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特集 手術のタイミングとポイント Ⅳ.角膜
全層角膜移植術の適応と術式
著者: 本田紀彦1 天野史郎1
所属機関: 1東京大学大学院医学系研究科外科学専攻感覚・運動機能医学眼科学
ページ範囲:P.197 - P.201
文献購入ページに移動全層角膜移植術(penetrating keratoplasty:PKP)は角膜の上皮,実質,内皮の全部の層を切除し,ドナー角膜の全層を移植する手術である。シンプルな術式で施行しやすいため,広く行われている。ただ,手術適応となる角膜において,上皮,実質,内皮のすべての層に障害がある角膜というのは稀であり,昨今では,障害のある層のみを交換する術式が全層角膜移植術に代わる術式としていくつか提案されている。例えば,実質に混濁があるが内皮機能は保たれている角膜に対する深層表層角膜移植術(deep lamellar keratoplasty:以下,DLKP),内皮機能不全の角膜に対するdeep lamellar endothelial keratoplasty(以下,DLEP),Descemet's stripping with endothelial keratoplasty(以下,DSEK)などである。これらの術式は,角膜の全層ではなく部分を交換するという意味で,角膜パーツ移植などと呼ばれる。DLKPでは術後に角膜内皮に対する拒絶反応がない,DLEPやDSEKでは切開創が狭く惹起乱視が少ない,再手術が容易などの多くの利点を有するために,徐々に広まりつつある。
しかし,いずれの術式も,全層角膜移植術に比較すると手術手技の習得により時間がかかる,一部の術式では特殊な機材が必要などの理由から,すべての施設で全層角膜移植術に取って代わっているというわけではない。全層角膜移植術とこれらパーツ移植の術式が並存しているのが現状であると考えられる。こうした現状を踏まえつつ,全層角膜移植術の適応および術式について以下に述べる。
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