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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科59巻3号

2005年03月発行

雑誌目次

特集 第58回日本臨床眼科学会講演集 (1) 学会原著

硝子体出血と乳頭周囲網膜下出血を伴った傾斜乳頭症候群の1例

著者: 牧野伸二 ,   竹澤美貴子 ,   久保田みゆき ,   近藤千佳 ,   金上貞夫

ページ範囲:P.277 - P.281

62歳女性が1週間前からの右眼の視力障害で受診した。両眼とも生来視力が不良であった。矯正視力は右眼0.01,左眼0.3であった。右眼に硝子体出血と乳頭周囲に網膜下出血,左眼に傾斜乳頭があった。後部硝子体剝離が両眼にあった。フルオレセイン蛍光眼底造影で右眼に網膜下出血による蛍光遮断と乳頭の過蛍光が造影後期にみられた。インドシアニングリーン蛍光眼底造影で脈絡膜新生血管はなかった。右眼にも傾斜乳頭があることが硝子体出血の消退後に発見された。両眼とも強い屈折異常はなかった。乳頭周囲の網膜下出血の発症機序として,傾斜乳頭内部の循環障害と加齢による血管の脆弱化を背景として,乳頭の表在性網目状血管と放射状乳頭前血管,篩状板前部から脈絡膜に灌流する血管からの出血,後部硝子体剝離による破綻性出血の可能性が推定された。傾斜乳頭症候群では新生血管を伴わずに網膜出血が生じることがある。本症例はintrapapillary hemorrhage with adjacent peripapillary subretinal hemorrhageであると考えた。

ラタノプロスト点眼中の正常眼圧緑内障患者に対する塩酸ブナゾシン点眼液の眼循環と眼圧における併用効果の検討

著者: 清水美穂 ,   今野伸介 ,   前田祥恵 ,   松本洋幸 ,   大塚賢二

ページ範囲:P.283 - P.287

目的:ラタノプロスト点眼中の正常眼圧緑内障眼に,塩酸ブナゾシン点眼を追加併用後の眼圧と眼循環の検索。対象と方法:ラタノプロスト点眼中の正常眼圧緑内障9名を対象とした。年齢は57~76歳,眼圧は10~18mmHg,平均13.2±2.3mmHgであった。1眼に塩酸ブナゾシン点眼を追加し,他眼にプラセボを点眼して対照とした。点眼前と点眼開始2週間後に,血圧,脈拍,眼圧を測定し,乳頭縁と乳頭近傍網膜の血流をハイデルベルク網膜血流計で計測した。結果:塩酸ブナゾシン追加点眼後に,乳頭縁と乳頭近傍網膜の血流が有意に増加した。対照眼では変化はなかった。眼圧は追加点眼群で有意に下降した。血圧,脈拍,眼灌流圧に有意な変化はなかった。結論:ラタノプロスト点眼中の正常眼圧緑内障眼への塩酸ブナゾシン点眼は,眼圧をさらに下降させ,乳頭とその周囲の循環を改善させる。

急性緑内障発作に対する初回手術としての超音波白内障手術成績

著者: 家木良彰 ,   三浦真二 ,   鈴木美都子 ,   田中康裕

ページ範囲:P.289 - P.293

隅角閉塞による急性緑内障が生じた21例23眼に,初回治療として超音波水晶体破砕吸引術と眼内レンズ挿入を行った。男性2例2眼,女性19例21眼で,平均年齢は67.9±8.9歳,平均眼軸長は22.1±0.9mmであった。術前の眼圧は24~70mmHg,平均48.7mmHgであった。平均執刀時間は24.6分で,3眼ではcore vitrectomyを併用した。チン小帯の断裂で眼内レンズ挿入ができなかった1眼以外に術中合併症はなかった。術翌日の眼圧は8~26mmHg,平均14.8mmHgであり,1例を除き,緑内障手術の追加を必要としなかった。最終眼圧は平均14.0mmHgで,2眼で緑内障薬点眼が行われていた。視力は18眼(78%)で改善し,5眼(22%)で不変であった。経過観察中,水疱性角膜症の発症はなかった。以上,急性緑内障発作眼に対しての超音波白内障手術は発作解除に有効で,安定した低い術後眼圧が得られ,術中・術後の合併症も少なかった。

