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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科56巻2号

2002年02月発行

雑誌目次

連載 今月の話題

小児の眼内レンズ

著者: 関谷善文

ページ範囲:P.105 - P.108

 小児の白内障手術では最近,眼内レンズ挿入術が多くなってきた。手術による合併症も多岐にわたるが,トラブルなく小児の視機能を最大限に引き出す努力が続けられている。ここでは,乳幼児期における眼球の発達の特徴に触れ,従来の眼内レンズ挿入術と最近の術式選択の考え方と問題点を述べる。

眼の遺伝病・30

RP2遺伝子異常を伴ったX染色体劣性網膜色素変性の1家系

著者: 和田裕子 ,   玉井信

ページ範囲:P.109 - P.111

 RP2は,X染色体劣性網膜色素変性の,RPGRに次いで2番目に報告された原因遺伝子である。現在までにRP2遺伝子異常の報告はあるが,その報告数はRPGR遺伝子異常に比べ少ない。今回筆者らが報告したLeu253Arg変異は海外を含めても現在までに報告がなく,このシリーズでは遺伝子異常と臨床像を併せて報告する。

眼科図譜・375

小乳頭傾向を呈する眼に発症した非動脈炎性前部虚血性視神経症

著者: 石川明 ,   荒川明

ページ範囲:P.114 - P.116

緒言
 非動脈炎性前部虚血性視神経症(non-arteriticanterior ischemic optic neuropathy:NAION)の発症要因として,全身疾患の他に,視神経乳頭の形態的特徴,特に小乳頭ないしはその傾向が知られている1,2)。筆者らは僚眼に小乳頭傾向を呈する眼に分節性に発症したNAIONの1例を経験したので報告する。

眼科手術のテクニック・144

眼内レンズの縫着術—毛様体扁平部への固定

著者: 門之園一明

ページ範囲:P.118 - P.120

はじめに
 眼内レンズの毛様溝縫着術後の視力障害の原因のひとつに,術後黄斑浮腫がある。この原因として,眼内レンズと虹彩との機械的接触により生じると考えられるぶどう膜炎が挙げられる。これは,毛様溝への縫着による眼内レンズの術後前方偏位によるものである(図1)。そもそも,毛様溝への縫着は,眼内レンズの安定した固定を得るために選ばれた解剖学的な場所であり,必然性はない。しかも,解剖学的な毛様溝部は,毛様突起から虹彩根部にわたる約400μmの狭領域であり,直視下あるいは内視鏡を用いない限り,正確な固定は難しい。そこで筆者は,無理をせず,毛様体扁平部の前部(毛様体ひだ部の後端)に眼内レンズを固定する術式を採用している(図2)。本術式では,眼内レンズは,嚢内固定された眼内レンズとほぼ同じ深度に固定される(図1)。このため,術後に虹彩捕獲や虹彩との機械的摩擦が原因となる合併症の発症はない。また,のちに術式で述べるように,角膜輪部から約3mmの毛様体扁平部の前寄りに固定されるため,術後,レンズの偏位や傾斜もなく安定している。当然,術中の硝子体出血も少ない。本術式は,眼内レンズ縫着術のひとつとして考慮されうるものと考えられる。

あのころ あのとき・14

学位論文作成のころ

著者: 福田雅俊

ページ範囲:P.122 - P.124

 私たちの時代には,大学院へ行かずとも学位をとることが可能であった。これはと思う教授の主宰する教室に席を置き,その教授の指定した研究テーマについて実験,研究を進め,その成果を学会誌に発表し,教授が学位に相応しいと判断する程度まで成果が蓄積されたとき,教授の指示で一括した論文集としてその大学の学位論文審査委員会に提出し,合格すれば晴れて医学博士の学位が授与された。研究期間は3〜6年くらいで,一応の資格試験のように考え,その後の経済的な事情もあって取り急ぐ傾向があった。
 私は萩原朗教授の主宰する母校東大の眼科学教室の医局に入局して4年目,医局長などになり,眼科臨床がおもしろくなったところで,「もういい加減に研究を始めたまえ」と教授に叱られ,東京逓信病院の眼科に出向のかたわら東大眼科研究員として研究生活に入った(1954年3月)。

他科との連携

他科とのよりよい連携とは?

