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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科57巻13号

2003年12月発行

雑誌目次

連載 今月の話題

緑内障点眼薬併用の問題点

著者: 近藤雄司 ,   澤田明

ページ範囲:P.1755 - P.1760

 近年,新たな緑内障点眼薬が続々と臨床応用可能となり,緑内障治療における選択の幅が広がっている。その一方で,これらの多くの薬剤のなかでいずれを第1選択薬,あるいは第2,第3選択薬とするかは,症例によって異なり頭を悩ます問題である。眼圧下降薬の選択権は一手に臨床家の手に委ねられており,そうした選択が患者の予後に直結することもある。本稿では,緑内障点眼薬の選択における標準的アウトラインあるいは問題点について述べる。

眼の遺伝病 52

FSCN2遺伝子異常と網膜変性(4)

著者: 和田裕子 ,   玉井信

ページ範囲:P.1762 - P.1764

はじめに

 FSCN2遺伝子の異常について,本欄ではすでにFSCN2遺伝子異常をもつ常染色体優性網膜色素変性の家系を3件報告した(56巻10~12号)。FSCN2遺伝子異常をもつ患者の1人が境界鮮明な萎縮巣を伴っていたため,この遺伝子を用いて黄斑変性,錐体杆体ジストロフィー患者をスクリーニングした結果,208delG変異を黄斑変性患者にも認めた。

 今回は,FSCN2遺伝子の208delG変異をもつ常染色体優性黄斑変性の1家系を報告する。

眼科図譜382

Vasoproliferative tumor of the retinaの1例

著者: 児玉真也 ,   太田浩一 ,   吉村長久

ページ範囲:P.1766 - P.1768

緒言

 Vasoproliferative tumors of the retinaは稀な良性腫瘍1)であり,わが国での報告は知る限りない。今回,本疾患と思われる症例を経験したので報告する。

日常みる角膜疾患 9

水疱性角膜症

著者: 原真紀子 ,   森重直行 ,   西田輝夫

ページ範囲:P.1770 - P.1773

症例

 患者:59歳,男性

 主訴:右眼の霧視感

 現病歴:約10年前,近医にて白内障手術および後房眼内レンズ挿入を施行された。2001年1月より上記の症状を自覚しはじめ,ステロイド点眼による治療を受けたが改善せず,同年6月に当科外来を紹介され受診した。

 既往歴・家族歴:特記すべきことはない。

 初診時所見:視力は右眼0.3p×IOL(1.0p×S-2.75D()cyl-0.75D Ax150°×IOL)であった。右眼角膜中央から上方にかけて微細な上皮下浮腫,および角膜実質浮腫を認め,中央部には小さな水疱(bulla)が観察された。また,フルオレセイン染色にて上皮下浮腫に一致したdark spotを認めた(図1)。角膜内皮細胞密度はスペキュラーマイクロスコープで314 cells/mm2,生体共焦点顕微鏡では235 cells/mm,2(図2),角膜厚は603μmであった。

 治療および経過:初診時には視力が良好であったため,ステロイド点眼(0.1%リンデロン(R)点眼1日4回)にて経過観察を行っていた。しかし,4か月後に角膜実質浮腫および上皮下浮腫が増悪し,視力も0.02×IOL(0.04×S-1.5D with P. H.×IOL)と低下したため,2002年1月に全層角膜移植術を施行した。

 術後経過は良好で,視力は0.5p×IOL(1.0×IOL)と向上し,自覚症状も改善した。また,移植片の内皮細胞数も2,364 cells/mm2と現在のところ良好に保たれている。

緑内障手術手技・6

線維柱帯切開術(6)

著者: 黒田真一郎

ページ範囲:P.1774 - P.1777

内側フラップの切除

 シュレム管外壁開放術(サイヌソトミー)を併用する場合,内側フラップを切除する必要がある。線維柱帯切開術(トラベクロトミー)だけを行う場合は切除する必要はない(先天緑内障などでシュレム管外壁開放術を併用しない場合)。

 切除する場合はシュレム管の上方に強膜窓を作製するため,フラップ幅のシュレム管外壁全体が切除される必要がある。したがって,内側フラップを切除する場合はできるだけ角膜寄りで(理想的にはシュレム管のちょうど角膜側の部位)切除することが望ましい。この操作を行う場合,できるだけ角膜側で切除しようとして,フラップを強く引っ張り過ぎると内壁が破れてしまう。フラップを角膜側へ折り曲げるようにして切除すると,破れる心配が少ない(図1)。鑷子で掴む方向は,手を角膜側に持っていき角膜側から掴むようにするとよい。

