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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科59巻6号

2005年06月発行

雑誌目次

特集 第58回日本臨床眼科学会講演集 (4) 特別講演

ヘルペス性眼疾患―DNAから個体まで

著者: 下村嘉一

ページ範囲:P.816 - P.825

角膜診療においてヘルペス性角膜炎は,治療が適切でなければ強い角膜混濁や角膜穿孔をまねき重篤な視力障害の原因となる。その病態は上皮型,実質型,内皮型,遷延性角膜上皮欠損,角膜ぶどう膜炎などに分かれるが,それぞれの病態は時として複雑に組み合わさり,治癒に導くためには抗ウイルス薬の局所投与,全身投与,ステロイド薬点眼,フィブロネクチンなどの上皮創傷治癒促進薬を病態の時期によって適切に組み合わせて使用する必要がある。また,再発に注意して薬剤を漸減投与することも必要である。

 ヘルペス性角膜炎の診断は,臨床所見とウイルス学的診断の両者から行われる。わが国の眼ヘルペス感染症研究会が提唱した,上皮型ヘルペス性角膜炎の確定診断1)として,単純ヘルペスウイルス(HSV)の分離同定が挙げられているように,分離同定がウイルス性疾患診断の必須条件であることに変わりはない。しかし,近年,PCR法などの分子生物学的手法がヘルペス性眼疾患の診断に大きく貢献してきた。また,HSV潜伏感染機構にはいまだ不明な点が多いが,LATs(latency-associated transcripts)の発見など徐々に解明が進んでいる2,3)。本稿では「ヘルペス性眼疾患―DNAから個体まで―」と題して,近畿大学眼科におけるヘルペス性角膜炎の統計学的検討,ヘルペス性角膜実質炎におけるケモカインの動態,ヘルペス性眼疾患におけるreal-time PCR法の応用,ヘルペス再発因子について論じたい。

学会原著

ステロイド内服が著効した網膜中心静脈閉塞症の1例

著者: 尾崎恵子 ,   疋田春夫 ,   中島久美子

ページ範囲:P.827 - P.830

52歳女性の左眼に飛蚊症が突発し,即日受診した。矯正視力は左右眼とも1.0であった。左眼底に乳頭浮腫,網膜静脈の拡張と蛇行,網膜出血があった。非虚血型網膜中心静脈閉塞症の急性期と診断し,1日量81mgのアスピリン投与を開始した。1か月後に乳頭浮腫と網膜出血が増悪し,光干渉断層計(OCT)で網膜厚が増加していた。視力は不変であったが,虚血型への移行が疑われ1日量プレドニゾロン30mgを開始した。1週間後に網膜厚が減少し,2か月後に乳頭浮腫と網膜出血は消失した。副腎皮質ステロイド薬の全身投与が網膜循環悪化の防止に有効であったと推定される。

超音波白内障手術における超音波パワーの平均値を用いた上限設定

著者: 中島佳子 ,   谷口重雄 ,   西原仁

ページ範囲:P.831 - P.834

目的:超音波白内障手術で,症例ごとに超音波出力の上限値を設定し,その有用性を検討する。対象と方法:フェイコチョップ法で超音波白内障手術を行った99眼を対象とし,64眼を上限設定群,35眼を対照群とした。上限設定群では,杭打ち時の平均超音波出力を引き掛け時の出力の上限値とした。対照群では超音波出力の上限値を60%に固定した。結果:上限設定群では,核硬度が2度と3度のとき超音波作動時間が延長し,平均超音波出力が低下した。手術時間と超音波エネルギーに差はなかった。ペダル操作が上限設定群で少なかった。結論:今回の方法で超音波出力の上限値を設定することで,過剰な超音波発振を避けペダル操作を減らすことができた。

ハンフリー視野検査とGDx VCC測定結果の関連

著者: 島村智子 ,   楳田知子 ,   井澤優子 ,   永山幹夫 ,   大月洋

ページ範囲:P.835 - P.838

開放隅角緑内障112例112眼を対象に,ハンフリー視野計で測定した視野障害と,神経線維アナライザー(GDxVCC)で測定した神経線維層厚との関係を検索した。年齢は20~80歳(平均55歳)であり,矯正視力は0.8以上であった。健常者21眼を対照とした。緑内障の93眼(83%)で両検査法による進行象限が一致した。一致しなかった19眼中13眼(68%)では,ハンフリー視野計での非進行象限に対応するGDxVCC象限に強い鼻側変化があった。残りの6眼(32%)では,GDxVCCで測定した上方2象限と下方2象限での神経線維層厚に差がなかった。GDxVCCによる緑内障眼の検索で,視野に変化がない眼底部位での神経線維層厚の異常を検出できる可能性がある。

