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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科56巻11号

2002年10月発行

雑誌目次

連載 今月の話題

緑内障とニューロプロテクション

著者: 富田浩史

ページ範囲:P.1523 - P.1528

 緑内障治療に対する考え方はここ数年変化してきている。従来の眼圧下降治療から眼圧下降プラス神経保護,特に緑内障でターゲットとなる網膜神経節細胞をいかに生存維持させるかという点が重視されてきている。現在,緑内障治療薬として,神経保護薬なるものは存在しないが,ある種の緑内障点眼薬は動物実験モデルで神経保護作用を示すことが報告されている。本稿では,これらの薬剤およびその機序について紹介する。

眼の遺伝病・38

FSCN2遺伝子異常と網膜変性(2)

著者: 和田裕子 ,   玉井信

ページ範囲:P.1529 - P.1531

 前回からひき続きFSCN2遺伝子208delG変異をもつ網膜色素変性の家系を報告する。前回は埼玉県の家系であったが,今回は秋田県の3世代にわたる家系である。30代後半から急速に進行する網膜色素変性を示すが,症例2は初診時,5歳ということもあり,さらに高度近視を伴っていたため網膜色素変性と診断することは困難であった。FSCN2遺伝子異常の発見により,網膜色素変性と診断が確定できた症例である。

眼科手術のテクニック・148

PMMA IOL挿入で術中・術後合併症を少なくする切開法

著者: 山岸和矢

ページ範囲:P.1534 - P.1536

はじめに
 白内障手術は,手技と手術器械の進歩により術中合併症は以前に比べ格段に少なくなり,そして安全な手術となった。術式は超音波乳化吸引術が大多数を占め,眼内レンズはfoldable IOLが多数を占めるようになり,小切開化により手術はより安全になった。今後もfoldable IOLの割合は増加すると考えられるが,PMMA IOLもその実証済みの安全性,耐久性,光学部のグリスニングの少なさ,グレアとゴーストが少なく優れた解像力などにより,現状においても十分な挿入理由が存在する。筆者は,foldable IOLの現在確認できる安全寿命は15〜20年であるので,平均寿命80歳以上の長寿国日本では70歳以下はPMMA IOLを第一選択としている。安全上の理由で,長期間にわたり眼内に存在する若年者には当然PMMA IOLを挿入している。何十年も先のことであるが,筆者が引退してから自分の手術に予想外の合併症が発生するのを見たくないからである。
 また最近,白内障手術の医療経済性悪化のためかPMMAが見直され,再びPMMA IOLを使用する術者も多い。切開創が大きいため術中の前房安定が悪いこと,そして術後の切開部の平坦化による強い術後乱視を嫌い,再びfoldable IOLに戻った術者も多い。

あのころ あのとき・22

倒像眼底写真撮影法を開発したとき

著者: 永田誠

ページ範囲:P.1538 - P.1540

 1970年,ちょうど大阪で万国博覧会が開かれた時期だと思います。私は天理よろづ相談所病院で「眼科マイクロサージェリーの普及」,「未熟児網膜症の眼科的管理」,「網膜局所ERGの研究」と3つのテーマを並行して進めていましたので,今から考えるとよくまあ身体が持ったなと不思議に思うほどですが,万博にも3回は行きましたし,海外にも行っていましたので,一番元気のある時代であったと思います。
 その頃,未熟児網膜症の眼底のスケッチをしながら,この所見を眼底写真で示すことができたらということを常に考えていました。手持ち眼底カメラで直像の眼底写真を撮影することは全身麻酔下で試みたことはありましたが,到底満足できる画像は得られず,半分あきらめていたのです。

