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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科59巻2号

2005年02月発行

雑誌目次

特集 結膜アレルギーの病態と対策

アレルギー性結膜疾患の臨床像と特異性

著者: 熊谷直樹

ページ範囲:P.125 - P.129

はじめに

 角結膜は全身のなかで,最もアレルギー性疾患の起こりやすい組織の1つである。またわれわれ眼科医はあまり意識していないが,角結膜のアレルギーは全身の他の臓器,例えば鼻,皮膚,肺,消化管のアレルギーとは異なった病態や臨床像を示す。角結膜のアレルギー性疾患の治療法は進歩を続けているが,現在でも十分に治療をすることのできない症例もしばしばみられ,多くの解決すべき問題点が残っている。本稿では本特集全体の導入として,角結膜のアレルギー疾患,すなわちアレルギー性結膜疾患の臨床像,問題点,他臓器のアレルギー性疾患と比較した場合の特異性を記載したい。

 「アレルギー性結膜疾患」とは特定の抗原に対する感作が成立した個人の結膜囊に抗原が侵入することによって引き起こされる,Ⅰ型アレルギーの関与する結膜の炎症性疾患の総称である。すなわち,①植物の花粉,ダニの死骸に代表される本来は生体に対して無害な抗原に対して生体が過剰に反応して大量の抗原特異的なIgEが産生され,肥満細胞上に結合する,②抗原に再び曝露されることにより肥満細胞上でIgE-高親和性IgE受容体複合体の架橋反応が生じ肥満細胞が活性化する,③肥満細胞から産生・放出されるヒスタミン,ロイコトリエン,サイトカインなどの生理活性物質による血管透過性の亢進,好酸球やリンパ球などの活性化などが誘導されて種々の臨床症状が発症する,という段階を経て発症する。原因となる抗原は国や地域により異なるが,わが国においてはスギ,ヒノキ,イネ科植物,キク科植物などの植物性の抗原やダニの死骸・排泄物,ネコやイヌの皮脂・皮膚上皮などの動物性の抗原が多い。アレルギー反応は血管や免疫系の細胞の豊富な結膜で引き起こされるが,涙液を介して炎症反応は隣接する組織である角膜にも影響を及ぼし,角結膜炎の病像を呈することも多い。

 アレルギー性結膜疾患は他の臓器,例えば肺,皮膚,鼻,消化管などで引き起こされるアレルギー性疾患とアレルギー反応が引き起こされる契機である免疫反応自体は同一と考えられるが,表現される臨床像や問題点,治療法は他のアレルギー性疾患とは大きく異なっている。アレルギー学的な知見の単なる導入ではなく,眼科医が解決していかなければならない多くの問題点が残っている。

アレルギー性結膜疾患における線維芽細胞の役割

著者: 福田憲

ページ範囲:P.130 - P.134

はじめに

 アレルギー性結膜疾患はいずれも,結膜におけるⅠ型アレルギー反応によって引き起こされる疾患である。すなわち抗原提示細胞,肥満細胞,T細胞,B細胞および好酸球によって起こる免疫反応である。このⅠ型アレルギー反応は原則として全身いずれの組織においても同様のメカニズムで生じると考えられる。しかしながら,眼表面,気道,鼻粘膜,皮膚で起こるⅠ型アレルギー反応による疾患は臨床的にそれぞれアレルギー性結膜疾患,喘息,アレルギー性鼻炎およびアトピー性皮膚炎として表現され,それぞれの疾患における自覚症状および他覚所見もまったく異なっている。この臨床的表現型の差異は純粋な解剖学的特徴によって起こる一面もあるが,その組織を構成している固有の細胞,すなわち上皮細胞や線維芽細胞などの特異的な反応様式が影響している可能性も考えられる。またアレルギー性結膜疾患のなかにおいてさえも,アレルギー性結膜炎と春季カタルでは,炎症の程度の差だけでなく,結膜の増殖性病変や角膜障害などまったく異なった病像を呈する。これらの病像の差異は,単なるアレルギー反応のみで終わるか,アレルギー反応に引き続いてその組織固有の細胞が活性化されて,二次的な炎症反応を形成するかによって規定されると考えられる。

