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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科60巻3号

2006年03月発行

雑誌目次

特集 第59回日本臨床眼科学会講演集 (1)

チモロールゲルからレボブノロールへの切り替えによる効果

著者: 井上賢治 ,   若倉雅登 ,   井上治郎 ,   富田剛司

ページ範囲:P.263 - P.267

目的:0.5%イオン応答ゲル化剤添加チモロール点眼薬(チモロール)をレボブノロール1日1回点眼に変更した際の眼圧への効果と使用感の検討。方法:チモロールを3か月以上使用していた緑内障35例35眼を対象とした。内訳は男性13例,女性22例であり,原発開放隅角緑内障24眼,正常眼圧緑内障7眼,原発閉塞隅角緑内障3眼,高眼圧症1眼である。眼圧は1か月ごとに3か月間測定した。結果:変更前の眼圧は17.1±1.9mmHgであり,変更2か月後で眼圧は有意に下降した。1か月後と3か月後の眼圧は変更前の眼圧と有意差がなかった。チモロール点眼で「べとつく」または「ぼやける」と答える例が多かった。18例(51%)がチモロールよりレボブノロールを好み,2例(6%)がチモロールを好み,15例(43%)が「どちらでもよい」と答えた。結論:緑内障の点眼治療薬としてチモロールからレボブノロールに切り替えた結果,3か月まで眼圧が変化せず,レボブノロールによる使用感が概してよかった。

黄斑浮腫の評価におけるHeidelberg Retina Tomograph Ⅱ黄斑浮腫モジュールと光干渉断層計の相関

著者: 古川祐子 ,   引地泰一 ,   増田多恵子 ,   大塚秀勇 ,   樋口眞琴 ,   松下卓郎 ,   有賀浩子 ,   松下玲子 ,   小阪祥子

ページ範囲:P.269 - P.271

目的:黄斑部網膜厚の光干渉断層計での測定値と,ハイデルベルク網膜断層計Ⅱ型のMacular Edema Moduleによる測定値の比較。対象と方法:黄斑浮腫がある33眼を対象とした。内訳は糖尿病網膜症13眼,網膜静脈分枝閉塞症9眼,網膜中心静脈閉塞症1眼,黄斑前膜10眼である。各眼につき,中心窩周囲1mmの範囲の黄斑部網膜厚を2機種で測定した。結果:光干渉断層計による平均網膜厚は449±150μmであり,ハイデルベルク網膜断層計Ⅱ型による浮腫指標(edema index)は2.25±0.69であった。両測定値間の相関係数は0.47で,有意な正の相関があった(p<0.01)。結論:浮腫がある黄斑部網膜厚はハイデルベルク網膜断層計Ⅱ型で評価することが可能である。

白内障手術と隅角癒着解離術併用の適応と効果

著者: 早川和久 ,   石川修作 ,   仲村佳巳 ,   上門千時 ,   平安山市子 ,   澤口昭一

ページ範囲:P.273 - P.278

目的:白内障手術に併用する隅角癒着解離術の適応と効果の評価。対象と方法:過去3年間に慢性閉塞隅角緑内障または急性緑内障発作の寛解後に水晶体を摘出した47例59眼を対象とした。男性11例13眼,女性36例46眼で,年齢は34~81歳,平均67歳であった。白内障による視力障害は21眼にあり,他の38眼では視力が0.8以上であった。周辺虹彩前癒着は,なし8眼,半周未満14眼,半周から99%27眼,全周10眼であった。結果:術前の眼圧と投薬スコアは,4群に分類した周辺虹彩前癒着の範囲と正の相関があった。半周から99%の範囲に周辺虹彩前癒着がある27眼中16眼には隅角癒着解離術を行い,11眼には水晶体摘出術のみを行った。術後の眼圧下降は,これら16眼では8.6±6.6mmHg,11眼では1.9±4.9mmHgであり,有意差があった(p=0.0082)。術後の投薬スコアの減少は,これら16眼では2.8±1.3,11眼では0.7±1.7であり,有意差があった(p=0.0014)。結論:急性または慢性閉塞隅角緑内障に水晶体摘出術を行うとき,周辺虹彩前癒着が半周以上にあれば,隅角癒着解離術を同時に行うことが有効である。