他科との連携

他科の先生のちょっとしたひと言

著者: 星野正子

ページ範囲:P.1568 - P.1569

 私が医師になってから9年が経とうとしています。東海大学病院はスーパーローテート制なので,眼科医としては7年になります。学生時代,「眼科は,結構独立した診療科で眼だけ診ることができればいいのかな……」なんて印象を持っていたことを今ふり返ると,とんでもなく甘い考えを持っていた時期もあったような気がします。今思うのは,あたりまえのことですが,診断にあたって,患者さんの全身の病態をきちんと理解していなければならないこと,そしてさまざまな疾患の知識を持っていないと,診断が困難な場面に直面したとき,適切かつ敏速な対応ができません。全身の多様な疾病が眼に関連していることを毎日のように認識させられ,まだまだ勉強がたりないなと思いながら,日々診療に励んでいる私です。他科の先生との連携(助け)は,私にとって加療がスムースにいくばかりでなく,ひとつの疾患の主訴に対しても,違う視点から考えるという必要性に気づかされることがよくありますので,とても勉強になります。今回は自ら経験した例を紹介したいと思います。
 26歳の男性が当院の人間ドッグを受けにきました。無散瞳での片眼の眼底写真を撮ったORTさんが,「うっ血乳頭を認めるので,すぐに診察をしたほうがよいのではないか」といってきました。

今月の表紙

有茎性の結膜乳頭腫

著者: 小幡博人 ,   伊藤由香 ,   水流忠彦

ページ範囲:P.1543 - P.1543

乳頭腫は重層扁平上皮が乳頭状に増殖した良性腫瘍で,皮膚,口腔,喉頭,外陰部粘膜などに好発する。前眼部では眼瞼,内眼角部,輪部に発生しやすい。結膜乳頭腫は球結膜・瞼結膜のいずれからも発生しうる。図1は20歳男性の左眼涙丘部から発生した有茎性の結膜乳頭腫の前眼部写真である。血管に富んだ多葉性の腫瘤がみられる。図2のaは切除組織のHE染色像(撮影倍率50倍)で,重層扁平上皮が乳頭状に隆起しているのがわかる。乳頭腫の発生には,ヒト乳頭腫ウイルス(human papilloma virus:HPV)が関与しているとされている。写真2のbは同症例の組織標本を用いてHPV 6,11,16,18,30,31,33,35,45,51,52型を検出するwidespectrumのHPVビオチン標識プローブを用いて行ったin situ hybridizationの結果である。表層に近い細胞の核内にHPVのDNAが検出されている。(なお,本症例の詳細については本誌57巻1号に掲載予定である。)

臨床報告

トラベクロトミー術後眼に対するラタノプロストの影響

著者: 金子志帆 ,   寺内博夫 ,   永田誠

ページ範囲:P.1545 - P.1548

 手術既往のない発達緑内障を含む原発開放隅角緑内障に対して,トラベクロトミーを1回施行して経過観察中の症例に,ラタノプロストを12か月投与してその眼圧経過を検討した。症例数は34例50眼で,男性18例25眼,女性16例25眼であった。投与後1・3・6・12か月の平均眼圧は15.1±2.4,153±2.3,15.2±2.2,15.2±1.8mmHgであり,投与前の平均眼圧18.0±2.2mmHgよりも有意に低下した(Wilco×on検定,p<0.001)。視野進行別の目標眼圧の達成率は,I期(n=36)では66.7%から100%に増加し,II期(n=14)では21.4%から92.9%へと増加した。III期の症例は含まれなかった。これらの結果から,ラタノプロストはトラベクロトミー術後の症例に対しても,非手術例と同様に効果があると考えられた。

流涙を主訴とした悪性リンパ腫の2例

著者: 林佑子 ,   雑賀司珠也 ,   大西克尚 ,   中峯寛和

ページ範囲:P.1549 - P.1552

 流涙を主訴として受診し,結膜悪性リンパ腫と診断された2症例。症例と所見:1例は77歳女性。15年前から両眼に流涙があり放置していた。両眼の下結膜円蓋部に腫瘤があり,病理組織検査でMALT型非ホジキン悪性リンパ腫と診断した。放射線照射で腫瘍は消失した。他の1例は57歳男性。咽頭のびまん性大細胞型B細胞悪性リンパ腫の治療中に右眼に流涙が生じた。右球結膜に腫瘤があり,病理組織検査でびまん性B細胞悪性リンパ腫と診断し,咽頭腫瘍からの転移が疑われた。化学療法で咽頭腫瘍は縮小しつつある。結論:流涙を主訴とした症例では結膜の悪性リンパ腫の可能性があり,特に円蓋部の検索が必要である。