 全身の組織に存在する線維芽細胞は,間葉系由来の細胞である。これまで線維芽細胞は細胞外マトリックスの代謝を行い,組織のintegrityを保つ役割だけの細胞で,炎症反応では一方的に攻撃を受けると考えられていた。しかしながら,近年では線維芽細胞は種々のサイトカインやケモカインなどの生体活性物質を産生し,また接着分子などを発現することで炎症の増悪,遷延化に重要な役割を果たしていることが解明されつつある。また,線維芽細胞は全身の各組織において均一の細胞集団ではなく,線維芽細胞の存在する組織や炎症の有無などにより,その性質が大きく異なることも明らかとなってきている。本稿では,結膜および角膜の線維芽細胞がアレルギー性結膜疾患,特に春季カタルにおける結膜増殖性病変や角膜障害の形成にどのようにかかわっているか概説する。

重症アレルギー性結膜疾患におけるT細胞の役割

著者: 福島敦樹

ページ範囲:P.136 - P.141

はじめに

 アレルギー性結膜疾患はⅠ型アレルギー反応の関与する結膜疾患の総称であるが1),春季カタルのような重症型ではⅠ型のみならずⅣ型アレルギーも関与する2)。重症例では好酸球が病態形成に重要な役割を果たすと考えられていた3)。アトピー性皮膚炎を伴う角結膜炎患者の角膜障害重症度と結膜への浸潤好酸球数とを比較し,角膜障害の重症度と結膜好酸球浸潤との関連性を確認したFukagawaら4)の報告により,好酸球が重症化に重要な役割を果たすことが証明された。しかし,好酸球は抗原認識能をもっておらず,結膜への好酸球浸潤には他の細胞群が関与すると考えられる。

 アレルギー性結膜疾患患者とくに結膜に増殖変化を認める重症型では結膜にヘルパーT細胞の浸潤が確認されている5)。結膜サンプルをそのまま,あるいはT細胞に分離してサイトカイン産生を調べた結果,病像により異なるものの,おおむねTh2型サイトカインの発現が亢進していることが明らかとなった6,7)。これらの報告と,T細胞には抗原認識能があることから,T細胞が結膜好酸球浸潤の中心的役割を果たすと考えることができる。本稿では,結膜好酸球浸潤におけるⅠ型およびⅣ型アレルギー反応の関与を動物実験データをもとに述べ,結膜好酸球浸潤におけるT細胞の重要性を認識していただければと思う。

涙液検査からみたアレルギー性結膜疾患

著者: 庄司純

ページ範囲:P.142 - P.148

はじめに

 アレルギー性結膜疾患は,即時型アレルギー反応が原因で発症する角結膜疾患で,季節性アレルギー性結膜炎(seasonal allergic conjunctivitis:SAC),通年性アレルギー性結膜炎(perennial allergic conjunctivitis:PAC),アトピー性角結膜炎(atopic keratoconjunctivitis:AKC),春季カタル(vernal keratoconjunctivitis:VKC)および巨大乳頭結膜炎(giant papillary conjunctivitis:GPC)が含まれる。現在,アレルギー性結膜疾患の診断には,皮膚反応,血清中のアレルゲン特異的IgE抗体検査などの全身アレルギー検査および結膜擦過塗抹標本での好酸球検査による眼アレルギー検査により行われている。アレルギー性結膜疾患の診断,重症度判定,治療効果判定に関しては,臨床症状と併せて眼局所の臨床検査により客観的に判定されるべきであるが,検査に用いる適当な検体がない,または十分に検体量が得られないなどの理由から,眼局所のアレルギー検査が実験室レベルの検討で推移し実用化が遅れているのも現状である。

 今回は,涙液を用いたアレルギー検査のなかで,特に有望とされているECP(eosinophil cationic protein)とアレルゲン特異的IgE抗体を中心に,検査法開発の経緯も含めて涙液によるアレルギー検査の有用性について述べる。

重症アレルギー性結膜炎における巨大乳頭増殖―Inflammation or fibrosis?