結膜切開部位の異なるtrabeculectomyの比較

著者: 南川貴之 ,   岡田明 ,   目加田篤

ページ範囲:P.839 - P.843

目的:結膜切開部位が異なる線維柱帯切除術の効果の比較。症例と方法:深層強膜トンネルを用い,同一術者による線維柱帯切除術を緑内障19眼に行った。内訳は原発開放隅角緑内障15眼と続発緑内障3眼である。9眼には円蓋部基底結膜切開,9眼には輪部基底結膜切開を用いた。強膜縫合は同じ本数で同じ位置に行い,laser suturelysisは行わなかった。結果:術前眼圧は円蓋部基底切開群27.7±9.2mmHg,輪部基底切開26.8±9.6mmHgで,両群間に有意差はなかった。術後1か月から6か月までの眼圧は,すべて円蓋部基底切開群よりも輪部基底切開群が有意に低かった(p<0.05)。6か月後の眼圧は円蓋部基底切開群12.9±4.0mmHg,輪部基底切開群8.6±3.7mmHgであった。結論:深層強膜トンネルを用いた線維柱帯切除術では,円蓋部基底結膜切開よりも輪部基底結膜切開で良好な眼圧下降効果が得られた。

有硝子体眼の糖尿病黄斑浮腫に対するトリアムシノロン硝子体内注入術の効果

著者: 小暮朗子 ,   大越貴志子 ,   小暮俊介 ,   山口達夫 ,   岸章治

ページ範囲:P.845 - P.850

目的:有硝子体眼の糖尿病黄斑浮腫に対するトリアムシノロンの硝子体内注入の効果の報告。対象と方法:糖尿病黄斑浮腫がある17例19眼を対象とした。男性11例,女性6例で,年齢は49~73歳(平均63歳)であった。トリアムシノロンアセトニド4mgを硝子体内に注入した。術前後の視力,光干渉断層計(OCT)による中心窩網膜厚と黄斑浮腫の体積を計測した。結果:トリアムシノロン注入の4週後で19眼中7眼(37%),8週後で13眼中10眼(77%)でlogMAR 0.2以上の視力改善があった。中心窩網膜厚は治療前の平均413.6μmから,4週後301.2μm,8週後324.4μmへと有意に減少した。黄斑体積は治療前の平均10.69mm3から,4週後8.88mm3,8週後8.76mm3へと有意に減少した。合併症として眼圧上昇が1眼にあったが,治療可能であり一過性であった。結論:有硝子体眼へのトリアムシノロンの硝子体内注入は,糖尿病黄斑浮腫に対して有効であり安全であった。

先天性鼻涙管閉塞遷延例の治療―CT涙道造影所見による治療基準づくりをめざして

著者: 高木郁江 ,   江森亜希 ,   仙石昭仁

ページ範囲:P.851 - P.855

目的:CT涙道造影により,先天性鼻涙管閉塞が遷延する原因の解明と治療方針の決定。症例:出生直後から涙囊炎が治癒しない17例22側と,小児期に涙囊鼻腔吻合術を受けた1例2側を対象とし,検索にCT涙道造影を用いた。結果:涙囊腫大が多数にあり,いわゆる鼻涙管形成不全が18例中8例にあった。他の10例中4例で鼻涙管が後方に屈曲していた。臨床所見とCT涙道造影とから治療法を決定し,17例中7例に涙囊鼻腔吻合術,3例にチューブ挿入を行い全例が治癒した。結論:CT涙道造影は検査が困難な幼小児の涙囊炎の治療方針決定に有効であった。

マイトマイシンCおよび結膜弁移植を行わない翼状片手術の再発率

著者: 佐々木香る ,   武藤興紀 ,   米村奈美 ,   松本光希 ,   谷原秀信

ページ範囲:P.857 - P.861

目的:翼状片に対する手術成績の報告。対象と方法:過去3年間に翼状片手術を行った126例157眼を対象とし,6か月以上,平均17.9か月の経過を観察した。筆者らのうち3名が所属する医療機関での手術手技を用い,結膜下の増殖組織を広範囲に切除し結膜を温存する単純切除を行った。輪部を越えて角膜に侵入する血管新生を再発と定義した。結果:観察期間中に3眼(1.9%)に翼状片が再発した。結膜上皮欠損は4.5±1.3日で治癒した。合併症として,眼球運動時の違和感が5眼,内眼角部の肉芽腫形成が2眼にあった。結論:翼状片に対する単純切除法は再発率が高いとされているが,広範囲結膜下増殖組織の切除を行う術式で高い治癒率が得られた。

