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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科60巻5号

2006年05月発行

雑誌目次

特集 第59回日本臨床眼科学会講演集 (3)

強度近視を合併した網膜色素線条症の1例

著者: 草野真央 ,   築城英子 ,   脇山はるみ ,   北岡隆

ページ範囲:P.687 - P.690

目的:網膜色素線条が強度近視眼に生じ,脈絡膜血管新生に至った1例の報告。症例と経過:18歳男性に左眼視力低下が2日前に突発した。外傷などの契機はなかった。左右眼とも約-9Dの近視があり,矯正視力は右0.9,左0.3であった。両眼に網膜色素線条があり,左眼中心窩に網膜下出血があった。蛍光眼底造影で色素線条部に低蛍光と左眼中心窩下に新生血管があった。全身合併症はなかった。左眼の黄斑下出血はゆっくり消退し,発症から5か月後の矯正視力は0.6に改善した。結論:本症例では,強度近視による眼軸長延長と弾性線維の脆弱化があるために,若年でも脈絡膜新生血管が生じたと推定される。強度近視は,網膜色素線条症の自然予後に影響する可能性がある。

中心性漿液性網脈絡膜症を併発した特発性脈絡膜新生血管の1例

著者: 夏川牧子 ,   佐藤拓 ,   松本英孝 ,   岸章治

ページ範囲:P.691 - P.696

目的:特発性脈絡膜新生血管が瘢痕治癒した6年後に中心性漿液性脈絡網膜症が発症した症例の報告。症例と経過:36歳男性が左眼変視症と傍中心暗点で受診した。左眼矯正視力は1.0であり,特発性脈絡膜新生血管に相当する眼底病変があった。3か月後に脈絡膜新生血管は瘢痕化し,漿液性網膜剝離は消退した。6年後に漿液性網膜剝離が再発した。フルオレセイン蛍光造影で瘢痕化した新生血管に隣接し,点状で始まり円形に増大する色素漏出点があった。中心性漿液性脈絡網膜症と診断し,漏出点に光凝固を行った。網膜下液はすみやかに吸収された。結論:本症例は陳旧化した特発性脈絡膜新生血管に中心性漿液性脈絡網膜症が続発することがあることを示している。

虚血性視神経症の眼症状を呈した鞍上部髄膜腫の1例

著者: 児玉俊夫 ,   島村一郎 ,   石川明邦 ,   吉岡龍治 ,   西谷元宏 ,   木村格 ,   金子明生 ,   中川孝

ページ範囲:P.697 - P.702

目的:虚血性視神経症に類似した症状で初発し,トルコ鞍の結節髄膜腫であることが判明した症例の報告。症例:48歳男性が5日前からの左眼視力低下で受診した。矯正視力は右1.0,左0.1であった。右眼に耳側視野欠損,左眼に中心暗点があった。蛍光眼底造影で造影初期に乳頭の上下方向に充盈遅延があり,虚血性視神経症と推定した。副腎皮質ステロイドの投与なしで左眼視力は改善したが,発症から4か月後に激しい頭痛が起こった。CTなどの画像検査でトルコ鞍結節部の髄膜腫に可能性を示す所見が発見された。腫瘍摘出術の結果,鞍上部髄膜腫の診断が確定した。結論:視交叉近傍の病変は初期では虚血性視神経症に類似した眼症状を呈することがある。本症例では原因の確定には画像診断が有用であった。

眼脂培養からの同定菌のフルオロキノロンに対する耐性の比較検討

著者: 藤紀彦 ,   山下美恵 ,   田原昭彦

ページ範囲:P.703 - P.706

目的:眼脂から培養同定された細菌の各種フルオロキノロンに対する耐性率の検索。対象と方法:入院患者と眼科外来患者延べ74人から眼脂を採取し,培養で細菌85株が同定された。ガチフロキサシン(以下,GFLX),レボフロキサシン(以下,LVFX),シプロフロキサシン(以下,CPFX)に対する細菌85株の耐性を検索した。結果:85株の耐性率は,GFLX 45%,LVFX 57%,CPFX 59%であった。グラム陽性菌63株ではそれぞれ54%,68%,68%であり,グラム陰性菌22株では18%,23%,32%であった。結論:眼脂から培養で得られた細菌の耐性率は,GFLXが最も低く,LVFXとCPFXがこれに続いた。

シリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズと化学消毒剤との適合性

著者: 植田喜一

ページ範囲:P.707 - P.711

目的:シリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズを化学消毒剤で処理したあとの物理化学的検索。方法:コンタクトレンズとしてO2オプティクス(R)各4枚を6種の化学消毒剤と生理的食塩水で処理した。結果:総計28枚のコンタクトレンズには形状,外観,色調に差がなく,直径,ベースカーブ,頂点屈折力,含水率,光線透過率は厚生労働省の基準を満たしていた。結論:シリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズは化学消毒剤による処理で変化しなかった。

インジェクター(DK7788)を用いたシリコーン眼内レンズ挿入

著者: 野間謙晴 ,   佐々木崇暁 ,   添田祐

ページ範囲:P.713 - P.717

シリコーン眼内レンズをインジェクターを使って109眼に挿入した。眼内レンズにはClariFlex(R),インジェクターにはDK7788(R)を用いた。カートリッジから開放されたときにレンズが回転し眼内で立ってしまうために,その回転を補正する必要があった。プランジャーがレンズ光学部のエッジを押すと,レンズがカートリッジから瞬時に開放されて表裏が逆になるために,レンズとプランジャーの接点を目視確認することが必要であった。シリコーン眼内レンズの特性を理解しインジェクターの操作に習熟すれば,眼内を片手の操作で挿入できた。

Viscoadaptive粘弾性物質と角膜サイドポートを用いた脱臼眼内レンズの眼内リサイクル

著者: 二宮欣彦 ,   竹原敦子 ,   志賀早苗

ページ範囲:P.719 - P.723

目的:脱臼した眼内レンズ(以下,IOL)を再び毛様溝に縫着する眼内リサイクル法の変法と,viscoadaptive粘弾性物質を用いて脱臼IOLを捕獲する方法の記述。方法:硝子体切除の後,後極部網膜にviscoadaptive粘弾性物質を塗布し,その上に脱臼したIOLを新雪に小枝を立てるようにフックで移動して仮固定し,持ち替えた硝子体鉗子で捕獲する。角膜創より眼外にIOL支持部のみを出し,眼外で縫合糸を結紮し眼内に戻し毛様溝に縫着する。IOLが脱臼した6眼を以上の手技で治療した。結果:本法は従来法よりも簡便だが,ヒンジが曲がった症例と,1ピースのアクリルIOLの症例でIOLが傾斜して固定された。結論:本法は容易な眼内リサイクル法であるが,適応を選択することが必要である。

超音波水晶体乳化吸引におけるマイクロパルスモードの優位性

著者: 三好輝行 ,   吉田博則

ページ範囲:P.725 - P.731

目的:水晶体乳化吸引の実際および超音波チップ先端に気泡が発生する現象(キャビテーション)を可視化し,さらに異なる発振モードでの水晶体乳化吸引を評価すること。方法:水晶体乳化吸引装置と高速度デジタルビデオカメラを使用した。結果:キャビテーション撮影することができた。連続発振モードでは水晶体核片(チャタリングモーション)を記録でき,微小パルス発振モードでは超核片追従性(ハイパーフォローアビリティ)を映像化できた。結論:超音波チップの振動とキャビテーションを可視化することができ,連続発振モードと微小パルス発振モードに大きな違いがあることを映像として証明した。

全身麻酔下における眼圧の変動

著者: 奥山美智子 ,   佐藤憲夫 ,   佐藤浩章 ,   深田祐作 ,   松本幸夫 ,   木村和彦 ,   太田信彦

ページ範囲:P.733 - P.735

目的:全身麻酔中に起こる眼圧変動の報告。対象:子宮筋腫の摘出術を受ける女性15例を対象とした。年齢は32~55歳(平均45歳)である。全例に眼疾患の既往はなかった。方法:麻酔の維持には亜酸化窒素とイソフルランを用いた。シェッツ眼圧計による眼圧測定を,術前投薬前,術前投薬後30分,全身麻酔導入直後,導入1時間後,覚醒時に行った。結果:眼圧は前投薬前と比較し,全身麻酔導入直後と導入1時間後で有意に低下していた(p<0.05)。覚醒時以降では,術前投薬前の眼圧と差がなかった。結論:亜酸化窒素とイソフルランによる全身麻酔中は眼圧が低下する。