後部強膜炎に合併したと考えられた視神経周囲炎の4例

著者: 林恵子 ,   藤江和貴 ,   善本三和子 ,   若倉雅登

ページ範囲:P.279 - P.284

目的:後部強膜炎に併発した視神経周囲炎4症例の報告。症例と経過:男性2例,女性2例で,年齢は43~55歳,平均48歳であり,2例は片眼性,2例は両眼性であった。視力は後部強膜炎と同時に低下し,炎症が視神経鞘に波及した結果と考えられた。副腎皮質ステロイド薬のパルス療法が全例で奏効したが,3例では内服漸減中に再発した。1例に海綿静脈洞炎,1例に外眼筋炎が併発した。視神経周囲炎は再発性かつ多発性であり,眼窩炎性偽腫瘍に酷似していた。結論:強膜炎または視神経周囲炎は広義の眼窩炎性偽腫瘍の一型と考えるべきであり,眼窩内外組織の検索と経過観察が望まれる。

白内障手術術前患者の結膜囊常在細菌叢の検討

著者: 河原温 ,   五十嵐羊羽 ,   今野優 ,   吉田晃敏

ページ範囲:P.287 - P.289

某総合病院眼科で白内障手術が予定されている429症例から結膜擦過物を採取・培養し,常在細菌叢を検索した。男性144眼,女性285眼であり,年齢は33~98歳,平均77歳である。395眼から細菌が検出され,613株が同定された。内訳はCoagulase-negative Staphylococcus(301株),Corynebacterium(181株),Staphylococcus aureus(36株)などである。メチシリン抵抗性黄色ブドウ球菌(MRSA)は4例から分離され,これらにバンコマイシン,レボフロキサシン,クロラムフェニコールの術前点眼を行った。術後の結膜培養でMRSAは検出されず,術前点眼が有効であると思われた。

Advancement rotation flapを用いた翼状片手術の検討

著者: 鈴木佑佳 ,   土屋祐介 ,   権田恭広 ,   杤久保哲男 ,   棚橋雄平

ページ範囲:P.291 - P.295

Advancement rotation flap(ARF)とは,形成外科の分野で皮膚欠損に対し皮弁を用いて被覆する際の手法である。筆者らはARFの手法を用いた翼状片手術を55例59眼に施行した。平均年齢は65.3±12.1歳,術後平均観察期間は15.8±12.9か月である。再発は59眼中2眼(3.3%)にあり,再手術を必要とするものはなかった。術者による再発率は熟練者8眼中0眼(0%),眼科経験3~4年では51眼中2眼(3.9%)であった。以上の成績はARFを用いた翼状片手術が経験の浅い術者でも再発率が低く,再発防止に行われる有茎結膜弁移植法のなかでは有用であることを示している。

硝子体切除術が奏効した若年者における外傷性黄斑円孔の2例

著者: 森啓亮 ,   山内紀子 ,   南部浩隆 ,   居軒賢二 ,   杉本陽子 ,   高村佳弘 ,   大石なみき ,   久保江理 ,   都筑昌哉 ,   赤木好男

ページ範囲:P.297 - P.300

鈍性外傷による黄斑円孔が12歳と13歳の男児に生じた。両症例に対して内境界膜剝離を併用した硝子体手術を行い,黄斑円孔は閉鎖した。矯正視力はそれぞれ0.08から0.9,0.03から0.4に回復した。受傷から手術までの期間は,それぞれ27日と8日であった。外傷性黄斑円孔に対し内境界膜剝離を併用する硝子体手術が奏効したが,自然治癒の可能性があるので,手術時期についての検討が必要である。

4歳以上で手術を行った両眼性先天白内障の視力予後

著者: 林雅子 ,   梶田鉄平 ,   初川嘉一

ページ範囲:P.303 - P.306

目的:小児期に手術を行った両眼性白内障の視力転帰の検討。対象と方法:4~10歳の間に両眼性白内障の手術を受け,2年以上の観察ができた12例24眼を対象とした。男児5例,女児7例であり,手術時の平均年齢は6歳7か月であった。術前に内斜視が2例あり,眼振はなかった。ERGまたは眼底に異常がある症例と発達遅滞などで視力の測定ができない症例は除外した。7例13眼に眼内レンズを挿入した。結果:全24眼で0.5以上,20眼で0.8以上の術後矯正視力が得られた。結論:眼振がない両眼性先天白内障では,4歳以後に手術を行っても良好な視力が得られた。