著者: 太刀川貴子

ページ範囲:P.165 - P.166

悪性腫瘍の治療の進歩により,患者さんへのムンテラも以前より告知が増え,患者さんご本人に直接病状および治療の説明をし,その選択に関して同意を求め治療を進めていくことが増えてきたように思います。既往歴をお尋ねすると,「私は○○癌で手術をしたことがあります」とか,ともすると,「癌で転移して治療中です」と,さらりとご返答いただいて,いったいこの患者さんはどういうムンテラを受けられているのかなと思いつつ,カルテの既往歴の欄に書き込みます。そして必ず眼底を診察して,脈絡膜転移などの有無やフリッカーなど視神経の状態を診察しますが,もし癌で他に転移があることがご自分でわかっている患者さんを前にして脈絡膜転移を発見した場合,皆さんはどのように説明されますか?
 ある日の新患,私のスリットの前に座られた入院中の31歳の女性。新患の真っ白のカルテとともに,外科からの依頼状あり。「いつも大変お世話になっております。Mamma CaにてIVH管理の患者さんですが,眼のかすみを訴えられております。IVH挿入中の真菌症などは如何でしょうか。土曜の新患で誠に申し訳ありません」とある。患者さんにお話を聞く。「授乳中にたまたましこりができて,産婦人科で“授乳のため”と説明を受けたんです。授乳が終わり,外科に行くと乳癌と診断されてすぐに手術になって,また骨に転移して治療中です」

今月の表紙

結膜血管腫

著者: 赤沼正堂 ,   大野重昭

ページ範囲:P.113 - P.113

 症例は21歳,男性。生後1歳半から右眼鼻側球結膜に腫瘤が出現した。1998年,眼科を受診し,結膜血管腫と診断された。腫瘤は悪性のものではないが,眼窩後方まで広がり,視神経を覆っていたため,手術には至らなかった。
 2001年,右眼腫瘤の増大傾向を主訴に来院した。視力は右0.3(1.0),左0.15(1.2),眼圧は両眼とも18mmHg。対光反射正常。RAPD (−)。眼位,眼球運動は正常で複視もなかった。右眼鼻側角膜輪部から,血管が房状に拡張して鼻側に広がり,表面平滑な6×6mmの腫瘤へと続いていた。頭部前屈時に腫瘤拍動を自覚していた。MRIでは腫瘍が眼窩後方まで広がり,視神経を取り囲むように覆っており,全摘は難しいと思われた。

臨床報告

眼内レンズ挿入術後眼内炎の起炎菌

著者: 山本英津子 ,   堀尾直市 ,   寺崎浩子 ,   三宅養三

ページ範囲:P.135 - P.140

 1989〜2001年に名古屋大学医学部附属病院およびその関連病院で治療した眼内レンズ挿入術後眼内炎26眼を検討した。治療は眼内レンズ除去術,硝子体切除術を行い,前房水,眼内レンズ,水晶体嚢,硝子体を培養同定した。26眼中17眼(57%)に起炎菌(腸球菌4眼,表皮ブドウ球菌4眼,緑膿菌1眼,緑膿菌以外のブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌6眼,アクネ菌2眼)が検出され,このうち緑膿菌以外のブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌1眼,表皮ブドウ球菌2眼は多剤耐性菌であった。緑膿菌以外のブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌の検出率が高く,この菌による眼内炎の予後は比較的よいものの,特に糖尿病患者や高齢者では起炎菌として考慮する必要があると思われた。

眼科診療における抗血小板薬全身投与の問題点

著者: 山崎有加里 ,   南部裕之 ,   高橋寛二 ,   山田晴彦 ,   竹内正光 ,   宇山昌延 ,   松村美代

ページ範囲:P.141 - P.146

 抗血小板薬あるいは抗凝固薬が誘発したと思われる出血性合併症をきたした4症例を経験した。2例は加齢黄斑変性にて経過観察中に抗血小板薬および抗凝固薬の内服を開始され,網膜下出血の増悪をみた。他の2例は眼科手術時に抗血小板薬内服を継続していた症例で,術中・術後に出血性合併症をきたした。加齢黄斑変性の2例は,抗血小板薬および抗凝固薬の中止後,比較的速やかに出血は消失したが,眼科手術時に抗血小板薬の内服を継続していた症例は2例とも再手術を要した。眼科診療において,病歴聴取の際に抗血小板薬内服の有無に注意し,場合によっては担当科と連絡をとって減量・中止を考慮する必要がある。

