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雑誌目次

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臨床眼科6巻2号

1952年02月発行

雑誌目次

特集號 第5回關東甲信磐越眼科集談會 特別講演

第5回關東甲磐信越眼科集談會

著者: 中泉行正 ,   馬詰嘉吉

ページ範囲:P.72 - P.72

色感に就て
午後正1時開始 2時15分終了
 エピヂアスユープ及スライド映寫を多數に用いて1時間以上に及び満堂立錐の餘地なき聽衆を魅了した。さすが多年の教室をあげての大研究にて學術研究會議の研究費を與へられたる優れた堂々たる大研究にて詳細は本誌の1月號に掲載せられている。

普通講演

(1)ティザックス氏病の2例に就て

著者: 大岡良子 ,   後藏峰子

ページ範囲:P.73 - P.75

緒言
 1881年にWaren-Tayは,家族性に現われ,白痴,視力障害を伴い,且つ特殊の眼底像を呈する奇異な1疾患を觀察し,更に1887年にSachsが同樣な症例を剖検して,腦組織にも著明な病理組織學的攣化を認め,1898年にこれを家族性黒内障性白痴として發表した。更に1905年にVogt及びSprilmyerは,各々別々に家族性に現われる一種の進行性點内障性白痴を報告し,兩側共に臨床上甚だよく似ており,而も腦組織學的所見によつて兩例は同病型に屬することがわかつた。
 而してTay-Sachs氏病とVogt-Spieimyer氏病とは,臨床的に多くの類似鮎を有し,腦病理學的所見に於ても殆んど凡ての學者が本態的に同一なものと老えているが,眼科的所見に於てけ,その隔差を認めるので,兩疾患の分類鑑別は劃然としていない。

(2)瀰蔓性表層角膜炎の統計的觀察

著者: 岡田隆子 ,   宍戸道子

ページ範囲:P.76 - P.77

 瀰蔓性表層角膜炎(以下「D」と約す)の統計は今迄も諸氏によりなされているが私共の外來では昭和24年5月,著者の1人岡田が眼臨45巻5號に報告してあるように口角糜爛顔面,粃糠疹等の皮膚症状あり角膜表層に細隙燈顯微鏡で初めて見得る微細な溷濁あり充血,流涙,羞明を訴えるアリボフラビノーヂスの數例に遭遇し,以來流涙,羞明,異物感等を訴える患者を細隙燈顯微鏡で詳細に検査するようになり「D」が意外に多い事を知り,昭和23年より26年9月迄の「D」の統計的觀察を試みた。

(3) Mac Callanの分類に依るTrachoma患者の統計的觀察

著者: 木村泰三

ページ範囲:P.77 - P.79

 萬國Trachoma豫防協會の會頭Mac Callan1)が,彼のTr.病期分類法を發表したのは1934年であり,恩師伊藤教授は2)直に其の價値を認められ翌1925年より彼の分類法を採用して居られる。近時我國に於ても漸時同氏の分類法が用いられるに到つたのは蓋し同法が伊藤教授の述べられる如く運用上及び學問的記録上頗る好適であり,世界的に用いられるに到つた爲と思われる。然るに同法に依るTr.の統計的觀察は文献上見當らぬ樣に思われるので,自分の水戸赤十字病院在職中4カ年に得た成績を,先に發表した3)3ヵ年分の成績の追加として此處に發表させて戴く。
 統計材料としては昭和22年より25年に到る間の眼科外來患者中のTr.患者で,年令別,性別,病期別,年度別に於て特に外來患者中Tr.患者が何等かの事情で増減すべき事は考へられなかつた。又各年度別の病歴の重複を避けた事は勿論である。

(4)大理石骨病の眼症状について

著者: 山本由記雄

ページ範囲:P.80 - P.83

緒言
 1904年,Albers-schonbergの報告例をもつて嚆矢とする,Albers-schonberg氏病,大理石骨病,Osteo-selerosis generalisata fragilis, Os-teopetrosis,Osteosclerotic anemia,chalkybones等と呼稱される本病は,現在まで内外約120例の報告がある。
 その特徴は,1)遺傳的,家族的,體質的疾患である。2)原因は胚原型質の特發變異により,劣性に遺傳し,骨骼の原發性系統的畸形をあらわす。3) Enostoseが主でPeriostoseは一般に認められず,骨髄の廣汎性硬化で,海綿質が緻密質に大部分置換され,レ線像は廣汎性骨濃影を呈し,無構造に近く,恰も大理石をみるに似ており,異常骨折性は臨床的に横骨折として一般にみとめられる。4)貧血を呈し,骨髄内造血作用障碍のため,肝,脾,リンパ腺腫大をみる。血清カルシウム,無機燐は大體正常である。5)骨膜炎,骨髄炎をおこしやすい。殊に下顎骨に多く,再發が多い,等である。

