連携し協力して一人の患者を診ていくことは,そう稀なことではありません。そういった日常診療のなかには連携にまつわるさまざまな問題が,それこそよきにつけ悪しきにつけ発生します。今回はこういった問題を自ら経験したケースを例に挙げて紹介したいと思います。
 近年の眼科は白内障をはじめ外科手技の飛躍的向上により,主流は外科系に傾いてきてはいます。しかしながらどんなに手術手技が進歩しても内科的に治療しなければならない疾患も相変わらず存在していますし,むしろこちらのほうが難病と考えられるものが多く,興味深い症例であることが多いことも事実です。そのような症例のうち,他科との連携がスムーズにいくものは慢性疾患による眼症状を持つものだろうと思います。糖尿病や,高血圧,動脈硬化をはじめ生活習慣病に起因するものは,その治療はその原因である内科疾患の治療を同時に行わなければ対処療法も全くの一時しのぎにしかなりません。当然原因疾患の治療を他科に依頼し,眼科的治療を同時進行で行うことで治療を進めることになります。

今月の表紙

Candida tropicalisによる真菌性眼内炎

著者: 水流忠彦

ページ範囲:P.1717 - P.1717

 34歳女性が右眼の視力低下を主訴に初診となった。初診時の矯正視力は0.6で,右眼黄斑部に黄白色の滲出斑と小出血を認めた(図1)。特記すべき全身症状はなく,全身ならびに眼科的疾患の既往もなかった。約1週後には黄斑部の滲出性病変が拡大するとともに,硝子体混濁が出現し視力は(0.05)となった(図2)。硝子体切除を行い,切除硝子体からCandida tropicalisが分離された。
 内因性真菌性眼内炎は,中心静脈高カロリー栄養輸液や免疫能低下症例などに発症することが多いが,本例のように特記すべき既往のない症例に生じることも稀にあるので,注意が必要である。

眼科学の歴史 寄稿

検眼鏡の発明

著者: 清水弘一

ページ範囲:P.1721 - P.1726

 直像検眼鏡が1851年にヘルムホルツにより発明された。これにより,生体眼での眼底観察が可能になり,以後10年間にさまざまな眼底疾患が発見されることになる。この検眼鏡についての原著の記述を紹介するとともに,この発明で眼科学が医学の専門分野として独立する契機になったことを記述する。

臨床報告

ぶどう膜炎に合併した眼内新生血管

著者: 河原澄枝 ,   宮本裕子 ,   森村佳弘 ,   岡田アナベルあやめ ,   樋田哲夫

ページ範囲:P.1735 - P.1741

 眼内新生血管を合併したぶどう膜炎の3症例を経験した。それぞれ原田病,ベーチェット病,結核性ぶどう膜炎である。原田病では,後極部の漿液性網膜剥離と脈絡膜剥離,乳頭浮腫,乳頭上新生血管があり,大量ステロイド療法で新生血管は徐々に縮小した。ベーチェット病では,網膜と乳頭上に新生血管があり,ステロイド薬の局所投与と免疫抑制薬で消炎し,新生血管は退縮した。結核性ぶどう膜炎では,抗結核療法とステロイド薬内服で眼内炎が沈静化し,新生血管は縮小傾向を示した。原田病と結核性ぶどう膜炎の2例には経過中に網膜の無血管領域にレーザー光凝固を行ったが,これによる炎症再燃はなかった。ぶどう膜炎に併発した眼内新生血管が,原疾患の消炎で退縮することを示した。

