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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科59巻4号

2005年04月発行

雑誌目次

特集 第58回日本臨床眼科学会講演集 (2) 学会原著

Ahmed glaucoma valveを挿入した難治性緑内障の術後経過

著者: 木内良明 ,   長谷川利英 ,   原田純 ,   奥村真理子 ,   藤本雅彦 ,   斉藤喜博 ,   岡田康平

ページ範囲:P.433 - P.436

 難治性緑内障5眼にAhmed glaucoma valveを挿入した。対象は新生血管緑内障3眼,ぶどう膜炎に続発した緑内障1眼,外傷に続発した緑内障1眼である。4眼には複数回の線維柱帯切除術が行われていた。術前の平均眼圧は39.6±7.4mmHgであった。術後1年の時点で,2眼で眼圧が点眼1剤を使用して21mmHg以下であった。角膜内皮細胞数は術後1年で約50%に減少していた。Ahmed glaucoma valveを使用することで,難治性緑内障の眼圧をコントロールできる可能性が広がる。術後の角膜内皮細胞の減少が著しいので,安易な使用は慎むべきである。

手持ち型網膜投影式視覚補助装置の読字能力

著者: 戒田真由美 ,   前田純 ,   井上浩二 ,   村澤牧子 ,   山口真 ,   中村肇 ,   高橋秀也 ,   小林勝 ,   志水英二 ,   白木邦彦

ページ範囲:P.437 - P.440

 手持ち型の網膜投影式視覚補助装置を試作し,低視力者の読字能力を,既存のフェイスマウント型ビデオディスプレイ式拡大読書器と比較検討した。低視力者13名が本研究に参加した。年齢は57~82歳(平均70歳)であり,矯正視力は0.01~0.3(平均0.04)であった。コンピュータに接続した装置を通してひらがな文字を見てもらい,20秒間に読めた文字数を計測した。文字の大きさは400から28ポイントまで順次小さくしていった。その結果,両装置間で最大読書速度はほぼ同じであり,臨界文字サイズは本装置では対照よりも小さく,最小のポイントで読めた文字数は本装置のほうが多かった。以上,本装置は低視力者の視覚補助装置として,既存の装置と同等またはそれ以上に有用であると評価される。

視覚障害者手帳5級の視野面積を測る方法―動的視野測定機能を備えた自動視野計を用いた場合

著者: 加茂純子 ,   四方田大介 ,   深澤喜直

ページ範囲:P.441 - P.444

 視覚障害者5級は,両眼のⅠ/4合成面積が基準視野に対し半分以上障害されていると取得できる。従来,医師の主観判定であったが,視野面積を計算する方法を考案した。対象は眼疾患のない正視から-3Dまでの15名の被検者。動的視野測定のできるハンフリー(750型)または,オクトパス(101型)を用い測定した。Adobe Photoshop(R)にて両眼視野を合成し,基準視野を重ねてⅠ/4の合成領域を囲み,面積をLenara1.02(R)で計算して基準視野の面積との比を求めた。750型で測定した9名の基準視野に対する比は0.58,101型で測定した5名のそれは0.51であり,15名中11名が0.6未満,3名は0.5未満となった。

涙洗通過良好の流涙症に対する治療

著者: 前田修司 ,   前田耕志 ,   古田歩

ページ範囲:P.445 - P.447

 目的:涙道洗浄の成績が良好な流涙症の涙道チューブによる治療成績の報告。対象と方法:流涙を主訴として受診した患者10例11眼。全例で涙液メニスカスが高く,涙道色素通過試験が陽性で,涙道洗浄の成績が良好であった。全例に局所麻酔下でヌンチャク型シリコーンチューブを挿入し,約1か月後に抜去した。結果:11眼中8眼で導涙機能が正常化し自覚症状が改善した。結論:器質的閉塞がない流涙症に対し涙道チューブ挿入は有効である。