トラベクレクトミー後に瞳孔閉鎖を生じた2例

著者: 竹中丈二 ,   塚本秀利 ,   向井聖 ,   金本尚志 ,   平山倫子 ,   曽根隆志 ,   松山茂生 ,   三嶋弘

ページ範囲:P.295 - P.298

線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)後に瞳孔閉鎖が生じた2例2眼を経験した。いずれも女性で,62歳と66歳であった。第1例は急性閉塞隅角緑内障で3年前に線維柱帯切除術が行われた。3か月前からの視力低下で紹介され受診した。右眼矯正視力は0.03で,瞳孔膜とその前方に色素が沈着していた。瞳孔形成術で視力は0.6に回復した。第2例は開放隅角緑内障で左眼への線維柱帯切除術が15年前に行われた。瞳孔膜とその前方に沈着下色素のために,左眼視力が0.08に低下した。瞳孔形成術で視力は0.1に回復した。線維柱帯切除術の既往とピロカルピン点眼が膜様物質を生じる共通した危険因子であると推測した。線維柱帯切除術が行われた眼にピロカルピン点眼を使用する際には瞳孔閉鎖に留意する必要がある。

専門別研究会

屈折調節研究会―Quality of visionを考える

著者: 大鹿哲郎

ページ範囲:P.300 - P.302

本年の屈折調節研究会は,屈折矯正方法と視覚の質,quality of vision(QOV)をメインテーマに,基調講演,教育講演,シンポジウムを行った。一般演題は募集しなかった。

【基調講演】 QOVと幾何光学

所  敬(東京医科歯科大学)

 所名誉教授は,まず幾何光学の3つの基本法則,特にSnellの法則(異なる媒質の境界を通過する光は反射および屈折する)について解説され,続いて眼の幾何光学的な特徴について述べられた。眼には幾何光学的には欠点と考えられる構造や現象があり,これらには生理的なものと病的なものとがある。

連載 今月の話題

リンパ性腫瘍の診断と治療

著者: 安積淳

ページ範囲:P.249 - P.256

眼付属器(結膜,眼瞼,眼窩組織)には,リンパ増殖性病変lymphoproliferative lesionがしばしば発生する。その大部分は悪性度の低いリンパ腫であり,「MALTリンパ腫」と診断されることが多い。診断は病理組織学的に行うが,補助検査の重要性が増しており,最終病理診断に影響する場合もある。治療は放射線療法による局所治療が主体であったが,抗CD20モノクローナル抗体(リツキシマブ)による治療も行われるようになってきた。眼付属器に発生するリンパ性腫瘍について,最近の診断法と治療を紹介する。

眼の遺伝病67

CYP4 V2遺伝子異常とクリスタリン網膜症(2)

著者: 和田裕子 ,   玉井信

ページ範囲:P.258 - P.260

前回と同様に,CYP4 V2遺伝子のIVS6-8delTCATACAGGTCATCGCG/insGC変異をもつクリスタリン網膜症の1例を報告する。本症例は前回のシリーズと同じ変異をもつが,今回の症例は,周辺部網膜の変性に比べ後極部の変性が強く,視力低下も著明で,網膜電位図は保持されている。

 症 例

 患者:64歳,女性

 主訴:視力低下

 家族歴:両親がいとこ婚(図1)