涙石を伴った涙道閉塞症例

著者: 大野木淳二

ページ範囲:P.309 - P.313

涙石は涙道閉塞の原因になる。涙道手術の自験例179例のうち,9例で涙石が確認できた。すべて片側性で,男性4例,女性5例であり,年齢は33~85歳,平均64歳であった。涙石の存在部位は,涙小管と総涙小管が5例,涙囊が1例,鼻涙管が3例であった。治療では涙石の完全除去を目的とし,涙小管部の圧迫・洗浄・吸引,涙小管内のそう破,DCR鼻外法,DCR下鼻道法を単独または組み合わせて行い,全例で治癒することができた。また,涙道内視鏡と鼻内視鏡を活用して涙石を完全に除去することでNST挿入術が有効になる。

2004年の高知大学医学部眼科におけるぶどう膜炎の臨床統計

著者: 福島敦樹 ,   西野耕司 ,   小浦裕治 ,   小松務 ,   中茎敏明 ,   上野脩幸

ページ範囲:P.315 - P.318

目的:2004年に高知大学医学部眼科を初診または再診で訪れたぶどう膜炎患者144例の診療録に基づく解析。結果:男性45例(31%),女性99例(69%)であり,男女比は1:2.2であった。年齢は8~89歳,平均57.4歳であった。9例が片眼性,135例が両眼性であった。ぶどう膜炎の病型は,分類不能41%,サルコイドーシス22%,ベーチェット病11%, Vogt-小柳-原田病6%であった。全例にステロイド薬点眼の既往,48%にステロイド薬全身投与の既往,42%に抗緑内障薬投与の既往があった。43%に白内障手術の既往,18%に硝子体手術の既往,6%に緑内障手術の既往があった。結論:他施設と同様に,当眼科でもいわゆる3大ぶどう膜炎の頻度が高く,約半数の症例でステロイド薬の全身投与と合併症に対する手術が行われていた。

電子クリティカルパスの現状

著者: 山下美和子 ,   宮村紀毅 ,   田代紘子 ,   松本武浩 ,   木下博文

ページ範囲:P.319 - P.323

目的:総合病院眼科での電子クリティカルパスについての現状報告。方法:長崎医療センターではオンライン評価が可能な電子クリティカルパスの運用を2004年5月に開始し,2005年7月までの1年間の使用状況を評価した。結果:白内障用,硝子体用など14種類の電子クリティカルパスを計140件使用した。バリアンス発生率は17.9%,パス中断率は19.3%であった。このシステムは5項目についての点数により評価できた。結論:電子クリティカルパスは,バリアンスの理由,中断の理由,総合評価を参考にして修正できる。これにより作業効率を高めることが期待される。

輪部減張切開術の手術成績

著者: 永野葵 ,   松本年弘 ,   吉川麻里 ,   重藤真理子 ,   佐藤真由美 ,   堀まどか

ページ範囲:P.325 - P.328

目的:白内障手術後に残存する角膜乱視に対する輪部減張切開術の成績の評価。対象と方法:過去4年間の白内障手術と眼内レンズ挿入後に1.5D以上の倒乱視がある27眼に対し,耳側と鼻側に輪部減張切開術を行った。視力はlogMARで評価した。結果:裸眼視力は,術前が平均0.66,術後が0.33であり,矯正視力は術前が平均0.11,術後が0.03であり,裸眼と矯正視力はともに有意に改善した(p<0.01)。手術の1か月後で,角膜乱視は平均2.12D変化し(Jaffe法),1.88D直乱視化した(Cravy法)。術後2年間の経過観察ができた10眼では,輪部減張切開術の効果が持続していた。結論:白内障手術後に残存する強い倒乱視に対し,輪部減張切開術は乱視軽減効果があった。