中心性漿液性脈絡網膜症を合併した再発性多発軟骨炎の1例

著者: 後藤彰子 ,   後藤寿裕 ,   田澤豊 ,   上村明 ,   樋口浩文 ,   佐藤孝

ページ範囲:P.1745 - P.1749

 40歳男性が右眼の球結膜充血で受診した。4か月前から両側の耳介腫脹があった。矯正視力は両眼とも1.2であった。右眼上強膜炎と診断した。眼底に異常はなかった。耳介軟骨の生検で再発性多発軟胃炎と診断された。初診から50日後に膝関節炎が発症した。上強膜炎は副腎皮質ステロイド薬の局所投与には反応せず,全身投与で上強膜炎と耳介の腫脹は改善した。ステロイド薬の全身投与開始から3か月後に,左眼視力が0.3に低下し,中心性漿液性脈絡網膜症が発症した。網膜光凝固で矯正視力は1.0に改善した。再山発性多発軟骨炎にはステロイド薬の全身投与が第一選択であるが,これによって中心性漿液性脈絡網膜症が発症する可能性に留意すべきである。

パーソナル・コンピュータによる眼窩腫瘍の三次元構築

著者: 高村浩 ,   土谷大仁朗 ,   山下英俊

ページ範囲:P.1750 - P.1755

 眼窩腫瘍摘出術を行う際に重要なことは,腫瘍へ到達するための適切なアプローチ法を選択すること,術中に腫瘍の位置を見失わないこと,および腫瘍周囲の正常組織を可能な限り損傷しないことである。そのために二次元で表現された眼窩腫瘍5症例のMRI画像に対してパーソナル・コンピュータによる三次元構築を試みた。完成した三次元画像はさまざまな方向からの俯瞰が可能で,腫瘍と周囲組織との相互の位置関係を立体的に把握でき,さらに任意の眼窩骨を外すシミュレーションも可能であったので,腫瘍摘出のアプローチ法の決定や術者の術前のイメージ作成に有用であった。ヘリカルCTやAdvantage Windowsなどのスーパー・コンピュータを用いて作成される三次元画像に比較すると画質や精度が低いことは否めないが,簡便な手術支援システムになりうると思われた。また,医学教育上の有用性も考えられた。

Guytonの小切開斜視手術と手術成績

著者: 長谷部聡 ,   野中文貴 ,   山根貴司 ,   藤原裕丈 ,   大月洋

ページ範囲:P.1767 - P.1770

 小切開斜視手術の意義を確立するため,Guytonが提唱する円蓋部結膜切開を用い,各種の斜視症例23名について(1〜18歳,遠見45△内斜〜45△外斜),筋クランプによる前後転術を施行した。その結果,整容面そして術後の快適性において,従来の輪部結膜切開による方法と比べ,小切開斜視手術は優れた効果を示した。一方手術成績については,輪部切開法による成績と差はなかった。Guytonの手順に従って手術操作を行えば,小切開斜視手術は安全かつ容易な術式であり,今後斜視手術に積極的に応用すべきアプローチであると思われた。

ぶどう膜炎として治療していた眼悪性リンパ腫の1例

著者: 阿部恵子 ,   林振民 ,   平岡利彦 ,   筑田眞 ,   小島孚允

ページ範囲:P.1771 - P.1775

 52歳の女性が3週前からの左眼の視力低下で受診した。2年6か月前に右眼硝子体出血のため硝子体手術を受けた既往がある。家族歴として姉に肺サルコイドーシスがあった。初診時の矯正視力は両眼とも1.2であった。左眼には前房に細胞浮遊,雪玉状の硝子体混濁,静脈白鞘,黄白色の結節と滲出斑があった。右眼には網膜光凝固瘢痕があった。血液の諸検査と肺生検などでサルコイドーシスは否定された。ステロイド薬の点眼と全身投与で硝子体混濁が軽快したが,初診から5か月後に左眼視力が0.1に低下した。強い硝子体混濁があり,眼底に黄白色滲出斑が広範囲にあった。蛍光眼底造影で脈絡膜腫瘍が疑われた。硝子体手術で得られた硝子体細胞診でpapanicolaou class Ⅲbであり,眼悪性リンパ腫と診断された。放射線療法で腫瘍は瘢痕化し,0.6の最終視力が得られた。眼悪性リンパ腫がサルコイドーシス類似の所見を呈した仮面症候群の例である。

