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臨床報告
文献概要
慶應義塾大学病院眼科において角膜移植を施行した症例のうち、1994年から1998年の5年間に感染性角膜炎を発症した14例14眼について遡及的に検討した。感染性角膜炎の病型は縫合糸膿瘍型8例と非縫合糸膿瘍型6例に分けられ,前者の発症時期はさまざまであったが,後者は角膜上皮の状態の不良な術後ごく早期か,移植片機能不全に陥った晩期に多く発症していた。発症の誘因としては縫合糸の緩み,断裂,コンタクトレンズ装用,角膜上皮の不整などがあり,ステロイド薬の点眼を含め全例で複数の誘因が関与していた。起因菌は黄色ブドウ球菌(MRSA 3例を含む)が6例と最も多く,次いでカンジダ,コリネバクテリウム,緑膿菌が各2例で,起因菌が同定されなかった例は2例あった。14例中11例は薬物治療に反応したが,3例では移植片交換などの外科的治療を要した。角膜移植術後の患者に対しては危険因子の存在を常に念頭に置き,長期にわたり慎重に経過槻察していくことが必要と考えられた。
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