icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科57巻5号

2003年05月発行

文献概要

特集 第56回日本臨床眼科学会講演集 (4)

角膜表面バイオフィルム形成から前房蓄膿性角膜潰瘍に至った兎眼の1症例

著者: 堅野比呂子1 八田史郎1 石倉涼子1 井上幸次1

所属機関: 1鳥取大学医学部視覚病態学

ページ範囲:P.799 - P.803

文献購入ページに移動
要約 58歳男性が兎眼に伴う左眼角膜の菲薄化で紹介され受診した。32歳のとき,両眼に眼瞼下垂手術を受けていた。10年前に筋の生検でミトコンドリア筋症(Kearns-Sayre症候群)と診断された。矯正視力は右0.6,左手動弁であり,閉瞼に努力しても瞼裂幅が右2mm,左4mmであった。全眼筋麻痺があり,瞬目が不可能であった。左眼角膜は中央部で菲薄化し,突出していた。初診の2か月後に左眼角膜に白色塊が生じ,その3か月後に角膜が穿孔し,前房蓄膿が続発した。薬物治療では十分な効果が得られなかった。さらに増大した白色塊の組織学的検索でグラム陽性の桿菌が検出され,PAS染色陽性で,細菌によるバイオフィルムと考えられた。白色塊の除去で前房蓄膿は消退し,初診から18か月後の現在まで再発はない。全眼筋麻痺がある兎眠性角膜炎では,眼表面にもバイオマテリアルの介在なくバイオフィルム形成がありうることを示す症例である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?