栗のイガ刺入による角膜穿孔の2例

著者: 越智亮介 ,   清水一弘 ,   山上高生 ,   向井規子 ,   永井知子 ,   奥英弘 ,   菅澤淳 ,   池田恒彦

ページ範囲:P.449 - P.452

 落下する栗のイガで角膜穿孔を生じた2症例を経験した。1例は31歳女性,他の1例は65歳男性で,いずれも栗拾いをしていた。角膜深層までイガが刺入し,一部が前房内に穿孔していた。顕微鏡下で摘出したが,イガ自体の脆弱性と返し構造のため摘出が困難で,1例では角膜切開を必要とした。2例とも軽度の角膜混濁を残して治癒した。栗のイガは毒素サポニンを含み,長期間放置すると炎症を惹起して角膜混濁を生じるため早期に摘出すべきである。

ニプラジロール点眼による緑内障患者の網膜血流動態の変化

著者: 齊藤純代 ,   村山耕一郎 ,   伊藤真美 ,   竹内勝子 ,   出口達也 ,   米谷新

ページ範囲:P.453 - P.457

 目的:ニプラジロール点眼による緑内障患者の眼圧,網膜血流量,網膜酸素飽和度への影響の検討。対象と方法:過去に治療を受けていない緑内障患者14例14眼を対象とした。内訳は原発開放隅角緑内障5眼と正常眼圧緑内障9眼である。正常者7例7眼を対照とした。ニプラジロール点眼開始前,1か月後,3か月後に,眼圧,網膜平均血流速度,網膜酸素飽和度を測定した。結果:ニプラジロール点眼後の眼圧に有意な下降はみられなかった。点眼前眼圧と眼圧下降量には有意な正の相関があった(p=0.006)。網膜平均血流は1か月後に有意な増加があった。網膜酸素飽和度には有意な変化がなかった。結論:ニプラジロール点眼により網膜血流は改善する。この効果には耐性があり,長期的に作用が減弱する可能性がある。

白内障手術後のCandida parapsilosisによる真菌性眼内炎の1例

著者: 尾崎秀 ,   野田和宏 ,   永富智浩 ,   藤田ひかる ,   木村純子 ,   村田敏規 ,   石橋達朗

ページ範囲:P.459 - P.462

 目的:白内障手術1年後に発症した真菌性眼内炎の1例の報告。症例:79歳女性が両眼に白内障手術を受けた。その2か月後に左眼眼内炎と診断され抗生物質の投与を受けた。以後軽快と再燃を繰り返し,術後17か月に5度目の再燃があり紹介され受診した。所見:矯正視力は右0.9,左0.3。左眼に毛様充血があり,水晶体囊内に白色塊があり,硝子体混濁が併発していた。眼内レンズを摘出し,硝子体を切除し,抗生物質を加えた液で灌流した。術中の硝子体検体から真菌Candida parapsilosisが検出され,抗真菌薬を投与し硝子体混濁が急速に消退した。結論:抗生物質に抵抗を示す遅発性の術後眼内炎の原因として,弱毒細菌とともに真菌にも留意する必要がある。

全層角膜移植術における視力予後への影響因子の検討

著者: 草野真央 ,   築城英子 ,   今村直樹 ,   小川月彦 ,   北岡隆

ページ範囲:P.463 - P.466

 過去47か月間に行った全層角膜移植術69例80眼の成績を検討した。対象は術後の経過観察が3か月以上できたものに限定した。角膜移植の対象は水疱性角膜症25眼(31%),角膜白斑24眼(30%),再移植15眼(18%),円錐角膜9眼(11%)であった。術後最高視力は62眼(78%),術後最終視力は44眼(55%)で改善した。強角膜片摘出までの時間と提供者の年齢は,視力改善率と透明治癒率に影響しなかった。

