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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科57巻7号

2003年07月発行

文献概要

連載 日常みる角膜疾患 4

甲状腺眼症

著者: 川本晃司1 西田輝夫1

所属機関: 1山口大学医学部分子感知医科学講座(眼科学)

ページ範囲:P.1174 - P.1177

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 症 例

 [症例1]

 患者:59歳,男性

 主訴:両眼の視力低下と複視

 現病歴:2002年1月に,両上眼瞼の腫脹と正面視において複視を自覚するようになり,近医眼科から紹介されて当科を受診した。2002年6月24日に精査と加療を目的で当科へ入院となった。

 既往歴・家族歴:甲状腺機能亢進症

 初診時所見:視力は右0.6(0.8×+1.5D()cyl-2.0D Ax130°),左0.4(矯正不能)で眼圧は右18mmHg,左16mmHgであった。両上眼瞼の硬性浮腫,眼瞼腫脹および閉瞼障害を認めた(図1a)。細隙灯顕微鏡検査において両眼球結膜の充血と,下方角膜にフルオレセインで染色される点状表層角膜症(A1D2)を認めた。眼底検査では,両眼の乳頭浮腫および網膜皺襞と右眼の乳頭出血を認めた。眼球突出度は,右16mm,左20mmで,Hess試験では両眼の高度な上転障害がみられた。眼窩部MRIでは,両眼の4直眼筋の著明な肥大を認めた(図1b)。甲状腺機能亢進症の既往と上記検査所見から甲状腺眼症と診断した。

 治療および経過:2002年5月26日からステロイドパルス療法(ソル・メドロール1,000mg)を開始した。第1クール施行後,両上眼瞼の硬性浮腫およぴ眼球突出に改善がみられた(右15mm,左18mm)。第2クール施行後,両眼の網膜皺襞は消失し,MRI検査では,上下および内外の直筋の肥厚が軽減し,眼球運動障害も改善した。これらに加え上眼瞼の腫脹が軽減すると閉瞼障害も改善され,それに伴い角膜障害も治癒し,視力も右1.0(矯正不能),左1.0(矯正不能)に回復した。以後,甲状腺眼症の再発はなく,外来で経過観察中である。

 [症例2]

 患者:53歳,女性1)

 主訴:両眼の眼痛と視力低下

 現病歴:1995年10月2日,両眼の眼痛および視力低下を自覚したため,当科を受診し,甲状腺機能亢進症に伴う両眼の悪性眼球突出症の診断で,入院となった。

 既往歴:Graves病のため半年前からメルカゾール(R)を内服中である。

 初診時所見:視力は右0.05(矯正不能),左0.08(矯正不能),眼圧は右18mmHg,左17mmHg,眼球突出度は両眼とも21.5mmで,両眼瞼は腫脹し閉瞼不能であった。細隙灯顕微鏡で両眼の角膜潰瘍,高度の結膜充血および結膜浮腫,前房内炎症を認めた。

 治療および経過:入院後,メルカゾール(R)内服により甲状腺機能は正常化した。外眼筋肥大に対しステロイドパルス療法を開始したが,眼球突出は進行し(両眼25mm),放射線治療(20 Gy)により突出度は両眼19mmに改善されたが,依然閉瞼は不能で,角膜潰瘍の改善もみられなかった。1996年3月22日に聖隷浜松病院に転院し,両眼の眼窩減圧術,Muller筋延長術および左眼の眼瞼形成術を施行した。術後眼球突出は改善し,結膜浮腫および眼瞼腫脹も軽快した。山口大学医学部附属病院に帰院後,角膜保護薬および抗生物質の点眼により両眼の角膜潰瘍は治癒したが,角膜中央部に混濁が残存した。その後,右眼視力は0.4(矯正不能)に改善したが,左眼視力は0.03(矯正不能)であった。1998年7月29日に,左眼の視力改善を目的に左眼全層角膜移植術(受容角膜径7.5mm,提供角膜径7.75mm)を施行し,拒絶反応などの合併症はみられず左眼の視力は0.5(矯正不能)まで回復した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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