著者: 加藤直子

ページ範囲:P.150 - P.156

はじめに

 春季カタル(vernal keratoconjunctivitis:VKC)に代表される重症アレルギー性結膜炎では,直径が1mm以上の巨大乳頭増殖が生じることが知られている(図1)。そのような症例では,対する角膜にも角膜上皮障害が発生しやすく,重症例では角膜潰瘍などによる視機能障害をきたし患者の社会生活に大きな影響を及ぼす。

 アレルギー性結膜炎の診断の一助となる細隙灯顕微鏡所見の1つに,瞼結膜の乳頭増殖がある。乳頭増殖は結膜の隆起性病変であるが,その中心に血管を認めることで同じ隆起性病変である結膜濾胞と区別されることが多い1)。すなわち,濾胞が結膜下組織へのリンパ球の集積であるのに対して,結膜乳頭増殖は線維血管性増殖病変としての性質が強いように考えられがちである。

 本稿では,春季カタルにおける巨大乳頭の臨床所見と,乳頭切除標本を用いた免疫染色の結果に基づき,炎症(inflammation)と線維化(fibrosis)という観点から巨大乳頭の形成とアレルギー性結膜炎増悪のメカニズムについて考察する。

Eotaxin-1に関連する病態とCCR3アンタゴニスト

著者: 宮崎大 ,   東秀光 ,   小松直樹 ,   井上幸次

ページ範囲:P.158 - P.162

はじめに

 アレルギー性結膜炎の治療には,現在ヒスタミンH1ブロッカー,マスト細胞スタビライザーに加え,ステロイド剤が利用可能である。重症の結膜炎の場合,ステロイドの局所使用に加え,全身投与が必要となることも多い。とくに春季カタルにおいては発症好発年齢が若年者であり,年余にわたってベタメタゾン点眼治療を行うと眼圧上昇をきたす症例も多く,このなかの一部は続発緑内障へと移行してしまう。おそらく,SNP(single nucleotide polymorphism)など遺伝的な要因によると考えられるが,現在のところこのような症例を見分ける方法は残念ながらまだない。

 最近,アレルギー性結膜炎とT細胞の関連もクローズアップされてきており,T細胞を主たる標的とした免疫抑制薬が治療に用いられるようになってきた。現在認可申請中あるいは臨床治験中であるのはシクロスポリン点眼液とFK-506点眼液であり,いずれも細胞内シグナリングカスケードにおけるプロテインホスファターゼであるカルシニューリンを競合的に阻害する薬剤である。シクロスポリン点眼液は,現在著明な副作用は報告されていないが,その薬効はベタメタゾンに比べると弱い。FK-506はその低いIC50値から予想されるように点眼による春季カタル症例への治療効果は強力であるが,点眼時に強い刺激性(灼熱感)がある。また,皮膚科領域も含め,使用によるヘルペス再発の懸念が報告されている。

 さて,臨床上,春季カタルをはじめとする重症アレルギー性結膜炎の発症メカニズムは想像以上に複雑である。このため,新しい機序に基づくような薬剤が利用可能になれば,患者にとってより満足度の高い治療法の開発につながるのではないかと考えている。本稿では,アレルギーに特徴的な好酸球を誘導するサイトカイン,eotaxin-1のレセプターアンタゴニストの抗アレルギー薬としての可能性について紹介したい。

連載 眼の遺伝病66

CYP4 V2遺伝子異常とクリスタリン網膜症(1)

著者: 和田裕子 ,   玉井信

ページ範囲:P.166 - P.168

クリスタリン網膜症は,1937年にBietti1)により報告された疾患で,角膜結晶沈着物,網膜の黄白色沈着物,脈絡膜毛細管板の萎縮を主訴とする疾患である。その後,角膜結晶沈着を伴わないクリスタリン網膜症が多く報告された。2000年にクリスタリン網膜症が4番染色体長腕にマップされ,2004年に原因遺伝子がCYP4 V2遺伝子であることが報告された2~4)