滲出型加齢黄斑変性に対する脈絡膜新生血管摘出術前後の黄斑機能の変化

著者: 宮下真紀 ,   伊藤洋子 ,   栃谷百合子 ,   米谷新

ページ範囲:P.1779 - P.1783

 滲出型加齢黄斑変性(ARMD)の脈絡膜新生血管(CNV)摘出術後の黄斑部機能について,固視点と網膜感度の検討をした。対象は7例7眼で,術前後の視力のほか固視点,黄斑部の網膜感度は走査型レーザー検眼鏡microperimetryで測定した。固視点は視力(0.1)で検出可能であった。術前後では,移動したもの5眼、不変のもの1眼,術後に出現したもの1眼であった。移動術は補後に瘢痕巣の拡大が顕著で,固視点はその上方に移動した。網膜感度は術後,網膜浮腫,網膜下出血の改善に伴い上昇した。滲出型ARMDにおいてCNV摘出術後,網膜感度が最も保存されるのは黄斑部上方の領域であることが明らかとなった。

黄斑部硬性白斑に対し黄斑下手術を施行した糖尿病を伴わない黄斑症の2例

著者: 曽我部真紀 ,   林正和 ,   賀島誠 ,   内藤毅 ,   塩田洋

ページ範囲:P.1785 - P.1788

 黄斑下の硬性白斑摘出術を2例2眼に行った。1例は網膜細動脈瘤,他の1例は網膜静脈分枝閉塞症であり,レーザー網膜光凝固後に黄斑部の硬性白斑沈着が増悪していた。2例とも糖尿病はなかった。矯正視力はそれぞれ0.1, 0.02であった。黄斑下硬性白斑摘出術後に矯正視力はそれぞれ0.5,0.05に改善した。非糖尿病者の黄斑下硬性白斑沈着に対して摘出術が奏効した症例である。

眼球摘出後15年目に全身転移が見つかった脈絡膜悪性黒色腫

著者: 椎名慶子 ,   田中稔 ,   清川正敏 ,   長谷川弘 ,   住幸治 ,   石和久

ページ範囲:P.1789 - P.1793

 62歳女性が右眼視野狭窄で受診した。右眼は30か月前に他医で眼底上方の網膜変性と診断されていた。初診時の矯正視力は右1.2であり,水晶体後面に達する色素性腫瘍があり,網膜剥離を伴っていた。眼球摘出を拒否されたが,腫瘍は増大し,初診から4か月後に右眼を摘出した。腫瘍径は15×15mmであった。術前の諸検査で全身転移はなかった。腫瘍の病理組織診断は悪性黒色腫で,Callender分類のspindle typeであった。以後毎年,全身の検索を続けたが,眼球摘出から15年後に肝と骨盤に転移が発見された。肝生検で黒色腫の転移と判日月した。その後現在まで2年間,化学療法を行っている。脈絡膜悪性黒色腫では長期間の経過観察が必要であることを示す症例であり,全身転移の発見にはI123—IMPシンチグラフィが有用であった。

屈折性調節性内斜視に遠視矯正LASIK(laser in situ keratomileusis)を施行した1例

著者: 神垣久美子 ,   中島純子 ,   藤澤邦俊 ,   井上俊洋 ,   大野晃司 ,   鈴木雅信 ,   清水公也

ページ範囲:P.1797 - P.1801

 25歳女性が角膜屈折矯正手術を希望して受診した。幼少時から高度遠視と調節性内斜視があり,眼鏡を好まず,花粉症とドライアイでコンタクトレンズを常時使用でさなかった。初診時視力は,右0.8(1.2×+8.0D cyl−1.5DAx180°),左0.8(1.2×+8.25D cyl−1.0DAx180°)。裸眼での眼位は,右眼・左眼固視ともに16△ETL/R8△であった。レーザー角膜内切削形成術(LASIK)後の視力は,右0.9(1.0×1.25D cyl−0.5DAx145°),左1.0(1.2×+25D)となり,水平眼位は,右眼固視で0△,左眼固視で6△の内斜視になった。視力と眼位が改善し,眼精疲労が軽減し,患者は満足した。遠視矯正LASIKが屈折調節性内斜視に対して視力と眼位の矯正法として有用であった症例である。