KID症候群の1例

著者: 石田和寛 ,   岩脇卓司 ,   藤原雅史 ,   大郷典子 ,   栗本康夫

ページ範囲:P.467 - P.470

 目的:角膜炎,魚鱗癬,難聴をその内容とするKID症候群症例の生下時から3歳までの経過記述。症例:在胎32週,2,035gで出生した女児。生下時より無毛で紅角皮症を呈した。経過:生後3か月目に角膜実質炎,角膜浸潤,上皮欠損が左眼に生じた。抗菌薬とステロイド薬の点眼で角膜浸潤と上皮欠損が縮小し,発症から2か月後に角膜混濁と血管新入を残して症状が鎮静化した。感音性難聴があることが判明し,KID症候群と診断した。生後2年8か月目に右眼に同様な病変が生じ,同様な経過をとった。結論:KID症候群での角膜炎の機序は不明であるが,今回の症例で病変が鎮静化した後の所見は梅毒性角膜実質炎に酷似していた。

急性散在性脳脊髄炎を伴ったぶどう膜炎の1例

著者: 堤理子 ,   福島敦樹 ,   林暢招 ,   西野耕司 ,   小浦裕治 ,   小松務 ,   上野脩幸 ,   小野雄弘

ページ範囲:P.471 - P.474

 69歳女性が両眼飛蚊症で紹介受診した。矯正視力は右1.0,左1.2であり,左眼に前房細胞,硝子体混濁,網膜滲出斑と出血があった。硝子体手術で悪性リンパ腫は否定された。10週後に歩行障害が出現し,画像検査,髄液所見,脳生検などで急性散在性脊髄炎の診断が確定した。副腎皮質ステロイド薬の全身投与で軽快し,以後神経症状の再発はない。その10か月後に左硝子体混濁が悪化し,硝子体手術で悪性リンパ腫は再び否定された。急性散在性脊髄炎がぶどう膜炎の原因の1つである可能性がある。

Crohn病に合併したHLA-B27陽性急性前部ぶどう膜炎の1例

著者: 大橋広弥 ,   蔵本直史 ,   尾崎志郎

ページ範囲:P.475 - P.478

 目的:Crohn病に併発したHLA-B27陽性急性前部ぶどう膜炎の1症例の報告。症例:26歳男性。18歳時に全大腸炎型のCrohn病と診断され,22歳時から左眼ぶどう膜炎として加療されていた。所見と経過:右眼の充血と眼痛で受診し,右眼瞳孔領にフィブリン膜形成を伴う虹彩炎があり,急性前部ぶどう膜炎と診断した。副腎皮質ステロイド薬点眼に反応し視機能が改善した。ヒト白血球抗原検査でHLA-B27陽性であった。強直性脊椎炎などの腸管外合併症はなかった。以後現在までの1年間,ぶどう膜炎の再発はない。結論:急性前部ぶどう膜炎では基礎疾患の把握とHLA検査が診断と経過観察において重要である。

胸腺腫に伴うCAR症候群の1例

著者: 大橋秀記 ,   高橋嘉晴 ,   松倉修司 ,   河合憲司

ページ範囲:P.479 - P.483

 64歳女性が2か月前からのぶどう膜炎の悪化で紹介受診した。矯正視力は右0.7,左手動弁であった。強い硝子体混濁のほか,羞明と霧視に伴う進行性の視力低下,輪状暗点,網膜血管の狭細化,眼底色調の粗そう化,蛍光眼底造影での蛍光色素漏出,網膜電図でのa・b波の振幅低下(平坦化)が両眼にあった。胸部画像検査で右肺門部と上前縦隔に腫瘤が発見され,手術により,浸潤性胸腺腫と診断した。血清から抗リカバリン抗体が検出され,腫瘍関連網膜症(cancer-associated retinopathy:CAR)と診断した。受診から1年後の現在,患者の経過は良好である。

