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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科59巻13号

2005年12月発行

雑誌目次

連載 今月の話題

未熟児網膜症の治療基準―最近の動向

著者: 平岡美依奈

ページ範囲:P.1943 - P.1947

近年,周産期医療の進歩に伴い,重症な未熟児網膜症が増加している。かつて治療適応とされていたthreshold ROPは,もはや至適治療時期ではなくなり,より早期に治療を開始するように治療適応が変更された。国際分類も改定され,日本の厚生省分類で定義されたⅡ型ROPがaggressive posterior ROPとして取り入れられた。

眼科図譜345

上顎洞癌切除後患者にみられた水晶体囊真性落屑

著者: 遠藤勝久 ,   牧野伸二 ,   金上千佳 ,   金上貞夫

ページ範囲:P.1948 - P.1949

緒言

 水晶体囊真性落屑は水晶体囊偽性落屑とはまったく異なり,水晶体前囊の一部が剝離し,セロファン膜様に前房中に立ち上がる疾患で,原因としては長時間の熱照射を受ける職業従事者に多く報告されていたが,そのほかにも炎症,外傷によるものや原因不明の特発性の報告がある1,2)。今回,上顎洞癌術後の患者にみられた本症の1例を経験したので報告する。

眼の遺伝病77

RS1遺伝子異常と網膜分離症(12)

著者: 多田麻子 ,   和田裕子

ページ範囲:P.1950 - P.1952

今回は,RS1遺伝子に,Arg213Trp変異を伴った網膜分離症の症例を報告する。この変異は海外で報告がある1,2)が,日本人患者での報告はなく,さらに本欄でも初めて紹介する変異と臨床像である。特に本症例は小口病に特徴的である金箔反射を眼底全体に呈していた。

 症 例

 [症例1]

 患者:9歳,男性

 家族歴:父方の祖父母がいとこ婚。母方の家系には血族結婚はない(図1)。

 現病歴:2004年8月,学校検診で視力低下を指摘され,近医を受診した。近医受診時,視力は右眼(1.2),左眼(1.0)と良好で,前眼部,中間透光体に異常は認められなかった。眼底検査にて黄斑ジストロフィが疑われ,2004年9月24日に精査目的で当科を紹介され受診した。

日常みる角膜疾患33

単純ヘルペス性角膜炎(上皮型)

著者: 川本晃司 ,   近間泰一郎 ,   西田輝夫

ページ範囲:P.1954 - P.1956

症例

 患者:60歳,女性

 主訴:左眼視力低下,左眼眼痛

 現病歴:約30年前から左眼の角膜炎を繰り返し発症していた。1994年3月,左眼の視力低下と眼痛を自覚したために当科を受診した。実質型角膜ヘルペス,遷延性角膜上皮欠損の診断で加療され,瘢痕治癒した。その後も近医にてステロイド点眼薬を用いて経過観察されていたが,2004年2月に再び左眼の視力低下,眼痛を自覚したために当科を受診した。

 既往歴・家族歴:高血圧。糖尿病,関節リウマチの既往はない。

眼形成手術手技10

霰粒腫(2)実践編

著者: 野田実香

ページ範囲:P.1958 - P.1963

術式の選択

 前回の診断や病期分類の解説に続き,代表的な術式の適応と手技の実際について述べる。取り上げる術式は経皮的霰粒腫摘出術,経結膜的霰粒腫摘出術,経皮的穿刺術である。

 経皮的霰粒腫摘出術

 1.適応

 ・すべての霰粒腫

 ・皮膚に発赤・破裂を伴う場合

 ・上眼瞼中央の場合

 絶対的適応は,皮膚に強い発赤・破裂を伴う場合,上眼瞼中央の場合である。

臨床報告

使い捨てコンタクトレンズ使用者のアンケート調査

著者: 和田浩卓 ,   西崎律子 ,   塩田朋子 ,   松田智子 ,   彌永圭介 ,   飛松淳子 ,   岡田栄一

ページ範囲:P.1981 - P.1986

2004年4月までの9か月間に来院したコンタクトレンズ装用者にアンケート調査を行い,7,542人から有効回答を得た。男性2,601名,女性4,941名であり,1,913名が1日使い捨てコンタクトレンズ,5,629名が2週間頻回交換コンタクトレンズを装用していた。4.0%が1日使い捨てコンタクトレンズを2日以上使用していた。24.1%が2週間頻回交換コンタクトレンズを15日以上使用していた。1年間に20箱以下の1日使い捨てコンタクトレンズを購入していた人の7.2%が2日以上使用し,7箱以下の2週間頻回交換コンタクトレンズを購入していた人の46.1%が15日以上使用していた。

