臨床報告
黄斑下血腫に対する硝子体内ガス注入
著者:
山田教弘1
飯田知弘1
萩村徳一1
岸章治1
所属機関:
1群馬大学医学部眼科学教室
ページ範囲:P.1859 - P.1864
文献購入ページに移動
黄斑下血腫11眼に対し,中心窩からの血腫の移動を目的として,硝子体内に6フッ化硫黄ガス(SF6)0.5mlを注入した。その結果,3眼で血腫が中心窩から排除され,8眼で血腫が薄くなった。血腫が大きいほど移動量が大きかった。手術前の原因疾患は5眼(46%)で同定されたが,術後は10眼が加齢黄斑変性症,1眼がポリープ状脈絡膜血管症であることが判明した。血腫移動後のフルオレセイン・インドシアニングリーン蛍光造影で,加齢黄斑変性症10眼中6眼で脈絡膜新生血管(CNV)の隠蔽部が新たに検出された。3眼ではCNVの範囲は不変,1眼ではCNVの全体像を確定できなかった。ポリープ状脈絡膜血管症1眼では,つた状の血管網が血腫移動後に検出された。全例を通じ,ガス注入に伴う合併症はなかった。術後の最高視力は,2段階以上の改善7眼,不変3眼,低下1眼であった。黄斑下血腫へのガス注入は,蛍光造影でのCNVの検出率を高め,視力向上にも効果がある簡便で安全な処置であると結論される。