臨床眼科56巻8号

2002年08月発行

臨床報告

多発性の涙腺多形腺腫の1例

著者： 津田恭央¹ 宮華青¹ 雨宮次生¹

所属機関： ¹長崎大学医学部眼科学教室

ページ範囲：P.1349 - P.1353

　68歳女性が6年前からの右上眼瞼と側頭部の腫脹で受診した。27年前に右眼窩腫瘍で腫瘍摘出術が行われ，病理診断は多形腺腫であった。右上眼瞼耳側と右側頭部に表面平滑で弾性硬，可動性のある腫瘍を触れた。腫瘍摘出術を行い，両腫瘍とも良性多形腺腫と診断された。涙腺多形腺腫は比較的頻度の高い涙腺原発の腫瘍であるが，これが多発することは稀である。耳下腺の多形腺腫の再発例では組織学的に6割以上に多発性腫瘤があるとされているが，涙腺ではほとんど報告例がない。過去の腫瘍摘出が不完全であったための再発と考えられる。