先天白内障術後のガス透過性ハードコンタクトレンズ長期装用による角膜内皮への影響

著者: 矢ヶ﨑悌司 ,   伊藤法子 ,   松浦葉矢子 ,   太田裕子 ,   村口香

ページ範囲:P.737 - P.741

目的:先天白内障手術後にガス透過性ハードコンタクトレンズを長期装用したことによる角膜内皮への影響の検索。対象:1歳未満の時期に先天白内障手術を受け,ガス透過性ハードコンタクトレンズを10年以上装用している14例25眼を対象とした。11例は両眼性,3例は片眼性である。手術時の年齢は4.3±2.3か月,コンタクトレンズの装用期間は13.0±3.1年であった。結果:角膜内皮細胞の密度は3,921±451mm2,細胞面積は256±33μm2,変動係数は0.34±0.08,六角形細胞出現率は58.9±9.7%であった。結論:ガス透過性ハードコンタクトレンズの長期装用による角膜内皮への影響はほとんどなかった。

知的障害者の視聴覚健康診断の試み―視覚健診の結果を中心に

著者: 山崎広子 ,   柴玉珠 ,   伊藤久美子 ,   加我牧子 ,   昆かおり

ページ範囲:P.743 - P.746

目的:知的障害者の視聴覚障害の実態を把握し,治療の可能性を検討する目的で実施した視聴覚健康診断の結果報告。対象:某知的障害者施設への通所者75名のうち家族の同意が得られた48名が視聴覚健康診断に参加した。方法:問診,Landolt視標とTeller acuity cardsによる視力,眼位,眼球運動,細隙灯顕微鏡検査,耳音響放射などによるスクリーニング検査を行った。結果:視力検査は39名で可能であった。白内障が6名に,角膜混濁が2名にあった。聴覚検査は46名で可能であった。耳音響放射で両側聴覚障害が8名に疑われた。結論:視聴覚機能は日常生活で重要な要素であり,視聴覚検診は知的障害者の二次的な生活機能障害を把握するために有用である。

高齢者に発症した原田病の1例

著者: 小林綾子 ,   高橋嘉晴 ,   松倉修司 ,   杉本敬 ,   河合憲司

ページ範囲:P.747 - P.749

目的:高齢者に発症した原田病の報告。症例と経過:84歳女性が数週前からの両眼の視力低下で受診した。7年前に白内障手術を両眼に受けている。矯正視力は左右とも0.04であった。両眼に角膜後面沈着物と前房の炎症所見があり,眼底には乳頭の発赤浮腫があったが,漿液性網膜剝離はなかった。髄液に細胞増多があり,HLA検査でDR4,DQ4,B54が陽性であった。これらから原田病と診断し,副腎皮質ステロイド点眼で加療した。前眼部の炎症は軽症化したがやや遷延した。乳頭の所見は改善し,眼底は夕焼け状になった。発症から6か月後の矯正視力は右0.3,左0.4になった。以後9か月後の現在まで再発はない。結論:原田病が84歳で発症した例は,文献では初めてである。本症例は原田病としてはやや軽症かつ病状が非典型的であった。

巨大血腫と滲出性網膜剝離を伴った加齢黄斑変性に対する硝子体手術

著者: 渡邊恵美子 ,   寺松徹 ,   前澤彰 ,   田中住美

ページ範囲:P.751 - P.755

目的:巨大血腫と滲出性網膜剝離を伴う加齢黄斑変性3眼に行った硝子体手術の報告。症例と経過:症例は65歳女性,78歳男性,87歳男性で,それぞれ発症から5日,3日,1日であった。網膜を180°から360°にわたり硝子体基底部後縁付近で切開し,網膜下血腫を除去した。2眼に大きな色素上皮裂孔があり血腫と網膜色素上皮の分離が困難で,網膜色素上皮欠損が残った。最終視力は色素上皮欠損がない1眼で0.1,これがある2眼ではそれぞれ0.03,0.01であった。結論:網膜下巨大血腫に対し今回行った硝子体手術は有効であった。

