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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科57巻2号

2003年02月発行

文献概要

やさしい目で きびしい目で 38

多くの人との出会い

著者: 岩瀬愛子1

所属機関: 1多治見市民病院

ページ範囲:P.151 - P.151

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 日本緑内障学会は,平成12(2000)年から13(2001)年に,岐阜県多治見市で,緑内障の疫学調査を兼ねた大規模な眼科検診を実施した。この検診は,1人でも多くの方の検診を受ける機会になれば,という眼科医としての切なる思いを込めると同時に,疫学調査として「無作為抽出対象者」の受診率を国際基準以上(最低でも75%以上)にするという課題を持って準備が進められた。啓蒙活動として,三嶋弘先生,阿部春樹先生には市民シンポジウムにご参加いただき,また,新家眞先生,桑山泰明先生には市民講座を実施していただく,という夢のようなイベントも実行した。広報活動にはあらゆる手段を使った。検診器材は無散瞳眼底カメラ4台をはじめ,1日に約650人を検診できる体制を整えた。いざ開始してみると,整理券の配布は午前8時半から始まるにもかかわらず,早朝5時から希望者の列ができ始め,受診希望に添えない人もでるほどの盛況ぶりであった。しかしながら,日が経つにつれて無作為抽出対象者にあたる方の受診率は伸び悩み,半年経った時点で26.4%と目標にはほど遠い数値であった。また,朝から並んで検診に来られた熱心な検診希望者ほど,自覚症状の強い眼の疾患のある方が多く,有病率にバイアスがかかっているのは明らかであった。無作為対象者への受診のお願いは,手紙などで何度も行い,忙しい人には夜間診療で対応した。しかし検診に興味のない人からはさまざまな理由で受診を拒否され,期間後半には,100人に声をかけたとすると,やっと1人が受診するといった状況もあった。そんな中では,たとえ1人の希望者であっても貴重であった。

 住民票は市内にあるが,家族の都合で県外の介護施設で暮らしているという方から検診の希望があった。片道3時間かけて器械を持って伺った。「もう3年帰ってない。自宅に帰りたい。」などの会話を交わしながら所定の検査を行った。検査を終えて帰ってくる時には,名残惜しそうであった。結果がnpだったのが幸いだった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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