短照射時間小スポットサイズの汎網膜光凝固

著者: 芳賀照行

ページ範囲:P.485 - P.489

 糖尿病網膜症19例37眼に波長532nmの緑色レーザーで汎網膜光凝固を行った。福田分類でBⅠ31眼,BⅡ4眼,BⅢ2眼である。照射時間0.1秒,スポットサイズ100μmとした。BⅢ1眼では硝子体出血のために視力が低下したが,他の36眼では汎網膜光凝固の終了時に凝固前視力を維持した。短時間照射のために眼の動きに左右されず,サイズが小さいので中間透光体の混濁に影響されずに安定した凝固斑が得られた。凝固中に疼痛を訴える症例はほとんどなく,痛みのために凝固を続けられない例はなかった。合併症として,1度だけ出力を上げ過ぎて一過性の破綻出血が生じた。照射時間が短く小さな凝固斑による本法は,汎網膜光凝固として有用であると期待できる。

当院における放射状視神経切開術の中期予後

著者: 岩本朋之 ,   飯島千津子 ,   宇多重員 ,   樋田哲夫

ページ範囲:P.491 - P.496

 網膜中心静脈閉塞症に対して放射状視神経切開術を行った10例11眼につき検討した。内訳は男性5例5眼,女性5例6眼で,年齢は53~79歳,虚血型7眼,非虚血型4眼である。術後,出血が速やかに吸収され,浮腫も早期に軽快するものが多かった。遅延例にはトリアムシノロンアセトニドのテノン囊下注入を行い吸収を促進させた。術後早期の合併症として硝子体出血が3眼,新生血管緑内障が3眼にあり,5眼には汎網膜光凝固を追加した。術後5か月以上の経過観察で,最終視力は手動弁から0.9であった。虚血型と非虚血型とで視力の経過に差はなかった。放射状視神経切開術は従来の方法と比較し,特に優れた画期的治療法であるという印象を受けなかった。

網膜中心静脈閉塞症へのトリアムシノロン球後注射の効果

著者: 木村有美 ,   吉田三紀 ,   岸章冶

ページ範囲:P.497 - P.501

 目的:網膜中心静脈閉塞症に対するトリアムシノロン球後注射の効果の報告。対象と方法:対象は網膜中心静脈閉塞症5例6眼で,年齢は38~71歳(平均60歳)である。3~11か月(平均7か月)の経過観察を行った。トリアムシノロンアセトニド20mgを結膜円蓋部から筋紡錘内に注射した。結果:トリアムシノロン投与前視力は0.16,最終視力は0.36に改善した。眼底所見では4眼で網膜出血が改善し,うち2眼では消失した。全例で黄斑浮腫が軽減し中心窩の陥凹が復活した。3眼では浮腫が再発しトリアムシノロンを追加投与した。反復投与ではその効果が減弱していった。結論:網膜中心静脈閉塞症へのトリアムシノロン球後注射は,簡便で副作用が少なく,眼底所見の改善と視力向上に有効であった。黄斑浮腫の再発が主な問題点である。

硝子体手術時のSoemmering ringの処理法

著者: 矢舩伊那子 ,   植木麻理 ,   片岡英樹 ,   南政宏 ,   廣辻徳彦 ,   前野貴俊 ,   佐藤文平 ,   池田恒彦

ページ範囲:P.503 - P.506

 目的:後発白内障の1つSoemmering ringは,周辺部硝子体切除術の障害になる。硝子体手術時にこれを処理する手技を考案した。症例と方法:症例は裂孔原性網膜剝離2眼とぶどう膜炎1眼で,硝子体カッターで後囊と前後囊間のSoemmering ringを切除し,前囊はできるだけ温存した。結果:全例で前囊を温存でき,その透明性が保たれていたため,硝子体手術時の周辺部の視認性が確保できた。結論:前囊を温存しながらSoemmering ringを処理することができた。眼内レンズの二次挿入を将来行う場合にも本術式が有用である。