(5)特殊塗料(シリコンエステル含有)による集團眼障碍例

著者: 小玉順三

ページ範囲:P.83 - P.86

緒論
 最近の有機化學工業の異常な進歩發達に伴い,塗料にも從來のものに比較して耐火・耐熱・耐水・電氣絶縁性等の非常にすぐれた性質を有する新しい塗料が現れ,我國に於ても漸くこの樣な塗料が生産せられ次第に廣く使用され樣とする状勢にある。
 私はこの樣な新塗料の使用に際し,作業場内に在つた全員に眼障碍を來した例を経驗したので,ここにその症状・經過の大要を報告し,その原因について老察してみたいと思う。

(7) Bürger病眼球病理組織學的知見補遺

著者: 大木陽太郞

ページ範囲:P.86 - P.94

緒論
 1934年Marchesaniは青年性再發性網膜硝子體出血の本態はBürger病(以下B病と略す)なりと主張し斯界の注目をひいた。然るにHippel,Fleischer等の反對,菅沼の反證を浴びた事は衆知の事實であるが一面このB病そのものも甚だ不詳の點が多く,ましてその眼における病理組織學的検索はその報告例も少く1899年Winiwarterの提唱以來本態も尚明確を期し難い疾患の一つである。幸にして私は最近此の眼球を組織學的に検索するの機會を得たのでここに報告しょうと思う。

(8)網膜血管分岐角の臨床的檢眼鏡的研究(第3報)—病的眼計測成績

著者: 籾木秀穗

ページ範囲:P.95 - P.102

緒言
 網膜血管分岐角の計測研究は1948年にWasm-und及び磯貝氏が眼底寫眞に就き實施し,その計測域績を報告しているが,検眼鏡的に直接眼底を望見し乍ら行う計測研究は皆無であつた。
 私はGullstrand検眼鏡及び2箇の特製計器を使用してその計測研究を行つており,既に第1報第2報に於て,正常眼の2mm内夾角,切線角及び兩者の差に關する計測成績を報告したので,今回は病的眼の計測成績を總括し茲に第3報として報告する。

(10)人體視束交叉部形成の胎生學的研究

著者: 坂本正敏

ページ範囲:P.102 - P.108

緒言
 胎生期における視束の發育に關しては,His (1868)の研究以來,Keibel (1889),Frosiep (1891),Bernheimer (1898),Seily (1912),Klecz-kowsky (1913)等,幾多の胎生學者による業績がある。本邦においては,最近,中村康氏の視束の發育過程に關する文献がある。併し乍ら,視束交叉部の發育に關する研究は比較的少く,殊に,動物胎兒による少數の實驗的研究を除外すれば,人胎兒による交叉部の研究は極めて少い。筆者の調査した範圍では,Fischdlの研究,及びHenryc.Haden (1944)が行える7例の人胎兒を用いた研究の中で,稍々此の部位に關する記載があるのみである。從つて,視束交叉部に關する系統的な胎生學的研究に至つては,未だ,殆ど其の業績を見ない。
 筆者は,此の點に着目し,かねてより,蒐集した多數の材料により,初期胎生期における視束交叉部の發育を仔細に研究し,興味ある成績を得たので,茲に報告する。

(11)人胎兒眼の血管形成に就いて(第1報)—胎生3ケ月前後に於ける眼動脈

著者: 横山榮子

ページ範囲:P.109 - P.111

 胎兒眼に於ける血管の發生,特に硝子體動脈の發生に就いては,既にBach,Schulz,Seefelder,Versari等の詳細なる研究があり,我國に於ても中村康(教授),小松,の廣範圍に亙る研究成積が發表せられている。然し硝子體動脈と頸動脈との關係即ち眼動脈の發生に就いての研究は,我國に於て私の調べた範圍に於てはその報告を見ない。私は今回硝子體,視束並びに眼血管全般が比較的良く發達した2カ月後半より3カ月前半に到る眼動派に就いて觀察し得たので,その一端を報告する。

(12)流行性結角膜炎の免疫状況及び血清療法に就て

著者: 小口昌美 ,   河瀨澄男 ,   内木久郞

ページ範囲:P.111 - P.113

 流行性結角膜炎(以下流結と略す)の病因がヴィールスに依るものであることが確實になり,本疾患の本態は幾多先人の研究に依つて漸次分明して來た。私共は本病の免疫及び血清療法に就て述べんとするものであるが,飜つて考えるに眼疾患は一般に局所疾患とされ,その免疫或は血清療法等は餘り考慮されないのが現状である。所が最近の研究によりトラコーマに於ては流血中に中和抗體の存在が確認され或はモラックス,アクセンフェルド氏菌結膜炎に於ても抗體の存在を否定出來ないのである。眼疾患に於て斯樣に抗體が存在することは當然であつてこれは又他領域の局所疾患の場合を見ても明かである。
 扨て流結の臨床經驗からは我々は次の事柄を結論することが出來る。即ち, 1)本病は非常に傳染し易く,家族傳染,或は外來傳染が激甚である。家族傳染の場合は親子同胞のみならす使用人等にも同樣に感染する。これ等の事實は先天性免疫或は體質との關係が餘りないことを示すものである。

