臨床眼科60巻4号

2006年04月発行

特集 第59回日本臨床眼科学会講演集　(2) 学会原著

肥厚性硬膜炎により眼球運動障害をきたした1例

著者： 上田資生¹ 林央子¹ 河野剛也¹ 三木紀人¹ 菱田英子¹ 白木邦彦¹

所属機関： ¹大阪市立大学大学院医学研究科視覚病態学

ページ範囲：P.553 - P.557

目的：眼球運動障害が併発した肥厚性硬膜炎症例の報告。症例と経過：77歳男性が両眼性複視で受診した。8か月前から微熱と右眼充血があり，近医で強膜炎と診断され，副腎皮質ステロイド薬の点眼でいったん軽快していた。軽度の右眼球運動障害があった。1か月後に熱発し，右眼視力が低下し，強膜炎が再発し，眼瞼下垂と眼球運動障害が悪化した。造影磁気共鳴画像検査（MRI）で右の脳底部に髄膜肥厚があり，肥厚性硬膜炎と診断した。P-ANCA抗体が陽性であった。副腎皮質ステロイドのパルス療法後に内服漸減を行い，2か月目から免疫抑制薬を内服することで諸症状が改善した。結論：本症例の発熱と眼球運動障害は肥厚性硬膜炎に続発したと推定される。肥厚性硬膜炎の診断には造影磁気共鳴画像検査が有用であった。

参考文献

1）佐伯敬子・宮村祥二：当院で経験したANCA関連疾患の検討．長岡赤十字病院医学雑誌　13：11-15，2000

2）Nagashima T, Maguchi S, Terayama Y et al：肥厚性硬膜炎と多発性脳神経障害を示したp-ANCA（核周囲性抗好中球細胞質抗体）陽性のウエーゲナー肉芽腫症―1例報告と文献の再検討．Neuropathology　20：23-30，2000

3）長田　敦・篠田和男・小林　顕・他：MPO-ANCA関連腎炎に併発した強膜炎の1例．眼臨98：878-881，2004

4）長嶋淑子・間口四郎・堀本みどり・他：慢性肥厚性硬膜炎・多発脳神経麻痺・上強膜炎・慢性副鼻腔炎を呈し，間質性肺炎で死亡したp-ANCA陽性血管炎症候群の1剖検例．北海道医学雑誌75：364，2000

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13）新美　岳・杉浦芳樹・佐藤滋樹・他：肥厚性硬膜炎で発症したWegener肉芽腫症の1例．日本呼吸器学会雑誌　38：561-565，2000

14）薬師寺祐介・黒原和博・戸田修二・他：MPO-ANCA関連の脊髄肥厚性硬膜炎の1例．臨床神経学　42：873-877，2002

15）Davies DJ, Moran JE, Niall JF et al：Segmental necrotising glomerulonephritis with antineutrophil antibody：possible arbovirus aetiology?　Br Med J（Clin Res Ed）　28；285（6342）：606, 1982

16）Gross WL, Csernok E：Immunodiagnostic and pathophysiologic aspects of antineutrophil cytoplasmic antibodiesin vasculitis. Curr Opin Rheumatol7：9-11, 1995

17）永田竜朗・徳田安範・西尾陽子・他：肥厚性硬膜炎によるoptic nerve sheathの1例．臨眼57：1109-1114，2003