外傷性毛様体解離と脈絡膜剝離のUBM所見の検討

著者: 松原敬忠 ,   竹内正光 ,   垰本慎 ,   福地俊雄 ,   松村美代

ページ範囲:P.507 - P.511

 目的:超音波生体顕微鏡による外傷性毛様体解離と脈絡膜剝離の有無とその範囲の同定。症例と所見:低眼圧が併発した鈍的眼外傷4眼に初回手術として毛様体縫着術を行った。超音波生体顕微鏡で毛様体解離の存在が2眼で同定できた。解離部に連続した脈絡膜剝離は,画像上,毛様体と強膜が完全に解離し,水と同じ輝度を呈した。全例で非解離部の脈絡膜剝離は,すだれ状の所見を呈した。結論:鈍的眼外傷で低眼圧が併発していると,超音波生体顕微鏡でも隅角損傷の状況を把握しにくいが,毛様体解離と2種類の脈絡膜剝離の所見に注目することで,毛様体解離の有無と部位が同定できる。

脈絡膜剝離を合併し血管内治療が著効した頸動脈海綿静脈洞瘻(CCF)の1例

著者: 高岡真帆 ,   尾藤洋子 ,   田中康之 ,   梅林猛 ,   小泉徹

ページ範囲:P.513 - P.518

 目的:脈絡膜剝離,浅前房,近視化を併発した頸動脈海綿静脈洞瘻症例の報告。症例:66歳女性が3週前からの眼球運動障害,眼球突出,結膜血管の蛇行と拡張,眼圧上昇で紹介受診した。矯正視力は右0.7,左0.3で,左眼に脈絡膜剝離,浅前房,近視化,動眼・滑車神経麻痺があった。血管造影で狭義の頸動脈海綿静脈洞瘻はなく,副硬膜動脈と上眼静脈との間に瘻形成が証明された。血管内治療が奏効し眼症状はほとんど消失した。結論:頸動脈海綿静脈洞瘻により,脈絡膜剝離,浅前房,近視化が発症することがある。海綿静脈洞を介さないため外転神経麻痺がなく,血流が直接短絡したことでうっ血が強く脈絡膜剝離が生じたと解釈される。

自傷行為により眼球脱臼を呈した統合失調症の1例

著者: 樫本良亮 ,   栗本拓治 ,   宮浦卓 ,   保科幸次 ,   三村治

ページ範囲:P.519 - P.522

 32歳女性が1年前に統合失調症と診断され,内服加療中であった。自宅で右眼を自傷しているところを家人に発見され,受診した。右眼球結膜はほぼ全周に裂傷があり,対光反応は消失していた。CT検査と術中所見から,明らかなテノン囊,外眼筋,視神経の離開はなく,眼球脱臼のみがあった。眼球摘出後,精神科医と協力し,自傷行為の再発防止と義眼装用をすることができた。

道路情報板における色彩情報のユニバーサルデザイン

著者: 中村かおる ,   岡島修 ,   西尾佳晃 ,   北原健二 ,   尾登誠一 ,   松下之憲 ,   軍記伸一

ページ範囲:P.523 - P.527

 目的:道路情報板に使用する色についての実験結果の報告。方法:先天色覚異常者が混同しやすい赤色を特に検討した。被験者は23~51歳の第1色盲5人,第2色盲6人,および正常色覚10人で,全員が矯正視力0.7以上であった。590~640nmの6種類の波長のLED発光色を提示し,色覚異常者には視認しやすさを,正常色覚者には赤として認識できる程度を評価させた。結果:先天色覚異常者は,昼間,夜間ともに現在用いられている640nmの赤は判読しにくく,620nm前後で視認性が最も高かった。正常色覚者は波長が長くなるとともに「赤らしさ」が高まった。両者の妥協点は,昼間環境では624nm,夜間環境では627nmと推定された。結論:安全性が重視される道路表示には,正常色覚者の利便性と色覚異常者の視認性を満足させるカラーユニバーサルデザインが不可欠である。

