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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科58巻1号

2004年01月発行

雑誌目次

連載 今月の話題

アデノウイルス結膜炎はなぜ流行するのか

著者: 青木功喜

ページ範囲:P.9 - P.14

 Epidemic keratoconjunctivitis(EKC)として日本の眼科医療になじみの深いEKCは,最近の進歩により,従来の臨床診断から病因診断に流れを変えている。すなわち,EKCの臨床診断名はretrospective criteriaであり,実際の初期診断には実際的ではない。このため多発や院内感染につながることもある。この感染を防止するには,アデノウイルスを検出することが必須であり,さらになぜアデノウイルスが結膜に特異的に親和性を示し結膜炎の原因になるのかを,さらには流行につながっていく背景を知ることが大切である。最近のウイルスの分子生物学の研究の進歩は,アデノウイルスの病因診断が臨床レベルに還元できるまでになり,さらにウイルスの構成部位別の変異が遺伝子系統解析で可能になり,ウイルス自体の変異についても多くの情報が集積されてきている。そこでアデノウイルスの流行について述べる。

眼の遺伝病53

FSCN2遺伝子異常と網膜変性(5)

著者: 和田裕子 ,   玉井信

ページ範囲:P.16 - P.18

 前回のシリーズと同様に,FSCN2遺伝子異常をもつ常染色体優性黄斑変性の1家系の臨床像を報告する。FSCN2遺伝子異常とその臨床像のシリーズをまとめてみると,allelic heterogeneityが存在する。

眼科図譜343

結膜異物としての毒針毛

著者: 松原稔

ページ範囲:P.20 - P.22

 毒毛虫による眼障害は,虫体が眼球に衝突してその毒針毛が眼球に刺さる眼球型と,塵になった毒針毛が風に吹かれて結膜に刺さる結膜異物型とがある1)。どちらも毒針毛が刺さることで発症するが,臨床症状と予後は大きく異なる1,5)

 結膜異物型では角膜刺激症状が主訴となるが,強い疼痛が特徴である。当初,線状擦過傷で始まり,漸次癒合してフルオレセインに濃染する角膜上皮障害になる(図1~3)1,6)

日常みる角膜疾患10

格子状角膜ジストロフィ

著者: 森重直行 ,   山田直之 ,   西田輝夫

ページ範囲:P.24 - P.27

 症例

 患者a:46歳,男性

 初診:1998年11月

 現病歴:主訴は両眼の視力低下。40歳頃より視力低下と眼痛発作を繰り返してきた。初診時,視力は右眼0.02,左眼0.02,眼圧は右眼12mmHg,左眼11mmHgであった。両眼角膜実質浅層から中層にかけて細い線状混濁(lattice line)と角膜中央部の円形の上皮性混濁を認めた(図1a)。1999年6月に左眼,2002年2月に右眼の全層角膜移植を施行された。

緑内障手術手技・7

Advanced NPT(1)

著者: 黒田真一郎

ページ範囲:P.28 - P.31

 セッティング

 NPT(Advanced NPT)のセッティングは,トラベクロトミーの場合とほとんど同様に考えればよい。

 ベッド・顕微鏡,制御糸

 NPTは濾過胞を作成する濾過手術であるため,下方からのアプローチは行わない。顕微鏡,座る位置を調節した後,制御糸を上直筋付着部にかける。今後の濾過手術が可能となるように,3時,または9時方向に振ってアプローチする。

私のロービジョンケア・9

ロービジョンケアと学校医

著者: 高橋広

ページ範囲:P.32 - P.38

 柳川リハビリテーション病院眼科(以下,当科)にて2000年1月~2003年6月の3年6か月間にロービジョンケアを受けた6~18歳の視覚障害児44例の在籍校は,普通学校27例(61%),盲学校10例(23%),聾学校2例(5%),養護学校5例(11%)であった。彼らの視力の分布は,検査ができなかったものが3例(7%)で,失明(指数弁以下)5例(11%),0.02以下2例(5%),0.1未満5例(11%),0.3未満11例(25%)で,0.3以上が18例(41%)と最も多かった。視力0.02以下の小・中学生7例と高度の視野障害の高校生2例が盲学校に通学し,ほかは視覚を用いて学習していた。このように,普通学校には視覚障害児が通っている可能性が大であるが,彼らが実際どの程度普通学校にいるかは不明である。