(14)テラマイシン溶液の安定度

著者: 德田久彌 ,   小池和夫

ページ範囲:P.113 - P.114

 オーレオマイシンと,テラマイシン,とが出現してから,トラコーマの療法は一變した感があるが,その溶液の安定性については,Braley等の報告があるのみで,わが國では未だ詳細は分つていない。しかしながら,これらの眼科的使用法はその殆ど全部が軟膏と溶液の點眼による局所療法であるから,その溶液及び軟膏の安定性は,臨床的にも極めて身近かな重要な問題なめで,私達は先ずテラマイシン溶液の安定度を調べてみた。
 最初に豫備實驗として,「テ」鹽酸鹽の内服用カプセル,豫び結晶を用いて, 1) 溶媒による差異

(16)レチネン還元酵素系に就て(其の1)

著者: 古城力

ページ範囲:P.115 - P.118

 淡水魚を除いた多くの海,陸の脊椎動物の網膜桿體外節には視紅と呼ばれる光に敏感な感光物質が存在する。桿體は夜間の視力を司り視紅は夜間の視力に切つても切れない密接な關係がある。視紅は光及熱反應に依り紅色より橙・橙黄・黄色を經て眞白に褪色する事は,既に良く知られた事實である。視紅褪良過程中に,Chloroform溶液で386mμ,石油エーテル溶液で365mμ,Carr-Price氏反應で664mμに吸收極大を示すWald氏の所謂retinene1の吸收を示し,更に褪色すると吸收極大は325mμに移る。これはvitamin A1の吸收である。最後に眞白に褪色した状態では全く蛋白の吸收だけを示す。かように吸收極大の點から見ても視紅の500mμからretinen1の385〜365mμを經てvitamin A1の325mμに移り,遂に300mμ以下の短波長のみの吸收になる。かゝる變化が生體内で自由自在でに進行し,又逆に合成されるのは甚だ興味のある事である。
 1944年Morton,Goodwin氏1等によりreti-nene1はvitamin A1 aldehydeであることが示されている。その構造は恐らく下記の如きものであろうと想像されている。

(17)ネオレスタミンの使用經驗

著者: 小松榮一 ,   八木橋彰

ページ範囲:P.119 - P.122

緒言
 アレルギー性疾患に對して抗ヒスタミン剤が應用される樣になつたのは比較的最近の事である。眼科的方面に於ても各種抗ヒスタミン剤の使用が試みられ,特に局所適用によつて著効を奏している。
 私共は此度興和化學で新に合成されたネオレスタミンを各種アレルギー性眼疾患に試用する機會に惠まれたので,その治効について略述し,併せて健康な人眼及び海猽眼に對する作用に就いて報告する。

(18)實驗的角膜アレルギー性病變に就いて

著者: 淸澤兼久

ページ範囲:P.122 - P.123

 角膜のアレルギー性炎症を次の方法で惹起せしめ細隙燈で觀察した。抗原は非働性にした人血清を用いた。
 I.Wessely氏現象第I型に就いて。

(19)虹彩震盪の成因に就て

著者: 小口武久

ページ範囲:P.124 - P.124

虹彩震盪の成因は,眼科の教科書に書いてあるが,其の記載はまちまちで,水晶體の不全或いは完全脱臼を擧げている者が多く,一部には水晶體の缺乏を擧げている。私は,虹彩震盪がどんな場合に起つて來るかを知るために,最近經驗し記載のはつきりしているもの45例を調べて見た。其の結果は,(數字は眼數) 白内障手術後に發生したもの21(中老人性15外傷性2,先天性2,併發2) 水晶職脱臼 12(全症例で例外なく認められた) 高度近視 3 虹彩後癒着 3(全癒着2,部分的1) 白内障   2(老人性1,X線1) 瞳孔閉鎖  1 網膜剥離  1 癒着性白斑 1