非穿孔性線維柱帯切除術の線維柱帯切開術併用効果

著者: 小川月彦 ,   山下美和子 ,   宗今日子 ,   嵩義則

ページ範囲:P.147 - P.152

 非穿孔性線維柱帯切除術(NPT)の線維柱帯切開術(TLO)併用効果を64眼について検討した。内訳は,原発開放隅角緑内障39眼,嚢性緑内障9眼,正常眼圧緑内障8眼,原発閉塞隅角緑内障4眼,ステロイド緑内障4眼である。31眼にはNPTのみを行い,33眼にはこれとTLOを併用した。術中マイトマイシンCは36眼に行った。白内障同時手術を38眼に行った。平均17か月の観察期間後の眼圧平均値はNPT単独群15.8mmHg,併用群12.2mmHgであり,薬物スコアはNPT群1.6点,併用群0.9点で,いずれも併用群がNPT単独群より有意に低かった。Kaplan-Meier法を用いた生存率曲線の検討では,術後眼圧16mmHg以下と14mmHg以下へのコントロールは,併用群が有意に良好であった。全症例を通じて,浅前房,低眼圧黄斑症などの重篤な合併症はなかった。NPTにTLOを併用することで,進行した緑内障に対しても良好な眼圧コントロールが可能であると考えられた。

全身性エリテマトーデスに合併したサイトメガロウイルス網膜炎の疑い例

著者: 江富朋彦 ,   徳岡覚 ,   桑原ちひろ ,   佐藤孝樹 ,   田聖花 ,   池田恒彦

ページ範囲:P.155 - P.160

 33歳女性に蝶形紅斑と手足の腫脹が4か月前に発症した。全身性エリテマトーデス(SLE)と診断され,6週前から副腎皮質ステロイド薬と複数の抗癌剤の全身投与を受けていた。結膜浮腫が生じ,その精査のため眼科を受診した。網膜浮腫以外には眼科的に異常所見はなかった。その2か月後に両眼の視力障害が突発した。右眼底に出血が混在する黄白色の滲出斑があり,サイトメガロウイルス網膜炎(CMV網膜炎)が疑われた。ただちに上記の投薬を中止し,ガンシクロビルとγグロブリンの全身投与を開始した。さらに4週後に左眼に同様の病変が発症した。1か月後に両眼の眼底病変は軽快し,その3週後に薬剤投与を中止した。20か月後の現在まで再発はない。全経過を通じ,血清などからCMVは検出されていない。本症例で眼底病変が治癒に至った理由として,ガンシクロビルが奏効しただけでなく,ステロイド薬や抗癌剤の中止で患者の免疫力が回復したことが推定された。

治療的・整形的全層角膜移植術が奏効した淋菌性角膜潰瘍穿孔の2症例

著者: 平山久美子 ,   塩沢啓 ,   沼慎一郎 ,   森重直行 ,   石村良嗣 ,   近間泰一郎 ,   西田輝夫

ページ範囲:P.167 - P.171

 淋菌性角膜潰瘍で薬物治療に抵抗し,短期間で角膜穿孔に至つた2症例に治療的・整形的全層角膜移植術を行った。1例は19歳女性で,急性淋菌性結膜炎が左眼に生じ,8日後に角膜が穿孔した。薬物治療後に全層角膜移植を行い,視力が術前の光覚弁から0.7に回復した。他の1例は23歳男性で,尿道炎後に結膜炎が両眼に生じ,12日後に左眼角膜が穿孔した。角膜実質融解は薬物治療に抵抗し,全層角膜移植を行い,0.8の最終視力を得た。これら2症例での淋菌性角膜潰瘍に続発した角膜穿孔に対して,全層角膜移植術は眼球の形状維持と視力回復に有効であった。

錐体ジストロフィの長時間刺激の網膜電図によるon反応とoff反応

著者: 篠田啓 ,   大出尚郎 ,   井上理香子 ,   石田晋 ,   江下忠彦 ,   北村静章 ,   井上真 ,   北和典 ,   真島行彦 ,   小口芳久

