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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科60巻1号

2006年01月発行

雑誌目次

連載 今月の話題

経角膜電気刺激による視神経保護治療

著者: 不二門尚 ,   森本壮

ページ範囲:P.7 - P.11

これまで有効な治療法がなかった非動脈炎型虚血性視神経症,外傷性視神経症などの視神経疾患に対して,動物実験の結果をふまえて,経角膜電気刺激による視神経保護治療法を開発し,安全性,有効性に関して検討したので報告する。

眼の遺伝病78

RS1遺伝子異常と網膜分離症(13)

著者: 多田麻子 ,   和田裕子

ページ範囲:P.12 - P.13

今回は,RS1遺伝子の499番目のヌクレオチドにTの挿入がヘミ接合体で認められ,その結果コドン167番目のAAGがTAAに変化し,リジンからストップコドンへの変異を生じた症例を報告する。この変異は海外および日本人患者での報告はなく,さらに本欄でも初めて紹介する変異と臨床像である。

日常みる角膜疾患34

急性水腫

著者: 寺西慎一郎 ,   川本晃司 ,   近間泰一郎 ,   西田輝夫

ページ範囲:P.14 - P.16

症 例

 患者:23歳 男性

 主訴:左眼視力低下

 現病歴:17歳の頃から羞明・視力低下を自覚し近医を受診していた。左眼の円錐角膜を指摘され,ハードコンタクトレンズを処方され経過観察されていた。23歳時には右眼にもハードコンタクトレンズを処方された。2002年11月,左眼の急激な視力低下が出現した。1週間経過しても改善しないため当科を受診した。

 既往歴・家族歴:兄が円錐角膜

 初診時所見:視力は右眼1.0(1.2),左眼0.01(矯正不能),眼圧は右眼10mmHg,左眼10mmHgであった。右眼角膜には特に異常所見は認められなかったが,左眼角膜中央部は下方に偏位・突出し先端部の実質は著しく菲薄化し角膜実質浮腫を伴っていた(図1a)。フルオレセイン染色では突出部の角膜上皮の欠損はみられなかったが,混濁部に一致してフルオレセインをはじいている暗点(上皮下浮腫)を認めた(図1b)。前房,中間透光体,眼底に異常所見は認められなかった。Photo keratoscope(PKS)では右眼にはマイヤーリングの乱れはなかったが,左眼では中央部のマイヤーリングの不整と突出先端部に一致して偽中心をもった著しいマイヤーリングの不整を認めた。

 治療経過:初診時の所見から急性水腫と診断し,特に点眼などは処方せずに経過観察を行い,角膜形状の変化を細隙灯顕微鏡検査とPKSで評価した(図2)。経過観察中,PKSでは初診時にみられた偽中心をもったマイヤーリングは消失し,本来の角膜中央部のマイヤーリングが下方に偏位する像が得られるようになり,それと並行して視力も向上した。左眼角膜の上皮下浮腫がみられなくなり,2003年5月には左眼のハードコンタクトレンズの装用を始め,視力は0.05(1.5)まで回復した。

眼形成手術手技11

眼瞼内反症 (1)理論編

著者: 野田実香

ページ範囲:P.18 - P.23

はじめに

 眼表面に対する睫毛の方向性に異常がある場合,原因となるのは瞼板の方向性か,瞼縁での毛根の方向性かであると考えられる。前者であれば瞼板を支える靭帯などに問題があり,眼瞼の骨格を考えた根本的治療が必要である。後者であれば眼瞼前葉と後葉の関係に問題があるので,それを是正する治療をする。

臨床報告

眼窩扁平上皮癌の1例

著者: 本田晃大 ,   花園元 ,   野田実香 ,   白石淳一 ,   植松稔 ,   川名浩一郎

ページ範囲:P.33 - P.36

目的:球結膜に原発したと推定される眼窩扁平上皮癌1例の報告。症例:79歳女性。3歳のとき外傷で右眼が失明し,25歳のときから義眼を装用していた。最近,上眼瞼に腫瘤が生じ,義眼が入らなくなった。生検で高分化型扁平上皮癌と診断された。画像検査で右眼窩に腫瘤があり,腫瘤と眼球を摘出した。腫瘤の断端が病理診断で陽性であり,術後に総量46 Gyの放射線照射を行った。結果:手術から9か月後の現在まで再発がなく,経過は良好である。結論:眼窩扁平上皮癌の治療では,まず腫瘍を全摘し,断端が陽性であれば放射線照射を併用することが有用である。