経瞳孔温熱療法が奏効した脈絡膜血管腫の1例

著者: 寺坂祐樹 ,   八幡健児 ,   八田史郎 ,   山崎厚志 ,   井上幸次 ,   五味文 ,   田野保雄

ページ範囲:P.863 - P.867

61歳男性が右眼網膜剝離で受診した。右眼の矯正視力は0.4で,乳頭鼻側の眼底に3乳頭径大の脈絡膜血管腫と,黄斑部を含む滲出性網膜剝離があった。フルオレセインとインドシアニングリーン蛍光造影で,腫瘍はびまん性過蛍光を呈した。経瞳孔温熱療法(TTT)を行い,2か月後にインドシアニングリーン蛍光造影で過蛍光が残っている部位にTTTを追加した。その後血管腫は瘢痕化し,フルオレセインとインドシアニングリーン蛍光造影所見はともに低蛍光になった。追加TTTの6か月後に網膜剝離は消失し,0.8の最終視力を得た。TTTにより血管腫内の血管が閉塞し,網膜下液が吸収されたと考えられた。滲出性網膜剝離を伴う脈絡膜血管腫に対し,TTTが奏効した症例である。

クラミジア結膜炎6例の検討

著者: 髙岡紀子 ,   廣渡崇郎 ,   亀井裕子 ,   松原正男

ページ範囲:P.869 - P.873

目的:成人型封入体結膜炎の臨床像と経過などの検討。対象:核酸検出法で封入体結膜炎の診断が確定した6症例7眼を対象とし,回顧的に検索した。男性2例2眼,女性4例5眼である。結果:眼脂,充血,下眼瞼結膜の堤防状ないし数珠状濾胞が全例の経過中にあった。1例のみが初診時に封入体結膜炎と臨床診断された。発症から治癒までの期間は160±66日(平均値±標準偏差)であった。結論:本疾患は発症初期には特徴的な濾胞が出現せず,他疾患との鑑別が困難であった。診断が確定するまでは適切な治療が行われず,結膜炎が遷延化する傾向が多かった。

腎移植後慢性拒絶反応の治療中に発症したサイトメガロウイルス網膜炎の1例

著者: 今村ひろみ ,   嵜野祐二 ,   木許賢一 ,   中塚和夫 ,   野村威雄

ページ範囲:P.875 - P.878

46歳男性が20年前に囊胞腎に対して腎移植を母親から受けた。4年前から慢性拒絶反応が起こり,副腎皮質ステロイドと免疫抑制薬の投与を受けていた。両眼の霧視が6か月前からあり,ぶどう膜炎として紹介受診した。矯正視力は右0.3,左0.8であった。両眼に前房の炎症細胞,硝子体混濁,眼底後極部を中心とする顆粒状白斑と静脈の白鞘化があり,右眼眼底の上方に広範な白色病巣があった。前房水からサイトメガロウイルスDNAが検出され,サイトメガロウイルス網膜炎と診断した。それまで使用中の副腎皮質ステロイドと免疫抑制薬を減量し,ガンシクロビルの投与で網膜炎は軽快したが,腎機能が悪化し透析が必要になった。腎移植後の日和見感染症としてのサイトメガロウイルス網膜炎の治療が困難であることと,他科との連携が必要であることを示した症例である。

片眼の硝子体出血と虹彩ルベオーシスで発見された内頸動脈循環不全の1例

著者: 鶴岡聡一郎 ,   岩見達也 ,   柿木雅志 ,   原田有理 ,   西田保裕

ページ範囲:P.879 - P.882

69歳男性が左眼硝子体出血で紹介受診した。9年前から糖尿病があった。矯正視力は右0.4,左手動弁で,右眼に単純糖尿病網膜症,左眼に虹彩ルベオーシスと硝子体出血があった。眼内循環の左右差が大きいことから,全身検索で左内頸動脈の狭窄が発見された。これに対してステント留置術が行われ,その9日後に虹彩ルベオーシスは消退していた。左眼の硝子体出血に対し硝子体手術が行われ,矯正視力は0.3に改善した。糖尿病網膜症で眼内虚血の左右差が大きい場合は,眼外の循環不全が関与している可能性がある。

半導体レーザーによる涙囊鼻腔吻合術再閉塞再建術を日帰りで行った1例

著者: 久保勝文 ,   桜庭知己

ページ範囲:P.883 - P.885

要約 目的:涙囊鼻腔吻合術後に再発した涙道閉塞に対して,半導体レーザーによる再建術を日帰り手術として行った症例の報告。症例:72歳女性が両側の涙囊炎に対して鼻外法による涙囊鼻腔吻合術を他医で受けた。2か月後に右眼が再閉塞した。経過:局所麻酔下,鼻内視鏡による直視下で半導体レーザーにより再閉塞部位を切開しシリコーン管を留置した。術後3時間の観察で疼痛や出血がないことを確認し帰宅させた。直後から通水性が確保され流涙は1週間後に消失した。3か月後にシリコーン管を抜去し,手術から6か月後の現在まで再閉塞はない。結論:涙囊鼻腔吻合術後に再閉塞した涙道を,半導体レーザーによる日帰り手術で再建できた。