緑内障眼における視神経乳頭形態の長期経時的変化

著者: 廣石悟朗 ,   小池生夫 ,   池田康博 ,   吉田茂生 ,   藤澤公彦 ,   久保田敏昭 ,   石橋達朗

ページ範囲:P.329 - P.333

目的:視神経乳頭の緑内障による変化の長期観察。対象と方法:10年以上の経過観察が行われている緑内障患者9例17眼を対象とした。男性13眼,女性4眼であり,観察開始時の年齢は14~55歳,平均31歳であった。緑内障の内訳は,発達緑内障11眼,開放隅角緑内障6眼である。全例で眼圧は21mmHg以下にコントロールされていた。視野計測にはGoldmann視野計,視神経乳頭計測にはHeidelberg Retina Tomograph(HRT)を用いた。10年間の観察で,視野は8眼で悪化し,9眼で悪化しなかった。結果:視野悪化群と非悪化群いずれも,HRTの各パラメータの回帰直線のすべてが緑内障性変化が進行する方向に傾斜していた。視野悪化群では,rim volumeとcup shape measureの回帰直線が,非悪化群よりも緑内障性変化がより強い方向に傾斜していた。結論:HRTのパラメータのうち,rim volumeとcup shape measureが緑内障進行の視標として有用である。

急性緑内障発作に対するcore vitrectomy併用超音波白内障手術成績

著者: 家木良彰 ,   田中康裕

ページ範囲:P.335 - P.339

目的:急性緑内障発作に対する超音波白内障手術と,これに硝子体手術(core vitrectomy)を併用した成績の比較。対象:急性緑内障発作に超音波白内障手術を行った34眼を対象とした。6眼にはこれにcore vitrectomyを併用し,28眼には併用しなかった。結果:術前の眼圧には両群間に差がなかった。最終眼圧はcore vitrectomyを併用した群が有意に低かった(p=0.04)。Core vitrectomyを併用しなかった群では,1眼で水晶体全摘出を,2眼で追加緑内障手術を,2眼で術後の緑内障点眼薬を必要とし,4眼で術後の角膜内皮が1,500個/mm2以下に低下した。結論:超音波白内障手術にcore vitrectomyを併用することで,術中合併症が減り,術後眼圧が安定し,角膜内皮障害が少なかった。急性緑内障発作では,角膜浮腫や浅前房などで超音波白内障手術の難度が高いときには,core vitrectomyを併用することを考慮すべきである。

急速に増大した結膜扁平上皮癌の1例

著者: 福島聡 ,   水野史門 ,   三宅孝知 ,   服部日出雄 ,   小椋祐一郎

ページ範囲:P.341 - P.344

目的:急速に増大した結膜扁平上皮癌の症例の報告。症例と経過:84歳女性に右眼の充血を契機として結膜腫瘤が発見された。腫瘤は急速に増大し,3か月後に紹介され受診した。右眼角膜の耳側結膜に長径が15mmのカリフラワー様の血管に豊む腫瘤があった。角膜への浸潤はなく,眼球または眼窩内への浸潤は否定された。切除された腫瘤は病理組織学的に扁平上皮癌であった。術後に放射線照射を行い,以後6か月間に再発はない。結論:本症例のように3か月の短期間に増大した結膜扁平上皮癌は報告されていない。本疾患は遠隔転移が少なく,予後は概して良好であるが,単純切除後の2年以内の再発率が高いので,なお観察が必要である。

緑内障を合併した毛様体黒色細胞腫の2例

著者: 塩田伸子 ,   吉野啓 ,   稲見達也 ,   並木泉 ,   藤岡保範

ページ範囲:P.345 - P.351

目的:緑内障を併発した毛様体黒色細胞腫2症例の報告。症例と経過:症例は32歳と43歳の男性で,片眼の眼圧上昇による霧視で発症した。前房,隅角,硝子体腔に多量の色素顆粒があり,超音波顕微鏡(ultrasound biomicroscope:UBM)で毛様体に限局する腫瘍が発見された。両者とも腫瘍の局所切除を行い,病理学的に黒色細胞腫と診断された。両症例とも術後しばらくは低眼圧で経過したが,その後眼圧が再上昇し,瀘過手術の追加で眼圧コントロールが得られた。結論:眼内に多量の色素散布がある色素性腫瘍では,黒色細胞腫の可能性がある。