 現病歴:40歳代前半より視力低下を自覚していた。近医を受診し網膜色素変性と診断された。52歳の時,転居のため当科へ受診となった。

日常みる角膜疾患24

強膜軟化症

著者: 柳井亮二 ,   近間泰一郎 ,   西田輝夫

ページ範囲:P.262 - P.265

症 例

 患者:72歳,女性

 主訴:右眼の異物感

 現病歴:半年前より,右眼の内眼角部球結膜に黒色斑が出現した。異物感も自覚するようになり近医を受診した。強膜の菲薄化がみられたため,精査および加療目的で2001年7月3日,当院を紹介され受診した。

 眼科既往歴:20年前に両眼の翼状片手術(マイトマイシンC使用の説明を受けたとのことであるが既に閉院しており,術式・術後経過などの詳細は不明である)。

 全身既往歴・家族歴:特記すべきことはない。アレルギー,アトピー素因はない。

眼形成手術手技1

局所麻酔―最初から最後まで痛くない手術のために

著者: 野田実香

ページ範囲:P.266 - P.269

眼科医が眼形成の手術書をいくら読んでも苦手意識が先立って実践する気にならないのは,それにまつわる止血・切開・麻酔などの基本的操作について詳細に述べられることが少なかったことが原因の1つだと考えている。本シリーズでは,前半では手術操作と外来での手技などについて, 後半では疾患別に眼科医にとってわかりやすいよう実践的に解説していきたい。

あのころ あのとき50

臨床視覚電気生理39年の研究生活を振り返って

著者: 玉井嗣彦

ページ範囲:P.270 - P.273

はじめに

 「臨床眼科」編集室から「あのころ,あのとき」の執筆依頼を受けた。若い先生方に元気のでるような,なるほどと思えるような読み物を,とのことであった。全く自信はないが,大学の停年退官時,書棚に残した書物は電気生理関係のものばかりであったので,ERG研究の発端から話を進めてみたい。

他科との連携

電子カルテと歯磨き

著者: 小林かおり

ページ範囲:P.274 - P.275

振り返ればこの1年間に佐賀大学医学部にとって,大きなイベントが2つあった。1つは2003年10月より佐賀医科大学が佐賀大学と統合したこと,もう1つは佐賀大学医学部付属病院に2004年2月1日より電子カルテが導入されたことである。これにまつわるエピソードを1つずつ御紹介する。

 1.ついに電子カルテ導入

 2003年7月末日,医局員から電子カルテの準備状況を聞いた私は,電子カルテの導入が差し迫っているにもかかわらず,眼科としての準備がいかに遅れているかを痛感した。“実際の眼科の外来,病棟はいったいどうなるの?!”。自ら電子カルテ導入準備に首を突っ込むことになった。

特別寄稿

滲出型加齢黄斑変性の疾患概念の拡大

著者: ,   ,  

ページ範囲:P.312 - P.325

この約10年間の間に,新生血管型(滲出型)加齢黄斑変性(age-related macular degeneration:AMD)の疾患概念は,クラッシック型およびオカルト型脈絡膜新生血管(choroidal neovascularization:CNV)以外にも拡大してきた。臨床所見,検査所見,病理学的所見から,網膜内血管腫状増殖(retinal angiomatous proliferation:RAP)とポリープ状脈絡膜血管症(polypoidal choroidal vasculopathy:PCV)といった疾患概念が明らかになってきている。これらは,特有の自然経過と治療に対する反応を有していることから,患者の管理を行う上で,CNVの分類にRAPとPCVという明確な診断名を追加することは重要である。

 網膜内血管腫状増殖(retinal angiomatous proliferation:RAP)