(20)頸動脈毬を摘出した網膜色素變性症の遠隔成績

著者: 曲直部正夫

ページ範囲:P.125 - P.129

緒言
 昭和17年末瀨尾,中山兩氏が頸動脈毬(頸毬)外科を提唱して以來この手術の眼科的活用就中難治の網膜色素變性症(R.P.)に對する應用も日を追つて盛況となり發表數も井上氏(昭和19)以來今日迄既に20例に近く恰も一流行の如き觀さえ呈している。この効果に就て生井氏等の否定に近い見解もあるが學界の趨勢は有効且つ施行の價値あるものとして認めるに至つた。然し斯る現状に於ても果してこの手術が永續的に治効を奏するものか,然らずとすると効果持續期間は幾許かと言う點迄究めて得たる遠隔威績を明示した報告が甚だ少いのは遺憾である。
 私は昭和22年の春以來この手術をR.P.患者に實施し,その成績を求めていた所,相當與味ある遠隔成績を得たので茲にそれを報じ併せて同手術施行指針の一資ともなる事を希う。

(21)水晶體のビタミンCの代謝(第3編)—解糖過程との相關

著者: 三島功

ページ範囲:P.129 - P.131

序言
 水晶體に比較的多量のビタミンC (以下V.Cと略記する)の存在する事が指摘されて以來,水晶體のV.Cに關する研究は枚擧に遑ない程なされて來た。併しその根本問題たる水晶體内のV.Cの由來に就いては,多くの解説が試みられていたが解決を見るに至らず,全く不明であつた。例へばFis-cher1),Muller2)等の水晶體内合成説,中村3)等の編側透過説等々あるも,實驗的證明を缺くか又は不充分であり,一般に承認されるに至らなかつた。所が先に荻野4)は,水晶體に六炭糖よりV.Cを合成する能力のあることを實驗的に立證し,本問題の基礎的事實を明にした。
 其の後吾人は,水晶體のV.C集成機序につき研究を進め,中間代謝物の2・3を決定出來た。所で水晶體のV.Cの母質が六炭糖であるので,こゝに炭水化物の代謝たる解糖作用との關係があるのではなかろうかとの疑問を生ずる。

(22)網膜膠腫の組織學的所見補遺(其の1)

著者: 高安晃

ページ範囲:P.132 - P.133

緒言
 網膜膠腫の眼内發育に就ては既に知られて居る樣に1.發生年齢が非常に若い點,2.一度發生した腫瘍が自然治癒を示し眼球勞に陥る點,3.私が以前報告した樣に乳兒に見た眼瞼嚢腫(網膜の發生異常)にグリオーム細胞群を發見した點等から次の樣な事を推定する事が許されるであろう。即も網膜細胞は發生胎生時に先天異常を有して居て,これが或る條件によつて増殖を促進されるもの或は反對に其の儘で發育が停止するか抑制されるものもあつて良いと考えられる。從つて種々な方面から是等の問題を研究して見たいと考える。今回は主としてX線照射が網膜膠腫組織に如何なる治療的影響を及ぼすかに就て組織學的見地から其の知見を補足して見たい。

(23)諸種内分泌製劑の網膜血管徑に及ほす影響—(1)腦下垂軆後葉製劑に就て,他

著者: 宮下和子

ページ範囲:P.134 - P.150

緒論
 腦下垂體製剤ピツイトリンの眼壓作用に就ては從來數多の實驗的研究があり,又緑内障眼に用いた臨床報告もある。眼壓變動機轉の説明としては全身血壓との關係,末梢血管作用等が重視されている。然しこれらの説明は多く動物實驗に根據をおくものであつて,これを人眼に直ちに適用されるか否かは疑問とするところである。
 余は人體に獄て腦下垂體後葉製剤一アトニン(帝國臓器)を用い測微計測法により網膜血管徑を計測し眼壓,血壓との關係を追求したので以下にその成績を記載せんとするものであるが,腦下垂體後葉製剤が眼内血管,特に網膜血管徑に如何なる影響を及ほすかに就て綱膜血管徑の測微計測法は未だ全く之を見ないところとする。

(24)網膜動脈エンボリーに對する諸種治療法の網膜血管徑に及ぼす影響に就て

著者: 三國政吉 ,   島大

ページ範囲:P.150 - P.154

 網膜動脈エンボリーの療法としてはアミルニトリツト,亞硝酸ソーダ,アセチルコリンその他の血管擴張剤が用いられ,前房穿刺,眼球マツサージ等も行われるが,これらのうち何れが一體有效かに關し吾人は餘り知るところがない。
 余等は最近偶々本症の1例に遭遇したのを機會にこれに對し從來有效とせられる諸種療法を施行し,網膜血管徑を測微計測してその經過を比較追及し得たので以下にそれらの成績を記載する。

