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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科57巻4号

2003年04月発行

文献概要

連載 日常みる角膜疾患 1

蚕食性角膜潰瘍(Mooren's ulcer)

著者: 齋藤淳1 西田輝夫1

所属機関: 1山口大学医学部分子感知医科学講座眼科学

ページ範囲:P.412 - P.415

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症例

 患者:69歳,男性

 主訴:両眼の眼痛と視力低下,羞明

 現病歴:4か月前に右眼に泥が飛入し,右眼の充血および眼痛が生じたため近医を受診し,点眼治療を受けたが改善しなかった。徐々に左眼にも同様の症状が出現したため,他医を受診し,抗生物質,抗真菌薬,抗ウイルス薬の投与および治療用ソフトコンタクトレンズの装用が行われたが,症状が増悪したため,山口大学医学部附属病院眼科に紹介され受診した。

 既往歴・家族歴:特記すべきことはない。

 初診時所見:視力は右0.02(0.15),左0.15(0.3)で,両眼の角膜は浮腫状で,角膜辺縁部に全周性の下掘れ状の角膜潰瘍を認め,特に右眼で潰瘍部の菲薄化が著明であった。両眼に強い球結膜充血と粘稠な眼脂がみられ,右眼では12時および9時の角膜潰瘍部に血管侵入が認められた(図1,2)。中間透光体および眼底に異常はなかった。CRP 0.28mg/dl(正常値0.0~0.25mg/dl),リウマトイド因子は陰性,ANAは陰性,C-ANCAなどその他の自己免疫抗体も陰性であった。

 治療および経過:即日入院のうえ,リンデロン(R)点眼,タリビッド(R)点眼をそれぞれ1日4回と,ネオメドロール(R)眼軟膏を就眠前に1回の投与を開始した。3日後から眼脂の減少と球結膜充血および角膜浮腫の軽減と眼痛などの自覚症状の改善がみられたが,右眼は潰瘍の菲薄化が入院時よりすでに著明であったため,入院後4日目に右眼の結膜切除術と潰瘍底掻爬術を施行した。手術ではマイクロ剪刀で角膜輪部から3mmの切除範囲で結膜を全周性にわたり切除した後,潰瘍底の掻爬および結膜下組織の剝離を施行した。術中摘出結膜組織標本には好中球および形質細胞の浸潤が認められた(図3)。術翌日から右眼の島状に残った角膜上皮が脱落し,術後3日目には広範囲にわたる上皮欠損が出現したため,上皮の再被覆を促進する目的でフィブロネクチン点眼を右眼に1日4回で開始した。術後10日目に潰瘍部は上皮の再被覆が得られた。入院後3週間目には左眼にも同様に結膜切除術を施行した。手術では,9時から11時までの輪部から1.5mmの切除範囲で,6時から9時までの輪部から3mmの切除範囲で結膜を切除した。術後,左眼も右眼と同様に島状に残った角膜上皮が脱落したが,フィブロネクチン点眼と治療用ソフトコンタクトレンズの装用により潰瘍は鎮静化し(図4,5),入院後50日で両眼とも角膜上皮の再被覆が完了した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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