 RAPは網膜毛細血管の増殖と毛細血管拡張を伴うCNVの特異な亜型として最近認識されるようになった1)。1992年にHartnettら2)は,円板状瘢痕病巣に移行する前の滲出型AMDにおいて,網膜内での血管新生が早期病変として存在することをはじめて論じた。彼女らはこれを“retinal angiomatous lesion”と呼んだ。さらにこの病態は“deep retinal vascular anomalous complex(網膜深層血管異常複合体)”3),あるいは“retinal choroidal anastomosis(網膜-脈絡膜血管吻合)”4,5)との名称でも呼ばれていた。しかし,血管新生が網膜深層に限定しているわけではなく,また,網膜-脈絡膜血管吻合は末期像にみられるもので必ず生じる変化でもない。これらの臨床所見はLafautら6)の病理組織学的観察結果により支持された。滲出型AMDの他の形態と区別するため,筆者ら1)は,特に網膜新生血管が早期に発現すること,網膜毛細血管拡張,網膜-網膜血管吻合(retinal retinal anastomosis:RRA)の発生,網膜下腔への新生血管の進展,また,様々な程度で末期像にみられる網膜-脈絡膜血管吻合(retinal choroidal anastomosis:RCA)などの所見を特徴づけるため,RAPの名称を提唱した。

臨床報告

内頸動脈内膜剝離術後に増悪した血管新生緑内障の1例

著者: 高木麻起子 ,   植木麻理 ,   河原彩 ,   杉山哲也 ,   池田恒彦 ,   稲毛和 ,   小川竜介

ページ範囲:P.349 - P.352

59歳男性が右眼視力低下で受診した。22年前に糖尿病と診断され,3年前に心筋硬塞があった。矯正視力は右眼0.4,左眼1.2であり,眼圧は右眼30mmHg,左眼18mmHgであった。右眼の虹彩と隅角に新生血管があり,全周の80%に周辺虹彩前癒着(PAS)があった。眼底には点状出血が散在し,蛍光眼底造影で右眼の腕-網膜循環時間が32秒と延長していた。眼虚血症候群を疑い,精査の結果,右内頸動脈に99%狭窄が発見された。薬物投与と光凝固で右眼眼圧は18mmHgに下降した。右眼に中心暗点が生じ,視力は0.04になった。左上下肢の脱力発作が頻発するようになり,右内頸動脈内膜剝離術を行った。術直後から右眼圧が45mmHgに上昇し,線維柱帯切除術が行われた。内頸動脈狭窄に広範な虹彩前癒着と新生血管緑内障が続発しているときには,内頸動脈内膜剝離術後の血流増加で急激な眼圧上昇が起こりうるので注意が必要である。

眼圧上昇をきたしたtubulointerstitial nephritis and uveitis症候群の1例

著者: 村瀬寛紀 ,   望月清文 ,   堀由起子 ,   山田信二 ,   澤田明

ページ範囲:P.353 - P.357

15歳男子が1週間前からの右眼結膜充血と眼痛で受診した。矯正視力は左右とも1.0で,眼圧も正常であった。両眼に毛様充血があり,前房に炎症細胞があった。右眼視神経乳頭の縁が不明瞭で,両眼の網膜静脈が拡張していた。尿のN-アセチルグルコサミニダーゼ,αおよびβミクログロブリンの上昇があり,ぶどう膜炎を伴う間質性腎炎(TINU)症候群と診断した。プレドニゾロンの内服とベタメタゾンの点眼で病状が軽快し,7か月後に内服を中止した。その4か月後から抗緑内障薬に抵抗する眼圧上昇が生じた。虹彩炎はなかった。ベタメタゾンをフルオロメトロンに変更し,眼圧は下降した。その18か月後の現在,無投薬でふどう膜炎の再燃と眼圧上昇はない。ステロイド投与が眼圧上昇の主因であったと推定される。