異常色覚程度判定のためのJFCランタンの規準

著者: 田邉詔子 ,   山出新一 ,   市川一夫

ページ範囲:P.353 - P.356

目的:1型・2型色覚の程度分類に使うJFCランタンの正答と誤答の境界値を設定すること。対象と方法:色覚異常者850例を対象とした。内訳は,1型2色覚(第1色盲)124例,2型2色覚(第2色盲)306例,1型3色覚(第1色弱)98例,2型3色覚(第2色弱)322例である。これらに対して,数種類の仮性同色表,パネルD-15テスト,JFCランタン,アノマロスコープによる検査を行った。ランタンテストの成績は呈示光9組中の誤答数で表示した。結果:ランタンテストによる誤答数は2色覚者(色盲)で4から9,異常3色覚者(色弱)で0から9であった。2色覚者で3以下はなく,4の頻度が4%であった。異常3色覚者で3以下は31%であり,過去の報告での弱度の場合とほぼ一致した。結論:JFCランタンによる色覚異常の程度分類では,提示光9組中の誤答3以下をパスとする。

うっ血乳頭が唯一の所見であった特発性頭蓋内圧亢進症(偽脳腫瘍)の1例

著者: 富田斉 ,   金上貞夫 ,   松原正男

ページ範囲:P.357 - P.361

43歳女性が2か月前から目が霞み,数秒間ピントが合わないとの訴えで受診した。視力は正常であり,唯一の他覚的異常としてうっ血乳頭が両眼にあった。その高さは右眼1.0D,左眼2.0Dであり,乳頭周囲に静脈の怒張と出血があった。内科での神経学的検査には異常がなく,磁気共鳴画像検査(MRI)などでも異常所見はなかった。脳脊髄液の性状は正常であったが,圧が250mmH2Oを超え,特発性頭蓋内圧亢進症と診断した。8か月後に視野欠損が生じ徐々に悪化した。初診から11か月後にアセタゾラミド1日量750mgの経口投与を始めた。6か月後にうっ血乳頭と視野が改善した。視野検査と立体眼底撮影は特発性頭蓋内圧亢進症の経過観察に有用であった。アセタゾラミドの経口投与は本症の初期治療に有効である可能性がある。

網膜静脈分枝閉塞症の網膜厚と網膜感度の相関

著者: 新谷崇 ,   引地泰一 ,   松下玲子 ,   大塚秀勇 ,   樋口眞琴 ,   松下卓郎 ,   有賀浩子 ,   小阪祥子

ページ範囲:P.363 - P.365

目的:黄斑浮腫がある網膜静脈分枝閉塞症での網膜厚と網膜感度の関係の検索。対象と方法:網膜静脈分枝閉塞症7例7眼を対象とし,光干渉断層計で網膜厚を,マイクロペリメータで微小網膜感度を測定した。光干渉断層計によるretinal map上下の4領域の内側と外側領域で,網膜厚と網膜感度について,病変部と健常部の差を健常部の値で徐し,その百分率を変化率とした。結果:内側領域(r=-0.92,p=0.004),外側領域(r=-0.83,p=0.02)ともに有意な負の相関があった。結論:網膜静脈分枝閉塞症病変部での網膜厚の増大は,網膜感度の低下の一因である可能性がある。

両眼の急性緑内障発作を呈した稀な原田病の1例

著者: 中村聡 ,   前田祥恵 ,   今野伸介 ,   大塚賢二

ページ範囲:P.367 - P.370

目的:急性緑内障で初発した原田病症例の報告。症例:69歳女性が頭重感と嘔気で受診した。矯正視力は右眼1.0,左眼0.9で,両眼に約1.5Dの遠視があった。眼圧は両眼とも28mmHgであった。浅前房と狭隅角があり,両眼に急性緑内障発作と診断し,レーザー虹彩切開術で眼圧は下降した。両眼に視神経乳頭周囲の浮腫と全周に毛様体脈絡膜剝離があった。蛍光眼底造影で乳頭からの蛍光漏出があったが,典型的な点状の多発性蛍光漏出はなかった。造影磁気共鳴画像検査で脈絡膜に炎症所見があり,髄液細胞増多,HLA-DR4陽性などから原田病と診断した。結論:本症例は両眼の急性緑内障発作で初発し,漿液性網膜剝離を伴わない原田病であった。