 前回述べたごとく1),1人ひとりの教育的ニーズに対応するため,視覚障害児の教育措置基準などの見直しなどが行われ,専門家である眼科医に助言を求められるようになった。そこで,今回は眼科医,特に眼科学校医のロービジョンケアでの役割について考えてみる。

あのころ あのとき37

デジタルプレゼンテーション事始め

著者: 林文彦

ページ範囲:P.40 - P.42

 昔々,私が学会に面を出すようになってから,内容の良し悪しはさることながら発表形式のスマートさが講演の評価にかなりの影響があると感じるようになった。おかげでモノクロからカラースライドへの転換,手術の会におけるビデオの導入など,変わり目にはいち早く参加する羽目になったのである。

 最近の学会ではパソコン利用のデジタルプレゼンテーションが常識となり,昨年の仙台における日眼の「20世紀眼科学の総括」に至っては,デジタルが発表の条件になる始末である。有為転変は人の世の常とはいえ,これにも最初から関係してきた私にとって,ここ数年の動きは目まぐるしいばかりである。

他科との連携

専門領域を越えたお付き合い

著者: 東原尚代

ページ範囲:P.44 - P.46

 ちょっといい話 その1「アカントアメーバ角膜炎」

 装っても無駄ですぞ!

 ある日の外来。他院からアカントアメーバ角膜炎の疑いで患者さんが受診されました。前医のドクターは当初,円板状角膜炎の診断で治療されましたが,投薬にもかかわらず悪化していることからアカントアメーバ角膜炎を疑われたようでした。

 細隙灯顕微鏡検査での所見は,強い毛様充血と角膜浮腫を伴った角膜中央部の強い混濁があり,確かに円板状角膜炎に酷似しています。しかし,よく観察しますと,角膜神経への細胞浸潤(radial keratoneuritis)があります。これは間違いないようです。

 「アメーバ君,装っても無駄ですぞ! その姿を暴いてみせましょう!」

解説

未熟児網膜症に関する正しい知識と理解を望む

著者: 馬嶋昭生

ページ範囲:P.58 - P.60

 1.はじめに

 日本でも未熟児網膜症(retinopathy of prema-turity:ROP)に対する硝子体手術が普及した反面,基礎的な教育がおろそかになってきたことが一部の識者から指摘されている。そのためか2001年末から,ROPの特集が「あたらしい眼科」1)と「日本の眼科」2)に組まれた。しかし厚生省分類や国際分類の設立に直接参加し貢献した眼科医も第一線を退く人が次第に多くなったためか,これらの特集に共通していえることは,現在活躍中の執筆者による記載に誤記や誤解があり,その後本「臨床眼科」誌に掲載された論文などにも誤りをそのまま踏襲した記載がみられるようになった。筆者は,国際分類設立委員会の日本委員3名のオーガナイザとして全4回の会議に出席した責任上,その経過と解説を1986年に詳しく報告3)し,1994年に全邦訳4)を表と図譜で示し,その後も論文や成書に記載したが,この解説が若い研究者や臨床医にとって,正しい知識と理解の啓発に役立つことを期待する。

臨床報告

前房水中のトランスフォーミング成長因子β2濃度の検索

著者: 馬嶋清如 ,   山本直樹 ,   糸永興一郎 ,   桐渕恵嗣 ,   犬塚裕子 ,   波木京子

ページ範囲:P.61 - P.64

 白内障手術中に得られた前房水中の総トランスフォーミング成長因子β2(TGF-β2)濃度を定量し,加齢とそのほかの眼疾患の合併の影響を検索した。対象は17~88歳までの96例96眼である。内訳は,白内障以外に眼疾患がない73例,治療中の開放隅角緑内障8例,糖尿病網膜症10例,アトピー白内障5例である。TGF-β2値は加齢とともに低下し,アトピー白内障では低く,開放隅角緑内障と汎網膜光凝固が行われている糖尿病網膜症では高値を示した。加齢,アトピー白内障,汎網膜光凝固が行われている糖尿病網膜症がTGF-β2値に影響することは新知見であり,留意されるべきである。