(25)先天性全色盲の網膜感電性に關する2,3の知見

著者: 米村大臧 ,   石坂直人

ページ範囲:P.154 - P.161

緒言
 先天性全色盲の光神,並に色神については,種種の検査が行われている。例えばスペクトルムの明度分布,アノマロスコープ所見,暗順應經過,毛糸や色紙域は色盲検査表を以てする試驗等が最も普通のものであるが1),その他兩眼視を用いpu-lfrichの實體視效果を利用して光の感覺時の差を測定した研究〔Wöllflin (19252))〕や,光源の點滅の臨界融合頻度(F-f)を測定したもの〔Wöliflin (19273)),Ajo&Teräskeli(19384)5))〕がある。また極く最近では部分色盲についてではあるが,本川教授,鈴木氏(19466),19507)),江部氏,磯部氏(19508,19519))等はζを用いて色盲者の網膜の色過程に關する重要な研究を發表された。我々は兄弟2例の先天性全色盲に遭い,その内の1例につき主として網膜の感電性という立場から若干検索し得たので報告する。

(26)コルチゾン點眼療法の經驗

著者: 倉知與志 ,   久保田淸

ページ範囲:P.161 - P.166

緒言
 最近副腎皮質ホルモンの1つであるCortisoneと,副腎皮質を刺戟してCortisoneその他を分泌させるAdrenocortiootropic hormone (ACT—H)とが,我が眼科領域でも,新しい然も偉力ある治療藥として登場して來た。これらに關してはここ一兩年の間に主として米國から多數の臨床實驗例や動物實驗成績の報告があり,極く最近到着したイギリス,ドイツ及び日本の醫學雑誌中にもこれに關する論述が見出されるが,それらは一樣に或種の眼疾には卓效を奏することを認めて居り今後恐らく我々としては缺くことのできない藥剤であることを想わせる。
 アクスはその作用機轉からしても當然全身的に用いねばならぬが,コルチゾンの方は全身的のみならず局所に使用しても有効であり,しかも筋肉注射した場合のアクスとコルチゾンとの作用力の相違は,結局コルチゾンの量に歸せられると謂われて居るから,眼科臨床醫家としては差當りコルチゾンに對する關心を高めるものと思われる。

(28) Flicker fusion frequency fieldの臨床的應用〔第1報〕

著者: 吉見氏彦 ,   小松常治

ページ範囲:P.166 - P.167

 昨年度の本集談會で山岸,吉見は,中心視野に於けるCf値につき述べたが,之を要約すれば,
1)側定條件として視標直經3cm,ネオン管の前に硫酸紙一枚を重ねて,光を均等化せしめ且絶對暗室,完全暗調態眼が最適である事。

(29)青森縣津輕地方「シビ・ガッチャキ」症の眼症状に就て(第1報)

著者: 入野田公穗

ページ範囲:P.167 - P.169

1.「シビ.ガッチャキ」症の臨床症状とその病因
 「シビ・ガツチヤキ」症は今日特に青森懸津輕地方に蔓延せる風土病にて其の臨床症状は增田1)氏によれば口角炎,舌炎,更に肛門病變(皹裂,浮腫,上皮剥離,糜爛),外陰部の障碍(掻痒,それに續發する細菌感染による濕疹樣變化,摩擦疹樣病變)等,既ち粘膜皮膚の境界に於ける病變を主とするものであり(此の時期迄を「シビ」氣乃至「ガツチヤキ」氣と云う),更に次第に口唇や舌が酷く荒れて食物が攝れなくなつたり睡眠が障碍され或ひは期樣な前驅的段階を經ずに急激に重篤な全身違和感,倦怠感,食慾不振,不快な頭痛から精神沈欝,不眠更に昏迷錯亂に迄到る。即ち神經,精神症状,口腔より食道,胃肛門に到る一連の消化器障碍,粗〓,皹裂,糜爛の如き皮膚及び粘膜症状,時に發熱等を伴う一つの全身病としての症状が現はれるのである。
 其の病因に就ては未だ解明せられて居らぬ點が多いがリボフラビンRiboflavin (ビタミンB2),ニコチン酸(ナイアシンNiacin)のみならずサイアミンThiami-ne (ビタミンB1),ピリドキシン(ビタミンB6),ビタミンB12,パントテン酸,パラアミノ安息香酸,コリンCholine,葉酸Folic acid等既ちビタミンB複合體の缺乏があり,その外ビタミンA,ビタミンCの不足も伴はれて居るらしく取りも直さずPolyavitaminosisに因るもので,之に加へて動物性蛋白過少もあるらしい。

(30)無色素性色素性網膜炎に就て

著者: 神鳥文雄

ページ範囲:P.170 - P.171

 網膜色素變性症と無色素性色素性綱膜炎とは古來より甚だ密接な關係があるとされ,Leberによると無色素姓のものは色素性の未熟型であつて,やがては色素性に移行するものであると述べている。湖崎,安武,Gebb,Peltesohn等も數年にして色素性に移行したものを報じている。臨床的觀察や病理組織所見に就ては大橋教授の廣汎な研究があつて,兩者は同一疾患とみなされている。
然るに無色素性の臨床所見は,從來より詳細な記載を缺いていて,成書では乳頭の黄色萎縮,網膜血管の狭細及び固有な色調の褪色を擧げているが,何れも色素性のものと同じであつて,兩者の相違點は專ら網膜に色素斑の有無に關してである。而しLeberによると無色素性は色素斑が全くないか,或は極めて少いものであつて,少數の色素斑を合併したものをも含めている。私は最近25例の無色素性のものを觀察し,描圖したが,其の臨床所見に就ては後日報告するとして,其の際詳細な検査をなし得た20例に就て其の統計的觀察を述べ兩者の關聯性に就て論じよう。(表參照)

