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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科57巻11号

2003年10月発行

文献概要

特集 眼感染症診療ガイド コラム 眼感染症への取り組み・いまむかし

術後眼内炎との闘い

著者: 池田恒彦1

所属機関: 1大阪医科大学

ページ範囲:P.317 - P.317

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 筆者は網膜硝子体手術を専門にしている立場上,術後眼内炎の硝子体手術を数多く経験してきた。その大半は他院からご紹介いただいた白内障術後眼内炎である。いまさらいうまでもないが,術後眼内炎は弱毒菌によるものを除けば進行は極めて速く,視機能を保持できるかどうかはまさに時間との闘いである。紹介があと1日早ければ助かっていたかもしれない症例も何例か経験している。よって,筆者は術後眼内炎は原則的に即日手術の方針をとっている。予定していた業務をすべてキャンセルして緊急手術を施行しなければならないので,術者の負担は極端に大きくなる。しかし,それでも施行しなければならないのが術後眼内炎なのである。筆者は日頃,網膜硝子体手術に追われて多忙な日々を送っているが,どのような時でもあと1例は手術ができる体力を温存するように努めている。これはまさに眼内炎に即座に対応するためといってもよい。

 眼科領域で緊急手術を必要とする疾患には外傷や網膜剝離など数多くのものがあるが,術後の細菌性眼内炎はそのどれよりも緊急性が高い。強毒菌による眼内炎は時々刻々と症状が悪化し,同一日でも朝と夕方では所見が大きく異なるこもしばしばある。最近の白内障手術は早期に視力改善が得られるのが当たり前という認識が医師側にも患者側にもあり,日帰り手術の件数も急増している。そのため,白内障手術を安易に考え,術後眼内炎の的確な診断や紹介が遅れるケースが増えているように思う。白内障術者は,術後眼内炎の可能性を常に念頭に置いて,発症時に迅速な対応ができる体制を普段から整えておく必要がある。それ以上に大切なのは,眼内炎が疑われたときに,早期に網膜硝子体術者に紹介する決断と勇気を持つことである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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