Alternaria属による角膜真菌症の2例

著者: 鈴木崇 ,   宇野敏彦 ,   水戸毅 ,   宮本仁志 ,   砂田淳子 ,   浅利誠志 ,   大橋裕一

ページ範囲:P.65 - P.69

 黒色糸状菌の1つAlternaria属による角膜真菌症の2症例を経験した。1例は70歳男性で農作業中にみかんの枝で右眼を受傷した。細菌性角膜炎の診断で治療を受けたが改善せず,受傷10週後に受診した。右眼視力は0.09で,角膜潰瘍と実質の浸潤があった。角膜擦過物に菌糸が認められ,角膜真菌症と診断した。ミコナゾールの点眼などで治療し,3週間後に角膜潰瘍と浸潤は消失し,1.0の最終視力を得た。ほかの1例は70歳女性の農業従事者で,左眼の角膜ヘルペスとして治療を受けたが改善せず,発症から6週後に受診した。左眼視力は0.06で,角膜潰瘍と実質の浸潤があった。ミコナゾールの点眼などで治療し,3週後に角膜潰瘍と浸潤は消失し,0.6の最終視力を得た。両症例とも経過中に角膜擦過物の培養で糸状菌が分離され,Alternaria属と同定された。両症例に共通した所見として,角膜潰瘍の辺縁が不整で浸潤が角膜浅層に限局し,前房蓄膿がなく,進行が緩除であり,さらにアゾール系とポリエン系の抗真菌剤によく反応した。

長時間の遮閉により検出された上斜筋麻痺の回旋斜位

著者: 平井美恵 ,   堀川晶代 ,   古瀬尚 ,   長谷部聡 ,   大月洋

ページ範囲:P.71 - P.74

 一般に遮閉眼は遮閉前の状態に比べて斜位を呈し,これは生理的な安静位に関係するとされている。片眼を遮閉することで眼球の前後軸まわりに生じると思われる安静位の回旋斜位を検討した。対象は特発性,または代償不全性上斜筋麻痺27名と正常者8名である。回旋斜位の量は,2時間の片眼遮閉の前後に走査型レーザー検眼鏡(SLO)で記録した眼底写真から計測した。上斜筋麻痺14名(52%)と正常者5名(63%)が遮閉後の外方回旋偏位を示した。回旋斜位の平均値は,上斜筋麻痺で2.01度,正常者で0.65度であった。上斜筋麻痺27例中11例(41%)が正常者の回旋斜位の平均値±3×標準偏差値を超える値を示した。長時間の片眼遮閉で生じた回旋斜位の平均値は,正常者よりも上斜筋麻痺で大であったが,回旋性の安静位の方向については両群ともに明確な傾向はなかった。

先天白内障に対してpiggyback眼内レンズ挿入法を施行した1例

著者: 中泉裕子 ,   阪本明子 ,   山田義久 ,   酒井真澄 ,   高橋信夫

ページ範囲:P.75 - P.79

 背景:幼児への眼内レンズ移植に適応が定まっていない現在,piggyback眼内レンズが有用である可能性がある。症例と経過:生後5か月の男児が右眼の白色瞳孔で受診した。右眼に後極白内障があり,眼軸長は右19.50mm,左20.56mmであった。右眼に白内障手術を行った。水晶体吸引ののち,+25Dの3ピースPMMA眼内レンズを挿入して囊内に固定し,続いて+17Dのアクリルレンズを囊外に挿入固定した。術後の屈折は予定通りの約-2Dであった。術後3か月目に-9Dの近視が生じ,追加挿入したアクリルレンズを摘出した。術後16か月後の現在,右眼の屈折は約+4Dであり,コンタクトレンズ装用での視力は左右差がなくほぼ0.3である。結論:眼球が成長期にある時期でのpiggyback眼内レンズ挿入は術後のコンタクトレンズ装用期間を短縮でき,屈折値の変化に応じて摘出できる有用な方法である。