治療薬選択を目的としたラタノプロスト,チモロール・ゲル点眼薬の4週試用の眼圧下降効果

著者: 橋本尚子 ,   原岳 ,   水流忠彦

ページ範囲:P.757 - P.759

目的:ラタノプロストとチモロール・ゲル点眼薬の組み合わせと眼圧下降効果の検討。対象と方法:正常眼圧緑内障32例32眼を対象とした。年齢は38~69歳(平均55歳)である。ラタノプロストを4週間点眼し,その後チモロール・ゲルを4週間追加点眼した。眼圧を4週間ごとに8週間まで測定した。眼圧は平均14.9±2.3mmHgであった。結果:ラタノプロストの4週間点眼後の眼圧は平均12.2±2.3mmHgであり,有意な眼圧下降が得られた(p<0.01)。チモロール・ゲルを追加した2剤を4週間点眼後の眼圧は平均11.2±2.8mmHgであり,追加前よりも有意な眼圧下降が得られた(p<0.01)。結論:ラタノプロストの単独点眼で有意な眼圧効果が得られた。チモロール・ゲルを追加することでさらに強い眼圧効果が得られ,ラタノプロスト単剤では効果が不十分な症例にも有効であった。

未熟児網膜症治療の検討

著者: 渡辺賢 ,   五十嵐祥了 ,   中村文子 ,   豊北祥子 ,   加藤英二 ,   飯島幸雄

ページ範囲:P.761 - P.764

目的:船橋中央病院での未熟児網膜症の発症と治療の状況の報告。対象と方法:過去27か月間に当院の新生児集中治療室に入院し,眼科的に精査した175例の診療録を検索した。結果:33例(19%)に未熟児網膜症が発症した。光凝固などの治療を要した重症例は6例(3.4%)であった。以下の因子が未熟児網膜症の発症に有意な関連があった。出生体重,在胎週数,酸素投与期間,仮死,光線療法,未熟児貧血,輸血,全身感染症,外科手術,呼吸窮迫症候群がそれである(p<0.01)。結論:当院での未熟児網膜症については,他施設の報告よりも発症率と治療率がやや低めである。

超低出生体重児の未熟児網膜症発症率と治療率

著者: 伊藤彰 ,   渡邊悠里

ページ範囲:P.765 - P.768

目的:出生体重が1,000g未満の超低出生体重児での未熟児網膜症の発症頻度,治療を要した頻度(治療率),発症と進行に関する因子の検討。対象と方法:2003年までの3年間に当院新生児科に入院した超低出生体重児のうち,眼底検査を行い経過が追えた60例60眼を対象とした。両眼発症の場合には,より進行した眼を選んだ。進行例には光凝固を行った。結果:網膜症は90%に発症した。光凝固は32%に施行した。発症は在胎週数,人工換気日数,酸素投与日数と相関し,出生体重とApgarスコアには相関しなかった。治療率はいずれの項目とも関連しなかった。結論:今回の検討項目については,超低出生体重児での未熟児網膜症の進行悪化に関連する因子を同定できなかった。

頭蓋内進展を伴ったアスペルギルス性眼窩先端部症候群の2例

著者: 服部昌子 ,   金森章泰 ,   久保木香織 ,   有馬由里子 ,   西口文 ,   宮脇貴也 ,   廣井佳野 ,   高木均 ,   栗山晶治 ,   隈部洋平

ページ範囲:P.769 - P.773

79歳男性が慢性副鼻腔炎に対して手術を受け,アスペルギルス塊を同定された。糖尿病の既往があった。術後約1か月から左顔面痛が生じ,光覚消失,眼瞼下垂,全方向への眼球運動障害が生じた。磁気共鳴画像検査(MRI)で病変が眼窩先端部にまで浸潤していた。90歳女性が半年前からの頭痛と左眼視力低下で受診した。左眼に光覚消失,眼瞼下垂,全方向への眼球運動障害があった。MRIで左蝶形骨洞に占拠性病変があり,手術でアスペルギルス塊が同定され可及的完全に除去した。両症例とも抗真菌薬を全身投与したが,病変が頭蓋内に進展し死の転帰をとった。アスペルギルスによる眼窩先端部症候群は予後が不良であり,早期診断と治療が望まれる。