専門別研究会

レーザー眼科学

著者: 岸章治

ページ範囲:P.528 - P.529

 「レーザー眼科学」は昨年同様,一般講演,レーザーカンファランス,特別講演の3部構成で行われた。

【一般講演】

 斉藤孝恵氏(東北大)らは網膜色素上皮上に限局した漿液性網膜剝離を認めた77歳男性の光干渉断層像を示した。浜田幸子氏(浜田クリニック)らは光干渉断層計(OCT)で糖尿病網膜症が発症する前の患者(NDR)と正常人の網膜神経線維層厚(RNFL)を測定し,興味ある結果を報告した。すなわちNDRのRNFL値は正常例より低く,血圧が上昇するとさらに低下する傾向があること,正常例より加齢による低下が大きいことを示した。

眼科と東洋医学

著者: 吉田篤

ページ範囲:P.530 - P.533

 一般演題は9題の予定だったが,世話人でもあり2題の演題発表を予定されていた竹田 眞先生(札幌市)が欠席され,演題は7題で行った。特別講演は富山医科薬科大学助教授 長木康典先生による「糖尿病眼合併症に対する漢方薬治療」という教育講演を行った。

【一般演題】

 第1席は「長期の眼痛に奏功した漢方治療」と題し,豊中市の川上俊夫先生が発表された。眼痛や球後痛は,実際の臨床では比較的多い訴えで,痛みに対しては早急な対応が必要とされる。重症な眼痛や球後痛は器質的なものを除外すると,比較的長期間治療しているにもかかわらず,痛みは軽減しないまま眼科的な治療のみで終わっている場合が多い。こういう場合,西洋医学よりも東洋医学の治療の選択があると思う。

連載 今月の話題

総合病院における電子カルテ導入の問題点

著者: 伊藤逸毅

ページ範囲:P.407 - P.411

 電子カルテは国の政策として導入が進められ,当初予定されたペースよりはずいぶんとゆっくりではあるが徐々に普及してきている。しかし,その導入にあたっては,いろいろ悩みも多いと思われる。本稿では,特に総合病院における導入時のさまざまな問題点を中心に取り上げたので,その対応策の参考にしていただければ幸いである。

眼の遺伝病68

CYP4 V2遺伝子異常とクリスタリン網膜症(3)

著者: 和田裕子 ,   玉井信

ページ範囲:P.412 - P.414

 前回までのクリスタリン網膜症のシリーズでは,IVS6-8delTCATACAGGTCATCGCG/insGC変異が,日本人クリスタリン網膜症の高頻度変異であることを述べた。今回は,CYP4 V2遺伝子の新規Trp340X変異をもつクリスタリン網膜症の1家系を報告する。前回までのIVS6-8delTCATACAGGTCATCGCG/insGC変異をもつクリスタリン網膜症と臨床像を比較していただきたい。

 症 例

 患者:52歳,男性(初診時46歳)

 主訴:視力低下

 家族歴:兄が網膜変性と他院で診断されている(図1)。

日常みる角膜疾患25

翼状片

著者: 川本晃司 ,   近間泰一郎 ,   西田輝夫

ページ範囲:P.416 - P.418

 症 例

 患者:63歳,男性

 主訴:右眼視力低下

 現病歴:1995年頃より右眼の視力低下と異物感を自覚していたが,次第に同症状が顕著となり近医を受診したところ,右眼翼状片を指摘され,手術希望目的で1999年6月に当科外来を受診した。

