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連載 眼科手術のテクニック
分散性粘弾性物質を利用した白内障手術中の角膜乾燥防止法
著者: 高橋雄二1 水流忠彦2
所属機関: 1市立伊東市民病院眼科 2自治医科大学眼科学教室
ページ範囲:P.222 - P.224
文献購入ページに移動ソフトシェルテクニック1)で知られるように,分散性の粘弾性物質であるヒアルロン酸ナトリウム/コンドロイチン硫酸ナトリウム(ビスコートTM)は前房内に注入した場合,超音波水晶体乳化吸引術(phacoemulsification and aspiration:PEA)時の灌流,吸引において角膜内皮から除去されにくい2)。このことから角膜上皮に塗布すれば,角膜上皮からも同様に除去されにくいことが推測される。この特性を利用すれば角膜の乾燥,混濁を防ぐことができる。すなわちビスコートTMを角膜に塗布して,角膜を一様に覆うのを確認してから白内障手術を行えば,手術の全経過を通して改めて角膜を湿らせなくとも,前房および水晶体の視認性を維持できる。この方法(以下,ウェットシェルテクニック)を用いて市立伊東市民病院眼科で耳側角膜切開にて白内障手術を施行したところ,好成績を上げることができた。
従来,白内障の手術の際には助手に角膜に水をかけてもらわないと,角膜上皮が乾燥して水晶体の視認性が低下し(図1),手術がやりにくくなるのは白内障術者には周知のことである。助手との呼吸が合っていないと,水をかける間隔が長すぎて角膜が乾燥し水晶体が見えにくくなるし,あるいはかけすぎるとその行為自体が手術をする上で大変邪魔になる。助手が水かけをするには手術顕微鏡下での作業に慣れるなど,ある程度熟練が必要である。
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