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連載 眼科手術のテクニック・144
眼内レンズの縫着術—毛様体扁平部への固定
著者: 門之園一明1
所属機関: 1横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター眼科
ページ範囲:P.118 - P.120
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眼内レンズの毛様溝縫着術後の視力障害の原因のひとつに,術後黄斑浮腫がある。この原因として,眼内レンズと虹彩との機械的接触により生じると考えられるぶどう膜炎が挙げられる。これは,毛様溝への縫着による眼内レンズの術後前方偏位によるものである(図1)。そもそも,毛様溝への縫着は,眼内レンズの安定した固定を得るために選ばれた解剖学的な場所であり,必然性はない。しかも,解剖学的な毛様溝部は,毛様突起から虹彩根部にわたる約400μmの狭領域であり,直視下あるいは内視鏡を用いない限り,正確な固定は難しい。そこで筆者は,無理をせず,毛様体扁平部の前部(毛様体ひだ部の後端)に眼内レンズを固定する術式を採用している(図2)。本術式では,眼内レンズは,嚢内固定された眼内レンズとほぼ同じ深度に固定される(図1)。このため,術後に虹彩捕獲や虹彩との機械的摩擦が原因となる合併症の発症はない。また,のちに術式で述べるように,角膜輪部から約3mmの毛様体扁平部の前寄りに固定されるため,術後,レンズの偏位や傾斜もなく安定している。当然,術中の硝子体出血も少ない。本術式は,眼内レンズ縫着術のひとつとして考慮されうるものと考えられる。
眼内レンズの毛様溝縫着術後の視力障害の原因のひとつに,術後黄斑浮腫がある。この原因として,眼内レンズと虹彩との機械的接触により生じると考えられるぶどう膜炎が挙げられる。これは,毛様溝への縫着による眼内レンズの術後前方偏位によるものである(図1)。そもそも,毛様溝への縫着は,眼内レンズの安定した固定を得るために選ばれた解剖学的な場所であり,必然性はない。しかも,解剖学的な毛様溝部は,毛様突起から虹彩根部にわたる約400μmの狭領域であり,直視下あるいは内視鏡を用いない限り,正確な固定は難しい。そこで筆者は,無理をせず,毛様体扁平部の前部(毛様体ひだ部の後端)に眼内レンズを固定する術式を採用している(図2)。本術式では,眼内レンズは,嚢内固定された眼内レンズとほぼ同じ深度に固定される(図1)。このため,術後に虹彩捕獲や虹彩との機械的摩擦が原因となる合併症の発症はない。また,のちに術式で述べるように,角膜輪部から約3mmの毛様体扁平部の前寄りに固定されるため,術後,レンズの偏位や傾斜もなく安定している。当然,術中の硝子体出血も少ない。本術式は,眼内レンズ縫着術のひとつとして考慮されうるものと考えられる。
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