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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科60巻11号

2006年10月発行

文献概要

特集 手術のタイミングとポイント Ⅳ.角膜

羊膜移植の適応と術式選択

著者: 片上千加子1

所属機関: 1神戸海星病院眼科

ページ範囲:P.259 - P.266

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はじめに

 羊膜が難治性オキュラーサーフェス疾患の眼表面再建に用いられるようになって約10年が経過し,いまでは羊膜移植も多くの施設で行われている。

 羊膜は胎盤組織の一部で,生体内の基底膜のうち最も厚い。羊膜は上皮再生のための基質としてはたらき,炎症・新生血管の抑制作用,癒着防止作用があるとされ,また抗原性が低く,移植後の免疫学的拒絶反応を起こさない。さらに,羊膜は帝王切開時に大量に入手でき,凍結保存が可能である。このような利点を生かし,他科領域では古くから手術に応用されてきた。眼科領域でも羊膜を用いた手術によって,眼類天疱瘡,Stevens-Johnson症候群などの瘢痕性角結膜上皮症,化学傷,熱傷,再発翼状片,角膜穿孔,結膜腫瘍,緑内障術後の濾過胞漏出など,従来きわめて難治であった疾患の治療成績は飛躍的に向上した。また,従来角膜移植を必要とした疾患に対しても,羊膜移植により,治癒あるいはドナー角膜を確保する時間を稼ぐことが可能となり,ドナー不足のわが国ではその恩恵は大きい。

 羊膜移植の有効性については数多くの報告がある1~3)。しかし,羊膜移植は,その適応,術式,術後管理が的確に行われなければ,時に予期せぬ合併症を招くこともある。本稿では羊膜移植の適応疾患,手術手技,奏効機序について概説したい。

 なお,羊膜移植はヒトの生体組織の移植手術であり,各施設の倫理委員会の承認を受けて行う必要がある。

参考文献

1)Tsubota K, Satake Y, Ohyama M et al:Surgical reconstruction of the ocular surface in advanced ocular cicatricial pemphigoid and Stevens-Johnson syndrome. Am J Ophthalmol 122:38-52, 1996
2)Lee SH, Tseng SCG:Amniotic membrane transplantation for persistent epithelial defects with ulceration. Am J Ophthalmol 123:303-312, 1997
3)Shimazaki J, Yang HY, Tsubota K:Amniotic membrane transplantation for ocular surface reconstruction in patients with chemical and thermal burns. Ophthalmology 104:2068-2076, 1997
4)Koizumi N, Inatomi T, Sotozono C et al:Growth factor mRNA and protein in preserved human amniotic membrane. Curr Eye Res 20:173-177, 2000
5)Tseng SCG, Li DQ, Ma X:Suppression of transforming growth factor-beta isoforms, TGF-beta receptor type Ⅱ, and myofibroblast differentiation in cultured human corneal and limbal fibroblasts by amniotic membrane matrix. J Cell Physiol 179:325-335, 1999
6)Fukuda K, Chikama T, Nakamura M et al:Differential distribution of subchains of the basement membrane components type Ⅳ collagen and laminin among the amniotic membrane, cornea, and conjunctiva. Cornea 18:73-79, 1999

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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