鳥取大学眼科における分離菌の薬剤感受性・患者背景に関する検討

著者: 松尾洋子 ,   柿丸晶子 ,   宮崎大 ,   八田史郎 ,   井上幸次 ,   藤原弘光

ページ範囲:P.886 - P.890

目的:鳥取大学医学部附属病院眼科で採取された細菌の薬剤感受性と患者の背景の記述。対象と方法:過去20か月間に分離された142株を対象とし,その種類,原疾患,分離部位,薬剤感受性などを検討した。結果:ブドウ球菌が54株(38%)で最も多く,コリネバクテリウム35株(25%)がこれに続いた。黄色ブドウ球菌44株のうち33株(75%)がメチシリン耐性(MRSA)であり,うち30株(91%)がレボフロキサシン耐性であった。MRSAについては有意な患者背景はなかった。コリネバクテリウム35株の20株(57%)がレボフロキサシン耐性であった。淋菌5株はそのすべて(100%)がレボフロキサシン耐性であった。結論:各種の細菌について薬剤耐性化が進んでいた。局所抗菌薬の第一選択になっているニューキノロン系薬剤に対する耐性化が顕著であった。

東京都新宿区と山口県柳井市における白内障手術予定患者の結膜ぬぐい液細菌検査の比較

著者: 志熊徹也 ,   石山善三 ,   廣瀬麻衣子 ,   薄井紀夫 ,   臼井正彦

ページ範囲:P.891 - P.895

16か月の期間に2施設で白内障手術予定患者265眼の結膜囊内の常在菌を検索した。1施設は東京都新宿区,他の1施設は山口県柳井市にある。東京では158眼中120眼(76%),柳井では107眼中72眼(67%)から細菌が検出され,総株数はそれぞれ130株と103株であった。65歳未満とそれ以上とでは検出率に有意差がなかった。Corynebacterium属が東京に多く,嫌気性グラム陽性桿菌が柳井で多く検出され,検出率に有意差があった。地域と環境で検出菌が異なるので,術後合併症を予防するためにその現場での細菌学的検査が望ましい。

寄生虫関連が疑われたぶどう膜炎の臨床像

著者: 中西秀雄 ,   喜多美穂里 ,   大津弥生 ,   桐山直子 ,   雨宮かおり ,   池口有紀 ,   河本知栄 ,   松本美保

ページ範囲:P.897 - P.901

目的:寄生虫の関連が疑われるぶどう膜炎の臨床像の検討。対象:過去42か月間に寄生虫関連の免疫血清抗体が陽性であったぶどう膜炎12例12眼。結果:全例が片眼性で,年齢は19~74歳(平均37歳)であった。初診時の患眼視力は0.1~1.5(平均0.68)。複数抗原に対する陽性反応が6例にあった。硝子体混濁6例,眼底周辺部の肉芽腫と血管炎が各5例,滲出斑と好酸球増加が各4例,黄斑上膜が3例,牽引性網膜剝離と黄斑浮腫と黄斑変性が各2例にあった。副腎皮質ステロイド薬投与で80%に症状改善が得られた。硝子体手術は4例に行われ,3例で視力が2段階以上改善した。結論:寄生虫関連ぶどう膜炎は片眼性であり,周辺部肉芽腫や黄斑病変などの後眼部病変と好酸球増加を示し,副腎皮質ステロイド薬治療と硝子体手術に良好に反応するという特徴がある。

3主病型以外の水晶体病変有所見率:Monzen Eye Study

著者: 曲静涛 ,   佐々木洋 ,   藤澤綾 ,   金田穣次 ,   永井康太 ,   島一郎 ,   萩原健太 ,   山下博 ,   小島正美 ,   佐々木一之

ページ範囲:P.903 - P.906

無作為に選んだ225名の一般住民を対象に,水晶体混濁の型別の調査を行った。全員が石川県門前町在住者である。男性101名196眼,女性124名246眼で,年齢は55~85歳(平均67.8±7.0歳)である。診断はすべて同一検者が散瞳下で行った。白内障の主要病型である皮質,核,後囊下混濁以外の水晶体混濁の頻度は,fiber folds(29.1%),water clefts(41.4%),vacuoles(21.2%),focal dots(28.6%),retrodots(22.5%),coronary cataract(11.5%)であった。Fiber folds,water clefts,retrodotsの頻度は加齢に伴って増加していた。皮質混濁がある眼の91%にはfiber foldsがあった。これら6型の水晶体混濁には視機能障害に関係するものがあるので,上記の結果は白内障の診断や疫学調査に考慮される価値がある。

抗リン脂質抗体症候群に合併した毛様網膜動脈閉塞症の2例

著者: 山田優子 ,   萩村徳一 ,   堀内康史 ,   佐藤拓 ,   山田教弘 ,   森本雅裕 ,   岸章治

ページ範囲:P.907 - P.912

目的:抗リン脂質抗体症候群に併発した毛様網膜動脈閉塞症2例の報告。症例:20歳男性と48歳女性。いずれも片眼発症で,主訴は中心または傍中心暗点の突発。男性例では一過性黒内障の既往があり,インドシアニングリーン蛍光眼底造影で後極部に脈絡毛細管板の多発性充盈欠損があった。両症例とも抗リン脂質抗体が陽性であった。結論:成年早期に発症した毛様網膜動脈閉塞症では,抗リン脂質抗体症候群が関係している可能性がある。このような状態には脈絡毛細管板の循環障害が併発していることがある。