進行性の偽網膜色素変性を呈したwhite dot syndromeの1例

著者: 涌澤亮介 ,   阿部俊明 ,   吉田まどか ,   木村久理 ,   國方彦志 ,   吉田光 ,   玉井信

ページ範囲:P.775 - P.780

目的:多発消失性白点症候群(multiple evanescent white dot syndrome:以下,MEWDS)に続発した偽網膜色素変性症例の報告。症例と経過:生来健康な39歳女性が右眼をMEWDSと診断された。矯正視力は0.4であった。プレドニゾロンの全身投与を受けた。発症から2か月後に白斑は消失したが,夜盲が悪化し当科を受診した。矯正視力は0.3であり,広範な網膜色素上皮の萎縮があった。以後5年間硝子体内に炎症細胞が持続し,脈絡膜血管の萎縮が徐々に進行し視野とERGが悪化した。感染症を示唆する異常所見はなかった。全経過中,左眼に異常はなかった。結論:本症はMEWDSに続発した偽網膜色素変性の稀有例であると推定される。

選択的レーザー線維柱帯形成術の長期術後成績および眼圧日内変動との関連

著者: 前田祥恵 ,   今野伸介 ,   大口修史 ,   大塚賢二

ページ範囲:P.781 - P.785

目的:選択的レーザー線維柱帯形成術の2年以上の成績と,術前の眼圧日内変動と術後成績との関連の報告。対象:開放隅角緑内障21例33眼を対象とした。内訳は正常眼圧緑内障9眼,原発開放隅角緑内障24眼で,年齢は47~83歳,(平均65歳)である。術前眼圧は11~27mmHg(平均17.4±4.2mmHg)であった。方法:線維柱帯形成術には波長532nmのレーザーを使用し,隅角の下方半周を照射した。結果:最終観察時の眼圧下降幅は2.8±3.3mmHg,房水流出圧の改善率は18.5±64.1%であった。Kaplana-Meier法による6か月生存率は71.6%,12~24か月は62.6%であった。眼圧の日内変動パラメータと術後成績には関連がなかった。結論:正常眼圧緑内障と原発開放隅角緑内障に対し,選択的レーザー線維柱帯形成術で眼圧下降が得られた。

続発性緑内障に対してシヌソトミー併用トラベクロトミーを行った3例

著者: 山田英里 ,   山田晴彦 ,   山田日出美

ページ範囲:P.787 - P.791

目的:続発緑内障に対してシヌソトミー併用トラベクロトミーを行った3症例の報告。症例:眼サルコイドーシスの62歳男性,原因が不明なぶどう膜炎の74歳女性,フックス虹彩異色性毛様体炎の55歳男性それぞれの片眼にシヌソトミー併用トラベクロトミーを行った。第3例には白内障手術を同時に行った。術後2年以上の観察で,全症例で眼圧がコンロールされ,視野の進行がなかった。結論:シヌソトミー併用トラベクロトミーは術後の管理が容易であり,一定の効果を得ることができた。続発緑内障に対する手術の選択肢の1つになり得る。

視力障害を訴えたkabuki make-up症候群の1例

著者: 吉田祐介 ,   伴由利子 ,   土代操 ,   小林ルミ ,   藤田百合

ページ範囲:P.793 - P.796

目的:永続的な視力低下が起こったkabuki make-up症候群の症例の報告。症例:16歳男性が目のかすみを主訴として受診した。4年前に筋力低下と特異な顔貌から本症候群と診断された。所見と経過:視力は左右眼とも0.2(0.6×-6.0D)であった。筋力低下,切れ長の瞼裂,下眼瞼耳側部の外反,弓状眉,指尖部の皮膚の隆起があった。前眼部,中間透光体,眼底に異常はなく,染色体にも異常がなかった。以後4年間の経過観察で視力と屈折に変化はなかった。結論:本症例での視力低下には明らかな原因はなかった。全身症状の進行とともに視力低下が起こったと推定され,本症候群の構成要素の1つであると推定される。

