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特集 白内障手術の傾向と対策―術中・術後合併症と難治症例 Ⅰ.術中合併症の予防と対処
皮質吸引困難
著者: 常岡寛1
所属機関: 1東京慈恵会医科大学第三病院眼科
ページ範囲:P.84 - P.89
文献購入ページに移動皮質の吸引は,超音波乳化吸引術の各過程のなかでは安全性の高い手技の1つである。吸引孔が先端に大きく開いている超音波チップとは異なり,小さい孔を角膜面に向けながら吸引するため,後囊を誤吸引して後囊破損を起こす危険性は少ないことになる。前房を深く保ちながら,吸引孔をつねに上に向けて吸引することができれば,初心者でも安心して行うことができるはずである。
初心者が皮質吸引時に困難を感じるのは,前房が深く保てない,眼球が歪んでしまう,効率的に吸引できない,創口下の皮質が吸引できない,などのときである。皮質の吸引に夢中になっていると,知らずに挿入したI/Aチップで創口を下に押して眼球を圧迫してしまうこと(図1a)が多く,水晶体囊が膨らまず後囊が挙上した状態で吸引しなければならない事態に陥ってしまうことがある。皮質吸引中に,いかに水晶体囊を膨らませて後囊を押し下げておくことができるかが,安全に行うための重要なポイントである。
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