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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科58巻10号

2004年10月発行

文献概要

特集 第57回日本臨床眼科学会講演集 (8) 原著

有鉤囊虫による人畜共通感染症の1例

著者: 原田勇一郎1 直井信久1 名和行文2 原田一道3

所属機関: 1宮崎大学医学部眼科学教室 2宮崎大学医学部寄生虫学教室 3宮崎中央眼科病院

ページ範囲:P.1985 - P.1988

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 50歳男性が5年前からの左眼視力低下で受診した。患者は中国黒龍江省に住み,屠殺業に従事していた。矯正視力は右1.2,左光覚弁であった。左眼には虹彩後癒着と白内障があり,眼底は透見不能であった。超音波検査で水晶体の後方に反射が強い腫瘤があった。血液検査で好酸球が7.4%と高く,寄生虫への抗体価が上昇していた。CT検査で左前頭葉に径15mmの囊胞性腫瘤があり,硝子体内と頭蓋内の寄生虫感染が疑われた。硝子体手術と白内障手術で摘出した腫瘤は,組織学的に眼球内有鉤囊虫症であった。その後,条虫に有効なプラジカンテルの内服を行い頭蓋内腫瘤は消失した。眼底が透見可能になったが,網膜が存在せず,最終視力はゼロであった。有鉤囊虫(Cysticercus cellulosae)は有鉤条虫の幼虫である。囊尾虫を含む豚肉を生で食べると人体に入って増殖し,人畜共通感染症が発症する。本症に対する診断と治療が奏効した1例である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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