連載 今月の話題

加齢黄斑変性に対する光線力学療法の最近の動向

著者: 石川浩平 ,   寺崎浩子

ページ範囲:P.239 - P.245

これまで治療に苦慮されてきた滲出型加齢黄斑変性に対する治療法として光線力学療法が本邦でも認可され約1年半が経過し,日本人に対する本治療の効果が明らかになってきた。本稿では,過去の治験の成績,筆者らの施設での治療経過,治療後にみられる網膜の変化,今後の展望について述べる。

眼の遺伝病80

遺伝性網膜変性疾患―スクリーニングの総括

著者: 和田裕子

ページ範囲:P.246 - P.248

 早いもので本連載「眼の遺伝病」の最終回を迎えた。1999年9月から本シリーズをはじめ6年が経過し,計80回,遺伝子変異と臨床像を報告してきた。はじめに遺伝子異常と臨床像についてのシリーズのお話をいただいたときは,毎号の連載と実験や臨床を両立できるだろうかという多くの不安があった。シリーズで報告するということは,確実に遺伝子異常を見つける必要があり,さらにその詳細な臨床像が必要になるからである。それを毎月報告するのであるから,最終回まで報告できた充実感は何ものにも代えられないものであると実感している。実験や臨床を一緒にがんばってくれた先生方がいてくれてこそここまでやり遂げることができた仕事で,私1人では決して成し遂げることは不可能であり,東北大学眼科先天網膜外来の先生方への感謝の気持ちでいっぱいである。

 昨年,現在までに連載を行ったシリーズを各論として,染色体と遺伝子を総論として『網膜の遺伝病』を出版できたことは,80回にわたり「眼の遺伝病」の連載を続けることができたおかげである。

 最後のシリーズとして,現在まで行ってきたスクリーニングについて総括する。

日常みる角膜疾患36

ドライアイ(涙液減少症)

著者: 高橋典久 ,   近間泰一郎 ,   西田輝夫

ページ範囲:P.250 - P.253

症例

 患者:59歳,女性

 主訴:両眼の乾燥感,眼痛,羞明

 現病歴:両眼の羞明を自覚し近医を受診し,両眼の角膜に瞼裂に一致したびらんを指摘された。両眼の乾性角結膜炎の診断でヒアルロン酸点眼,抗生剤点眼を処方された。いったんは軽快したが,その後ふたたび点状表層角膜症が発症して増悪するため,加療目的で当科を紹介され受診した。

 既往歴:リウマチ性周辺部角膜潰瘍,慢性関節リウマチ,高血圧。

 家族歴:特記すべきことはない。

 初診時所見:矯正視力は右眼0.2,左眼0.4,眼圧は右眼8mmHg,左眼8mmHgであった。涙液分泌量はシルマーテストⅠ法で右眼3mm,左眼4mmであった。細隙灯顕微鏡検査では両眼にフルオレセイン染色で瞼裂に一致した点状表層角膜症(A2D3),糸状角膜炎,メッシュワーク状の物質の付着を認めた。また,鼻側結膜に上皮障害を認めた(図1)。

 治療経過:右眼上下涙点,翌週に左眼上下涙点に涙点プラグを挿入した。術直後より自覚症状の著明な改善が得られ,涙点プラグ装用4週間目には左眼に点状表層角膜症(A1D1)が残存するものの角結膜障害はほぼ消失した(図2)。矯正視力は右眼1.0,左眼1.2と改善した。

眼形成手術手技13

眼瞼内反症 (3)下眼瞼埋没法

著者: 野田実香

ページ範囲:P.254 - P.259

眼瞼前葉に過剰な正常組織があるため内反が生じていると考えられる場合,埋没法の適応となる。小切開で侵襲が小さく,術後に生じる皺の位置をコントロールしやすい反面,組織を切開剝離するわけではないので,内反矯正効果や永続性は切開法より劣る。