若年者の潰瘍性大腸炎に合併した網膜静脈閉塞症の1例

著者: 須賀裕美子 ,   本間理加 ,   横地みどり ,   岸章治

ページ範囲:P.913 - P.916

目的:潰瘍性大腸炎に併発した網膜中心静脈閉塞症症例の報告。症例と経過:20歳女性が5年前に潰瘍性大腸炎を発症し,寛解期に入っていた。2週間前からの右眼霧視で受診した。両眼に-13.5Dの近視があり,矯正視力は左右とも1.5であった。右眼に乳頭血管炎に伴うと推定される網膜中心静脈閉塞症があった。3か月後に囊胞様黄斑浮腫(CME)で視力が0.2に低下した。プレドニゾロンの全身投与,汎網膜光凝固などを行った。以後の2年間に潰瘍性大腸炎の再燃が3回あり,プレドニゾロンの増減を繰り返した。乳頭腫脹と囊胞様黄斑浮腫は次第に消退し,視力は0.7に向上した。結論:潰瘍性大腸炎の寛解期に発症した乳頭血管炎型の網膜中心静脈閉塞症は,初期はプレドニゾロンの増量に反応したが,その後は汎網膜光凝固が眼底所見の安定に有効であった。

異なる経過をたどった両眼発症網膜中心静脈閉塞症の1例

著者: 高橋靖弘 ,   安宅伸介 ,   河野剛也 ,   和田園美 ,   埜村裕也 ,   栗田加織 ,   大杉秀治 ,   山本学 ,   山口真 ,   白木邦彦

ページ範囲:P.917 - P.921

目的:両眼に発症した非虚血性網膜中心静脈閉塞症が,それぞれ異なる経過をとった症例の報告。症例:70歳女性が両眼の視力低下で受診した。矯正視力は右1.5,左眼1.0。両眼に網膜出血と黄斑浮腫があり,網膜中心静脈閉塞症と診断した。蛍光眼底造影で無灌流領域はなかった。左眼は1か月後に虚血型に移行し矯正視力0.5になった。右眼には初診の36か月後にoptociliary vein(OCV)が生じ網膜出血が減少した。左眼にはOCVの形成は一貫してなかった。結論:非虚血型の網膜中心静脈閉塞症が両眼に発症し,一眼にはOCVの形成がなく虚血型に移行し,OCVが生じた他眼は非虚血型のままであった。OCVの形成・非形成が網膜中心静脈閉塞症の経過を左右する可能性が同一症例で示された。

網膜中心動脈閉塞症と網膜中心静脈閉塞症の合併例への救急治療効果

著者: 松本治恵 ,   松本惣一セルソ ,   永田真裕子 ,   古嶋正俊 ,   中塚和夫

ページ範囲:P.923 - P.927

高血圧で加療中の73歳女性に右眼の視力低下が突発し,その翌日,発症から18時間後に受診した。右眼視力は手動弁であった。右眼に網膜出血が散在し,黄斑部に白濁があった。蛍光眼底造影で腕網膜時間は40秒で,網膜中心静脈閉塞症(CRVO)が合併した網膜中心動脈閉塞症(CRAO)と診断した。線溶療法としてウロキナーゼの点滴とアスピリンの内服を行った。視力は翌日に0.09に,4か月後に0.2に回復した。網膜中心動静脈の同時閉塞では動脈循環を早期に改善させることが重要である。脳神経外科医と連携し,頭蓋内の状態を把握したうえで患者と家族に説明し,同意があれば救急治療として線溶療法を積極的に行ってよい。

網膜動脈灌流障害による網膜混濁を合併した網膜中心静脈閉塞症の2例

著者: 安宅伸介 ,   河野剛也 ,   浅井裕 ,   加藤良武 ,   和田園美 ,   高橋靖弘 ,   栗田加織 ,   山本学 ,   三木紀人 ,   白木邦彦

ページ範囲:P.929 - P.934

目的:網膜中心静脈閉塞症に網膜混濁が併発した2症例の報告。症例と経過:1例は58歳男性で発症から6日後に受診した。患眼視力は1.2で,網膜中心静脈閉塞症の所見と,黄斑耳側の静脈周囲に網膜の混濁があった。網膜動脈への流入遅延はなく,2か月後に眼底所見は正常化した。他の1例は58歳男性で発症から4週後に受診した。患眼視力は0.7で網膜中心静脈閉塞症の所見があった。赤外蛍光造影で網膜毛様静脈(optociliary vein)の形成があった。4か月後に視力が0.2に低下し,網膜動脈分枝閉塞症が併発していた。網膜毛様静脈は初診時よりも発達していた。結論:第1例にあった網膜混濁は,斑状虚血性網膜白濁(patchy ischemic retinal whitening)と思われた。第2例では,網膜毛様静脈の形成により乳頭周囲の網膜循環動態が変化し,網膜虚血を誘発した可能性がある。

