臨床報告
原田病様眼底を示した慢性骨髄性白血病の1例
著者:
郡山昌敬1
松永裕史1
高橋寛二1
松村美代1
所属機関:
1関西医科大学眼科学教室
ページ範囲:P.673 - P.677
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57歳男性が5日前からの両眼の霧視で受診した。7年前に慢性骨髄性白血病と診断され加療中であった。裸眼視力は右0.2,左0.15,遠視を矯正して右1.2,左1.0であった。前眼部に炎症所見はなく,両眼の眼底後極部に漿液性網膜剥離があった。フルオレセイン蛍光造影で,早期には乳頭と黄斑部の周囲に多数の点状蛍光点があり,後期にはこれが拡大して網膜下に蛍光貯留が生じた。内科でプレドニゾロンと抗癌剤の投与を行った。初診から1週後に網膜剥離は軽減し,視力が改善した。このときのICG蛍光造影で,早期には脈絡膜への充盈遅延があり,中期には脈絡膜血管が不明瞭で全体的に低蛍光であった。眼底と蛍光造影所見は原田病のそれに酷似したが,本例では,脈絡膜に白血病細胞が浸潤し,脈絡膜循環障害の結果として網膜色素上皮細胞が障害され,漿液性または浸潤性網膜剥離が生じたと解釈される。ICG蛍光造影で,脈絡膜循環障害が眼底の広範囲にあることが確認できた。