ページ範囲:P.173 - P.178

 錐体ジストロフィと診断された2症例で,長時間刺激による網膜電図(ERG)を検索した。1例は72歳女性で,矯正視力は右0.1,左0.2で,眼底にbull's eyeの所見があった。他の1例は24歳女性で,矯正視力は右0.5,左0.3で,眼底に異常所見はなかった。両症例とも,全視野刺激ERGで,scotoplc ERGが軽度振幅低下,photopic ERGが消失ないしb波の顕著な低下があり,30Hz flickerERGが顕著に低下していた。長時間刺激によるOn-Off ERGではOffのみに応答があり,onは消失ないし顕著な低下があった。多局所網膜電位図(m-ERG)は,正常眼でon反応がより強く関与している中心10度以内で,応答密度が低下していた。2症例でのこれらの所見は,網膜内層の機能障害が存在し,特にOn-pathwayが高度に障害されていると解釈された。

発達緑内障に合併したペルーシド角膜変性症の1例

著者: 浅野英二郎 ,   中井義幸 ,   澤田明 ,   川瀬和秀 ,   杉山和久

ページ範囲:P.179 - P.182

 23歳男性が,5か月前からの右眼霧視で受診した。眼圧は右51mmHg,左21mmHgで,両眼の隅角にSchwalbe線の肥厚と虹彩の高位付着があり,両眼の発達緑内障と診断した。右眼角膜の輪部付近に帯状の菲薄とその上方部の突出があり,角膜曲率計で8.75Dの乱視があり,右眼のペルーシド角膜変性症と診断した。右眼への濾過手術で眼圧は正常化した。角膜乱視は術後軽減したが,角膜形態に変化はなかった。

眼瞼痙攣に対して著効を奏した抑肝散顆粒の使用経験

著者: 鬼怒川雄久 ,   杉田祐子 ,   佐藤公光子

ページ範囲:P.183 - P.190

 原因不明の眼瞼痙攣47症例に対し抑肝散を内服させた。抑肝散は漢方薬で,神経症・不眠・更年期障害に有効とされている。男性14名,女性33名であり,開瞼困難などの症状はすべて軽症で,角膜障害はなかった。抑肝散の投与量は,40名に対しては7.5gを1日3回,7名に対しては5gを1日2回とした。連続投与3〜7日で自覚症状が45例で改善した。随伴症状としての不眠と神経症も同時に改善した。副作用として軽度の食欲不振が3例に起こった。全症例中26例が40歳以上の女性であり,眼瞼痙攣と更年期障害との関連が推定された。以上から,原因不明の軽度の眼瞼痙攣に抑肝散の内服投与が有効であると結論される。

カラー臨床報告

強度近視眼の中心窩網膜剥離への硝子体手術

著者: 小林秀雄 ,   石原克彦 ,   岸章治

ページ範囲:P.125 - P.130

 黄斑円孔のない後部ぶどう腫内の網膜剥離3例4眼に対して硝子体手術を行った。すべて女性であり,年齢は36歳から62歳で,−11Dから−18Dの近視が罹患眼にあった。光干渉断層計OCTで中心窩網膜剥離と中心窩周囲の網膜分離が4眼すべてにあった。黄斑部の残存硝子体皮質除去と内境界膜剥離を3眼に行った。網膜剥離と網膜分離は以後軽快し、視力が改善した。残存硝子体皮質除去が不完全であった他の1眼は,術後に黄斑円孔が生じた。以上の所見から,強度近視眼での中心窩網膜剥離と網膜分離が黄斑円孔網膜剥離の前駆病変でありうることと,この段階で硝子体牽引を除去することにより黄斑円孔化を予防し,視力改善が可能であると結論される。

やさしい目で きびしい目で・26

アメリカ大使館近くで36年の開業生活(2)

著者: 常松美登里子

ページ範囲:P.161 - P.161

 診療所を開いて36年間,この間の環境の変化は激しいものがある。いわゆる環境ホルモンが人体にとりこまれ,本来生体内で営まれる正常な作用が撹乱され,新たな疾病が出現している。アトピー性皮膚炎は30年前はあまり見られなかったが,このごろは乳児だけでなく成人型アトピーも多くなっている。フォルムアルデヒドによるシックハウス症候群もある。これら環境汚染物質が免疫力のバランスを崩し,これからも多くの疾病が出現する可能性がある。
 自然のバランスが狂いはじめて,エボラ,ラッサ,エイズウイルスなど,危険なウイルスが続々登場しはじめている。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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