黄斑円孔術後にトリアムシノロンが中心窩に付着した1例

著者: 調枝聡治 ,   横山勝彦 ,   高木康宏 ,   古嶋正俊

ページ範囲:P.935 - P.937

目的:黄斑円孔に対する硝子体手術後にトリアムシノロンが中心窩に付着した症例の報告。症例:69歳女性の右眼にstageⅢの黄斑円孔があった。矯正視力は右0.3,左0.6であった。超音波白内障手術と眼内レンズ挿入術を併用した硝子体手術を行い,トリアムシノロンアセトニド8mgを注入して後部硝子体剝離を誘発し,液空気置換をした。内境界膜剝離は行わず,インドシアニングリーンも使用しなかった。術直後からトリアムシノロンが付着していたが,40日後に消失した。黄斑円孔は閉鎖し視力1.0に回復した。手術から9か月後の現在,検眼鏡と光干渉断層計(OCT)による所見に変化はない。結論:黄斑円孔への硝子体手術後にトリアムシノロンが中心窩に付着していても,円孔の閉鎖や視力改善に悪影響はなかった。

眼底写真とHRTⅡによる視神経乳頭評価の比較

著者: 杉本栄一郎 ,   曽根隆志 ,   塚本秀利 ,   皆本敦 ,   松山茂生 ,   金本尚志 ,   平山倫子 ,   野村征敬 ,   富田剛司 ,   三嶋弘

ページ範囲:P.939 - P.942

目的:眼底写真で視神経乳頭を定量評価できる可能性の検討。対象と方法:開放隅角または正常眼圧緑内障25眼が対象。画角20°の眼底カメラで撮影したカラーの平面眼底画像上で手動により乳頭と陥凹の限界を決定した。これからrim area/disc area ratio(R/D ratio)を算出し,その結果をHeidelberg Retina TomographⅡ(HRTⅡ)による解析結果と比較した。結果:R/D ratioは眼底写真では0.36±0.10,HRTⅡでは0.40±0.15で有意差はなかった(p=0.3)。R/D ratioは静的視野のmean deviation(MD)と有意に相関していた(眼底写真:p=0.002,HRTⅡ:p=0.01).結論:眼底写真による視神経乳頭の評価はHRTⅡによるそれとほぼ同等であり,定量評価が可能である。

正常眼圧緑内障におけるラタノプロスト単剤変更1年後の眼圧,視野,視神経乳頭形状の検討

著者: 緒方博子 ,   庄司信行 ,   清水公也 ,   高瀬正郎 ,   有本あこ ,   中澤伸子 ,   鈴木宏昌 ,   冨岡敏也

ページ範囲:P.943 - P.947

正常眼圧緑内障15例25眼につき,それまでのラタノプロスト以外の眼圧下降薬をラタノプロスト単剤に変更し,1年後の眼圧,視野,乳頭の形状を計画的に検索した。被検者の年齢は42~82歳(平均68歳)であった。視野測定にはハンフリー視野計,乳頭の形状測定にはHeidelberg Retina Tomographを用いた。眼圧はbaseline値が15.1±2.6mmHgであり,変更1年後の値が13.4±2.2mmHgで有意に下降した(p<0.01)。視野ではmean deviation値が有意に改善した。乳頭の形状には各パラメータに有意な変化がなかった。ラタノプロストは正常眼圧緑内障に対して有意な眼圧下降効果があり,少なくとも1年間は視野と乳頭の形状につき現状維持ができると結論される。

Leber病罹患患者の母親にも同様の視神経症が認められた親子例

著者: 工藤大策 ,   上野真治 ,   松崎園子

ページ範囲:P.949 - P.952

目的:Leber遺伝性視神経症(Leber病)を発症した母子例の報告。症例と経過:49歳女性が4か月前からの左眼の霧視で受診した。矯正視力は左右眼とも0.03で,限界フリッカー値は左右眼とも11Hzであった。ゴールドマン視野検査で両眼に中心暗点があった。眼底にはLeber病の特徴的所見はなかったが,ミトコンドリアDNA11778点突然変異が証明され,Leber病と診断した。この女性の長男にもミトコンドリアDNA11778点突然変異が証明されていた。結論:Leber病の女性の発症は稀である。今回の母子例は,保因者である母親にLeber病が発症したことを示している。