(33)視紅の組織學的證明について

著者: 早野三郞

ページ範囲:P.171 - P.172

 Kühne1)は1879年視紅について廣般な研究を行い,硫酸で暗網膜を乾燥すると特有な紅色を保持させるに有利であると述べた。私2)は昨年乾燥方法として無水燐酸と眞空を組合せこの事實を確認し,更に同法を用いて視紅を粉末化し3),2,3の性状を追加した。Wald4)も昨年乾燥視紅フィルムについての實驗を爲し,光に安定なることを認めると共に吸收スペクトルの山が僅かに移動をすることから,これにMeta-rhodopsinなる名稱を與えた。即ち,視紅は乾燥状態となれば,乾燥が續く限り光安定性を得る。この性状を利用して私は今回視紅の総織學的證明を試みたので,方法について報告し検討を加えてみよう。

(34)頬部所見なく眼窩内に侵入した上顎洞嚢腫の1例

著者: 小口悌示

ページ範囲:P.173 - P.174

序言
 副鼻腔の嚢腫が眼窩に波及して,特有なる頬部所見と眼球突出等の眼症状を來たす最も典型的なものは,篩骨洞から出る嚢腫であり,これは既に教科書的なもので珍らしくないが,上顎洞から起こつてその上壁即ち眼窩の下壁を穿破した嚢腫が眼窩内に侵入増大するという例は,極めて珍らしいと思われるので,こゝに簡單に報告する次第である。

(38)屈折檢査上クロスシリンダー使用の利點・黒地亂視表及び3本糸引視力表に就て

著者: 井上正澄

ページ範囲:P.175 - P.176

Jackson Cross Cylinderは1849年Stokes考案,1887年Jackson完成,1907年米國に紹介され,1923年詳細な使用法が發表された。Cross Cylinderは球面レンズに比較して亂視のDが倍になつて居る雜性亂視のレンズである。郎ち0.25Dならば:
SPH−0.25D C CYL+0.5D

(39)ヒアルロニダーゼの眼疾患に對する應用(特に壯年性反復性網膜硝子體出血症の硝子體溷濁に對する應用に就いて)

著者: 仁田正雄

ページ範囲:P.177 - P.178

 ヒアルロニダーゼ(以下「ヒ」と略記)の眼疾患に對する應用に就いてはAtkinson,Key,Me-yer,Lebersohn以下多數の外國文献があり,吾國に於ても谷,德田,村山氏等の報告がある。著者も種々なる眼疾患に「ヒ」を應用したが,その内壯年性反復性網膜硝子體出血症の硝子體溷濁で種々な治療法が無効であつた物に對し行なつた成績に就いて報告する。「ヒ」の硝子體溷濁に對する應用に就いては從來内外を通じて文献を見ない。

(40)角膜の自由水と結合水の實驗的研究(第1報)—健康家兒眼に於ける角膜の自由水と結合水に就て

著者: 靑木豊

ページ範囲:P.179 - P.180

はしがき
 生體組織内の水はGortnerに依ると通常自由水(free water)と,組織成分と堅く結合して容易に離れない結合水(found water)とより成つているという。この説は1936年Hatshekによつて考按された鹽化コバルト法によつて急速に發展し,我が國でも東氏の紹介以來既に安保,大八木小谷氏等により腦組織に試みられているが,眼組織については昨年早野氏が網膜の結合水は33.44%(明),31.98%(暗)で次で角膜,葡萄膜鞏膜,水晶體の順に少ないと報告しているのみである。
 私は角膜含水量の再検討を行うと共に,いろいろな條件の下で角膜の自由水と結合水との關係が如何なる状態にあるかを知るために,先ず健康家兎角膜についての實驗を行つたのでその結果を報告したいと思う。

(41)トラコーマ結膜嚢内水素イオン濃度に就て

著者: 後藤順藏

ページ範囲:P.180 - P.186

緒言
 結膜嚢内水素イオン濃度結膜水(イと略)は外界よりの侵襲によつて變化し各種結膜疾患に於ては健康結膜と異る状熊を示すものと考えられる。トラコーマ(トと略)殊に慢性トの結膜水イの報告は極めて少い。私は健康眼,結膜炎,トラコーマ,慢性涙嚢炎計974眼の結膜水イ及び16眼の流出涙液の水イを測定し,又トの一部にXL10眼軟膏(10%ホモスルファミン,XLと略)を主として治療を行い,その經過中結膜水イがいかに變化するかを觀察した。