 既往歴:眼外傷を含めて特記事項なし。

 家族歴:特記事項なし。

眼形成手術手技2

眼形成的運針術―(1)理論編

著者: 野田実香 ,   花園元

ページ範囲:P.420 - P.425

はじめに

 運針とは「針の運び」すなわち針の刺入から針の刺出までの動きをいう。組織に対する損傷を最小にするためには,針をその彎曲に従って進めるのがよい。

 針がつくる円を軌道とした運針を行えば,針が曲がったり折れたりすることもなくなる。

 理想的な運針は,

  1.刺入点と刺出点が正確に位置していること

  2.組織の取り込み量が適切であること

  3.組織に対する損傷が最小であること

である。

あのころ あのとき51

不等像を追って

著者: 加藤桂一郎

ページ範囲:P.426 - P.429

 私が福島県立医科大学の眼科に入局したのは昭和37年(1962)で,教室員も故梶浦睦雄教授を含め数名という非常にこじんまりとした教室であった。ご承知のごとく,梶浦睦雄教授は眼科医というより眼科医療器機の開発に精力的に取り組まれており,日本光学(現・ニコン)の技術陣が教室によく出入りしていたものであった。

 保坂明郎先生との出逢い

 保坂明郎先生(横浜赤十字病院勤務)に初めてお逢いしたのは入局した昭和37年であり,札幌(北日本眼科学会)で梶浦教授に紹介されて一緒に酒を飲んだ記憶がある。どうも,翌年福島に助教授として招くための布石であったようにも思う。ともあれ,昭和38年に福島に赴任されることとなり,先生との長いお付き合いが始まった。と,同時に個人的な研究テーマとして不等像(保坂先生の学位論文)1)が提示され,個人レベルにおいて眼機能学への関心が育まれることともなった。

他科との連携

4つの情景

著者: 石田貴美子

ページ範囲:P.536 - P.538

 「他科との連携」と聞いて,一番先に思いつくのは糖尿病における内科との連携です。毎日の眼科診療で一番接する機会が多いのは,糖尿病患者さんではないでしょうか。今までいろいろな病院に出張勤務しましたが,それはどこも同じです。特に,他科から院内紹介される患者さんの半分は糖尿病眼底検査といってよいでしょう。

 教育入院中の糖尿病患者への講義

 ある出張先の病院では,内科の糖尿病教育入院中に,眼科医が講義をする時間がありました。3週間の入院中に1回,40分間ほどの講義です。3週間ごとに講義は回ってきます。毎回20人前後の患者さんが受けており,「いつも,よくこんなに患者さんがいるものだ」と,感心していました。講義はなるべくわかりやすくなるよう眼底写真のスライドを使って行い,血糖コントロールの重要性と眼科受診の必要性について話し,放置すれば失明に至ることを少しオーバーに伝えて患者さんに病識を持ってもらうように努めました。熱心にメモをとりながら話を聞き質問をする患者さんに限って後から外来で検査をすると,HbA1cは6%台とコントロール良好で,網膜症も軽いのに熱心に検査に通ってきてくれます。そうかと思えば,居眠りなどをされたりする方でHbA1cは10%以上とコントロール不良だったり,出血,白斑が散在し,硝子体出血しているにもかかわらず,眼科受診は初めてで,「でもまだ視力はいいから」と呑気な人もいたりします。

臨床報告

大量の硝子体出血により緑内障発作を起こした加齢黄斑変性の1例

著者: 上水流広史 ,   森秀夫

ページ範囲:P.543 - P.546

 76歳男性が左眼視力低下で受診した。矯正視力は右1.0,左0.05で,右眼に軟性ドルーゼン,左眼に加齢黄斑変性があった。8か月後に中等度の硝子体出血が左眼に発症した。硝子体手術を予定したが,硝子体出血が急速に増悪し,緑内障発作が起こり,視力が0になった。硝子体出血により毛様体と水晶体が前方に偏位し,隅角を閉塞して緑内障になったと推定した。緊急に白内障手術と硝子体手術を行い,眼圧は正常化したが視力は0のままであった。本症例には抗凝固療法は行わず,止血機能には異常がなかった。既往歴として高血圧があり,これと関連した脈絡膜血管の脆弱性が大量の硝子体出血を惹起した可能性がある。