 本稿では,CYP4 V2遺伝子IVS6-8delTCATACAGGTCATCGCG/insGC変異を認めた1症例を報告する。

日常みる角膜疾患23

テリエン周辺角膜変性

著者: 川本晃司 ,   西田輝夫

ページ範囲:P.170 - P.173

症例

 患者:30歳,男性

 主訴:右眼痛

 現病歴:1991年3月頃から右眼痛を自覚して近医を受診し,点眼にて加療していた。その後他院を受診し右眼角膜の菲薄化を認め,右眼角膜上に進展してきた翼状片の切除術を施行された。さらに他院でテリエン周辺角膜変性を指摘され,その後経過観察されていた。2002年10月頃より右眼痛が増悪したために,同年10月下旬当科を受診した。

 既往歴:花粉症

 家族歴:特記事項なし

あのころ あのとき49

研鑽の時(2)

著者: 山本節

ページ範囲:P.175 - P.177

障害の告知

 25年前に診察した方から,お便りをいただきました。その人は全盲ですが,しっかりしたパソコンの手紙を送られて吃驚しました。その内容をそのまま掲載いたします。

前略

 私は,筑波大学大学院 心身障害学研究科のA. M.と申します。先天性の全盲で,今から25年ほど前,私が3歳か4歳の頃に,兵庫県立こども病院で先生の診察を受けたものです。

他科との連携

同級生ほどありがたいものはない

著者: 山川良治

ページ範囲:P.180 - P.181

チーム医療を立ち上げる

 「他科との連携」について原稿を依頼されてから,いままで書かれたものを読ませていただきました。内容は,全身状態の悪い患者さんについて他科の先生のおかげで助かった,放射線科の先生に画像診断でお世話になった,耳鼻科の先生と共同で涙囊鼻腔吻合術や眼窩吹き抜け骨折の治療を一緒にやっているといったもので,私も同様の経験は多くあります。

 現在の職場に関していえば,私はまったく縁もゆかりもない職場に赴任してきましたので,自分の専門外のことで,例えば眼窩腫瘍のややこしいのが来たらどうしよう,どうも今までは涙囊鼻腔吻合術などやっていないから始めるのにどうしようかと,戦々恐々としていました。そうすると,私の大学ではすでに耳鼻科の偉い前教授(後に学長,現在は美術館の館長をしています)が音頭をとって,チーム医療なるものを立ち上げていました。脳外科,耳鼻科,眼科,放射線科,皮膚科,形成外科,外科の食道や甲状腺のスタッフが一体となって,頭頸部外科チームというのができていました。ですから,他科との垣根がまったくなく,どうしたらよいかわからないことがあるとすぐに相談に行ったり,カンファレンスを共同でしたり,合同手術をしたりと大変楽で助かっています。逆に他科から,手術に入ってくれと呼び出されることが多くなってしまうこともあります。そして毎年1回,頭頸部懇話会というのを行って,当番の科が現在話題となっている手術や症例について発表を行い,後は例のごとく懇親会で食べて飲んでお互いお話(自慢やら愚痴)をして終わります。

臨床報告

春季カタルの重症化に関与するアレルギー学的要因の多変量解析

著者: 内尾英一 ,   伊藤由起 ,   佐藤貴之 ,   亀澤比呂志 ,   門之園一明

ページ範囲:P.187 - P.192

春季カタルの重症化に関与する全身アレルギー学的要因を患者26名について多変量解析法で検索した。重症度は数量化理論2類による臨床スコアで判定し,8つのアレルギー学的要因については,全因子を分類するための数量化理論3類を用いた。春季力タルの重症化には受動喫煙,血清総IgE値,発症年齢の順で関与が大きく,再発頻度とアレルギー疾患家族歴の関与は小さかった。4群に分けられた全因子のうち,受動喫煙が春季カタルの重症度と最も近縁であった。春季カタルの長期管理ではこれらの要因を考慮することが望ましい。

レンズ交換を要したハイドロジェル眼内レンズの1例

著者: 山田晴彦 ,   山田英里

ページ範囲:P.193 - P.199

67歳女性が左眼に白内障手術と眼内レンズ挿入を受けた。術後に0.7の矯正視力が得られたが,半年後から眼内レンズが混濁しはじめた。20か月後に視力が0.2になり,眼内レンズの摘出と挿入を行った。術中に合併症があり,前部硝子体切除とレンズの毛様溝縫着を必要とした。以後の経過は順調で,視力は0.5で安定し,以後の1年間はレンズの再混濁はない。患者が当初に用いたのはハイドロジェル眼内レンズであった。製品が改良された現在では混濁発生の可能性は小さいが,再手術では手術の難易度を考慮する必要がある。