(42) P.A.S.イオントフォレーゼ治驗例

著者: 石川淸

ページ範囲:P.186 - P.190

緒言
 最近結核の化學療法は1943年Waksmannに依り發見されたStreptomycins (以下スと略)に依つて劃期的進歩が遂げられた。Paraamino-Salic-ylic-acid (以下P.A.S.と略)は1902年Slidel及びBittnerに依り始めて作られたもので,1945年Lehmonnに依り結核に對する抗菌作用のある事が發見されて以來,結核治療にスの缺陥を補つて益々有力な武器となりつつある。眼結核症に於ても之等化學剤の恩惠を受け全身的,局所的投與に依り其の効果に見る可きものがある。眼結核症に對する應用に關してはRees & Robson (1949)Witmer & Pagaz (1949),Bietti (1930),最近に於てHorne and Macaskill,Haaseの發表がある。本邦に於ては高橋,田地野,畠山等の發表が見られる。私はP.A.S.Na鹽溶液の夫々10%,5%,3%を用い健康家兎眼にIontophorese (以下「イ」と略)を施行し,其の房水内移行量を測定し且つ時間的經過を觀察し,此の基礎實驗に基き19例の結核性眼疾患に應用し興味ある成績を得たので茲に報告する。

(43)結核性網膜靜脈周圍炎4例5眼の視野成績

著者: 吉江フミ

ページ範囲:P.190 - P.194

 私は昭和23年12月から昭和26年5月の間に結核性綱膜靜脈周圍炎と診斷し視力1.2であつた4例5眼に遭遇致しその視野検査を行いましたので成績を述べます。

(45)中心性網脈絡膜炎の色覺に就て

著者: 小尾榮

ページ範囲:P.195 - P.197

諸言
 視神經及び綱膜,脈絡膜の疾患に際して色覺異常が出現する事は周知の事實である。視神經の疾患に於ては赤緑色覺の異常が主であり,綱膜,脈絡膜の疾患に於ては青黄色覺の異常が主である事は,盛,小口,伊東氏等が相次いで認めた所である。之等後天性色覺異常が原疾患の消長と如何なる關係を保ちつつ經過するかと言う點は,甚だ興味をそそる問題である。視神經疾患の代表たる慢性軸性視神經炎に關しては,加藤氏の詳細な研究があるが,網膜,脈絡膜疾患の代表たる増田氏中心性網脈絡膜炎に關しては,未だその方面の報告がない。私はその樣な立場からマツダ色フイルター式色高温計を用いて,中心性網脈絡膜炎の色覺を検査し,以下に述べる樣な結果を得たので報告する次第である。

(47)外眼部症状を伴うSarcoid (Boeck)の1例

著者: 上岡輝方 ,   佐藤守 ,   桑原季六

ページ範囲:P.197 - P.204

諸言
 Ssrcoidosis或はBoeckのSarcoidと言われるものは主として皮膚,骨,肺,リンパ組織,眼耳下腺及涙腺等に表われる慢性の,そして比較的良性の原因不明な肉芽腫とされ,進行性であると共に,特發的に輕快することがあるのがその特徴とされている。然して,その組織像は結核に類似して居り最近に至り特に注目されるに至つたものである。此の病氣には,Besnier及Sahaumann氏病,Mylius-Schurmann氏病,良性リンパ肉芽腫症,僞結核症,Paratuberculosis等の種々の別名があり此等の多くの別名の中で,恐らく最も多く記載されているのは,リンパ肉芽腫である。何となれば此の病氣は臨床的にホヂキン氏病によく似ているからである。1940年GilbertはHee-rfordtのuveo-parotid feverやミクリッツ氏症候群を検討して從來報告されたuveoparotid fe-verの大部分とミクリッツ氏症候群のあるものはBoeckのSarcoidではないかと言つている。
 此の疾患を最初に報告したのは1869年Hutchi-nsonであり,ついで1899年にBoeckがこれを皮膚に於て觀察し,初めて組織的検索を行つた。更に1889年Besnierはそれをlupus pernioと呼稱した。