 確実にシュレム管外壁を切除するためには,フラップをシュレム管を超えて少し角膜側まで線維柱帯組織と剝離した後に切除するようにするとよい。フラップのシュレム管外壁の部位を角膜側へ軽く押すようにして線維柱帯組織とフラップを剝離する(図2)。この剝離した隙間にブレードを入れ,切り上げるようにしてフラップをより角膜側まで進めて行く(図3)。フラップを折り曲げ,できるだけ角膜寄りの部位で切除するようにする(図4)。

私のロービジョンケア・8

就学における眼科医療の役割

著者: 高橋広

ページ範囲:P.1778 - P.1785

 文部科学省は,視機能の障害(visual impairment)の程度によって就学を決めるように指導してきたが1),「21世紀の特殊教育の在り方について」2)や「今後の特別支援教育の在り方について」を公表し,1人1人の教育的ニーズに応じた特別な支援のあり方の指針を示した(図1)。これに伴い,学校教育法施行令の一部改正が2002年4月になされた(14文科初第148号)。その結果,一貫した相談支援体制の整備,就学基準の見直し(表1),就学手続きの見直し(図2)と就学指導委員会の役割の充実が図られるようになってきた。教育委員会も専門家の意見を聴くものとなり,就学に際し眼科医からの助言の重要性が増した。そこで,今回は,眼科医療が就学問題にどのように寄与していくべきかを考えてみよう。

あのころ あのとき 36

眼科外来処置台物語

著者: 林文彦

ページ範囲:P.1786 - P.1788

はじめに

 「発明・発見ものがたり」の原稿を気楽に引き受けてから,さて何をテーマにと考えてみた。白内障手術に関しては,手術用顕微鏡の導入に始まって,超音波吸引手術や眼内レンズなど,一応わが国の事情に先駆けていろいろやってきたつもりであるが,いずれも欧米の追試かわが国への普及にいささか貢献したに過ぎないようである。喜寿ともなって改めてわが眼科人生を振り返ってみると,学会や医会での気張った仕事よりも,むしろ手術者周りの工夫やビデオ,パソコンの導入など,ささやかな身の回りのアイデアが私の身上だったような気分である。

 数年前,学会の器械展示場を歩いていたら,あるブースの前で足が止まった。日本の代表的な椅子製造会社の製品展示である。私が昔から使っているような椅子があるので懐かしく眺めていたら,若い係員が寄ってきて,「この椅子は大変便利にできていて,狭いビル内の診療所でも手術や処置に盛んに使われていますよ」と説明して,起こしたり倒したりしてみせてくれた。「フンフン」と頷きながら聴いていて,いまさらながら40年の歳月の移ろいを噛みしめていたのである。

他科との連携

時間外総合診療部

著者: 阿部考助

ページ範囲:P.1790 - P.1791

はじめに

 本欄への原稿を依頼され簡単に引き受けたのですが,以前に書いておられるものをみますと内容が濃く,こんなことはとても書けない気がしました。日常の診療では目の奥の痛みを耳鼻咽喉科へ,眼瞼の皮疹を皮膚科へ,内反症・吹き抜け骨折・眼瞼下垂を形成外科へ,小児のぶどう膜炎を小児科へ,その他神経内科,脳外科などすべての科に連携というよりも大変お世話になっています。また逆に内科,形成外科,脳外科,小児科などから紹介されてくることもあります。特に内科からはインターフェロン投与中の眼底チェック,小児科からはネフローゼ症候群などでステロイド投与中の患児の眼科的な副作用のチェックをよく依頼されます。でも皆さんが経験のあることだと思いますし,とても字数が埋まりません。そこで最近私の周囲の眼科医にとってとても悩ましい出来事について書いてみます。「他科との連携」というよりも,「他科へのつなぎ」ということになりますがご容赦ください。

臨床報告

脈絡膜出血への手術治療

著者: 陳介任 ,   篠田肇 ,   江下忠彦 ,   北村静章 ,   篠田啓 ,   井上真

ページ範囲:P.1803 - P.1807

要約 目的:術中または術後に発症した脈絡膜出血への手術成績の検討。対象と方法:過去2年間に脈絡膜出血に対して手術を行った7例7眼につき,発症の危険因子,術後の網膜復位率,術後視力を検討した。年齢は49~89(平均70)歳であった。結果:脈絡膜出血の発症時期は,硝子体手術中2眼,硝子体手術後3眼,白内障手術中1眼,白内障手術後1眼であった。危険因子は,65歳以上の高齢6例,高血圧6例,糖尿病3眼,26mm以上の眼軸長1例,術中低眼圧2例であった。脈絡膜出血の除去は5眼で硝子体手術の強膜創を通じてのみ行い,2眼ではさらに強膜切開を加えた。7眼中6眼で網膜復位が得られた。最終視力は,術前に比べて5眼で維持または改善した。結論:術中生じた脈絡膜出血には積極的に手術を行うべきである。

