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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科55巻9号

2001年09月発行

文献概要

今月の表紙

地図状脈絡膜炎

著者: 伊勢屋貴史1 玉井信1

所属機関: 1東北大学眼科

ページ範囲:P.1595 - P.1595

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 症例は75歳,女性で,昭和56(1981)年より右眼の視力低下を自覚していた。1995年1月近医を受診し,両眼の網脈絡膜炎を指摘された。視力は右(0.1),左(1.5)であった。その後,左右交互に網脈絡膜炎の再燃を繰り返し,そのつど副腎皮質ステロイド薬の局所投与で経過観察されていた。2000年8月,左眼視力低下と眼底に乳頭の発赤,漿液性網膜剥離を疑われ当科を紹介された。当科初診時視力は,右(0.3),左(0.8)。蛍光眼底造影で左視神経乳頭からの蛍光漏出を認め,病巣は早期は低蛍光,後期には過蛍光,インドシアニン蛍光眼底造影で脈絡膜血管の循環不全を示した。入院後ステロイド大量投与療法を行ったが,左眼は(0.3)まで低下した。退院時には左(0.9)に回復した。しかし2001年1月には再び視力低下を自覚し,再度ステロイド大量投与を行い現在の視力は右(0.6),左(0.9)を維持している。眼底,蛍光眼底は図(表紙および上)に示すように,乳頭周辺部から黄斑部にかけて網脈絡膜萎縮が拡大しているが,辛い中心窩の機能はほぼ保たれている。全経過を通じ網膜電図が軽度減弱していたが,全身および血液検査を含め異常はなかった。
 地図状脈絡膜炎はgeographic(またはserpiginous)choroiditis or choroidopathy,それに「らせん」を意味するHelicoidを加えて呼ばれている原因不明の疾患である。人種を越えて成人に発症し,性差はない。眼底には本症のように灰白色ないし黄味を帯びた病巣が乳頭周囲から後極部にかけてあり,部位によって色素を伴った瘢痕化を示す。炎症症状をはじめ血管閉塞,新生血管など幅広い病像を示し,初期には原田病との鑑別も必要である。視力は黄斑部の病巣の広がりによる。自然治癒傾向も強いが再発の可能性が高く,両眼性になるまでの期間もさまざまである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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