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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科58巻11号

2004年10月発行

文献概要

特集 白内障手術の傾向と対策―術中・術後合併症と難治症例

序文

著者: 水流忠彦1

所属機関: 1自治医科大学

ページ範囲:P.9 - P.10

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 白内障は患者数も多く,術後に著明な視機能改善が得られる場合が多いことから術後の患者の喜びも大きい。新しい手術機器の開発,安全で効果的な手術手技の研究,術前・術後管理の研究などが精力的に行われ,他の眼科領域の手術と比較しても目を見張るような進歩,発展を遂げてきた。白内障手術件数は増加の一途をたどり,多くの眼科医が携わる内眼手術となっている。私が研修医として白内障手術の指導を受け始めた頃は,ようやく顕微鏡手術が一般化し,白内障手術も水晶体囊内摘出が全盛の時代であった。当時と現在とを比べれば,手術室のベッドの上で行われている手術は同じ「白内障手術」の名のもとではあっても,まったくの別世界で,正に隔世の感がある。

 現在,日本には世界中で名を知られるような術者が少なくなく,手術機器,検査機器,手術手技などにおいても日本は情報発信の中心の1つであることは疑いない。しかしながら,名だたる名医もはじめは皆初心者である。言い換えれば今現在多くの施設で白内障手術の研修をしている若い眼科医こそ,将来の白内障手術の進歩,発展を担う重要な人材である。進歩の陰には必ず苦い失敗がある。今現在,何気なく手術をこなす名人にも,手術合併症の経験は少なからずあり,それを教訓にしてさらなる手技の上達につなげてきているはずである。皆が同じ合併症を繰り返さなくても済むように,経験者は自分の経験を後進に伝える義務がある。険しい山道を登ろうと挑戦したものは,次に登る人のために「入山して最初の分かれ道は右に行ってはダメだ,行き止まりだ」「4合目の曲り道は落石が起こりやすいから注意せよ」のように,自分の経験を伝える責務がある。そうすれば次に登るものは余計な試行錯誤に時を費やすことなく,さらに安全で質の高い手術を目指すことができる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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