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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科60巻4号

2006年04月発行

文献概要

特集 第59回日本臨床眼科学会講演集 (2) 学会原著

正常妊娠後期に発症した中心性漿液性網脈絡膜症の1例

著者: 今義勝1 永富智浩1 西岡木綿子1 坂本英久2 矢壁昭人3 石橋達朗4

所属機関: 1下関市立中央病院眼科 2九州労災病院眼科 3やかべ産婦人科医院 4九州大学大学院医学研究院眼科学分野

ページ範囲:P.473 - P.476

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目的:正常妊娠後期に発症した中心性漿液性網脈絡膜症の症例の報告。症例:29歳の女性が初めて妊娠し,妊娠38週目に左眼視力低下を自覚した。産院での諸検査で妊娠中毒症など後期妊娠合併症は否定された。その11日後に自然分娩で正常児を出産した。その後右眼にも視力低下が生じ,出産から7日後に眼科を受診した。矯正視力は右0.15,左0.4であり,3乳頭径大の漿液性網膜剝離が両眼の黄斑部にあった。光干渉断層計(OCT)と蛍光眼底造影で中心性漿液性網脈絡膜症に相当する所見があった。その後ゆっくりと網膜剝離が消退復位した。出産から4か月後に矯正視力は右1.5,左1.2に回復した。結論:正常妊娠でも血液の生理的変化により脈絡膜循環障害が起こる可能性があり,これが本症例での中心性漿液性網脈絡膜症に関与していたと推定される。

参考文献

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2)斉藤恒秋・清水春一:妊娠中毒症にみられた眼底浮腫の蛍光像.眼紀 31:152-156,1980
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9)高橋甚吉・玉井 信:妊娠中毒症と網脈絡膜症.臨眼 38:432-433,1984
10)今井信昭:血液の流動および凝固からみた妊産婦循環動態の生理と病理.日本産婦人科学会雑誌32:1194-1203,1980

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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