虹彩隅角新生血管を伴う増殖糖尿病網膜症に対する手術成績

著者: 早川宏一 ,   増山千佳子 ,   昆野清輝 ,   山木邦比古 ,   吉冨健志

ページ範囲:P.797 - P.800

目的:虹彩または隅角に新生血管がある増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術の成績の報告。対象と方法:過去5年間に初回硝子体手術を行った48眼を対象とした。全例に増殖糖尿病網膜症と虹彩または隅角に新生血管があった。手術中に眼内汎光凝固を行った。結果:術前に眼圧上昇がなかった30眼中3眼(10%)と眼圧上昇があった18眼中8眼(44%)で,最終受診時の眼圧が21mmHg以上に上昇していた。30眼中13眼(43%)と18眼中5眼(28%)で,0.1以上の最終視力が得られた。結論:虹彩または隅角に新生血管がある増殖糖尿病網膜症への硝子体手術は,眼圧が上昇する前に行うべきである。

網膜色素変性症における白内障手術

著者: 徳川英樹 ,   切通洋 ,   山本修士

ページ範囲:P.801 - P.803

目的:網膜色素変性症患者に施行した白内障手術の結果と問題点の解析。症例:過去3年間に白内障手術を行った16眼22例を対象とした。年齢は40~82歳(平均61歳)で,ゴールドマン視野検査でⅠ-2イソプターに対する損失率は98%であった。視力は平均0.148であった。全例に水晶体超音波乳化吸引術と眼内レンズレンズ挿入術を行った。結果:手術3か月後の視力は平均0.426で,有意に改善した(p=0.0097)。手術前後で視野に有意な変化はなかった。結論:網膜色素変性症患者に対する白内障手術で視力が改善し,生活の質(QOL)が向上した。

眼内内視鏡による毛様体囊胞の観察

著者: 友安幸子 ,   小池昇 ,   安西理 ,   高橋春男

ページ範囲:P.805 - P.807

目的:白内障手術時に眼内内視鏡で毛様体を観察し,囊胞の有無とその状況についての報告。対象と方法:過去1年間に白内障手術を行った267例354眼を対象とした。男性108例138眼,女性159例216眼である。水晶体核を除去したのちに内視鏡を前房に挿入し,水晶体囊を通して毛様体の皺襞部と扁平部を観察した。結果:毛様体囊胞は17例(6.4%)にあった。両眼例はなかった。男性6例(10.2%),女性11例(4.1%)であり有意差があった(p<0.05)。平均年齢は囊胞群が69.4歳,非囊胞群が73.8歳であり有意差があった(p<0.05)。血清コレステロール値には,囊胞群と非囊胞群との間に有意差はなかった。結論:白内障患者での毛様体囊胞の頻度は354眼中17眼(4.8%)であり,平均年齢が低く男性に高かった。

老視に対する調節訓練.第7報.他覚的調節検査で改善を確認した3例

著者: 福與貴秀

ページ範囲:P.809 - P.812

老視に対する調節訓練を18か月以上行い,3例で調節力が改善した。いずれも男性で,年齢は38歳,40歳,43歳である。等速度制御測定装置で得られた調節波形の最大値と最小値の差を調節力とした。3症例すべてで調節力が1D以上改善し,1例では近見障害が消失した。老視に対する調節訓練での効果判定には比較対照試験が必要であるが,今回の結果は初期の老視に対し近用眼鏡を作る前に調節訓練を試みる価値があることを示している。

緑内障および点眼治療によるQOL低下の検討―時間得失法による効用値解析

著者: 小暮諭 ,   藤巻尚美 ,   佐藤みつ子 ,   塚原重雄

ページ範囲:P.813 - P.816

目的:緑内障による視野障害,視力低下,点眼治療による生活の質の低下の評価。方法:某大学病院眼科の緑内障外来を通院中の患者270名に面接調査をした。内容は,希望する余命,もし緑内障以前の状態に治せる治療があった場合に寿命が短くなってもよい長さ,点眼がどのくらい負担であるか,などである。回答は時間得失法(time trade-off:TTO)でその効用値を産出し,これに関連する因子を変数選択重回帰分析で検索した。結果:164名から有効な回答が得られた。緑内障効用値の平均は,0.901±0.138,点眼治療効用値の平均は0.929±0.126であった。緑内障効用値に関連する因子は,罹病期間,悪い眼の自動視野計による偏差値(MD),よい眼の視力であった(p=0.0465)。結論:緑内障患者の生活の質には,罹病期間,視野,視力が関連する。点眼でも低下するが,点眼回数は関連しない。