園芸用支柱による外傷性視神経障害の1例

著者: 渡邊晃正 ,   青島真一 ,   東芝孝彰 ,   原ゆう子 ,   朝岡亮 ,   中神哲司 ,   堀田喜裕

ページ範囲:P.953 - P.956

59歳女性が転倒して直径5mmの鉢植え支柱に当たり,支柱先端が右眼上方に刺入した。受傷1時間後の診察で矯正視力は右0.08,左1.0であった。右眼RAPDは陽性,眼球運動は正常であった。右眼窩上内側縁の皮膚に5mmの裂傷があった。眼底には異常がなかった。右眼視野は下方一部のみが残存していた。眼球後方への障害による視神経外傷と診断した。その翌日,視力がさらに低下し外転神経麻痺が出現したため,ステロイドパルス療法とマンニトール点滴を行った。以後視力と視野は徐々に改善し,受傷7か月後には右眼の矯正視力が1.2に回復した。上方視野の欠損は残った。

専門別研究会報告

画像診断

著者: 中尾雄三

ページ範囲:P.958 - P.958

本年度の専門別研究会「画像診断」は一般講演と教育講演が行われた。一般講演では例年のように診断や治療,経過観察に超音波,CT,MRIが巧みに応用された興味深い症例提示があり,演者と会場参加者間で熱心な質疑応答が行われた。新企画としては各講演に対し,江見和雄(江見眼科),柊山 剰(柊山眼科),林 英之(福岡大),菅澤 淳(大阪医大),山田泰生(ベルランド病院),能勢晴美(つくば市)に指名討論者として質問していただいた。教育講演は中尾雄三が画像診断での陥りやすい錯覚や思い込みの誤りについて解説した。最後に菅田安男がSIDUO(国際眼科超音波学会),日本超音波医学会の診断基準・用語委員会の現状について説明した。

 ここでは座長の先生方に担当の一般講演と教育講演の印象を述べていただいた(敬称略)。

地域予防眼科

著者: 小野浩一 ,   平塚義宗 ,   村上晶

ページ範囲:P.959 - P.962

2004年11月11日(木)日本臨床眼科学会(於:東京国際フォーラム)で専門別研究会「地域予防眼科」が開催された。演題1~3は国際保健医療と眼疾患負担についての発表で小暮文雄先生(日本失明予防協会)が座長を務めた。演題4~7は眼科健診・色覚問題そして視覚障害に関する発表で赤松恒彦先生(赤松眼科)が座長を務めた。さらに,今年は世界的な慈善事業団体で,国際失明予防プログラムVISION2020:The Right to Sightに財政面で大いに貢献しているChristoffel Blindenmission(CBM)会長のChristian Garms氏による世界の失明問題とCBMの活動について特別に講演があり,こちらの座長は中島章順天堂大学名誉教授が務めた。

 当日は木曜午前にもかかわらず,日本全国からcommunity ophthalmologyやpreventive ophthalmologyに興味をお持ちの多くの先生方が参加された。世話人に代わり御礼申し上げたい。

連載 今月の話題

滲出型加齢黄斑変性に対する光線力学的療法

著者: 髙橋寛二

ページ範囲:P.789 - P.798

滲出型加齢黄斑変性(AMD)に対する光線力学的療法(PDT)がわが国の臨床に導入されて1年が経過した。PDTはAMDの中心窩下脈絡膜新生血管に対して正常網膜に与える侵襲が最も小さく,視力維持に有望な治療法として導入されたが,本稿ではどのような症例にPDTを行えばよいのか,実際にPDTはどの程度有効なのか,さらに現時点での問題点について最新の情報を述べる。

眼の遺伝病70

CYP4 V2 遺伝子異常とは

著者: 和田裕子

ページ範囲:P.800 - P.802

クリスタリン網膜症

 クリスタリン網膜症は1937年にBietti1)により報告された疾患である。角結膜結晶沈着物,黄白色結晶沈着物,脈絡膜毛細管板萎縮がクリスタリン網膜症の特徴的所見で常染色体劣性遺伝を呈する。その後,角結膜結晶沈着物を伴わないクリスタリン網膜症が多数報告された2)。アジアに多い疾患であると報告されている。

分子遺伝学的アプローチ

 2000年にクリスタリン網膜症が4番染色体長腕(4q35)にマップされた3)

日常みる角膜疾患27

偽翼状片

著者: 川本晃司 ,   近間泰一郎 ,   西田輝夫

ページ範囲:P.804 - P.806

症例

 患者:40歳,女性

 主訴:左眼眼痛,左眼充血,左眼視力低下

 現病歴:1995年8月,溶解した亜鉛が左眼に飛入して受傷した。近医を受診してステロイド結膜下注射を施行されたが症状の改善はみられなかった。別の眼科を受診した際に結膜移植術を勧められたが施行せず,経過観察されていた。しかし,症状の改善はみられなかった。1997年12月,左眼結膜移植術を受ける目的で当科外来を紹介され受診した。

