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本邦では甲状腺眼症の治療に対する考え方には種々の混乱がみられるが,国際的には,炎症早期にステロイドパルスなどの免疫抑制療法を行って症状の悪化を抑制し,その一方で眼球突出や眼球運動制限などの慢性期の不可逆的変化に対しては,必要に応じて眼窩減圧術や外眼筋手術による眼位矯正などを行うことが一般化された方針である。しかし放射線照射だけは,内外を問わずその有効性に多くの疑問をもたれながらも甲状腺眼症の治療に慣例的に用いられてきたのが現状であった。最近行われた諸外国の比較対照試験の結果はいずれもその有効性に強い疑問を呈するものであり,甲状腺眼症における放射線治療の有効性について再検討する時期にきているというべきであろう。本稿では,本邦の混乱した甲状腺眼症の治療方針を整理しながら,近年の放射線療法の比較対照試験の結果をレビューし,現在の知見から最も効果的と考えられる甲状腺眼症の治療方針を解説する。
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