ミカファンギンの全身投与と病巣掻爬術併施で治癒した角膜真菌症の1例

著者: 川本晃司 ,   折田朋子 ,   近本信彦 ,   近間泰一郎 ,   高橋典久 ,   西田輝夫

ページ範囲:P.1987 - P.1992

60歳女性が2日前からの左眼霧視で受診した。1か月前から1週間使い捨てソフトコンタクトレンズを使用していた。毛様充血,角膜中央部の潰瘍と実質融解,前房内フィブリン析出が左眼にあった。潰瘍底から採取した検体に胞子状の真菌があったが,培養では真菌と細菌は陰性であった。病巣を掻爬し,酵母様真菌に有効なミカファンギンの全身投与を行った。以後,症状が軽快し,瘢痕治癒した。初診時に手動弁であった左眼矯正視力は,15週後に1.0に回復した。角膜真菌症に対しミカファンギンの全身投与が奏効した症例である。

白内障単独手術を施行した原発開放隅角緑内障,正常眼圧緑内障,偽落屑緑内障眼の術後経過

著者: 尾島知成 ,   田辺晶代 ,   板谷正紀 ,   本庄恵 ,   愛川裕子 ,   宮脇貴也 ,   湯才勇 ,   森下志帆 ,   木村徹志 ,   吉村長久

ページ範囲:P.1993 - P.1997

点眼のみで眼圧がコントロールされていた緑内障38例50眼に白内障手術を行った。内訳は原発開放隅角緑内障23眼,正常眼圧緑内障19眼,偽落屑緑内障8眼であり,全50眼の術前眼圧は15.7±0.4mmHgであった。手術は超音波水晶体乳化吸引術と眼内レンズ挿入術として行った。術後3~6か月にかけて眼圧は一過性に降下したが,術後22.5±10.8か月の最終受診時では15.5±0.5mmHgであり,術前と有意差がなかった。点眼薬の数は術前1.3±0.1剤,術後1.0±0.1剤であり,有意に減少した(p<0.01)。視力は緑内障が進行した症例を含む全例で術後早期から改善した。ハンフリー視野のMD値も術後有意に改善した(p<0.01)。以上,眼圧が薬物によりコントロールされている緑内障眼への白内障単独手術は,術後の眼圧と視機能に好影響を与えた。

混合型緑内障患者に対する1%ドルゾラミド点眼追加投与の眼圧下降効果

著者: 柴田真帆 ,   湯川英一 ,   新田進人 ,   森下仁子 ,   石橋秀俊 ,   原嘉昭

ページ範囲:P.1999 - P.2001

ラタノプロストとβ遮断薬の点眼で眼圧コントロールが不十分な混合型緑内障20例20眼に1日3回の1%ドルゾラミド点眼を追加し,その眼圧下降効果を検討した。これら20眼にはすでにレーザー虹彩切開術が行われていた。ドルゾラミド点眼を追加する前の平均眼圧は21.0±2.0mmHgであった。追加後1か月,3か月,6か月目のすべての測定時点で,追加前に比べて眼圧が有意に下降していた(p<0.05)。良好なコンプライアンスが得られるならば,ドルゾラミドの追加点眼でさらなる眼圧下降が期待できる。

眼瞼下垂手術症例の原因病型に関する検討

著者: 鈴木利根 ,   瀬川敦 ,   内野泰 ,   西尾正哉 ,   筑田眞

ページ範囲:P.2003 - P.2005

過去9年間に眼瞼下垂手術を行った245症例につき,その原因を検討した。内訳は男性77例,女性168例であり,60歳以上が全体の75%を占めた。後天性眼瞼下垂の頻度は93%,先天性が7%であった。95例(39%)が両眼性,150例(61%)が片眼性であった。白内障手術の既往が52例(21%),顔面神経麻痺の既往が11例(4.5%)にあった。202例(82%)が老人性眼瞼下垂と診断された。以上の事実から,近年の眼瞼下垂には,人口の高齢化や内眼部手術の増加が関与している可能性があることを示している。高齢者の眼瞼下垂では,重症筋無力症などの神経筋疾患を鑑別することが必要である。

多発性硬化症に併発した劇症型視神経炎の1例

著者: 藤井澄 ,   佐藤俊介 ,   山本敏広

ページ範囲:P.2007 - P.2010

62歳女性が前日午後からの視力低下で受診した。8年前にC型肝炎ウイルスが陽性でインターフェロンの投与を6か月間受けている。矯正視力は右0.01,左0.02であり,軽度の視神経乳頭浮腫が両眼にある以外には顕著な異常はなかった。メチルプレドニゾロンによるパルス療法を1週間間隔で3クール行ったが視力は改善しなかった。発症から4週後に下肢にしびれを訴えるようになり,頭部MRI検査で脱髄巣が発見され,視神経炎で初発した多発性硬化症と診断された。このような非可逆的で激しい視力低下を伴う多発性硬化症は稀有な病型であり,調べた限りではいままで報告されていない。

