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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科59巻11号

2005年10月発行

文献概要

特集 眼科における最新医工学 IV.生体材料工学

人工角膜の臨床

著者: 福田昌彦1

所属機関: 1近畿大学医学部眼科学教室

ページ範囲:P.300 - P.305

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はじめに

 人工角膜(keratoprosthesis)とは,混濁した角膜をポリメチルメタクリレート(PMMA)などの透明な人工物で置き換えようとする方法である。考え方としては200年以上の歴史があり,実際人体に行われたのは1855年Nussbaumが行った石英の移植が最初といわれている。その後,1900年頃まで,いろいろなタイプの人工角膜が生体に移植されたが,そのほとんどすべては脱落した。1950年代に入り角膜移植が普及すると人工角膜への興味はいったん失われたが,今度は角膜移植の不成功例に対する挑戦が盛んに行われるようになった。

 このような状況のなか開発されたものの1つが歯根部利用人工角膜(osteo-odonto-keratoprosthesis:OOKP)である。この方法は1963年にイタリアのStrampelli1)により考案されたもので,患者自身の歯根部を人工角膜の光学部の固定に利用するものである。しかし,その初期の方法は虹彩や水晶体を残す術式であったため視力予後は不良であった。1973年Falcinelli2~5)は,眼表面移植時に虹彩と水晶体,前部硝子体を切除する方法に改良し,良好な結果を得た。改良型OOKPは現在イタリア,オーストリア,ドイツ,イギリスで主に行われており6,7),報告されている症例数は573例,最長の経過観察期間は27年である8)。現在では,改良型OOKPは確実に施行されれば重症のStevens-Johnson症候群などの難治症例においても最も優れた長期の生着と視力予後を示す人工角膜であると国際的に認められている9,10)。2003年6月18日,当教室においてもイギリスのChristopher Liu医師の協力のもと,国内での第1例(Stevens-Johnson症候群,49歳女性)を行い良好な結果を得た(術後2年で矯正視力1.0,視野は約50°)11)。筆者らは現在までOOKPを3例行い,いずれも成功している。ここではその手術の概要を紹介する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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