視野異常の自己認識におけるfrequency doubling technologyの効果

著者: 勝島晴美

ページ範囲:P.201 - P.203

視野異常を自覚していない原発開放隅角緑内障患者101例101眼(平均年齢59.6歳)を対象とし,frequency doubling technology(以下,FDT)のスクリーニング検査C-20-1を行った。検査終了直後に視野異常を自覚した部位を患者に自己記録してもらった。36例(35.6%)は視野異常を自覚し,各症例の自己記録はFDTの結果と一致していた。65例(64.4%)は視野異常を自覚しなかった。各病期の自己認識率はAulhorn分類Greve変法の0~1期が10.0%,1期が16.7%,2期が34.5%,3期が44.4%,4期が43.8%,5期が70.0%であった。以上より,FDTは緑内障患者に視野異常を自己認識してもらう方法として有用であると考えられた。

緑内障と網膜色素変性のために見過ごされていた鞍結節髄膜腫の1例

著者: 中村竜大 ,   春田雅俊 ,   宮本和明 ,   黒川歳雄 ,   高橋政代 ,   柏井聡

ページ範囲:P.205 - P.208

53歳男性が11年前に他医で両眼の原発開放隅角緑内障と診断された。加療で眼圧はコントロールされたが,視野狭窄が進行した。網膜眼図の異常から網膜色素変性と診断された。2年前から左眼の視野狭窄と視力低下が加速化して受診した。矯正視力は右1.2,左0.2であり,両眼に典型的な網膜色素変性の所見があった。左眼の視神経乳頭の蒼白化が顕著で,相対的入力瞳孔反射異常が陽性であった。両眼に輪状暗点と,左眼に中心暗点があった。左の視神経病変を強く疑い,磁気共鳴画像検査(MRI)で左視神経を圧迫する鞍結節髄膜腫が発見された。すでにある眼病変では説明できない視力低下や視野障害があるときには,神経眼科的な検査法を含めた広い観点から検索する必要があることを本症例は示している。

尿管結石を契機とする腎盂腎炎からの両眼性真菌性眼内炎の1例

著者: 及川拓 ,   藤原貴光 ,   町田繁樹 ,   小野寺毅 ,   田澤豊

ページ範囲:P.209 - P.213

症例は59歳男性。尿管結石を契機とする腎盂腎炎が発症した。敗血症も併発し,まもなく両眼の霧視を自覚した。初診時の矯正視力は両眼ともに0.3。両眼の前房および硝子体に炎症性の混濁があり,網膜上には白色の沈着物がみられた。血液検査では抗カンジダ抗原が陽性で,尿培養からはCandida albicansが分離された。これらの所見から,本症例はCandida albicansを起因菌とした眼内炎と診断した。両眼に対して硝子体切除手術を行い,経過は良好である。本症例は,尿管結石を契機とする真菌性腎盂腎炎から真菌性眼内炎をきたした稀な症例であった。

ドルゾラミドからブリンゾラミドへの切り替え効果の検討

著者: 長谷川公 ,   高橋知子 ,   川瀬和秀

ページ範囲:P.215 - P.219

ドルゾラミド1日3回点眼からブリンゾラミド1日2回点眼に切り替えた緑内障25例25眼につき,4週後の自覚効果を評価した。内訳は原発開放隅角緑内障17眼,正常眼圧緑内障3例,落屑緑内障1眼,原発閉塞隅角緑内障1眼,遅発型発達緑内障3眼であり,全例が多剤併用中であった。ブリンゾラミドを8週間使用した後,20例がブリンゾラミドを自己選択し,5例がドルゾラミドを自己選択した。両点眼薬ともべたつき感があり,白い眼瞼付着物が生じたが,ドルゾラミドのほうが軽微であった。ブリンゾラミドでは点眼回数が少なくなったことにより,コンプライアンスが向上した。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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