自然緩解した眼窩内骨膜下血腫の1例

著者: 奥野高司 ,   澤田達 ,   山谷珠美 ,   菅澤淳 ,   池田恒彦

ページ範囲:P.2011 - P.2014

34歳女性が歩行中にオートバイと接触し,脳挫傷と急性硬膜下血腫による昏睡状態になった。受傷から14日後の磁気共鳴画像検査(MRI)で,骨壁に沿い水平線(ニボー)のある紡錘形の病変が発見され,眼窩内骨膜下血腫と診断された。昏睡から回復後に複視を自覚し,受傷から19日後に受診した。左眼に上転障害と眼瞼下垂があった。視力と視野には異常がなかった。格別の治療なしに受傷から49日後に複視が消失し,軽度の眼瞼下垂のみが残った。MRIでみられたニボーは,血腫中のヘモグロビンが14日間に変性し,下方のデオキシヘモグロビンと上方のメトヘモグロビンに分かれたためと推定した。

膨隆白内障に対する前囊二重切開法

著者: 塙本宰 ,   田邊樹郎 ,   堀秀行 ,   川崎勉 ,   出田秀尚

ページ範囲:P.2015 - P.2019

膨隆白内障に対するヒーロンVTM下での赤道部皮質吸引を併用した前囊二重切開法を報告する。前房中にヒーロンVTMを充填して前囊を平坦にし,0.1%トリパンブルー溶液で前囊染色を行い,角膜サイドポートからチストトームで2mm程度の小さな円形前囊切開(CCC)を行った。角膜サイドポートから皮質吸引針を挿入し,そのCCCを通して赤道部付近の液状の水晶体皮質を吸引した。水晶体囊が膨隆しなくなった状態でCCCを拡大したのちに,超音波水晶体乳化吸引と眼内レンズ挿入を行った。現在までにこの方法で15例の手術を行い,1例でCCCを通して皮質吸引する操作で前囊に強く張力をかけたため亀裂を生じた。本法は,この点に注意すれば成功率の高い手術方法となる可能性がある。

遺伝子診断により確定した斑状角膜ジストロフィの1例

著者: 沼慎一郎 ,   吉田茂生 ,   熊野祐司 ,   松井孝明 ,   川野庸一 ,   西田輝夫 ,   山地陽子 ,   石橋達朗

ページ範囲:P.2021 - P.2023

55歳女性が両眼の異物感と羞明で受診した。矯正視力は右0.5,左0.7であった。両眼に前房混濁があり,周辺部角膜の内皮側に豚脂様の角膜後面沈着物に似た灰白色の斑状の混濁が多数あった。角膜実質全層がびまん性に淡く混濁していた。前房混濁はステロイド薬の点眼で消失したが,角膜混濁は持続した。炎症性疾患または後天性の角膜変性は否定的であり,角膜ジストロフィが疑われた。末梢血からのCHST6を解析した結果,コドン217のアラニンからスレオニンへのホモ接合性の変異であるA217Tが確認され,分子遺伝学的に斑状角膜ジストロフィの診断が確定した。

カラー臨床報告

サイトメガロウイルス網膜炎発症を機にAIDSが明らかになった1例

著者: 飛鳥田有里 ,   西田朋美 ,   伊藤良樹 ,   滝山直昭 ,   伊藤典彦 ,   林清文 ,   上田敦久 ,   樋口亮太郎 ,   水木信久

ページ範囲:P.1975 - P.1980

42歳女性が2週間前からの左眼霧視で受診した。10か月前に帯状疱疹に罹患し,4年前に夫と死別した。矯正視力は左右とも1.2であり,左眼底に広範な網膜出血と耳側に滲出斑があった。左眼前房水からサイトメガロウイルス(CMV)DNAが検出され,CMV網膜炎と診断した。血液中のCD4陽性細胞数が減少し,抗HIV抗体が陽性で,AIDSの診断が確定した。ガンシクロビルの点滴でCMV網膜炎が沈静した後,抗HIV多剤併用療法を行った。CD4陽性細胞数の回復に伴い,immune recovery uveitisと考えられる硝子体混濁と黄斑浮腫が生じた。硝子体混濁は自然寛解し,黄斑浮腫は副腎皮質ステロイド剤の球後注射で改善した。抗HIV多剤併用療法を開始した時点でのCMV網膜炎の活動性が,immune recovery uveitisの発症とその重篤度に関与している可能性がある。CMV網膜炎を初発症状としたAIDSの1例である。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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