第3併用薬としての塩酸ブナゾシン点眼薬の眼圧下降効果

著者: 橋本尚子 ,   原岳 ,   久保田俊介 ,   久保田みゆき ,   水流忠彦

ページ範囲:P.359 - P.362

ラタノプロストとチモロール・ゲル2薬の点眼で眼圧が21mmHg以下に調整されている緑内障患者20例20眼に,ブナゾシン追加投与を行い眼圧下降効果を検討した。20眼の病型は,原発開放隅角緑内障6眼,正常眼圧緑内障13眼,先天緑内障1眼である。20眼での追加前(ベースライン)眼圧は14.3±2.6mmHg,追加後3か月の眼圧は13.8±2.1mmHgであった(p=0.26)。ベースライン眼圧が15mmHg以上の7眼では,投与前17.2±1.8mmHg,投与後14.3±2.8mmHgであり(p<0.05),ベースライン眼圧が15mmHg未満の13眼では,投与前12.7±1.2mmHg,投与後13.5±1.6mmHgであった(p=0.07)。2剤併用眼に対するブナゾシン追加投与は,ベースライン眼圧が15mmHg以上の症例に有効であると結論される。

光干渉断層計を用いた特発性黄斑円孔手術後の中心窩網膜厚と視力の関係

著者: 小松敏 ,   伊藤良和 ,   高橋知里 ,   大川親宏 ,   古田基靖 ,   福喜多光志 ,   松原央 ,   杉本昌彦 ,   脇谷佳克 ,   佐宗幹夫 ,   宇治幸隆

ページ範囲:P.363 - P.366

目的:特発性黄斑円孔術後の視力と,中心窩厚ならびに中心窩閾値との関係の検討。対象と方法:特発性黄斑円孔19例19眼を対象とし,術後視力0.4以上を良好群,0.4未満を不良群とした。中心窩厚と中心窩閾値は光干渉断層計で測定した。結果:中心窩厚は,手術2週間後で150.4μm,3か月後で123.8μm,6か月後では127.9μmであった。手術6か月後の視力と中心窩厚の間に正の相関があった。視力良好群の中心窩厚は不良群よりも有意に厚く,基準範囲に近かった。手術6か月後の視力と中心窩閾値の間に正の相関があった。結論:特発性黄斑円孔術後の視力と中心窩厚の間に正の相関がある。術後の中心窩厚が正常人の値に近いほど視力が良好である。

眼部帯状ヘルペスの臨床像の現状と変遷

著者: 佐藤貴之 ,   大野智子 ,   山根真 ,   伊藤由起 ,   亀澤比呂志 ,   和田浩卓 ,   中谷弥生 ,   門之園一明 ,   内尾英一

ページ範囲:P.367 - P.371

眼部帯状ヘルペスの臨床像を自験例について解析した。角膜病変を伴う眼部帯状ヘルペスの症例数は,2004年までの5年間の16例と,1993年までの11年間の49例である。今回の16例の平均年齢は68歳で,男性11例,女性5例であった。今回の症例群を前の11年間のそれと比較するとき,男性が増加して平均年齢が有意に高齢化し,さらに実質型が減少し角膜ぶどう膜炎型と内皮型が増加していた。病型別の平均年齢は上皮型74歳,内皮型53歳,角膜ぶどう膜炎型71歳であった。16例中7例(44%)にパラシクロビルが投与されていた。高齢化と角膜病変が軽微な症例の増加が最近の眼部帯状ヘルペスの臨床的な特徴であった。

緑内障手術後乱視の検討―線維柱帯切除術と非穿孔線維柱帯切除術の単独手術および白内障同時手術での比較

著者: 越後希 ,   吉田秀彦 ,   川越直顕

ページ範囲:P.373 - P.377

74眼に緑内障手術を行い,手術前後の角膜形状と角膜乱視の変化を検索した。内訳は線維柱帯切除術33眼と非穿孔線維柱帯切除術41眼である。線維柱帯切除術単独13眼,線維柱帯切除術と白内障手術ならびに眼内レンズ移植術のトリプル手術を20眼,非穿孔線維柱帯切除術単独12眼,これと白内障手術ならびに眼内レンズ移植術のトリプル手術を29眼に行った。Cravy法による軸乱視量変化では,術後3か月ですべての術式で直乱視化した。Jaffe法では,術後3か月の惹起乱視量は,線維柱帯切除術トリプル手術例で最大,非穿孔線維柱帯切除術単独例で最小であった。線維柱帯切除術では惹起乱視量が非穿孔線維柱帯切除術よりも大きく,直乱視化した。非穿孔線維柱帯切除術群では術後3か月で直乱視化した。

