文献詳細
文献概要
連載 日常みる角膜疾患 3
シールド潰瘍
著者: 福田憲1 熊谷直樹1 西田輝夫1
所属機関: 1山口大学医学部分子感知医科学講座眼科学,眼病態学講座
ページ範囲:P.932 - P.934
文献購入ページに移動患者:22歳,男性
主訴:両眼の眼痛と視力低下
現病歴:1か月前から両眼の眼脂およびそう痒感を自覚したため,近医を受診し,点眼治療を受けたが改善しなかった。5日前から両眼の眼痛も自覚したため当科を紹介され受診となった。
既往歴:3歳ごろから春季カタル,17歳ごろからアトピー性皮膚炎。
初診時所見:視力は右0.15(0.6×S+12.0D()cyl-2.0D Ax30°),左0.06(0.2×S+4.5D)で,両眼の上眼瞼結膜に巨大乳頭,強い充血および浮腫を認めた。両眼の角膜に落屑様の上皮障害と表層の血管侵入を,左眼には類円形の潰瘍を認めた。両眼に球結膜充血および浮腫と粘稠な眼脂がみられた(図1a)。中間透光体および眼底に異常はなかった。末梢血好酸球は8.3%,血清IgEは4,160IU/mlであった。
RASTすぎ,ヤケョウヒダニ,ハウスダスト1:クラス6以上で,眼脂中に多数の好酸球が認められた(図2)。
治療および経過:0.1%リンデロン(R)点眼,インタール(R)点眼およびクラビッド(R)点眼をそれぞれ1日4回の投与で開始した。1週後,眼痛,そう痒感,眼脂などの自覚症状は消失した。上眼瞼結膜の巨大乳頭はやや平坦化し,充血・浮腫も軽減した。両眼の落屑様の角膜上皮障害は消失し,左眼の潰瘍は縮小した(図1b)。視力は両眼とも矯正1.0まで改善した。2週後,上眼瞼結膜の巨大乳頭はさらに平坦化し,充血・浮腫も軽減した。左眼角膜の潰瘍も消失した(図1c)。
掲載誌情報