鼻側脈絡膜の造影遅延を認めた網膜中心動脈閉塞症と前部虚血性視神経症を合併した1例

著者: 糸井恭子 ,   菅澤淳 ,   池田恒彦

ページ範囲:P.547 - P.552

 68歳男性に右眼の霧視が突発し,ただちに受診した。2日前から同様の発作が頻発していた。矯正視力は右光覚弁,左1.0であった。眼底に桜実黄斑があり,網膜中心動脈閉塞症と診断した。4日後に前部虚血性視神経症の所見が生じた。蛍光眼底造影で,鼻側脈絡膜への流入遅延と視神経乳頭の過蛍光があった。磁気共鳴血管造影(magnetic resonance angiography)で,右内頸中大脳動脈系の狭窄があった。最終的に網膜の白濁は消失し,乳頭が蒼白化した。内頸動脈の狭窄部で血栓が形成され,眼内血管閉塞が生じた可能性が高い。その閉塞部が1か所であるならば,網膜中心動脈と鼻側脈絡膜を支配する短後毛様動脈が同じ部位で分岐するという血管の異型が存在する可能性がある。

ラタノプロストの無効率とその関連因子

著者: 井上賢治 ,   泉雅子 ,   若倉雅登 ,   井上治郎 ,   富田剛司

ページ範囲:P.553 - P.557

 1日1回のラタノプロスト点眼で眼圧が下降しない無効例(ノンレスポンダー)を88例88眼について検索した。内訳は原発開放隅角緑内障22例,正常眼圧緑内障43例,高眼圧症23例であり,点眼開始から1,3,6か月後の眼圧値と眼圧下降率を測定した。眼圧下降率が10%未満のものをノンレスポンダーと定義し,眼圧下降率に寄与する因子を重回帰分析で検討した。眼圧は,点眼開始前19.4±4.2mmHg,1か月後15.3±3.4mmHg,3か月後14.9±3.3mmHg,6か月後14.7±2.9mmHgであった。点眼開始から6か月までの眼圧下降率は20.2~23.5%で,有意に眼圧が下降していた(p<0.0001)。点眼開始前の眼圧のみが眼圧下降率と有意に関連していた(p=0.0019,R2=0.20)。ノンレスポンダーの頻度は,1か月後20.9%,3か月後18.2%,6か月後14.3%であり,点眼開始前の眼圧が低い症例に多かった。

細菌性結膜炎の検出菌についての検討

著者: 松井法子 ,   松井孝治 ,   尾上聡 ,   宇治幸隆

ページ範囲:P.559 - P.563

 5~10月の6か月間に細菌性結膜炎と診断した82例を検索した。年齢は71.3±13.7歳であった。採取した眼脂を培養し,得られた細菌を同定して薬剤感受性を検査した。72例(88%)から101株の細菌が検出された。Bacillus sp.が最も多く,菌単独陽性率が高く菌量が高いことから起炎菌であった可能性が高いと判断した。薬剤別感受性では,スルベニシリンナトリウム(SBPC),セフメノキシム(CMX),レボフロキサシン(LVFX),エリスロマイシン(EM)の順に感受性が高かった。以上の結果から,細菌性結膜炎に対する第一選択薬にはSBPCがよいと考える。

メチシリン耐性ブドウ球菌感染性角膜潰瘍の治療経験

著者: 平野真理 ,   平野耕治

ページ範囲:P.565 - P.569

 2004年2月までの18か月間に44例44眼を感染性角膜潰瘍と診断した。潰瘍部の擦過物を培養し,21例に細菌が検出された。うち6例がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA),1例がメチシリン耐性表皮ブドウ球菌(MRSE)であった。いずれも高齢,骨髄移植後,水疱性角膜症などの易感染性患者に生じていた。ニューキノロンとクロラムフェニコールの頻回点眼を主とする治療で,発症から3か月以内に瘢痕治癒しバンコマイシンを必要としなかった。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌による角膜感染症の治療では,すでにバンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)の病院内での頻度が増加していることもあり,バンコマイシンの使用は慎重に行うべきである。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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