緑内障患者の点眼薬への意識

著者: 小林博 ,   岩切亮 ,   小林かおり ,   沖波聡

ページ範囲:P.37 - P.41

目的:緑内障患者の点眼薬についての意識調査。方法:大学病院に通院している開放隅角緑内障患者から無作為に選んだ168名を面接法で調査した。男性42%,女性58%で,年齢は21~84歳(平均61歳)であった。結果:点眼薬剤数は平均2.7種で,点眼回数は平均4.2回であった。緑内障治療の重要な目標が視機能の維持であると82%の患者が答えた。緑内障治療では眼圧下降が重要であると71%の患者が答えた。日常生活に支障を及ぼす副作用がないことが次に挙げられた。使用中の薬剤名は19%の患者が正解した。54%が点眼瓶の蓋の色と形で点眼薬を識別していた。結論:緑内障患者の多くが点眼による眼圧下降の意義を理解し,点眼の副作用で日常生活に支障がないことを重視している。

緑内障患者の点眼状況

著者: 小林博 ,   岩切亮 ,   小林かおり ,   沖波聡

ページ範囲:P.43 - P.47

目的:緑内障患者の点眼状況の調査とこれに関与する因子の検討。方法:大学病院に通院している開放隅角緑内障患者から無作為に選んだ168名を面接法で調査した。男性42%,女性58%で,年齢は21~84歳(平均61歳)であった。結果:被調査者の84%が「1か月間点眼を忘れたことがない」,8%が「1か月間に1~3回忘れる」と回答した。点眼状況は視野障害と関連があり,ハンフリー視野30-2のMDと有意に相関した(p<0.05)。昼間の点眼状況は,朝と夕方から夜間のそれより有意に不良であった(p<0.05)。結論:緑内障が重症化するにつれ病識が向上し,点眼状況が良好になる。病識を高めることがコンプライアンスをよくすると推定される。

強膜炎を合併したSweet病の1例

著者: 高野淑子 ,   佐藤章子 ,   蔦祐人 ,   間山夏子 ,   鳴海博美

ページ範囲:P.49 - P.53

糖尿病網膜症で加療中の70歳男性が1週前からの両眼充血と異物感で受診した。矯正視力は右眼0.9,左眼1.2であった,両眼の鼻側球結膜が充血し,瞼裂斑炎として副腎皮質ステロイド薬の点眼を開始した。両眼の充血と同じ頃から顔面,頸部,両上肢に紅斑が生じ,中毒疹の疑いで皮膚科に入院していた。発熱があり,好中球が主体の白血球増加,CRP値の上昇があり,熱性好中球症候群が疑われた。皮膚の生検でこれを支持する所見が得られた。5か月後に両眼の鼻側と耳側の強膜に充血と肥厚があり,点眼に反応しないのでプレドニゾロンの内服を開始した。以後,眼症状は改善し,4か月後に強膜の菲薄化を残して強膜炎は治癒した。以後2年後の現在まで,眼または皮膚病変の再発はない。

内因性ぶどう膜炎の硝子体手術成績

著者: 仙頭美鈴 ,   小浦裕治 ,   政岡則夫 ,   西野耕司 ,   中茎敏明 ,   福島敦樹 ,   上野修幸

ページ範囲:P.55 - P.58

過去5年間に硝子体手術を行った内因性ぶどう膜炎28眼の術後成績を検討した。原疾患は悪性リンパ腫6眼,サルコイドーシス2眼,ベーチェット病1眼,原因不明19眼である。手術目的は硝子体混濁27眼(96%),黄斑上膜11眼(39%),囊胞様黄斑浮腫6眼(21%),網膜剝離1眼(3%)である。6か月以上の経過観察で,21眼(75%)で視力が2段階以上改善し,3眼(11%)で炎症が再燃した。ぶどう膜炎に対する硝子体手術の成績は概して良好であるが,炎症の再燃があるので術後管理が重要である。

T2強調画像で等信号を呈した副鼻腔囊胞による両眼性鼻性視神経症の1例

著者: 坂本理之 ,   菅澤淳 ,   平尾真実 ,   江富朋彦 ,   奥英弘 ,   池田恒彦 ,   荒木倫利

ページ範囲:P.59 - P.64

58歳女性の右眼に視力低下が突発し,その2日後に受診した。矯正視力は右眼0.02,左眼0.3であり,右眼に中心暗点,左眼に感度低下があった。中心限界フリッカー値(C-CFF)は右眼は測定不能,左眼は13Hzであり,右眼のRAPDが陽性であった。MRIで蝶形骨洞にT1強調画像で高信号,T2強調画像で等信号の病変が検出された。蝶形骨洞囊胞による両側鼻性視神経症と診断し,経鼻腔的に蝶形骨洞の手術を行った。洞内に褐色で粘稠な粘液があった。手術の6日後からステロイドパルス療法を3日間行い,矯正視力は左右眼とも1.0に回復した。副鼻腔囊胞はT2強調画像で高信号を呈するのが通例であるが,囊胞内の粘液が濃縮していたために等信号を呈したと解釈される。