PMMA眼内レンズのcrystalline opacification

著者: 佐藤孝樹 ,   浅田幸男 ,   菅陽子 ,   柴宏治 ,   齋藤伊三雄

ページ範囲:P.1809 - P.1813

要約 過去に当院で白内障手術を82歳と85歳女性の両眼に行った。術式は水晶体囊外摘出術と眼内レンズ挿入術である。IOPTEX社製のPMMA眼内レンズ(モデルUVL304-01)を使用した。手術から約10年後に視力低下で再受診した。1例には両眼,他の1例には左眼の眼内レンズに混濁が生じていた。3眼とも混濁は顆粒状で,眼内レンズの全層にわたり,特にその光学部に強かった。移植された眼内レンズに劣化または混濁が生じ得ることを示す症例であり,眼内レンズ移植後の患者には生涯にわたる観察が望まれる。

無散瞳下眼科検診における検出率

著者: 野村征敬 ,   清水律子 ,   村上智宣 ,   添田祐 ,   今田昌輝 ,   溝手秀秋

ページ範囲:P.1815 - P.1818

要約 目的:広島県の某総合病院で行った人間ドックでの眼疾患検出率の報告。方法:過去6年間に総計1,815名が健康診断を受けた。年齢は21~87歳(平均49歳)であった。眼科検診では,眼圧と視力測定,細隙灯顕微鏡による前眼部の診察,無散瞳下での倒像眼底検査を実施した。結果:高血圧動脈硬化性眼底が4.79%,白内障が4.19%,視神経乳頭陥凹の拡張が1.43%,高眼圧症が0.66%,格子状赤道変性が0.88%,黄斑変性が0.28%に発見された。結論:病院が山間部にあり,受診者の多くが自家用車で来院するために無散瞳下での眼底検査を行ったが,眼底周辺部や黄斑疾患の検出率が実際よりも低いと推定された。

アルガトロバン点眼がフィブリン抑制に有効であった穿孔性眼外傷の2例

著者: 川﨑史朗 ,   上甲武志 ,   大橋裕一

ページ範囲:P.1819 - P.1822

要約 穿孔性眼外傷後に瞳孔領にフィブリンが出現し,眼底管理が困難になった2症例に,フィブリンを消退させ眼底の視認性を得る目的で,アルガトロバン0.05%の点眼を行った。症例1は受傷翌日から前房にフィブリンが出現し,アルガトロバン点眼を1日6回点眼した。投与3日後からフィブリンは減少し,6日後に消失した。症例2は硝子体内に異物を認め,硝子体手術を行った。術翌日からフィブリンが出現し,アルガトロバンを1日4回点眼した。点眼開始から6日後にフィブリンは減少し,10日後に消失した。抗凝固作用による出血や点眼液の眼刺激症状などの副作用はなかった。感染などでステロイドの使用が困難な症例ではアルガトロバン点眼は有用な治療手段である。

眼内組織の病理組織学的検索により診断が確定したサルコイドーシスの1例

著者: 村瀬耕平 ,   後藤浩 ,   山内康行 ,   臼井正彦

ページ範囲:P.1823 - P.1826

要約 目的:硝子体手術で採取した眼内組織の病理学的検索でサルコイドーシスの診断が確定した症例の報告。症例:51歳の女性が十数日前からの霧視と飛蚊症で受診。両眼に豚脂様角膜後面沈着物,虹彩と隅角に結節,眼底に蝋様の滲出斑があった。ツベルクリン反応が陰性である以外に全身検査で異常はなかった。初診から45か月後に黄斑上膜による視力障害が左眼に生じ,硝子体手術を行った。結果:採取した黄斑上膜に付着する硝子体混濁から,巨細胞を含む類上皮細胞肉芽腫が検出され,サルコイドーシスの診断が確定した。結論:全身検査所見がサルコイドーシスの診断基準を満たさない症例でも,眼内組織の病理学的検索で確定診断が得られる事例がある。

