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角膜に刺さった鉄粉の表面を覆う涙の溶存酸素濃度差が鉄粉表面に電位差を生み通気差電池をつくる。電池は電気化学反応で水酸化ナトリウムを生成し鉄粉に触れる角膜を溶解する。続いてその部分を水酸化第一鉄が充填して錆輪をつくる。鉄粉の組成,大きさ,角膜上にとどまった時間の組み合わせでいろいろな形の錆輪になるため,多彩な細隙灯顕微鏡像を呈し,多様な臨床症状をつくり,摘出の難易の度合いを決める。数日を経ると錆輪の周囲が溶けて錆輪はフィブリン膜で包まれて摘出は容易になるが,ボーマン層が破壊され濃い混濁を残す。人類が鉄を加工する術を会得したときから変わらない病態であるが,外眼部鉄錆症としての学術的知見は少ない1~3)。最近になり錆輪生成の機序を電気化学的に解明したことで角膜鉄粉異物の臨床所見を一元的に説明できるようになった15)。
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