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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科57巻11号

2003年10月発行

文献概要

特集 眼感染症診療ガイド コラム 眼感染症への取り組み・いまむかし

悲しいアトピー白内障―治療の遅れた術後感染症

著者: 桜庭知己1

所属機関: 1青森県立中央病院

ページ範囲:P.146 - P.147

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 TMさんは,21歳の学生だった。

 幼少時からアトピー性の皮膚炎を患っていた。実家はH市だが,皮膚炎の治療のため,わざわざ隣県のM市のU病院まで治療に行っていた。そして,彼女が15歳の誕生日を迎えた頃から,なんとなく「視力が下がったかな?」と自覚するようになっていた。

 受診した近くの開業医から白内障をいわれていたが,われわれの病院にやってきたのはそれから5年後だった。当科初診時の視力は,右眼0.3(矯正不能),左眼0.1(矯正不能)とかなり低下していた。両水晶体前囊には瞳孔領中央に石灰化を伴った混濁があり,いわゆるアトピー性の白内障を呈していて,これが視力低下の原因であった。そのため,眼底ははっきり透見できなかったが,網膜裂孔網膜剝離などの大きな異常はなさそうであった。早速,われわれは手術の有効性と必要性を語り,白内障手術をためらっていると眼底検査に支障をきたし,剝離の発見が遅れ,最悪の場合失明するかもしれないとも話した。しかし,この方が網膜剝離でなく眼内炎で失明に至るとは,その時点では誰も想像していなかった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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