視力低下を契機に発見された小児褐色細胞腫の1例

著者: 岩田明子 ,   江口洋 ,   塩田洋 ,   高橋昭良 ,   安友康二 ,   石橋広樹 ,   嵩原裕夫

ページ範囲:P.1553 - P.1556

 8歳女児が視力低下と頭痛で受診した。矯正視力は左右とも0.1であった。両眼眼底に出血,軟性白斑,黄斑浮腫,乳頭の発赤・腫脹があった。高血圧眼底であり,血圧は165/115mmHgであった。画像検査で右腎に腫瘤があり,尿中バニリルマンデル酸と血中ノルアドレナリンが高く,臨床的に褐色細胞腫と診断した。副腎を含む腫瘍摘出術後に血圧は正常化し,視力はほとんど正常化し,眼底所見も軽快した。摘出腫瘍の病理組織診断は褐色細胞腫に一致した。小児に高血圧眼底がある場合には,腎性高血圧だけでなく,内分泌性高血圧がその原因になり得ることを示す症例である。

網膜剥離に対する強膜バックリング術前後での眼位変化

著者: 黒川歳雄 ,   大塚啓子 ,   渕田有里子 ,   森口朋子 ,   田中美由紀 ,   西脇弘一 ,   本田孔士 ,   高橋総子

ページ範囲:P.1557 - P.1562

 過去13か月間にバックル縫着術を行った裂孔原性網膜剥離45例について,術前後の眼位と自覚症状を検索した。術前眼位は,正位28例,外斜位8例,外斜視7例,外上斜視2例であった。第1または第2眼位の変化は,術後1か月で51%,6か月で24%にあった。術後1か月には第1眼位での複視が5例にあり,6か月後には全例で消失した。術後の両眼視状態と視力がよい群では,不良群よりも眼位が良好に保たれやすい傾向があった。術前斜視群では,術後の眼位変化率と残存率が高かったが,自覚症状のない症例が多かった。

視神経炎と考えステロイドパルス療法を施行した21例31眼の検討

著者: 設楽幸治 ,   村上晶 ,   金井淳

ページ範囲:P.1563 - P.1566

 目的:視神経炎に対してステロイドパルス療法を行った症例の再検討。症例と方法:過去5年間に球後視神経炎または視神経乳頭炎と診断され,メチルプレドニゾロンによるパルス療法を受けた21例31眼を,診療録をもとに検索した。結果:16例23眼が視神経炎であったと診断した。うち5眼には多発性硬化症が併発していた。他の8眼はレーベル視神経症5眼と前部虚血性視神経症3眼であった。視神経炎23眼中18眼(78%)が0.8以上の視力に回復し,その多くは治療開始から2週間以内に改善した。ステロイドパルス療法による重篤な副作用はなかった。結論:視神経炎に対するステロイドパルス療法は一般に有効である。レーベル視神経症には本治療は避けるべきであり,DNA解析による診断が望ましい。

高齢者の心因性視覚障害11例

著者: 中川泰典 ,   木村徹 ,   木村亘 ,   横山光伸 ,   木谷聡 ,   山村基成

ページ範囲:P.1579 - P.1586

 当院で心因性視覚障害と診断した60歳以上の11例21眼について,病態の特徴と診断の要点を検討した。視力は0.5以下が19眼(90%),0.1以下が10眼(48%)にあり,求心性視野狭窄が11眼(52%)にあった。年齢は61歳から85歳,平均69.8±7.9歳であった。軽度から中等度の器質的な眼または全身疾患があり,精神的に孤独かつ不安で,1人暮らしで孤立し,経済的に困窮している例が多く,これらが複合して心因性視覚障害が生じたと推定した。診断では,視覚障害に矛盾して瞳孔反応が良好であり,各検査項目が矛盾し,日常生活行動を観察することが有用であった。他覚的な眼症状が検査所見と一致しないときには,高齢者でも心因性視覚障害を疑うべきことと,特に瞳孔反応に注意する必要があると結論される。

