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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科58巻12号

2004年11月発行

文献概要

臨床報告

網膜静脈分枝閉塞症と裂孔原性網膜剝離を伴った眼トキソカラ症の1例

著者: 山田晴彦12 山田英里1 中田知伸3

所属機関: 1医療法人有惠会総合病院眼科 2関西医科大学眼科学教室 3医療法人清澄会中田眼科

ページ範囲:P.2159 - P.2164

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 59歳男性の右眼に視力低下を伴う飛蚊症が突発し,その5日後に受診した。左右眼とも視力は1.0であった。右眼に硝子体出血があり,上方の網膜に滲出斑と網膜から前方に連なる出血があった。1か月後に硝子体出血は消退していたが,右眼上方に馬蹄形裂孔と,その周囲に網膜剝離があった。蛍光眼底造影で,上鼻側静脈が乳頭のすぐ上方で閉塞し,それよりも周辺眼底に無灌流領域があった。硝子体手術,眼内光凝固と,SF6ガス注入で網膜剝離は治癒した。患者は飼い犬と寝食をともにしていた。トキソプラズマの血清抗体値は陰性であったが,犬回虫の抗体が陽性であった。手術の際に,滲出斑に囲まれた囊胞様所見が2か所あった。滲出のある網膜部位を切除し,犬回虫(toxocara canis)と思われる虫体が検出された。眼内に犬回虫の幼虫が移行し,これが網膜静脈分枝閉塞症と網膜硝子体癒着による網膜裂孔になり,網膜剝離に至ったと解釈した。背景因子がない症例の眼内に滲出性病変をみたときには,動物との接触を疑う必要がある。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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