文献詳細
特集 第58回日本臨床眼科学会講演集 (3)
学会原著
文献概要
29歳女性が両眼の耳側の部分的な視野欠損を自覚して受診した。矯正視力は両眼とも1.2であった。両眼の眼底で視神経乳頭周囲には幅が1DDの輪状の低色素領域があり,その外縁に色素環があった。低色素領域では網膜動脈が遠位より細くなっていた。視野はマリオット盲点が正常の2倍に拡大していた。光干渉断層計(OCT)は乳頭周囲の網膜の菲薄化を示した。フルオレセイン蛍光造影では低色素域に一致してwindow defectがあった。初診時の全視野ERGでは錐体,杆体ともに正常であったが,多局所ERGでは両眼ともマリオット盲点拡大領域に顕著な低下を示した。観察中に,左眼底の中間周辺部に新病巣が出現し,それに一致した暗点を認めた。11か月後の全視野ERGでは錐体の反応低下があった。本例は病巣の視細胞層の変性により,色素上皮萎縮と網膜血管の狭細化をきたした局所的な網膜色素変性症と考えられ,acute zonal occult outer retinopathy(AZOOR)と診断された。
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