icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科59巻11号

2005年10月発行

文献概要

特集 眼科における最新医工学 IV.生体材料工学

生体吸収性縫合糸

著者: 富畑賢司1 鈴木昌和1

所属機関: 1グンゼ(株)研究開発センター第5研究室

ページ範囲:P.322 - P.327

文献購入ページに移動
はじめに

 縫合糸は現在使用されている医用材料のなかでも,極めて古くから使用されている生体内埋入型の医用材料である。古代エジプト時代には亜麻が縫合糸として使われ,その後は植物の繊維や皮紐,馬毛,木綿なども使われていた。現在も使われている縫合糸としては,腸線(カットグット)が紀元200年頃から使われ,絹糸は紀元1000年頃から使われている。縫合糸としては長い間この2つが主流であった。第二次大戦後の高分子化学の進歩に伴ってさまざまな合成繊維が開発され,医療用縫合糸としても使われてきた。

 縫合糸に求められる性質としては強力が高いこと,組織反応が少ないこと,組織損傷性が小さいことなどのほかにも,結び目や結節部が緩みにくいことなどが挙げられる。また,縫合糸は創傷部の組織が癒合するまでの間,縫合部を保持できる強力が必要であるが,治癒すれば必要でなくなりそのまま放置すれば生体にとって異物となってしまう。体表付近では抜糸することにより取り除くことが可能であるが,消化管の吻合など体内に使用された縫合糸は永久に異物として体内に残ることになる。異物を生体内に残すことは,異物反応や感染を起こす危険性があり好ましくない。このような理由から,最近では生体吸収性素材を用いた縫合糸(吸収性縫合糸)の使用が増加している。

 この30年あまりの間に吸収性縫合糸としていくつかの製品が発売されてきた。ここでは,筆者らが生体吸収性縫合糸を開発してきた経緯を紹介させていただくとともに,最近の生体吸収性縫合糸に関する状況について紹介する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?