(49)蛙網膜の糖原について—特に視細胞の運動について凍乾網膜に於ける觀察

著者: 吉澤淸

ページ範囲:P.205 - P.206

 綱膜の組織化學的グリコーゲンについては從來種々の動物について數多くの人々の報告が行われて來た。之等の成續は極めて區々で,殆んど報告者の數程異つた所見が記載されて居る。私はAlt.mann Gershの凍結乾燥法による組織製作法により蛙網膜のグリコーゲンを検索しその明調應時と暗調應時とに於ける位置の差から,視細胞の運動に就き考察を試みた。
 實驗は8月中旬から9月下旬迄の蛙(Rana eseulenta)を用いた。剔出した眼球をエーテルとドライアイスによる−80℃の寒劑中に入れ瞬間固定をし,それを−30℃附近の温度に保つて置き眞空ボンプに水銀擴散ボンブを併用して約6時間から10時間脱水した。昇華する蒸氣は−80℃の捕集器と五酸化燐で吸濕した。脱水後室温にしてから眞空中で溶融したパラフィンをしみこませて包埋した。標本はBest氏のCarmin Bener-Fdnlgen氏法,Jod法,唾液試驗を行つた。

(50)ペニシリン大量注射による先天眼梅毒の治療に就て

著者: 大塚任 ,   豊田兼子

ページ範囲:P.206 - P.208

緒言
 ペニシリンを梅毒の治療に用うる事は,他科,殊に皮膚泌尿器科方面では盛に行われており,現在では砒素・水銀・蒼鉛剤等に代つて最有力な驅梅藥となりつつあり,早期梅毒は勿論,晩期及び発天梅毒等も血清反應を陰性化しうる事が報告されている。然し,眼科にみる先天梅毒である「ビ慢性角膜實質炎」等に於ては,他科にみる梅毒より,感染後長年月を經ている爲か,從來の驅梅藥を以てしても,又ペニシリンを用いても,之をSeronegativにする事は不可能な現状である。私達はペニシリンを用いた場合,輕度乍らその血清反應に變動を起しうる事より,之を更に大量使用すれば,或は之をSeronegativにしうるのではないかと考えて,ペニシリン大量注射による之等限梅毒の治療を計劃した。かかる方法でこの不治の梅毒を治癒せしめる事は,内外何れに於ても成功しておらず,患者にとつても大なる幸福であり,學問的にも大なる進歩をもたらすものである。

(51)近視に對する角膜表裏兩面切開術動物實驗

著者: 佐藤勉

ページ範囲:P.209 - P.211

 瞳孔領外角膜の全體に多數の放射線型の角膜後面切開を,なるべく平均に分散させて行うと,家兎の屈折状態が著るしく遠視化することは,今春の日本眼科學會1)で報告した。更にその效果を強めるために演者は角膜表面の切開を追加するという考案をしたのである。これを角膜表裏兩面切開と名づけ,今回家兎についての成績を發表する。

(52)進行性鞏角膜周圍炎の組織學的所見に就いて

著者: 福田恒一 ,   岡田榮

ページ範囲:P.211 - P.214

緒論
 1926年V.SzilyはScleroperikeratitisなる一種の鞏角膜炎に就いて記載し,同氏は本病の原因が結核であると説いた。本病に就いては既に外國に於てはSchlodtmarnn, Friedland, Uhthoff,Gilberti, V. Hippel, Verhoff, V. Planta, Land-egger等の症例があり,我國に於てもこの名稱のもとに約10例の報告がある。本病の本態に就いては確實な症例を組織學的に検索したものはV.Szily石川,菅沼,壺井—出羽—松田sehlodt-mann Faiedland V. Hippel Uhthoff Verhoff肥後,百々—赤松,田上氏等の13例である。その内V.Szilyの述べた樣に結核説が最も多く次で梅毒説,リウマチ説,アレルギー説となつている。然しながら本病は比較的稀な疾患で然も治癒が甚だ困難であり,その特異な病變像の故に吾人の興味を惹きつつを剖検例が至つて僅少である。私共は最近1眼進行性鞏角膜周團炎の診斷のもとに治療中漸次惡化して來たので眼球剔出を實施しその組織學的所見に聊か興味ある所見を得たので追加報告をする。

(53)5年間に亘る學童トラコーマの集團治療

著者: 矢追秩榮

ページ範囲:P.215 - P.218

緒論
 終戰後學童の集團治療を思い立ち足立區の小中學校で實施して來た。私の外にもトラコーマ藥理療法をやつた人はあるが何れも短い期間1,2の薪藥に對して極めて少數の個人經過を調べた位で私の樣に多數の學校に於けるトラコーマ兒童多勢の新治療に關する報告は少い。即ち病勢の推移竝に社會的治療經過に就ては未だしてない樣であるから自分が昭和21年以來毎年検診した延77,462名の内トラコーマ延1,709名を治療した結果を報告しようと思う。

愛知縣眼科醫會役員會

著者: 瀨木本立

ページ範囲:P.219 - P.219

 (昭和26年12月23日夕刻,名古屋で愛知縣と,縣内の主動力である名古屋市ブロツクの兩眼科醫會合同の役員會を開きました。協議に上つたことは,
1)日本眼科醫會の件
2)養護教諭,學校看護婦のトラコーマ治療の件

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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