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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科59巻11号

2005年10月発行

特集 眼科における最新医工学

III.治療への応用

細胞増殖因子の徐放化技術

著者: 田畑泰彦1

所属機関: 1京都大学再生医科学研究所生体組織工学研究部門生体材料学分野

ページ範囲:P.246 - P.255

文献概要

生体の再生誘導能力を介した自然な治療法

 現在の先端医療は,これまでに多くの患者の病気を治し命を救ってきたことは事実である。そのなかで,治療に用いる材料,技術あるいは診断技術における工学の貢献は大きい。しかしながら,これらの医工学の歴史は人間の誕生に比べて極めて短く,生体組織,臓器を代替できる科学,技術レベルには至っていない。そのため,生体(医用)材料あるいは人工臓器に完全に依存した再建外科治療においては,その治療効果が一時的で,侵襲が大きく,補助できる機能が単一であるなどの欠点をもっている。一方,人工材料によらず,天然の組織,臓器で治療しようというのが移植治療であるが,この場合にも,移植臓器のドナー不足が深刻であり,それに加えて,移植後の免疫抑制薬の副作用などに問題を抱えている。

 このように,現在の2大先端外科治療の技術,方法論に限界がみえ,体に完全にはなじまない材料あるいは他人の組織,臓器を利用するという治療方法を考え直すべき時期がきている。そこで,新しい治療法として期待されているのが再生誘導治療(=再生医療)である。これは,イモリのしっぽが再生する現象をヒトで誘導し,病気の治療に役立てようとする試みである。小さな傷であれば,放っておいても自然と治療する。あるいは創面が大きく開いたときには,縫合糸で傷を閉じておけば治癒する。これは,体自身が自然に治ろうとする能力をもっているからである。この自然治癒能力を最大限に発揮させ,創口を治し,病気の治療を行うというのが再生医療の発想である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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