緑内障点眼薬の1滴容量と1日薬剤費用

著者: 冨田隆志 ,   池田博昭 ,   塚本秀利 ,   杉本文子 ,   三嶋弘 ,   木平健治

ページ範囲:P.817 - P.820

目的:現行の緑内障治療用点眼薬の1滴容量と1日当たりの薬剤費用の検討。対象と方法:市販されている13種の点眼瓶それぞれの総滴数を計測し,その用法,用量,薬価から1滴の容量と1日当たりの薬剤費を算出した。結果:1滴の容量は29.4~52.7μl,平均41.9μlであった。これから算定した1日当たりの薬剤費は53.1~106.6円,平均71.6円であった。点眼瓶や容器に変更があると1滴の容量と1本の点眼薬の点眼可能期間が変化した。結論:点眼瓶や容器に変更があると1本の点眼薬の点眼可能期間と治療費が変化する。

脈絡膜悪性黒色腫と腎細胞癌と胃癌の3重複癌の1例

著者: 鈴木克彦 ,   山縣祥隆 ,   松葉沙織 ,   三村治 ,   鈴木聡

ページ範囲:P.821 - P.824

目的:既往に胃癌があり,脈絡膜悪性黒色腫と腎細胞癌が発症した症例の報告。症例:72歳男性が左眼視力低下で受診した。10年前に胃癌の手術を受け粘膜内癌であったという。左眼矯正視力は0.3で,滲出性網膜剝離と硝子体側に突出する脈絡膜腫瘍があった。123IによるSPECTで強い集積があり,脈絡膜悪性黒色腫と診断した。全身検索で右腎の4cm大の腫瘍があった。腎摘出を行い組織学的に腎細胞癌と診断された。さらに左眼を摘出し,脈絡膜悪性黒色腫の診断が確定した。結論:本症例は,胃癌,脈絡膜悪性黒色腫,腎細胞癌が併発したきわめて稀な例である。

専門別研究会

画像診断

著者: 中尾雄三

ページ範囲:P.826 - P.827

今年度の日本臨床眼科学会・専門別研究会「画像診断」は一般口演が11題,指名講演が1題,教育講演が2題と内容の豊富なプログラムで行なわれた。参加者も会場に一杯で,口演内容について熱心な討議が交わされた。例年どおり,座長を務めていただいた各先生方に担当演題の印象記を述べてもらった。

連載 今月の話題

眼瞼下垂と涙道閉塞―涙道閉塞の原因としての開瞼機能低下と交感神経緊張症

著者: 栗橋克昭

ページ範囲:P.661 - P.671

涙道閉塞の多くは原因不明であるが,涙道閉塞に開瞼機能低下,ドライアイ,頭痛,肩こり,冷えなどを合併することが多い。本稿では主として涙道手術のうち涙囊鼻腔吻合術下鼻道法と涙道閉塞の予防や涙道手術の成功率を上げる開瞼機能低下に対する眼瞼下垂手術について述べる。同時に下重手術が交感神経過緊張を緩和するため,血行・代謝がよくなり,ほかの重大な疾患や症状に対しても卓効を示すことが多いので,この点についても触れる。

日常みる角膜疾患38

アミオダロン角膜症

著者: 川本晃司 ,   近間泰一郎 ,   西田輝夫

ページ範囲:P.672 - P.674

症例

 患者:61歳,男性

 現病歴:1991年より拡張型心筋症のため当院の循環器内科を受診し,経過観察されていた。その後持続型心室頻拍を認めるようになり,精査の結果1999年9月よりアミオダロン(400mg/日)を投与された。投与開始直後自覚症状は特になかったが,アミオダロンの副作用の精査を目的に同月内科より紹介されて当科を受診した。

 既往歴:拡張型心筋症(1991年より),持続型心室頻拍(1999年より)

眼形成手術手技15

眼瞼下垂手術(1)理論編

著者: 野田実香

ページ範囲:P.676 - P.682

診察のポイント

 眼瞼下垂と思われる患者を診察する場合は,(1)上眼瞼縁と瞳孔の関係,(2)挙筋機能,(3)眼窩病変・上下斜視の除外,(4)重瞼線,眉毛の位置の観察の4点に留意して評価する。

