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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科60巻12号

2006年11月発行

文献概要

連載 眼科医のための遺伝カウンセリング技術・1

遺伝カウンセリングの歴史

著者: 千代豪昭1

所属機関: 1お茶の水女子大学大学院人間文化研究科特設遺伝カウンセリングコース

ページ範囲:P.1891 - P.1897

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はじめに

 2005年10月に東京で第1回目の認定遺伝カウンセラー制度による認定試験が行われ,5名のわが国で初めての認定遺伝カウンセラーが誕生した。この制度は日本人類遺伝学会と日本遺伝カウンセリング学会の共同の認定によるもので,原則的には養成専門課程と認定されたコース(大学院)の修了が認定試験の受験資格となっている。現在,7つのコースが専門課程として認定を受け,遺伝カウンセラーをめざした学生が教育を受けているが,今後10数年の間には400名を超える遺伝カウンセラー(「認定遺伝カウンセラー」と呼称)が誕生する見込みである。21世紀はゲノム医学の時代といわれているように,研究領域のみならず,臨床領域でも遺伝子診断を始めとする遺伝医学的なアプローチが普及し,遺伝カウンセリングのニーズが高まると考えられる。遺伝カウンセラーは臨床遺伝専門医と並んで遺伝医療をささえる主なマンパワーであるが,今ようやくわが国でもこれらのマンパワーの養成がスタートしたところである。

 もともと眼科の領域には先天異常や遺伝性疾患が少なくなく,多くの先駆的な眼科医がわが国の臨床遺伝学の発展に貢献してきた。また,視覚障害者のサポートや色覚障害に対する社会運動など,眼科医の社会貢献には大きいものがある。遺伝性の眼疾患の診療やカウンセリングに精通しておられる眼科医も少なくない。しかし,日本人類遺伝学会など遺伝医学に関係する学会の会員名簿をみると眼科医の数は必ずしも多くはないし,筆者(小児科医)の遺伝臨床の経験のうえからも,現場で気軽に専門的なコンサルテーションに応じていただける眼科医の数は決して多くはなかった。1つには眼科医そのものの数が少ないうえ,眼科医は日常診療に多忙なことと,その診療の性格上,眼域あるいは視覚に限定した治療が主で,生活全般や遺伝の問題にまで包括的に介入する機会が少ないためかも知れない。

 今回の企画は,現場の眼科医の方々に遺伝医療を理解し,臨床遺伝専門医の資格取得をめざしていただき,今後現場に参入する認定遺伝カウンセラーを上手に使いこなしていただくことが目的の1つである。筆者は小児科医であるため眼科の専門知識はないが,筆者らのカウンセリング技術や患者の援助技法は眼科医の方々にも参考になるのではないかと考えこの連載をお引き受けすることにした。眼科領域には遺伝性疾患が多いが,筆者が眼科臨床の素人ということもあり,この連載では個別の疾患情報の解説よりもカウンセリングの基礎技術に焦点を当てたいと思う。臨床家の方々が日常の眼科臨床に遺伝カウンセリングの技術を応用していただければありがたいし,さらに臨床遺伝専門医の資格取得をめざしていただければこれ以上の喜びはない。

参考文献

1)Fuhrmann W, Vogal F(坪井孝幸・訳):一般医のための遺伝相談,中外医学社,東京,1971
GC/
3)UNSCEAR:1977年国連科学委員会報告書,1977
4)千代豪昭:わが国における出生前診断をめぐる論争から学ぶこと.Neonatal Care 16:81-89,2003
5)千代豪昭・黒田研二(編):医療は誰のものか.学生のための医療概論.第2版,233-275,医学書院,東京,2003
6)臨床遺伝専門医制度委員会ホームページhttp://jshg.jp/qualifications/clingenet.htm
GC/

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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