 既往歴・家族歴:特記すべきことはない。

眼形成手術手技4

記録の残し方

著者: 野田実香

ページ範囲:P.808 - P.812

眼形成の分野では,視力や眼圧などと違い数字で残せないデータが多い。画像による記録,手描きの記録を短時間で要領よくおさめる方法につき述べる。

 デジタル画像とアナログ画像

 両者の特徴を比較すると次のようになる。

他科との連携

小児科と未熟児網膜症と眼科医の私

著者: 宇野英明

ページ範囲:P.964 - P.965

「オギャー,オギャー」

 NICUのドアを開けるとそこは新生児の世界。院内依頼書に目を通す。「在胎26週2日,600gにて出生,出後20日。眼底検査お願いします。」保育器のなかで挿管されている患児に極小の開瞼器を用いて眼球を露出し眼底を観察する。「眼底の透見はhazy mediaがありやや朦朧。網膜血管の進展はzoneⅠ程度。血管の拡張はないが要注意。今後,1週ごとの診察予定とする。」

 眼科において他科と連携する機会は多々あると思われ,糖尿病網膜症,高血圧網膜症に関連して内科と,眼窩底骨折において耳鼻科や形成外科などもかかわりがあります。そして未熟児網膜症において小児科との関連があります。ここで眼科医である私の未熟児と小児科との付き合い方をご紹介させていただきたいと思います。

臨床報告

眼窩先端部症候群の6例

著者: 藤田陽子 ,   吉川洋 ,   久冨智朗 ,   竹ノ内弘昌 ,   平山久美子 ,   三浦宗希 ,   伊東崇子 ,   石本聖一 ,   川野庸一 ,   石橋達朗

ページ範囲:P.975 - P.981

過去10年間に眼窩先端部症候群6例を経験した。すべてに視力障害,眼痛,全方向の眼球運動障害があった。全例が男性で,年齢は46~77歳(平均59歳)であった。原因は真菌症2例,転移性腫瘍1例,肥厚性硬膜炎1例,不明2例であった。病変部位は海綿静脈洞2例,上眼窩裂2例,硬膜1例,不明1例であった。これら6例のうち5例は患眼の光覚を失い3例は死亡した。眼窩先端部症候群は生命と視力予後が不良である可能性が高く,的確で迅速な病因診断と治療が必要である。

翼状片に対する上方結膜有茎弁移植術の術後成績

著者: 西田保子 ,   林研 ,   林文彦

ページ範囲:P.983 - P.989

翼状片に対する手術法として,確実で十分な翼状片の切除ならびに結膜温存と移植弁の安定を図る術式を工夫し上方結膜からの有茎弁移植術を施行した。単独の術者による過去15年間の手術成績を術後6か月以上経過観察できた314例346眼について報告した。初発症例は293例325眼(年齢25~89歳,平均59歳),再発症例は21例21眼(年齢42~73歳,平均54歳)であった。再発は初発症例325眼中17眼(5.2%)および再発症例21眼中7眼(33.3%)に認め,再発までの期間は初発症例で平均4.2か月,再発症例で平均2.8か月であった。本術式は特に進行した大きな翼状片に対して有用な術式であると同時に美容的にも満足できる手術法と考える。

単発転移巣としての眼窩内腫瘍から発見された乳癌の1例

著者: 中泉知子 ,   辻英貴 ,   堀内啓

ページ範囲:P.991 - P.996

48歳女性が7週前からの右上顎頰部,下眼瞼にかけての腫脹と硬結で受診した。右の下眼瞼は板状硬で可動性がなく,全方向に眼球運動制限が認められたが眼球突出はなかった。画像診断で右眼窩内側に腫瘤があった。以前からあった副鼻腔炎の治療を兼ね眼窩腫瘍生検を行った。病理診断は「印環細胞を伴う腺癌」であった。全身の精査で,左乳腺に21mm×15mmの腫瘤が発見された。単純乳房切除術を行い浸潤性小葉癌の診断が得られた。眼窩内腫瘍と乳癌の病理像は酷似し,免疫組織学的にエストロゲンレセプター,プロゲステロンレセプター,GCDFP-15がともに陽性であったことから乳癌の眼窩内転移と診断した。眼窩内転移への放射線療法が拒否されたので,手術後はホルモン療法を行っている。以後20か月の間,眼窩腫瘍の進行はない。

カラー臨床報告

Aicardi症候群の1例

著者: 小池生夫 ,   山本正洋 ,   佐川卓司 ,   石橋達朗 ,   山下博徳

ページ範囲:P.971 - P.974

在胎36週,体重1,812gで生まれた女児に頭部CTで脳梁欠損が生後1日目に発見された。Aicardi症候群との鑑別のため,生後37日に眼科を受診した。角膜径は右10mm,左8mmで小眼球であり,透光体に混濁はなかった。左眼に乳頭欠損があり,両眼に境界が明瞭な多数の網脈絡膜病変があり,本症候群に特有なchorioretinal lacunaeに類似した。生後6か月に点頭てんかんが発症した。脳波で高振幅徐波と棘波が無秩序にあるhypsarrythmiaがあり,Aicardi症候群の診断が確定した。小眼球で点頭てんかんまたは脳梁欠損がある場合には,本症候群が鑑別診断の対象になる。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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