Pentacam(R)による角膜厚および角膜中央部前面形状の測定精度

著者: 佐藤洋一 ,   川本晃司 ,   高橋典久 ,   森重直行 ,   近本信彦 ,   近間泰一郎 ,   西田輝夫

ページ範囲:P.65 - P.68

目的:前眼部測定解析装置(PentacamTM)で角膜厚と角膜中央部前面屈折力を測定し,超音波による角膜厚測定装置とビデオケラトスコープによる測定値と比較すること。方法:正常眼10例20眼を対象とし,角膜厚と角膜中央部前面屈折力を測定した。超音波による角膜厚測定装置としてSP-2000(TOMEY),ケラトスコープとしてTMS-2N(TOMEY)を用いた。各装置による測定は同一日に各眼で5回行った。結果:中央部角膜厚は,前眼部測定解析装置では548.3±18.9μm,超音波による測定装置では547.9±26.5μmであり,有意差はなかった。変動係数はそれぞれ0.63%,0.34%であり,有意差はなかった。角膜中央部前面屈折力は,前眼部測定解析装置では43.4±1.2D,ケラトスコープでは43.2±1.4Dであり,有意差はなかった。変動係数はそれぞれ1.23%,1.27%であり,有意差はなかった。結論:前眼部測定解析装置(PentacamTM)は,中央部角膜厚と角膜中央部前面屈折力の測定で,従来の検査機器と同様な精度が得られる。

多量の網膜下出血をきたした加齢黄斑変性に対する硝子体手術の1例

著者: 大野尚登 ,   柳川隆志 ,   井上治郎 ,   竹内忍

ページ範囲:P.69 - P.71

目的:加齢黄斑変性で多量の網膜下出血が生じた症例に硝子体出血を行った症例の報告。症例と経過:86歳男性の右眼に視力低下が突発した。右眼は偽水晶体眼と加齢黄斑変性があり,後極部に網膜下出血があった。矯正視力は0.01であった。左眼は外傷で失われ,義眼を装用していた。血腫を移動させるために100%C3F8ガスを硝子体腔に注入した。その5か月後に硝子体出血が起こり,硝子体手術を行った。さらに9日後に多量の網膜下出血が生じた。網膜周辺部を切開し,網膜を反転し,凝血塊を除去した。0.05の最終視力を得た。結論:加齢黄斑変性に併発した多量の網膜出血に対し,網膜周辺部を切開し,網膜を反転したうえで凝血塊を除去する方法が有効であった。

白内障術前患者の角膜内皮細胞減少例とその要因

著者: 櫻井美晴 ,   望月弘嗣 ,   大野建治 ,   山田昌和

ページ範囲:P.73 - P.77

白内障手術を予定している804例1,608眼につき,角膜内皮の細胞密度を計測した。男性279例,女性525例で,年齢は25~96歳,平均73歳である。過去に内眼手術の既往がある例は含めていない。すでに報告されている日本人の年代別正常値と比較し,[平均値-2×標準偏差]よりも少ないものを角膜内皮細胞減少と定義した。角膜内皮細胞減少例は86例(10.7%),112眼(7.0%)にあった。角膜内皮細胞が減少する要因として,糖尿病(23.3%),狭隅角(9.3%),滴状角膜(7.0%)などが推定された。原因不明が44例(51.2%),56眼(50%)にあった。白内障手術を予定している患者の相当例で角膜内皮細胞が減少していることを示す所見であり,内眼手術を実施する前に角膜内皮細胞を検索することが望ましい。

ステロイド薬使用中に突発した滲出性網膜剝離を伴う網脈絡膜炎の1例

著者: 福田宏美 ,   越後希

ページ範囲:P.79 - P.83

68歳男性の右眼に滲出性網膜剝離を伴う網脈絡膜炎が突発した。3年前から充血と眼痛が右眼にあり,副腎皮質ステロイド薬と抗菌薬の点眼をしていた。12か月前から虹彩炎に対しプレドニゾロンを内服していた。抗菌薬をレボフロキサシンからノルフロキサシンに替えた数日後に網脈絡膜炎が発症し,当科を受診した。右眼の矯正視力は0.1であり,眼底に網膜血管炎,乳頭浮腫,胞状の網膜剝離があった。治療により眼底病変は軽快したが,最終視力は光覚弁になった。副腎皮質ステロイド薬の長期内服の結果として免疫不全状態になり,内因性細菌性網脈絡膜炎が発症した可能性がある。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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