眼圧測定法による眼圧値の差の要因

著者: 忍田章子 ,   山崎芳夫 ,   石橋生朗 ,   早水扶公子 ,   中神尚子 ,   田中千鶴

ページ範囲:P.1827 - P.1830

要約 目的:非接触式眼圧計(NCT)とGoldmann圧平眼圧計(GAT)による眼圧測定値が異なる要因の解明。対象と方法:一般外来患者114例228眼について,NCTとGATによる眼圧,瞼裂幅,角膜厚を測定した。結果:NCTとGATによる眼圧値には有意の相関があった。右眼についてはr=0.802,p<0.000,左眼についはr=0.881,p<0.000である。NCTとGATによる眼圧測定値の差は角膜厚と有意に相関した。右眼についてはr=0.300,p=0.026,左眼についてはr=0.318,p=0.020である。瞼裂幅と2方法による眼圧測定値とには相関がなかった。結論:角膜厚はNCTによる眼圧測定値に影響する因子である。

増殖糖尿病網膜症の硝子体手術適応

著者: 植木麻理 ,   南政宏 ,   今村裕 ,   佐藤文平 ,   池田恒彦

ページ範囲:P.1831 - P.1834

要約 糖尿病網膜症に対して過去1年間に行った初回硝子体手術の成績を検索し,増殖糖尿病網膜症への硝子体手術の適応を検討した。対象は94例122眼で,黄斑部牽引性網膜剝離36眼,黄斑下牽引性網膜剝離32眼,硝子体出血のみ43眼,びまん性黄斑浮腫11眼であった。術後6か月の時点での視力は,2段階以上の改善76眼(68%),不変22眼(20%),悪化13眼(12%)であった。術後最終視力は,0.1未満が33眼(29%),0.1~0.7が72眼(57%),0.7以上が17眼(15%)であった。視力が悪化した13眼中6眼と,最終視力が0.1未満の33眼中15眼が黄斑部牽引性網膜剝離であった。増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術は,網膜剝離が黄斑に達する前に行うことが望ましいことを示す所見である。

今月の表紙

コロイデレミア

著者: 山崎伸吾 ,   根木昭

ページ範囲:P.1765 - P.1765

 症例は39歳男性。中学生の頃に夜盲を自覚し,約10年前より視力障害と視野異常を自覚していた。家族歴は,男性の同胞2人が他医にて網膜色素変性症と診断されているが詳細不明である。当科初診時の矯正視力は右眼前手動弁,左1.0である。前眼部,中間透光体は両眼とも異常なし。眼底は両眼の後極部から周辺部に及ぶ著しい網脈絡膜萎縮がみられた。ゴールドマン視野は右測定不能,左は中心5°のみ残存していた。網膜電図(ERG)はシングルフラッシュ,桿体系,錐体系ともにnon-recordableであった。フルオレセイン蛍光眼底造影では,脈絡膜毛細管板の萎縮のため,眼底全体に脈絡膜中大血管が明瞭に透見された。左眼黄斑部だけは,いまだ萎縮が及んでおらず,島状に背景蛍光が認められている。

 コロイデレミア(choroideremia)はX染色体性遺伝であり,母親が保因者になり男子に発病する。本症は1872年Mauthnerにより最初に報告され,choroideremiaは「脈絡膜の欠如」という意味があるが,実際には「欠如」ではなく進行性の変性疾患である。網脈絡膜萎縮を広く記録するため後極部より中間周辺部までパノラマ撮影を試みた。脈絡膜毛細管板の萎縮によりフルオレセイン蛍光眼底造影では普段観察されることの少ない脈絡膜中大血管を,あたかもインドシアニングリーン蛍光眼底造影像をみているかのごとく観察することができる。

やさしい目で きびしい目で 48

先輩に学ぶ

著者: 岩橋佳子

ページ範囲:P.1795 - P.1795

 このエッセイのお話をいただいたとき,迂闊にもこのコラムの存在を知らなかった私は,皆さんどんなことを書いておられるのだろうかとあわてて過去の雑誌をひもといてみた。すると諸先輩方はさすがにすばらしいことを書いておられて,思わず病院地下の書庫に座り込んで熟読してしまった。

 なかでも印象に残ったのは,各先生方がまだ新米の頃,先輩の先生から受けたさまざまな指導のエピソードである。現在眼科の世界で活躍しておられる各先生方にはすばらしい先輩との出会いがあり,それが大切に生かされてきたことが現在のご活躍につながっているのだということがよくわかった。

ことば・ことば・ことば

ローマ数字

ページ範囲:P.1799 - P.1799

 日本眼科学会雑誌の欧文名は,昔はドイツ語でした(Zeitschrift der Japanischen Ophthalmologischen Gesellschaft)。

 昭和2年(1927)からラテン語になりました(Acta Societatis Ophthalmologicae Japonicae)。これと同時に,本文が縦書きから横書きに変わりました。その後も本文は「漢字混じりのカタカナ」でしたが,昭和21年(1946)から「ひらがな」になっています。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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