文献詳細
文献概要
特集 眼感染症診療ガイド コラム 眼感染症への取り組み・いまむかし
ヘルペスワクチン研究開発の問題点
著者: 井上智之1
所属機関: 1大阪大学
ページ範囲:P.151 - P.151
文献購入ページに移動 単純ヘルペスウイルス(HSV)によるヘルペス性角膜炎に対する主な治療は,抗ウイルス薬によるウイルス増殖抑制とステロイド薬による炎症の軽減である。現在の治療は対症的で,上皮型は治癒するが実質型の根本的治療は非常に困難であり,本病態の基幹をなしている再発に対する予防的治療法は確立されていない。ゆえに本症をワクチンによりコントロールすることが重要視され,活発に研究されてきた。われわれのグループ(現鳥取大学教授井上幸次先生のお仕事)は,HSVに特異的な膜抗原で免疫誘導能の高いグリコプロテインD(glycoprotein D:gD)蛋白に着目し,gD蛋白ワクチンのマウス角膜炎に対する抑制効果を見いだしていた。これに続く仕事として筆者がヘルペスワクチンに着手したが,そこにはいくつかの克服すべき問題点が存在していた。
一般に,蛋白ワクチンにおいては,液性免疫は誘導されるが細胞性免疫は得られにくいとされる。このことはgD蛋白ワクチン研究の結果にも一致していた。しかし,単純ヘルペスウイルスは細胞内に持続感染することを考え合わせると,理想的には細胞性免疫の誘導が望ましい。さらに,一般にサブユニットワクチンにおいては抗原性は通常弱いとされており,免疫にあたってアジュバントを必要とすることが多い。われわれは安全で有効なアジュバントの研究として,インターロイキン2(IL-2)が動物生体において,抗原とともに投与されると免疫反応が増強されうるという結果に着目した。このような背景から,蛋白ではなく細胞性免疫の誘導に優れているといわれるプラスミドDNAを投与する方法(DNAワクチネーション)を選択し,gD蛋白と,免疫効果増強に応用されているIL-2をgDに融合させたgD-IL-2蛋白をコードするプラスミドDNAを作製し,抑制効果の検討を試みた。
一般に,蛋白ワクチンにおいては,液性免疫は誘導されるが細胞性免疫は得られにくいとされる。このことはgD蛋白ワクチン研究の結果にも一致していた。しかし,単純ヘルペスウイルスは細胞内に持続感染することを考え合わせると,理想的には細胞性免疫の誘導が望ましい。さらに,一般にサブユニットワクチンにおいては抗原性は通常弱いとされており,免疫にあたってアジュバントを必要とすることが多い。われわれは安全で有効なアジュバントの研究として,インターロイキン2(IL-2)が動物生体において,抗原とともに投与されると免疫反応が増強されうるという結果に着目した。このような背景から,蛋白ではなく細胞性免疫の誘導に優れているといわれるプラスミドDNAを投与する方法(DNAワクチネーション)を選択し,gD蛋白と,免疫効果増強に応用されているIL-2をgDに融合させたgD-IL-2蛋白をコードするプラスミドDNAを作製し,抑制効果の検討を試みた。
掲載誌情報