緑内障点眼薬:点眼瓶の硬さ,スクイズ力と1滴量

著者: 吉川啓司 ,   山田博

ページ範囲:P.1587 - P.1593

 市販されている10種類の緑内障点眼薬につき,滴下される1滴の重量,点眼瓶の物理的硬さ,瓶を押すのに必要な力(スクイズ力)を測定した。1滴の重量は,0.027gから0.044gの範囲にあった。瓶の硬さは8.2Nから17.1Nの範囲,スクイズ力は7.0Nから11.8Nの範囲にあった。1滴の重量と,瓶の硬さまたはスクイズ力との間には有意な相関がなかった。3種類の材質(低密度ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエチレン・テレフタレート)を使って,硬さとスクイズ力が異なる点眼瓶を作製し,同様に1滴重量を測定した。1滴重量は0.045gから0.049gの範囲にあり,点眼瓶の材質,硬さ,スクイズ力に関係しなかった。以上から,緑内障点眼瓶の硬さとスクイズ力は1滴量に影響しないと結論される。

嚢性緑内障に対する改良非穿孔性線維柱帯切除術

著者: 竹内篤 ,   久田佳明 ,   永田徹也 ,   喜田有紀 ,   長谷川修 ,   近藤寿美代 ,   山本真之 ,   中村幸生 ,   斉藤恭子 ,   岩城正佳

ページ範囲:P.1595 - P.1599

 嚢性緑内障(CG)11例12眼に対して改良非穿孔性線維柱帯切除術を行い,原発開放隅角緑内障(POAG)18例25眼の結果と比較した。術後成績は,CG群で21.8±8.7か月後,POAG群で平均21.5±6.9か月後に評価した。薬剤使用中の術前眼圧は,CG群で23.4±5.4mmHg,POAG群で22.4±3.3mmHgであり,術後眼圧は,それぞれ17.0±5.0mmHg,13.4±3.7mmHgで,前者が有意に高かった(p=0.018)。降圧薬を使用しない最終眼圧が14mmHg以下である頻度は,CG群83%,POAG群52.0%で,前者が有意に低かった(p=0.011)。濾過胞形成は,CG群50%,POAG群88%であり,前者が有意に低かった(p=0.019)。本術式は,POAGには有効であるが,CGでの眼圧下降は不十分であった。嚢性緑内障では,偽落屑物質が沈着する残存線維柱帯での房水流出抵抗が大きいことが推定される。

内境界膜剥離後の眼底に認める網膜神経線維層欠損様変化

著者: 田村和寛 ,   松井淑江 ,   岩尾圭一郎 ,   杉本琢二 ,   小川邦子 ,   森澤明子 ,   石郷岡均 ,   荻野誠周

ページ範囲:P.1601 - P.1605

 内境界膜剥離を併用して硝子体手術を行った107眼中の30眼(28%)に,網膜神経線維層欠損様所見を術後に認めた。内訳は,黄斑上膜12眼中8眼(67%),黄斑円孔36眼中18眼(50%),黄斑浮腫(糖尿病網膜症,網膜静脈閉塞症)59眼中4眼(7%)である。術中のICG使用の有無は,これの出現頻度に影響しなかった。経過観察中にこの変化の消失ないし改善はない。黄斑円孔と黄斑上膜での視力と網膜感度には,これの有無による有意差はなかった。内境界膜剥離による網膜神経線維層欠損様所見が視機能に影響する可能性があるので,症例ごとの長期観察が必要である。

出生体重1,500g未満の低出生体重児における未熟児網膜症の発症と治療成績

著者: 久保田敏昭 ,   鬼塚尚子 ,   戸栗一郎 ,   仙波晶子 ,   田川正人 ,   松尾幸司 ,   吉永宗義

ページ範囲:P.1607 - P.1610

 当院NICUに過去2年間に入院した1,500g未満の低出生体重児82名について,未熟児網膜症の発症率と治療成績を検索した。出生体重1,000g未満の超低出生体重児は43名,それ以上の極小低出生体重児は39名である。入院中に死亡した13名を除く69名で,未熟児網膜症が45名(65%)に発症した。発症率は,超低出生体重児32名中30名(94%),極小低出生体重児37名中15名(41%)であった。超低出生体重児19名37眼と,極小低出生体重児5名10眼の計24名47眼に光凝固を行った。全例で瘢痕期1度以下の治療成績が得られた。