Vogt-小柳-原田病へのステロイド治療中に急性壊死性膵炎を発症した1例

著者: 永山亜紀子 ,   高良由紀子 ,   岩岡泰志 ,   草野敏臣 ,   松尾圭 ,   小澤享史 ,   安見和彦

ページ範囲:P.81 - P.85

 56歳女性が3日前からの頭痛と視力障害で受診した。矯正視力は右0.6,左0.5であった。両眼に虹彩炎と漿液性網膜剝離があり,蛍光眼底造影で網膜下色素貯留があった。原田病と診断し,入院のうえベタメタゾン点滴を開始した。1日量を8mgとしたのち,3日後から10mgに増量した。点滴開始からベタメタゾン総量が84mgに達した10日目に腹痛が生じた。白血球が増加していた。さらに2日後に腹痛と腹膜刺激症状が悪化した。緊急試験開腹術を行ったところ,膵体と尾部が融解して膿瘍化していた。急性壊死性膵炎と診断し,膵体尾部と脾を合わせて切除した。以後の経過は良好で,夕焼け眼底となり,視力は回復した。因果関係は不明であるが,ステロイド薬の全身投与後に急性膵炎が起こり得ることを示す1例である。

発症までの自然経過を追えたretinal angiomatous proliferationの1例

著者: 松尾章子 ,   小池伸子 ,   木村徹志 ,   杉田威一郎 ,   森下清文 ,   斎藤伊三雄

ページ範囲:P.87 - P.91

 78歳女性が両眼の加齢黄斑変性として紹介され受診した。矯正視力は右0.6,左0.2であった。右眼には軟性ドルーゼンがあり,左眼には網膜出血と色素上皮剝離を伴う滲出型の加齢黄斑変性があった。初診から22か月後に右眼網膜出血で再受診した。矯正視力は0.7であった。明らかな色素上皮剝離と滲出性変化があり,蛍光眼底造影で網膜血管由来の過蛍光が網膜下にあり,retinal angiomatous proliferationの第2期と診断した。本邦で本症の第1期の報告が少ないのは,その進行速度が速いことがその一因である可能性がある。

硝子体手術により血流改善を認めた切迫型網膜動脈分枝閉塞症の1例

著者: 髙山良 ,   須田雄三 ,   妹尾正 ,   吉田紳一郎 ,   小原喜隆

ページ範囲:P.93 - P.97

 63歳女性が右眼視野欠損で即日受診した。心房細動と僧帽弁狭窄症があり,15年前からワーファリンを内服中であった。白内障があり,矯正視力は右0.6,左0.8であった。右眼の上耳側動脈起始部に狭細があり,切迫型網膜動脈分枝閉塞症と診断した。ウロキナーゼ点滴を6日間実施したが,血流障害が増悪し黄斑浮腫が増加した。発症から15日後に硝子体手術を行い,意図的に硝子体剝離を作製したあと,動脈狭細部をマッサージした。その1週間後から黄斑浮腫は徐々に軽減し,血流が改善した。0.9の最終視力を得た。切迫型網膜動脈分枝閉塞症に硝子体手術が奏効したと考えられる症例である。

黄斑部牽引性網膜剝離に進行したBloch-Sulzberger症候群に対する硝子体手術

著者: 今村裕 ,   大林亜希 ,   南政宏 ,   植木麻理 ,   廣辻徳彦 ,   佐藤文平 ,   池田恒彦 ,   山内一彦

ページ範囲:P.99 - P.103

 8歳女児が右眼視力低下で紹介され受診した。乳児期にBloch-Sulzberger症候群と診断されていた。矯正視力は右0.2,左1.2で,屈折,眼圧,前眼部などに格別の異常所見はなかった。右眼に滲出性網膜剝離と線維増殖膜による黄斑を含む牽引性網膜剝離があり,全周に網膜血管の形成不全があった。左眼には眼底全周に無血管野があった。右眼に経強膜冷凍凝固を行ったが滲出性変化は軽減せず,牽引性網膜剝離が進行したため,硝子体手術を行った。水晶体を切除したのち,後極部の増殖膜を剪刀で切開,除去し,周辺部に向かって後部硝子体剝離を作製した。周辺部の無血管領域では網膜硝子体剝離が強固であった。これにより網膜は復位し,手術の9か月後に矯正視力は術前の0.05から0.2に改善した。本症候群に伴う牽引性網膜剝離では,未熟児網膜症や家族性滲出性硝子体網膜症と同様に周辺部網膜無血管野の硝子体処理が困難であることが特徴的であった。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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