カラー臨床報告

虫体断裂後に自然脱落をみたマダニ眼瞼刺症

著者: 阿曽香子 ,   若倉雅登 ,   天野理恵 ,   清水公也

ページ範囲:P.1729 - P.1733

 5歳男児が右下眼瞼をダニに刺され,その翌日に受診した。受診直前に他医で虫体の除去がなされたが,脚4本が眼瞼になお残存していた。残存した虫体部分は7日後に自然脱落し,以後の経過も問題なく治癒した。脱落した虫体部分は口下片を含み,ヤマトマダニlxodes ovatus Neumannの雌成虫と同定された。マダニ刺症の続発症の報告は少なく,残存した虫体部分も完全に自然脱落する可能性があり,あえて完全に摘出する必要がない事例もあることを本症例は示している。

やさしい目で きびしい目で・22

ユニバーサルデザイン

著者: 高柳泰世

ページ範囲:P.1757 - P.1757

 世の中が複雑になるにつれて,いろいろな分野が専門別になり,それを統合する適当な人がいなく,それぞれの専門をどうつなげるかが課題になってきている。私は十年ほど前に,近くの日本人間工学会の有志でバリアフリー研究会を作り,市土木局職員,大学建築科教授,芸術大学デザイナー,標識製造会社,視覚障害者,聴覚障害者,肢体不自由者なども参加して,補助具のデザイン,街のデザインなどについて話し合ってきた。バリアフリーは既存のものにバリア性を見つけて改善していくのだが,それ以前に,設計の段階からバリアをなくしていくのがユニバーサルデザインである。
 例えば公衆トイレは,視覚障害者には狭くて手を広げて確認できる大きさがよい。車椅子使用者にはそれでは狭い。車椅子で介助犬を持つ人にはさらに広い必要がある。トイレで水を流す方法も点字で場所,流し方の説明がないと個室になってしまうトイレでは大変に困る。場所と方法さえわかれば力を入れて押すものでもよい。車椅子の人は座ったまま手の届くところにペーパー,ボタン,非常ボタン,支えになるバーなどすべてがないと困る。また,聴覚障害者は文字情報が必要で,手話でコミュニケーションを図ることがあるが,最近ではケータイとかインターネットによってほとんど満足すべき文字情報が得られる。先天聴覚障害者には手話がよく,中途聴覚障害者には要約筆記あるいはノートテイクがよいといわれるなど,それぞれに合わせた補助手段が用意されるべきものと思われる。

解説

白内障手術後眼内炎に関して医師側の過失を認めた判決の教訓—東京地裁,平成13年1月29日判決全文を読んで

著者: 岩瀬光

ページ範囲:P.1764 - P.1765

1.はじめに
 東京地裁の白内障術後眼内炎に関する判決が最近出された。今まで,仲裁・和解例はあるが,調べる限り裁判例は初めてと思われるので紹介したい。(なお,双方控訴をしなかったため,この判決は確定している。)
 この判決は,術後眼内炎を起こすに至った医師側に対して,眼内炎発症(術前無菌法の不十分さと後嚢破裂後の処置の不手際)について過失を認め,また眼内炎の発見の遅れ,ならびに治療の遅れも認めた厳しい判決である。

文庫の窓から

幕末における木活字版私刊医書

著者: 中泉行史 ,   中泉行弘 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.1802 - P.1804

 江戸末期の木活字版印刷は,寛政11年(1799),幕府の開版事業が昌平坂学問所において行われるようになってから,各藩,各私塾などで盛んになった(川瀬一馬著「古活字版の研究」)。
 幕府は伝統医学を固守するため蘭学者を圧迫し,翻訳書の出版を統制した。「日本洋学編年史」(大槻如電原著,佐藤栄七増訂)などによれば,幕府の蘭学抑制策として次のような項目が記述されている。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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