臨床報告

Nocardia asteroidesによる角膜炎の1例

著者: 越智理恵 ,   鈴木崇 ,   木村由衣 ,   菊地正晃 ,   宮本仁志 ,   宇野敏彦 ,   大橋裕一

ページ範囲:P.379 - P.382

82歳女性が農作業中に木の枝で左眼に受傷した。その2か月後に疼痛と視力低下が生じ,近医で細菌性角膜炎と診断されたが悪化し,ヘルペス性角膜炎が疑われたが前房蓄膿が生じ,受傷から7か月後に当科を受診した。矯正視力は右0.7,左光覚弁であり,角膜全面に上皮欠損を伴う境界不鮮明な斑状の浸潤巣が多発し,前房蓄膿があった。角膜擦過物に糸状菌様の所見があり,角膜真菌症として抗真菌薬で治療したが改善しなかった。その後すぐにNocardia asteroidesが培養で同定され,ミノサイクリンの局所投与を主体とする治療に切り換え約1か月で軽快した。Nocardia角膜炎の診断では,糸状菌による角膜真菌症との鑑別が重要であることを本例は示している。

「眼サルコイドーシス診断の手引き」の改訂―陽性項目数の検討

著者: 飛鳥田有里 ,   石原麻美 ,   中村聡 ,   林清文 ,   水木信久

ページ範囲:P.383 - P.387

過去35か月間に受診したぶどう膜炎患者159例につき,現行の「眼サルコイドーシス診断の手引き」とその改訂案に記述されている各項目の感度と特異度を検討した。患者の内訳は,組織学的に診断が確定したサルコイドーシス78人と,それ以外の原因が明らかなぶどう膜炎患者81人である。後者にはべーチェット病40人と原田病21人が含まれている。現行の手引きによるサルコイドーシス診断の感度は84.6%,特異度は38.3%であった。改訂案によると,2項目以上を陽性とするときには感度83.3%,特異度60.5%であり,3項目以上を陽性とするときには感度69.2%,特異度87.7%であった。以上から,感度を重視するならば2項目以上,特異度を重視するならば3項目以上を陽性とするのが適切であると結論される。

再発性脈絡膜血管腫に対して光線力学的療法が有効であった1例

著者: 庄司拓平 ,   高橋宏和 ,   朴真紗美 ,   千原悦夫

ページ範囲:P.389 - P.394

目的:光線力学的療法が奏効した再発性脈絡膜血管腫の症例の報告。症例と経過:51歳男性が4年前に右眼の脈絡膜血管腫と診断され,レーザー光凝固治療を受けた。視力低下が再発して当院を受診した。矯正視力は右0.6,左1.5であった。右眼黄斑の上耳側に隆起性腫瘤があり,フルオレセインとインドシアニングリーン蛍光造影で強い色素漏出を認め,超音波による腫瘤の厚さは2.69mmであった。腫瘤に対して光線力学的療法を行った。その5か月後の右眼視力は0.4,腫瘤の厚さは1.71mmであり,光干渉断層計(OCT)で網膜浮腫は著明に減少し,フルオレセイン蛍光造影で色素漏出は鎮静化した。結論:光線力学的療法は日本人の再発性脈絡膜血管腫に対して有効である可能性がある。

眼付属器MALTリンパ腫の放射線治療成績

著者: 門前芳夫 ,   長谷部治之

ページ範囲:P.395 - P.400

2005年までの8年間に眼付属器の粘膜関連リンパ組織(MALT)のリンパ腫13例を治療した。男5例,女8例で,7例が両眼性,6例が片眼性である。年齢は38~83歳(平均58歳)であった。8例では腫瘍は結膜に限局し,5例では眼窩結合組織原発の腫瘍であった。化学療法は行わず,全例に放射線治療を行った。線量は,病巣部局所の照射野で30~54Gyであった。4~92か月(平均53か月)の経過観察で,結膜のリンパ腫は完治し,球後リンパ腫のうち3例は完治,2例は改善した。眼窩内筋円錐の外方にあるリンパ腫は消失し,筋円錐の内部にある線状の腫瘍と内直筋を含むリンパ腫は放射線治療後も残存した。以上の事実は,眼窩のMALTリンパ腫では腫瘍の部位と性質により放射線照射に対する反応が異なることを示している。有害な晩期合併症は40Gy以上の照射で起こり,この量が眼窩MALTリンパ腫に対する放射線治療の上限であると推定される。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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