後部硝子体剥離に伴う裂孔原性網膜剥離の手術成績—一次的硝子体手術と強膜内陥術の比較

著者: 川﨑史朗 ,   山西茂喜 ,   上甲武志 ,   川村肇 ,   大橋裕一

ページ範囲:P.1611 - P.1616

 過去3年間に,後部硝子体剥離を伴う裂孔原性網膜剥離60眼に手術を行い,術後3か月以上の経過を観察した。黄斑円孔,巨大裂孔,外傷,増殖硝子体網膜症が関係する症例は除外した。うち35眼には初回手術として硝子体手術を行った。年齢は平均63.0±8.6歳である。他の25眼には強膜内陥術を行った。年齢は平均63.4±10.0歳である。初回復位率は,硝子体手術群が33眼(94%),強膜内陥術群が24眼(96%)であり,両群間に有意差はなかった(p>0.99)。平均術後対数視力は,硝子体手術群が0.32±0.41,強膜内陥術群が0.23±0.32であり,両群間に有意差はなかった(p=0.524)。全例を通じて重篤な合併症はなかった。以上の結果から,症例の状態に応じて,初回手術として硝子体手術を選択してよいと結論される。

やさしい目で きびしい目で・34

患者さんと医師の関係

著者: 西田朋美

ページ範囲:P.1571 - P.1571

 一昨年になるが,私は「第1回国際シルクロード病(ベーチェット病)患者の集い」の事務局長を務めさせていただいた。あれから早くも2年が経ち,「第2回国際シルクロード病(ベーチェット病)患者の集い」が今年6月27〜29日,ドイツ,ベルリンで開催され,私も出席の機会を得た。今回は,「第10回国際ベーチェット会議」との同時開催であり,患者さんと医師の初の国際ジョイントミーティングとなった。
 今回は,イギリスの患者代表Seaman氏とドイツ,ベルリン自由大学皮膚科Zouboulis教授が主になって準備を進めてくれた。私も前回主催した経験があるということで,大野重昭北海道大学大学院視覚器病学教授(横浜市大眼科前教授)とともにお手伝いさせていただいた。今回の集いでは,初の試みとして医師と患者の「Patients infom ISBD」というジョイントセッションが設けられ,各国の患者,医師の代表が活動のあり方や問題点に関しての発表を行い,熱心な討論が行われた。次回は,2004年10月にトルコ,アンタリアで「第11回国際ベーチェット病会議」と同時開催で,「第3回国際シルクロード病(ベーチェット病)患者の集い」が開催されることになった。イスタンブール大学リウマチ内科学Yazici教授が次期会長であるが,患者活動にも大変ご理解があり,数々のご尽力をなされている方である。今後,将来的に患者の集いを充実化させることを目的で本格的な組織委員会を結成することを課題としてトルコでの集いに備えることになった。

解説

全身疾患から急激に両眼失明する事例の法律的問題

著者: 岩瀬光

ページ範囲:P.1618 - P.1621

1.問題の所在
 大きな全身手術,脳外科手術,また特異な全身疾患から急激に両眼失明する事例がまれではあるが存在する。他科の医師が治療中に突然失明するので,急に紹介された眼科医にとっては予期せぬ出来事である。しかし,眼科医としてはそうした事例が存在することをまず知っておくことが大事である。そして,そうした事例は失明を防ぐことがきわめて困難ではあるが,患者,ならびに家族にとっては両眼失明は全身疾患から全く予期できない「青天の霹靂」であるから,眼科医の可能な限りの迅速な治療と,失明した場合の「十分な説明」が必要である。それが十分でないと「全く予期せぬ両眼失明」である以上,眼科医に全く責任がないにもかかわらず訴訟になる可能性がある。3つの医事紛争になった例を紹介する。

文庫の窓から

「解剖新図」にみる眼の解剖

著者: 中泉行史 ,   中泉行弘 ,   斎藤仁男

ページ範囲:P.1624 - P.1626

 明治5(1872)年に「解剖訓蒙」が出版され,同7(1874)年から同8(1875)年にかけて,大阪から米国の解剖書の翻訳「解剖新図」(図1)が出版された。今回はその眼の解剖部分について紹介する。
 この「解剖新図」は別名“人身地学”と記されていて,アナトミカール・アトラス,即ち解剖の地図という意味であるといわれている。米国,ペンシルバニアの賢理斯士(ヘンリー・スミス)の著書(1867)を浦谷義春が訳述(1873)したもので,掲出本は明治7(1874)年から同8(1875)年に出版されたものである。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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