カラー臨床報告

近視眼の視神経乳頭周囲にみられる脈絡膜分離のOCT3所見

著者: 舘野寛子 ,   高橋寛二 ,   福地俊雄 ,   山崎有加里 ,   正健一郎 ,   松村美代

ページ範囲:P.327 - P.331

近視眼の乳頭周囲にある赤橙色病変を光干渉断層計(OCT)で検索した。対象は6例8眼で,屈折は-4.5~-17.5D,平均-9.75Dであった。OCTの断面像では,赤橙色病変部はやや隆起し,脈絡膜内に光学的透明腔があった。網膜色素上皮と脈絡膜の間に剝離はなかった。以上の所見は,この赤橙色病変は網膜色素上皮剝離ではなく,脈絡膜分離であることを示し,近視眼での眼軸延長に伴う乳頭周囲の強膜伸展が関与すると推察された。

チン小帯脆弱症例の超音波白内障手術におけるカプセルエキスパンダーの試作

著者: 小澤忠彦 ,   谷口重雄

ページ範囲:P.333 - P.339

目的:チン小帯脆弱眼の超音波白内障手術用に試作した水晶体囊拡張器(カプセルエキスパンダー)の評価。対象と方法:Marfan症候群,落屑症候群,強度近視,外傷,原因不明によるチン小帯脆弱眼各2眼の計10眼を対象とした。年齢は23~81歳,平均59歳である。術後4~10か月,平均6.7か月の経過を観察した。連続円形破囊(CCC)の後,チン小帯断裂の範囲に応じ1~6か所に囊拡張器を設置し,通常の方法で超音波白内障手術を行った。結果:囊拡張器を使用することで,全例で水晶体囊を温存して超音波白内障手術ができた。術中,術後の合併症はなかった。結論:チン小帯脆弱眼の超音波白内障手術に囊拡張器は有用であった。

Valsalva出血性網膜症の硝子体膜下および内境界膜下出血の光干渉断層計所見

著者: 宇野毅 ,   稲用和也 ,   出田秀尚

ページ範囲:P.341 - P.344

59歳男性が左眼の視力低下で受診した。視力低下は,その前日に飲酒し,嘔吐した直後に自覚した。矯正視力は右眼1.5,左眼0.02であり,左眼黄斑部に3乳頭径(DD)の出血と,乳頭上方に1.5DDの出血があった。Valsalva出血性網膜症と診断した。光干渉断層計(OCT)検査を10日後に行った。黄斑部では出血で内境界膜が挙上され,網膜が肥厚している所見が得られた。乳頭上方では,出血で後部硝子体膜が挙上されていた。黄斑部の出血が持続したので,6週後に硝子体手術を行った。出血は硝子体下腔と内境界膜下に貯留していた。後部硝子体膜下と内境界膜下出血の鑑別にOCTが有用であった症例である。

シクロホスファミド内服を試みた壊死性強膜炎2例

著者: 山田佑美 ,   大原國俊 ,   上玉麻子 ,   志和利彦 ,   高橋浩

ページ範囲:P.345 - P.348

副腎皮質ステロイド薬が無効な壊死性強膜炎の2症例にシクロホスファミド内服が奏効した。1例は54歳女性で,左眼に壊死性強膜炎が7か月前からあり,ステロイド薬の点眼と内服は無効であった。1日量100mgのシクロホスファミド内服で2年5か月後に治癒した。他の1例は68歳女性で,20年前からの関節リウマチに対しプレドニゾロン内服を行っていた。両眼に壊死性強膜炎,右眼に角膜穿孔があった。シクロホスファミド内服と羊膜移植で4か月後に継続的な治癒が得られた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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