臨床報告

眼内レンズ硝子体内落下症例の検討

著者: 大山奈津子 ,   飯田伸子 ,   平塚義宗 ,   中谷智 ,   村上晶

ページ範囲:P.843 - P.848

過去11年間に眼内レンズの硝子体内への落下が11例11眼にあった。男性9例と女性2例であり,その発生率は白内障手術1,250件に対して1件であった。7眼では白内障の術中に後囊が破損し,4眼では術中合併症はなかった。後囊が破損した7眼では囊外に眼内レンズを固定した。2眼ではその翌日,5眼では遅発性に落下が起こった。これらでは後囊の破損または毛様小帯の損傷が緩徐に進行したことが落下の原因になったと推定される。術中合併症がなく,遅発性に自然落下した4眼中3眼では硝子体中に落下した眼内レンズは囊に包まれたままの状態であり,囊収縮症候群(capsular contraction syndrome)が関係していると考えられた。他の1眼は眼内レンズの2次挿入を行った後の落下であり,YAGレーザーによる後囊切開が行われていた。

PETにて特徴的所見を呈した結膜悪性黒色腫の1例

著者: あべ松泰子 ,   木村勝哲 ,   あべ松徳子 ,   坂本泰二

ページ範囲:P.849 - P.852

77歳男性が右眼球結膜の黒色隆起性病変を主訴として受診した。病変は角膜耳側から球結膜にかけてあり,縦18mm,横10mmの大きさであった。腫瘤と健常結膜との境界は鮮明であったが,角膜への浸潤があった。陽電子放射断層撮影(positron emission tomography:PET)で腫瘤の部位に一致して異常集積があり,他に転移巣はなかった。以上の所見から悪性黒色腫を疑った。眼球を摘出し,病理組織学的に結節型悪性黒色腫の診断が確定した。PETが腫瘍の診断に有用であった1例である。

黄斑円孔術後に円孔底にトリアムシノロン残存を認めた1例

著者: 蔵本直史 ,   大橋広弥 ,   尾崎志郎

ページ範囲:P.853 - P.856

66歳女性が約10日前に自覚した左眼視力低下で受診した。矯正視力は右1.2,左0.1であり,左眼に黄斑円孔があった。その程度はGass分類で第2期に相当した。左眼に水晶体超音波乳化吸引術,眼内レンズ挿入術,硝子体切除術併用による手術を行った。硝子体を可視化するためにトリアムシノロンを硝子体腔に注入した。術中に円孔内へのトリアムシノロン迷入を認め,極力除去したが,一部が残存した。内境界膜剝離は行わなかった。術後,閉鎖した黄斑円孔底にトリアムシノロン顆粒が残存し,光干渉断層検査(OCT)でもこれに相当する所見があった。トリアムシノロン顆粒は術後3か月で観察できなくなった。術後5か月で左眼視力は0.9になり,術後1年の現在まで眼圧,眼底所見,視力などに問題は起こっていない。トリアムシノロンが黄斑下に残留しても,微量であれば無害であることを示す症例である。

カラー臨床報告

ラタノプロストからウノプロストンへの変更による眼瞼と睫毛の変化

著者: 泉雅子 ,   井上賢治 ,   若倉雅登 ,   井上治郎 ,   松尾寛 ,   原岳 ,   富田剛司

ページ範囲:P.837 - P.841

ラタノプロスト点眼で,緑内障または高眼圧患者21例35眼に眼瞼色素沈着,眼瞼部多毛,睫毛延長,剛毛化の副作用が生じた。これらの症例に対し,ラタノプロストを中止し,ウノプロストン点眼に変更した。変更前と変更6か月後に前眼部撮影を行い,これら副作用の変化を判定した。眼圧は変更前の平均が14.2±2.2mmHg,変更の1~6か月後の平均が14.5~15.8mmHgであり,変更2か月後を除き有意差がなかった。変更前後で視野障害の程度に有意差がなかった。写真判定で,眼瞼色素沈着は29%,眼瞼部多毛は43%,睫毛延長は44%,剛毛化は44%で改善していた。自覚的には,眼瞼色素沈着の71%,眼瞼部多毛の92%,睫毛延長の44%,剛毛化の44%が気にならなくなったと答えた。以上,ラタノプロストで眼瞼または睫毛に副作用が生じた症例群で,ウノプロストンへの変更後の6か月間に眼圧が維持され,視野障害が進行せず,半数弱の症例で副作用が軽減した。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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